レビュー : Core 2 Extreme QX6850&Core 2 Duo E6750

FSB 1333MHz版クアッド&デュアルコアCPUの意義を検証する

Core 2 Extreme QX6850/3GHz
Core 2 Duo E6750/2.66GHz

Text by Jo_Kubota
2007年7月25日

 

»  2007年7月22日から販売の始まった,FSBクロック1333MHz版のCore 2新モデルだが,従来モデルと比べて,果たして何が変わったのだろうか。クアッドコア&デュアルコアの両方で,Jo_Kubota氏がさまざまな角度から検証する。

 

Core 2 Extreme QX6850

 2007年7月17日,IntelはFSBクロック1333MHz(ベースクロック333MHz)化を果たした製品を中心とする,Core 2ファミリーの新製品を発表した。クアッドコアCPUでは最上位の「Core 2 Extreme QX6850/3GHz」が,デュアルコアCPUでは「Core 2 Duo E6850/3GHz」以下3モデルがFSB 1333MHz化を果たしている。
 今回4Gamerでは,Core 2 Extreme QX6850のエンジニアリングサンプルをIntelの日本法人であるインテルから借用できた。また,Core 2 Duo E6850の“一つ下”になる「Core 2 Duo E6750/2.66GHz」を独自に入手できたので,前者ではCore 2最上位のポテンシャル,後者ではFSB 1333MHz化の意義を中心に,ゲーム用途でのメリットを見ていくこととしよう。

 

左はCore 2 Duo E6750。右の写真は底面を写したもので,左がCore 2 Extreme QX6850,右がCore 2 Duo E6750である

 

 

基本的にはFSB 1066MHz版Core 2がベースだが
G-0ステッピングでより低発熱に

 

「CPU-Z」(Version 1.40)でCore 2 Extreme QX6850のスペックを確認したところ

 Core 2 Extreme QX6850とCore 2 Duo E6750(および,比較対象となるCPU)のスペックは表1にまとめたとおりだ。
 まずCore 2 Extreme QX6850について述べると,動作クロックは従来の最上位クアッドコアCPUである「Core 2 Extreme QX6800/2.93GHz」から70MHzと,わずかながら上昇。同時に,冒頭で述べたとおり,FSBクロックが1066MHz(ベースクロック266MHz)から1333MHz(同333MHz)へと引き上げられている。
 動作クロック3GHzで,FSBクロック1333MHzのクアッドコアCPUというと,2007年6月25日の記事で取り上げた「Quad-Core Xeon X5365」が想起されるが,発熱の目安となるTDP(熱設計消費電力)は同CPUが150Wなのに対し,Core 2 Extreme QX6850では130Wに収まっている。――十分高いが,限界ギリギリといったところだろうか。

 

同じくCPU-Zで,Core 2 Extreme E6750のスペックを見たところ

 また細かい点では,CPUのステッピングが従来のB-3からG-0となり,Core 2 Extreme同士で比較したときにTDPは130Wで同じながら,動作限界温度を示すTcaseの値がX6800の54.8℃からX6850で64.5℃となり,より扱いやすくなった。簡単にいえば,Core 2 Extreme QX6850は同QX6800よりも容易に冷却できるようになったということだ。
 なおTcaseはCPUパッケージのヒートスプレッダ表面温度なので,CPUの温度測定ツールなどで計測する値とは意味合いが異なるので要注意。一般にこういったツールはCPUが内蔵するサーマルダイオードの値を読み取るため,Tcaseより高い温度を示すことが多い。

 

 一方,Core 2 Duo E6750は,「Core 2 Duo E6700/2.66GHz」のFSB 1333MHz版という理解で構わない。TDPは65Wで従来どおりだが,こちらもステッピングはG-0となり,Tcaseが大きく引き上げられている。

 

※2007年6月27日にCore 2 Extreme QX6800のステッピングはG0に変更された。しかし,G-0ステッピング版の流通は,2007年7月25日時点だとまだ確認されていない

 

 

nForce 680i SLIベースのシステムで検証
メモリクロックは800MHzに固定

 

Striker Extreme
オーバークロック機能充実のゲーマー向けボード
メーカー:ASUSTeK Computer
問い合わせ先:ユニティ コーポレーション(販売代理店) news@unitycorp.co.jp
実勢価格:4万8000円前後(2007年7月25日現在)

 FSB 1333MHz版のCPUに対応したチップセットは,2007年7月時点だと「Intel P35 Express」「Intel G33 Express」「nForce 680i SLI」(同LT SLI含む)が存在する。どれを選んでも4Gamerのリファレンスからは外れるということもあり,今回はゲーマー向けと位置づけられるASUSTeK Computer製のnForce 680i SLIマザーボード「Striker Extreme」を同社から借用。また,グラフィックスカードは「GeForce 8800 GTX」搭載製品を用意した。
 テスト方法は4Gamerのベンチマークレギュレーション4.0準拠。ただし今回は,CPUのテストということで,解像度1920×1600ドット,ならびに高負荷/特別設定時のスコアは取得していない。代わりに,同3.2で採用されていた「Lineage II」のスコアも取得してみている。
 このほかテスト環境は表2のとおりだ。メインメモリはすべてPC2-6400 DDR2 SDRAMで統一し,動作クロックもDDR2 800MHz相当としている。nForce 680i SLIはDDR2 1066MHzやEPPメモリをサポートしていることもあり,実際に用意もしたのだが,EPPを有効にすると,クアッドコアCPU利用時にシステムがハングアップする現象に見舞われたため,このような決定となった次第だ。

 

 

