レビュー : Core 2 Duo E6420/2.13GHz

L2キャッシュ容量が2倍になったE6000番台下位モデルの実力は?

Core 2 Duo E6420/2.13GHz

Text by 宮崎真一
2007年4月23日

 

»  2007年4月22日(一部は21日)から販売の始まった,Core 2ファミリーの下位モデル3製品。その“最上位”となる「Core 2 Duo E6420/2.13GHz」を,宮崎真一氏がさっそく検証する。倍率変更で「Core 2 Duo E6320/1.86GHz」相当でもテストを行い,Core 2 Duo E6000番台のスコアをずらりと並べてみたので,ぜひチェックしてほしい。

 

Core 2 Duo E6420

 Intelは,デュアルコアCPU「Core 2 Duo」ファミリーの下位ラインナップとして,「E6420/2.13GHz」「E6320/1.86GHz」「E4400/2GHz」の3モデルを追加した。スペックは表1にまとめたが,要するにCore 2 Duo E6420と同E6320は「Core 2 Duo E6400」「同E6300」のL2キャッシュ容量を倍の4MBとしたモデル,Core 2 Duo E4400は,Core 2 Duo E4300より動作クロックを200MHz引き上げたモデルである。
 流通筋の情報によれば,Core 2 Duo E6400と同E6300は市場からフェードアウトする見込みで,Core 2 Duo E6420&E6320の登場により,Core 2 Duo E6000番台のL2キャッシュ容量は4MBで揃うことになりそうだ。

 

※赤字は従来モデルとの大きな変更点。実勢価格は2007年4月23日現在

 

 今回4Gamerでは,そんな新モデルのうち,Core 2 Duo E6420のPCメーカー向け検証用サンプル(=エンジニアリングサンプル)を独自に入手した。さっそく,その素性を確かめてみよう。

 

「CPU-Z 1.39」を実行したところ。「6F6」というCPUID,「B2」リビジョンとも,Core 2 Duo E6700や同E6600と同じ(※画像をクリックすると別ウインドウで全体を表示します)

 

 

Core 2 Duo E6420を中心に
Core 2 Duo E6000番台の性能を再チェック

 

Core 2 Duo E6420(左)とCore 2 Duo E6400(右)の“底面”を比較。基本的にはこれまでの(いわゆる)Conroeコアそのままと見てよさそうだ

 テストのセットアップに入っていきたいが,まず大事なことをひとつ。今回は残念ながらCore 2 Duo E6320を入手できていないため,Core 2 Duo E6420の動作倍率をマザーボードのBIOSから変更することで,“Core 2 Duo E6320相当”としてテストすることにした。そのため,今回オーバークロックの動作検証は行わない。オーバークロックについては,また折を見て検証したいと思う。

 

 また,少し話はそれるが,Intelは新モデルの投入に合わせる格好で,Core 2ファミリーの価格改定を行った。改定はかなり大規模なもので,「Core 2 Duo E6700/2.66GHz」はそれまでの6万円強から一気に4万円台前半,「Core 2 Duo E6600/2.40GHz」も従来の4万円強から3万円強へと値を下げている。
 そこで,買い得感がぐっと増したこれら上位モデルのパフォーマンスを再チェックする意味で,これらに関してもテストを行ってみたい。ただし,機材調達の都合上,Core 2 Duo E6600のスコアはCore 2 Duo E6700の倍率変更(※Core 2 Duo E6320相当を実現したのと同じ手段)で取得することにする。
 このほかテスト環境は表2のとおりだ。

 

 

 テスト方法は4Gamerのベンチマークレギュレーション3.1準拠だが,グラフィックスカードへの性能依存度が大きい「高負荷設定」,ならびに1920×1200ドットの解像度は省略し,1024×768〜1600×1200ドットの「標準設定」でテストを行っている。また,通常はグラフの一番上がレビュー対象の製品となるが,今回はプロセッサ・ナンバー順になっているので,注意して見てほしい。Core 2 Duo E6420のバーは基本的に上から3番め,薄い黄色である。

 

 

E6420&E6320のスコアは順当に向上
L2キャッシュ容量4MBの効果はかなり大きい

 

 まずグラフ1,2は「3DMark06 Build 1.1.0」(以下3Dmark06)の結果である。スコアは動作クロック順に並んでおり,もっといえばCore 2 Duo E6420とCore 2 Duo E6400,Core 2 Duo E6320とCore 2 Duo E6300のスコアに差はない。3DMark06において,L2キャッシュ容量の増加によるスコアの向上は見込めないといっていいだろう。

 

 

 

 お次は「3DMark05 Build 1.3.0」(以下3DMark05)の結果だ(グラフ3)。描画負荷で3DMark06より軽い3DMark05では,そう大きな違いではないものの,L2キャッシュ容量の違いがスコアの違いとなって出ているのが分かる。

 

 

 以上,二つの定番3Dベンチマークテストでは異なる結果が出たわけだが,実際のゲームタイトルではどうだろうか。
 グラフ4はFPS「Quake 4」(Version 1.2)の結果である。Quake 4では上位2モデルの数値の伸びが激しいが,その一方で,Core 2 Duo E6420と同E6320の平均フレームレートも,L2キャッシュ2MBモデルに比して向上している。

 

 

 続いて「Half-Life 2: Episode One」(以下HL2EP1)の結果をグラフ5にまとめた。HL2EP1は1280×1024ドット以上でグラフィックスカードのボトルネックが生じてしまい,スコアが揃ってしまうのだが,1024×768ドットで,動作クロックの劣るCore 2 Duo E6320が,Core 2 Duo E6400とほぼ同じスコアを叩き出している点は注目に値する。

