― レビュー ―
新機能の追加で,より楽しみの幅が増した「三國志X」
三國志X パワーアップキット
Text by 岩尾ゴワス
2005年1月20日

 

あの「三國志X」がさらに楽しめるとは!

 

パワーアップキットのお約束である新シナリオと新機能以外に,新たなゲームモードとして「戦史モード」と「トライアルモード」が追加された。戦史モードはゲーム性もさることながら,ドラマチックな演出も見もの
 2004年7月に発売された,コーエーの「三國志X」。魏・呉・蜀の3陣営が覇を競った,中国の三国分裂時代を舞台とするこのゲームで,プレイヤーは歴史に名を残す猛将,智将の一人に扮し,自分の所属する勢力に天下を獲らせることを目的としていた。

 コーエー三國志シリーズの中で"全部将プレイ"ができるのは,「三國志VII」「三國志VIII」「三國志X」の3タイトルのみ。それ以外の,君主として中国大陸の制覇を目指す作品では,「自勢力の天下統一」だけが唯一の遊び方となるが,全部将プレイでは勢力を勝たせる以外の楽しさを味わえる点が特徴だ。
 たとえば君主や都督,太守,一般,在野といった身分による制限があるなかで,ときには自分の仕える君主を裏切ったり,あるときは在野のまま一生を終える遁世プレイができるといった自由度の高さは,全部将プレイ作品ならではといえる。

 この全武将プレイに「歴史イベント」というエッセンスを加えることで,従来以上にゲーム展開をドラマチックに,ときには理不尽なほど荒っぽい展開にしたところが「三國志X」の最大の特徴である。
 世間では,自分の思い通りの戦略が立てられなくなるために,「歴史イベント満載のシステムはガマンがならん!」という声もあるようだが,プレイヤーの思惑外の部分でストーリーが進むという試みはゲームの深みを増すことにもつながり,また三國志シリーズの新たな可能性を発掘した点で筆者は高く評価している。

 詳しくは,「三國志X」のレビュー記事「こちら」を見ていただきたい。

 やや前置きが長くなったが,今回紹介する「三國志X パワーアップキット」は,この筆者お気に入りの「三國志X」をより楽しく遊ぶための追加キットとして,発表があったときから注目していた存在だ。
 追加される新要素は「1.戦史モードの搭載」「2.トライアルモードの搭載」「3.新シナリオ・イベントの追加」「4.結婚と二世の誕生」「5.武将能力のエディットモードを搭載」「6.難度を上げた超級(エキスパート)モードの搭載」「7.プレイヤーの足跡を残す年表機能の搭載」などとなっているが,個人的には「3」と「4」に食指が動きまくりである。

 

新たに選べるようになった「超級」。筆者のように,従来の難度では物足りない人にはぴったりだ 「三國志X パワーアップキット」では武術大会や弁舌大会などのように季節ごとに実施されるイベントのほかに,道中で不意に依頼や占いなどをされるといった大小さまざまなイベントが追加されている

 

細かい変更点その1。武将の顔グラフィックスの下に,友好度や所属勢力が表示されるようになった 細かい変更点その2。評定で大勢に同じ任務を与えられる「任務一括」という機能が追加された。割と便利 史実武将・新武将を問わず武将の能力や特技,目標などを自由に変更できる。顔グラフィックスも変更可能に

 

 

■戦術レベルで楽しむ「戦史モード」と「トライアルモード」


戦史モードより。戦闘は通常のシステムと同じように行われるが,歴史を反映させたイベントが多数用意されている。戦闘の結果によって新しい歴史が生まれるのはユニークだ
 「三國志X パワーアップキット」の数ある追加内容のなかでも,やはり大きく取り上げたいのは「戦史モード」と「トライアルモード」である。

 まずは戦史モードについてだが,これは「三國志X」の戦闘システムをうまく転化して,数ある三国志の戦いの中から時代を象徴する合戦をクローズアップしたステージクリア型のゲームモードだ。
 最初は呂布,曹操,劉備の3勢力が入り乱れた「呂布討伐戦」と孫策の飛躍をテーマにした「江東制覇戦」を選択可能で,自分の所属する勢力の勝敗によって次のステージが遊べるようになる。戦史モードでは同じステージでも所属する勢力によって戦術や展開されるドラマが異なる点が特徴で,たとえば呂布が滅ぼされなかった場合「戦いはどのように変化したか?」という「歴史のif」にも挑戦できるところがユニークだ。

 トライアルモードは,「三國志X」のセーブデータをネットワーク上で共有できるシステムを活かしたモードで,プレイヤー同士が同一の条件で戦果を競うことを目的としている。
 プレイヤーは,与えられた一定のポイントを使って独自の軍勢を編制し,戦闘マップ上の敵をどれだけ効率よく倒せるかを競う「得点トライアル」と,詰め将棋ライクに自分の軍勢でいくつの戦闘マップを連続して攻略できるかを競う「勝ち抜きトライアル」に挑める。

