― レビュー ―
人気のマルチプレイ用ミリタリーアクションに拡張パックが登場
ジョイントオペレーションズ:エスカレーション
Text by 松本隆一
2004年12月22日

 

■世界の特殊部隊が共同作戦(Joint Operations)を再開

 

新たなマルチプレイ専用FPSとして人気の「ジョイントオペレーションズ」の拡張パック「エスカレーション」が発売された。特殊部隊ものファン,アクションファンには見逃すことのできないアイテムになるだろう
 

 反政府ゲリラが跳梁跋扈する東チモールの情勢を憂えた国連は,西側各国(含ロシア)から選りすぐりの特殊部隊を派遣して治安維持活動に当たらせることにした,というのが前作「ジョイントオペレーションズ」(以下,JO)の設定であった。
 ところがどっこい,ゲリラの活動は終息するどころかますます活発化し,現地の混迷の度合いはいよいよ深まるばかりだ。アメリカのデルタ・フォースを始め,イギリスのSAS,ドイツのKSK,ロシアのスペッツナズなど「お客さん,一つで十分ですよ」というレベルの部隊を大量投入しているというのに,なんでそんなに強いんだ東チモールのゲリラ! という展開で,期待の拡張パック「ジョイントオペレーションズ:エスカレーション」(以下,JOE)が登場したのだ。そこのキミ,分かりましたね。

 

 一応説明しておくと,JOはマルチプレイに特化したFPSで,150人からのプレイヤーがネットを介して戦場に集まり,そこにある武器,弾薬,車両,航空機などを使いまくって敵を殲滅するというもの。「第二次世界大戦(ないしはベトナム戦争)」と「現代戦」という違いはあるものの,いうまでもなく「バトルフィールド1942」シリーズへのカウンタータイトルとして作られたゲームであり,開発元は「デルタフォース:ブラックホークダウン」などでおなじみの老舗メーカー,NovaLogicだ。

 

 同社は以前から,NovaWorldという自前のサーバーを用意してマルチプレイに力を入れていただけあり,JOは発売後,昨今の混迷する国際情勢とは多分あんまり関係なく,かなりのヒットを記録した。とはいえ発売からそろそろ半年が経ち,「ここらでいっちょ,活を入れてやるか」という時期ではある。JOEでどんな活が入ったか? 特殊部隊ものとパンチラには目がない私が,取り急ぎプレイしてみたという次第だ。

 

 

本作新登場の"戦車"。多国籍軍側はこのM1A1を使えるが,一人で乗っても何もできないところが難しい点 ゲリラ側はロシアのT80を使用。実戦ではやられメカだったが,ゲーム中ではM1A1戦車と互角の性能を示す 操縦手は三人称視点での操作が可能。マップには高低差の大きい地形が多いだけに,これは意外に助かる


戦車はやはり対戦車ミサイルに弱い。ゲームなので仕方ないが,本当はこんなに簡単にはやられないはず オートバイはめっぽう速いので,つい乗りたくなるが,敵の陣地に接近しすぎて撃ち倒されることもしばしば NovaLogicといえば本来,戦闘ヘリのシミュレーションでおなじみの会社。ちなみに,一人で乗っても意味なし

 

 

■新たに導入された数々のフィーチャー


マップ内には時間が流れていて,同じシーンでも昼夜の別がある。とくに日の出や日没時は,太陽を背負った側がとても有利になるくらいまぶしい。これはナイトシーンで,フレアをまき散らす戦闘ヘリの姿が美しい
 

広大極まりない戦場と多人数(さっきも書いたが150人!)参加可能が自慢のJOでは,移動手段としての車両とヘリコプター(ときどき船舶)が非常に重要ではあったが,兵器自体の戦闘力がそれほど無いのが,言われてみれば不満であった。
 そこで,JOEにはついにというか満を持してというか「戦車」が登場する。戦車! しかも,多国籍軍側はM1A1エイブラムス,ゲリラ側はT80という,階級でいえば大将なみの戦車だ。記憶にある限り,MOD等を除いて「エイブに乗れる,撃てる,蹂躙できる」というのはFPS初だと思うがいかがだろうか?(筆者は記憶力が悪い)
 しかも,オペレーションもマルチプレイならではで,操縦手,砲手,車長(重要順)の三人が揃わなければならない。操縦手が戦車を移動させ,砲手が砲撃し,車長が指示を出して,初めて十全の戦闘力を発揮できるわけだ。したがって,例えば間違って6人しか参加していないようなサーバーで3人が戦車に乗ると,ジャベリン一発で全滅なんてこともあるので気をつけるべきである。ないとは思うが。

 

 そのジャベリン対戦車ミサイルも,JOEが初導入だろう。アメリカのレイセオン社が開発したジャベリンは,発射直後は普通に水平飛翔をするが,目標の直前でグッと上昇し,そのまま下降して戦車の最も脆弱な上部を破壊するというウソみたいなミサイルであるが,ゲームでもその軌跡がちゃんと再現してあって感動的だ。

 

