■リアルタイム宇宙艦隊戦ストラテジー2作め
メビウスリンク:ユニバース2は艦隊を指揮してシナリオをクリアしていくキャンペーンタイプのストラテジーだ。3Dで描画される画面上で,艦隊をリアルタイムに指揮して勝利を目指す |
今回紹介する「メビウスリンク:ユニバース2」はその最新作であり,リアルタイム処理の戦闘が導入された「ユニヴァース」シリーズの2作めに該当する。
ゲーム全体の進行は,連続したシナリオでストーリーが展開するキャンペーン形式。おのおののシナリオは複数の宙域(惑星とその周辺領域)からなるマップを舞台に展開される。
宙域と宙域の間はゲートで結ばれ,艦隊の移動はこのゲート伝いに行われる。一般にスペースオペラ作品における超光速の恒星間移動には,"ワープ機関"を使って宇宙船が自力で移動するパターンと,離れた場所同士を結ぶ"ワープゲート"を利用するパターンがあるわけだが,本作では後者が採用され,必然的にゲートの持つ設定,例えば一定時間内に移動できる物質の質量に限界があるとかいった決まりが,戦略や戦術に影響するようになっている。まあ,道路に1級2級といった等級設定のある地上戦ストラテジーと似たようなものだ。
各シナリオにおいてプレイヤーは艦隊を編成し,戦闘の指揮を執って勝利を目指すのだが,シナリオ上特別な指示のある場合を除いて,作戦は常に敵艦隊の殲滅か惑星の占領を目標に行われる。細かな勝利条件を考えて行動するのではなく,強力な敵との戦闘を存分に楽しむのが眼目となっているわけだ。実際,戦力的に少数の自艦隊で多数の敵艦隊と対峙するシチュエーションが多い。
収録されているシナリオの内訳は,艦隊操作などを練習するための入門シナリオが2本と,本編シナリオが16本,後者には複数のゲートが複雑に絡み合うエリアを舞台にしたものや,強大な重力圏を持ち艦隊の移動などが制約される赤色巨星を舞台にしたものなども含まれ,戦闘の展開に幅が出るよう工夫されている。
ストーリーは,都市連邦軍とシリウス帝国軍それぞれの支援を受け,アル=ライラの覇権を争う二人のキャラクターを中心に展開し,プレイヤーはスタート時にプレイする陣営を選ぶ。純粋な艦隊戦ストラテジーと,登場するキャラクターがすべて女性というアンバランスさが,ある意味このシリーズの魅力といえる |
■視点切り替えで戦闘画面のエフェクトを楽しめる
各シナリオの冒頭には主要キャラクター同士の会話が挿入され,シナリオ開始時の基本的な状況などが説明される。いわばミッションブリーフィングだ |
主人公の立場は「アル=ライラ」の再構築を目指す有力者の一派であり,親シリウス帝国派か親都市連邦派のいずれかの立場でプレイできる。つまりは帝国か連邦の助力を恃んで内紛を戦っているはずなのだが,実のところそれはストーリー上の"味付け"で,ゲーム内容はいつものように帝国軍と連邦軍が繰り広げる艦隊戦だったりする。ちなみにタイトルの「メビウスリンク」とは,都市連邦軍第7機動艦隊群の通称である。
親シリウス帝国派ではイーディス・エディテンヌ,親都市連邦派ではソフィア・イズミールという女性を中心にストーリーが展開するのだが,そもそもこのゲームの大きな特徴は,艦隊司令官をはじめ登場キャラクターがすべて女性である点にある。シナリオクリアのごほうびとして女性キャラクターのグラフィックスが表示されるのは本作の伝統だし,司令官クラスにはシリーズを通して登場しているキャラクターも多い。
宙域にある星や艦隊などは3Dで表示され,ズームや視点変更は自由にできる。派手な戦闘シーンが楽しめるのも本作の重要なポイントといえるだろう。戦場全体の状況を把握するなら視点を引き,ビームやミサイルの飛び交う派手な戦闘シーンを見るならズームして,艦隊を画面いっぱいに表示させよう。視点はワンタッチで戻せるので,艦隊の指揮に支障はないはずだ。
シナリオ冒頭での説明には,戦闘の背景にあるストーリーのほか,舞台となる星域の状況説明などがある | あるシナリオの舞台となる赤色巨星(中)と恒星(右)。星の周囲に表示されている円は重力圏や接近限界を示す。この円の内部に入ると艦隊の運動に影響が出るほか,最悪の場合艦隊が重力に引き込まれて失われることも |
シナリオをクリアすると,女性司令官のグラビア写真のようなボーナスグラフィックスが表示される。過去の作品では水着すらあったのだが,今回はさすがにそれはない様子 |
■艦隊フォーメーションとゲートの活用が戦闘のカギ
艦隊への指示は旗艦をクリックしてメニューから行う。戦闘体制での移動や防御しながらの移動など,移動が中心となる。また,攻撃方法の変更は右クリックで循環させればよい |
本作に生産の概念はなく,シナリオ開始時点で拠点に用意された艦のみで艦隊を編成する。艦隊編成には司令官と旗艦が必要であり,旗艦もあらかじめ用意されものだけなので,旗艦の数以上の艦隊を編成することはできない。
艦隊の操作は,旗艦をクリックすると出てくるメニューから行う。最も頻繁に行うのは移動方法の指定であり,戦闘移動・通常移動・防御移動それぞれでできることが違ってくるので,艦隊の状態と周囲の状況に応じて選べばよいだろう。また,艦艇を単艦で出撃させる,戦闘で消耗した艦隊同士を合流させるといった操作も可能だ。
各シナリオにおけるマップは複数の宙域にまたがっており,前述のように宙域間はゲートで結ばれている。宙域間のつながりは「FAR」マップで確認でき,現在表示している宙域内のデータは「NEAR」マップに表示される。そこで確認できるのは星とゲート,艦隊の位置だ。ゲートに関しては通過時間も表示されており,これらの情報をもとにどう移動すればよいかを考えるわけだ。
ゲートを通過できるのは1艦隊のみで,その間ほかの艦隊がゲートを使うことはできない。たとえ逆方向の移動でもだ。ほかの宙域に艦隊を送り込みたい場合はこれを考え合わせる必要があり,また,送り込んだ艦隊は常に決まった場所の出口から現れることになる。これを考慮しないとゲートの出口で待ち伏せされたり,自軍の戦力を分断されて不利な状況に陥ったりもする。シナリオによってはマップの初期データにないゲートが存在することもあり,ゲートの探索がシナリオクリアのキーになることもあるので注意が必要だ。
本作でやや残念なのは操作性がいま一つこなれていないことで,例えば惑星や艦隊の情報を一覧表示させながら艦隊を操作できない点などは,もう少し工夫があってもよかったように思う。完全リアルタイム制の戦闘やゲートの持つ戦術性など,意欲的な点が多い作品であるだけに惜しまれるところだ。戦闘画面の描画エフェクトがDirectX 9世代にしてはやや控えめな点は,好みの部分も大きいので一概にいえないが,操作系についてはぜひ次回作以降での大幅な改良を期待したい。