 

 

 さらに「F.E.A.R.」(Version 1.08)は,高解像度でも,HL2EP1の低解像度時と同じ傾向を示す(グラフ6)。とくに1024×768ドットで,Core 2 Duo E6320のスコアがCore 2 Duo E6400のそれをわずかだが上回ったのは特筆すべきだろう。
 また,Core 2 Duo E6420のスコアは,1280×960ドット以下でCore 2 Duo E6400を完全に置き去りにしており,こちらも興味深い。

 

 

 グラフ7はRTS「Company of Heroes」のテスト結果だ。レギュレーション3.1の説明にもあるとおり,このテストは描画負荷が高められているため,グラフィックスカードがスコアを左右しやすく,結果としてCPUの性能差は表れにくい。ただそれでも,1024×768ドットでCore 2 Duo E6420と同E6320が,L2キャッシュ容量2MBの従来モデルからスコアを伸ばしているのは見て取れる。

 

 

 Company of Heroesとは逆に,描画負荷が軽く,CPUパフォーマンスがスコアを左右しやすい「GTR 2 - FIA GT Racing Game」のテスト結果をまとめたのがグラフ8である。ここでは,スコアがプロセッサナンバーの大きさ順になっており,どちらかといえば3DMark05のテスト結果に近い。

 

 

 最後にMMORPG「Lineage II」のスコアをグラフ9にまとめた。Lineage IIも描画負荷の軽いタイトルだが,やはり3DMark05やGTR 2 - FIA GT Racing Gameと同様,プロセッサナンバー順に並んでいる。

 

 

 

L2キャッシュの増加分だけ
消費電力も純増

 

EISTを有効にすると,アイドル時に動作クロックは1.60GHzまで下がる。これは従来のCore 2 Duo E6000番台と同じだ

 パフォーマンスに続き,消費電力の検証も行いたい。ここでは,OSの起動後30分間放置した直後を「アイドル時」,CPUだけに負荷を掛けるため午後べんちを30分間実行した状態を「高負荷時」として,それぞれにおけるシステム全体の消費電力をワットチェッカーで計測した。その結果をまとめたものがグラフ10である。Core 2ファミリーは,CPU省電力技術「Enhanced Intel SpeedStep Technology」(拡張版インテル SpeedStepテクノロジー,EIST)を採用するため,アイドル時の消費電力はEIST有効と無効の両方で計測した。
 なお,先に説明したとおり,Core 2 Duo E6600と同E6320は,上位モデルからの倍率変更で実現しているため,両モデルの消費電は参考程度に留めてもらいたい。バーの色は区別しやすいよう,灰色にしてある。

 

 さて,グラフ10で注目したいのは,高負荷時におけるCore 2 Duo E6420の消費電力である。Core 2 Duo E6400から10Wの上昇が見られるが,これはL2キャッシュが増えたことによる上昇分と考えるのが妥当だ。トランジスタが動作するのだから,これはやむを得ないところか。

 

 

 さらに,グラフ10の時点におけるCPUのコア温度を,モニタリングツール「CoreTemp」で測定。その結果をスコアとしてまとめたのがグラフ11となる。
 アイドル時におけるCore 2 Duo E6420の温度が低いが,先に説明したとおり,CPUのリビジョンはB2で,Core 2 Duo E6700やCore 2 Duo E6400と変わったところはない。バラックというテスト環境,CPUクーラーも共通しているので,少々不可解な結果だが,新製品ということで,BIOS側の対応が不十分だった可能性はありそうだ。いずれにせよ,CPU温度のスコアは参考程度に見ていただきたい。

 

 

 

意味のある仕様変更なのは間違いない
Core 2 Duo E6600との価格差が悩みどころ

 

 Core 2 Duo E6420(と同E6320)は,Core 2 Duo E6400や同E6300から確実にパフォーマンスが向上。しかも本稿の冒頭,表1で示したとおり,価格もほとんど変わらないため,もはやL2キャッシュ2MB版のCore 2 Duo E6000番台を選択する理由はなくなった。

 

 それよりも悩ましいのは,Core 2 Duo E6600とCore 2 Duo E6420の価格差だ。2007年4月23日現在,Core 2 Duo E6600の実勢価格は3万1000円前後なので,Core 2 Duo E6420との差はわずかに5000円程度。パフォーマンスを取るか,コストの低さを取るかは,なかなか悩ましいところである。
 結局は予算に合わせて選ぶほかないのだが,いずれにせよ,価格改定とCore 2 Duo E6420&E6320の登場によって,安価かつ性能の高い選択肢が生まれたことは,ユーザーにとって喜ばしいことではないだろうか。

 

■■宮崎真一(ライター)■■
某有名PC専門誌の主力編集者として活躍した長いキャリアを持ち,「いかにして公正なデータを取得するか」のノウハウに長けているテクニカルライター。4Gamerでは主に,GPUやCPUの新製品をゲーマー視点で評価している。ゲーマーとしては「Diablo」以来のオンラインRPG好きで,ここ数年,「ファイナルファンタジーXI」をひたすらプレイし続けていることは,デバイスメーカーやパーツメーカーの間でも有名な話だ。
タイトル Core 2
開発元 Intel 発売元 インテル
発売日 2006/07/27 価格 モデルによる
 
動作環境 N/A

(C)2006 Intel Corporation

【この記事へのリンクはこちら】

http://www.4gamer.net/review/core_2_duo_e6420/core_2_duo_e6420.shtml