 「三國志X」をさんざん遊び倒したプレイヤーならば,すぐにでも戦史モードとトライアルモードに臨みたくなるだろうが,ここで筆者から一つだけ助言をしておきたい。
 「三國志X パワーアップキット」では,実は兵科の能力バランスが再調整されているのか,「三國志X」と同じノリで戦闘に挑むと勝手が違って苦労するのだ。とくに「三國志X」で凶悪な強さを発揮した元戎弩兵と井闌のコンビはかなり弱めになったので,「三國志X パワーアップキット」の戦闘に慣れる意味でも,一度は通常のシナリオを遊んだほうがいいだろう。

 

戦史モードでは,まず二つのステージが選べる。クリア条件によって新しいステージが追加されていくのだ ゲーム開始時の設定画面。「呂布討伐戦」では呂布,曹操,劉備の3陣営の立場でステージに臨める 戦史モードの「イベントギャラリー」には,自分が戦闘中に見たビジュアルシーンなどが登録されていく

 

トライアルモードでは,まず2000ポイントという制限の中で自分の好みの武将や部隊数,兵科などを決めて軍勢を編制する。有能な武将ほど起用するときのポイントは高いので,どこまでこだわるかがカギとなる トライアルモードで獲得したポイントは,ネットワーク上でほかのプレイヤーと競わせることが可能

 


■自分だけの「三國志X」を演出する楽しさ


メニュー画面で「新しくゲームを始める」を選ぶとシナリオ選択画面となる。「PKシナリオ」というのが,今回新しく遊べるようになったシナリオだ。個人的にオススメしたいのが「遺志継ぎて 孤将独り力戦す」
 二つの目玉といえる戦史モードとトライアルモード以外で,筆者が個人的に気になっているのが「新シナリオ」「結婚」の要素についてだ。

 まずは新シナリオだが,新しく追加されたのは史実シナリオ3本とフィクションシナリオ1本の計4本。具体的には,劉備の入蜀直前をテーマにした「211年1月 義臣横死し 鉄騎渭水を渡る」と,劉備の死の直前となる「221年6月 書生顕れて 蜀主夷陵に堕つ」,諸葛亮,司馬懿,孫権没後の「253年2月 遺志継ぎて 孤将独り力戦す」,すべての群雄が一同に会するフィクション「250年1月 英雄集いて 一同に覇を競う」である。
 「253年2月 遺志継ぎて 孤将独り力戦す」などは,故横山光輝先生の漫画(故吉川英治先生の小説も可)で三國志の世界に入った人には馴染みがない時期かもしれないが,要するにキラ星のごとくいた一線級の武将が大半死に絶えたあとの年代で,有能な武将の奪い合いが楽しいシビアなシナリオと説明すれば分かりやすいだろうか。

 武将の結婚と二世の誕生については「三國志VIII パワーアップキット」にもあった要素だが,「三國志X パワーアップキット」では武将同士(もちろん男女)が結婚することで二世武将(子供)を授かり,二世誕生後は自宅で自由に育てられるというもの。  この二世武将の誕生と育成の詳細については,次週(1月27日)以降で筆者が担当する週刊連載コラム内で,さらに掘り下げていく予定なので,お楽しみに。

 「三國志X パワーアップキット」は,「三國志X」が好きで好きでたまらないプレイヤーが,ゲームを自分好みにカスタマイズできるようになることに,意義があるタイトルである。実際,その要望に応える機能が満載なので,三國志フリークを名乗るプレイヤーもまたそうではないプレイヤーも,ぜひこの一本で自分だけの「三國志X」を築いてほしい。

 

フィクションシナリオの「英雄集いて 一同に覇を競う」は,三國志を賑わせたすべての群雄が登場する一風変わった設定だ。さりげなく君主になっている司馬懿や放浪軍で苦労しそうな呂布の存在が笑える 「遺志継ぎて 孤将独り力戦す」では,武力84の丁奉も中国大陸で5本の指に入る猛将となる。イカス

 

武将同士が結婚できる「三國志X パワーアップキット」。試しに新武将として「羽柴秀吉」と「羽柴ねね」を作って配偶者に設定しておいたところ,ほどなく二世武将が誕生するというイベントが発生した。プレイヤー武将が死んだ場合,二世武将に跡を継がせることができるので,しっかりと育成して良将にしたい

 

タイトル 三國志X パワーアップキット
開発元 コーエー 発売元 コーエー
発売日 2005/01/21 価格 6090円,with PKは1万4490円(共に税込)
 
動作環境 OS:Windows 98/Me/2000/XP(+DirectX 8.1以上),CPU:Pentium II/333MHz以上[Pentium III/700MHz以上推奨],メインメモリ:128MB以上[256MB以上推奨],グラフィックメモリ:2MB以上[4MB以上推奨],HDD空き容量:400MB以上

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