 まあ,中途半端なマニア的に難を言わせてもらえば,M1A1といいながらもモデリングは無印M1だったり,3キロメートルの距離から一発でT80を破壊できる120ミリ砲で撃たれてもT80が固かったり,いくらなんでもジャベリンだけで戦車は倒せないだろう,というのはあるが,これはまあ,バランスの問題で仕方ないところ。実物並みに戦車の戦闘力が突出しても,つまんないですからね。

 

 一方,愉快なのはモーターバイクとパラシュートだ。オートバイはバトルフィールド1942などでも登場しているが,こちらはかなり軽快なオフローダーで,一見無理っぽいギャップでも軽々と飛び越し,急なスロープも一気に駆け上がる。戦場が広いので,リスポーン地点から戦闘地帯へ移動するには便利な手段だが,まあ,剥き出しなので敵に撃たれるとたいへん弱い。ウィリーもできるが,防弾効果の程は不明だ。

 

 また,パラシュートは,ただぶら下がって降りるだけではなく,前進後退左右へのコントロールが可能で,これによって敵が想像もしていなかった場所から侵入することが可能。という話なので,私も何回か降りてみたが,見つかると逃げようがないため,たいてい降下途中でやられてしまう。もっと低空で飛び出すとか,なにか工夫がいるのだろう。このへんは今後,アイテムの使い方の確立を待ちたい。とはいえ,ただ空に飛び出すだけでパラシュートは勝手に開いてくれるため(持っていれば),「America’s Army」では毎度毎度ボキボキ骨折している私でも使用は簡単だ。

 

女性兵士もいる,というか,選べる。女の子にナイフで刺し殺されたりしたら,悔しいやら嬉しいやら,複雑だ 要望の多いロープ降下は今回も見送りで,その代わりパラシュートが登場したが,ラクなので私は飛び降り専門 機上から見下ろした景色は,さすがNovaLogic。今回はビルや工場,操車場など,ジャングル以外のマップが増えた


特殊部隊好きとかいいながら,筆者はなぜだかついゲリラ側でプレイしたくなる。腕の入れ墨がマッチョな感じだ 排気ガスの揺らぎの再現や,ミサイルの飛ぶ様子など,操縦は簡単だが,凝るところにはちゃんと凝っている 天候の変化もエスカレーションの新しいところ。まあ東南アジアなので,雨が降るくらいなんですけど

 

 

■新兵器が増えても,操縦はあいかわらず恐ろしく簡単


戦車はまず死角に回り込めとか,上から火炎瓶を投げればいいとか,接近してしまえば手はあるとか,口で言うのは簡単だが,実物を目の当たりにしたらもうダメ。恐くて恐くて,もう動けないだろうな

 そう,JOのときにも書いたような気がするが,このパラシュートだけでなく本作ではあらゆる車両,兵器類の使用が非常に簡単なのだ。ヘリコプターの操縦も「リアル系戦闘ヘリシミュレータのNovaLogic」にしては拍子抜けするほど簡略化されているし,小道具類の使用などもほとんど悩む必要がない。JOEの最大の魅力は,やはりこの「最新鋭の超強力兵器を簡単に使いつつ,大規模な戦闘に集中できる」ところがめっぽう大きいだろう。

 

 というわけで,JOEになって戦場はますます賑やかになった。戦車の砲弾があちらこちらで炸裂するかと思えば,ジャベリンや戦闘ヘリコプターがその戦車に砲弾の雨を降らし,そのヘリコプターはスティンガーに撃ち落とされて空中で大破し,そのスティンガー砲手は狙撃兵に倒され,その狙撃兵はパラシュート降下中の兵士に倒される。そのたびに爆音,悲鳴,「衛生兵!」の叫び声が響き渡り,なんかもう最高だ!
 「リアル系」とはちょっと呼びにくい,そんな戦場の様子は,やはりゲームだ。バトルフィールドシリーズの持っている「ちょっとおバカな」ムードもちゃんと拡大継承し,よってたかってドンパチ大騒ぎの興奮度の高いゲームになっている。JO所有者はもとより,マルチFPS初心者にもおすすめのタイトルじゃないかと筆者は思ったりするのであるが,どうですか。

 

 

マルチプレイならではの仲間との連帯感を手っ取り早く味わいたかったら,兵器に同乗させてもらうのが一番 東チモール兵は顔がハッキリ見えるので,同じ人だらけという事態もある。西洋人にはそう見えるのでしょうか あいかわらずマップは広すぎ。遠くに見える建物まで歩くだけでも一苦労なのに,これは全体のほんの一部

 

 

タイトル ジョイントオペレーションズ:エスカレーション
開発元 NovaLogic 発売元 マイクロマウス
発売日 2004/12/10 価格 6090円(税込)
 
動作環境 Windows 98/Me/2000/XP,PentiumIII/1.2GHz以上(Pentium4/2.4GHz以上推奨),メモリ256MB以上(512MB以上推奨),空きHDD容量 1.5GB以上,メモリ32MB以上搭載したビデオカード,ハードウェアT&L必須(128MB以上推奨),DirectX 9.0以降

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