 テストの目的だが,Core 2 Extreme QX6850については,純粋に最上位モデルのポテンシャルを見ることになるので,定格だけでなく,オーバークロック状態でもテストを行うことにした。オーバークロックの動作検証は,指定したクロックですべてのテストが完走したときを「安定動作」としたが,今回の環境ではベースクロックのオーバークロックがまるで有効にならず,340MHz超えですぐに不安定となったため,今回は倍率変更で333MHz×11の3.66GHz動作した状態をオーバークロック状態とし,以後QX6850@3.66GHzと表記する。
 比較対象だが,機材調達の都合でCore 2 Extreme QX6800を用意できなかったので,今回は「Core 2 Extreme QX6700/2.66GHz」の動作倍率を変更して“QX6800相当”としたものを利用する。そのため,消費電力やCPU温度テストにおいて,QX6800のスコアは参考程度となるので,あらかじめお断りしておきたい。
 なお,Core 2 Duo E6750の比較対象は,同製品と同じ2.66GHzで動作するFSB 1066MHzのクアッドコアCPUとデュアルコアCPUだ。

 

 最後になるが,以後グラフ中はスペースの都合で,Core 2 Extreme/Duoの表記を省略する。

 

 

確かにあるが,劇的ではない
FSB 1333MHz化の恩恵

 

 まずは,3Dベンチマークソフトの結果から見ていこう。
 グラフ1は「3DMark05 Build 1.3.0」(以下3DMark05)のスコアだ。さすがにオーバークロックしたQX6850@3.66GHzが頭一つ抜き出ている。Core 2 Duo E6750と同E6700,Core 2 Extreme QX6700を比較すると,FSB 1333MHzの効果は相応にあるようだ。

 

 

 続いては「3DMark06 Build 1.1.0」(以下3DMark06)のスコアである(グラフ2。マルチスレッドに最適化されたCPU Testのスコアが加味される3DMark06だけに,全体としてクアッドコアCPU優位の傾向だ。同時に,FSB 1333MHzの有効性は3DMark05ほど顕著でない。

 

 

 以上を踏まえて,ここからは実際のゲームにおけるスコアに移っていきたい。レギュレーション4.0で初登場となる「S.T.A.L.K.E.R.: Shadow of Chernobyl」(以下S.T.A.L.K.E.R.)だが,基本的には動作クロックに準じた並びとなっている(グラフ3)。ただし,70MHzというわずかな違いにしては,Core 2 Extreme QX6850と同QX6800の差が大きいこと,(1280×1024ドットの結果が不可解ではあるものの)Core 2 Duo E6750のほうがCore 2 Duo E6700よりも高めのスコアが出ていることを踏まえるに,FSB 1333MHz化の効果は,やはり相応にある。

 

 

 「Half-Life 2: Episode One」(グラフ4)のスコアは,1024×768ドットでCore 2 Duo E6750が同E6700より5%も高い点と,グラフィックスカードのボトルネックが生じて,QX6850@3.66GHzのスコアがそれほど伸びていない点に注目したい。もっとも,すべて150fpsを超えており,ゲームプレイにはまったく支障がないという意味ではどれも同じだが。

 

 

 S.T.A.L.K.E.R.と同じく,レギュレーション4.0で追加された「ロスト プラネット エクストリーム コンディション」のスコアをまとめたのがグラフ5,6だ。グラフィックスカードのパフォーマンスがスコアを左右しやすいSnowでは,同じカードを使っている今回のテスト環境で差はまったく出ず。一方,Caveでは明らかな形でクアッドコアCPU有利となっている。Core 2 Duo E6750とCore 2 Extreme QX6700では,1600×1200ドットでも21%の差がある状態だ。
 一方,FSB 1333MHzの意義は見えにくくなっている。

 

 

 

 以上,ここまではある程度想像できたが,レースシムの「GTR 2 - FIA GT Racing Game」(Version 1.1)では,少々不可解な結果なっている。というのも,最も高いスコアとなるはずの1024×768ドットが,なぜか最も低い結果となってしまったからだ(グラフ7)。
 ただ,これはCPUにかかわらず一定の傾向を示しているため,グラフィックスドライバか(BIOS,チップセットドライバを含む意味での)マザーボードに問題があると思われる。そこで,同解像度の結果を無視して改めてグラフを見てみると,若干クアッドコア有利な傾向になっている。描画負荷の低い局面ではForceWareのマルチスレッド対応による恩恵を受けやすいが,それが出たものだろう。

 

 

 続く「Company of Heroes」(Version 1.70)でも,GTR 2 - FIA GT Racing Gameと同じく,1024×768ドット時にスコアがややおかしくなった。Core 2 Extreme QX6800と同QX6700のスコアが,1024×768ドット時だけ低めに出ているのである。
 これについては「クアッドコアCPUの調停がオーバーヘッドとなっている」可能性も指摘できるが,1280×1024ドット以上でその傾向は見えないため,おそらくドライバなどの問題ではなかろうか。

 

 そこで1280×1024ドット以上を見てみると,ごくごくわずかだがCore 2 Duo E6750のスコアが同E6700やCore 2 Extreme QX6700のスコアを上回っている。FSB 1333MHzの効果が若干ながら確認できた格好だ。

 

 

 最後に「Lineage II」のスコアをグラフ9にまとめた。ハイエンドシステムでも30〜40fps前後の値で落ち着きやすい同タイトルで,QX6850@3.66GHzが50fps超えを果たしたのはなかなかインパクトがある。Lineage IIなどのMMORPGでは,同時に動くキャラクター数が多い場合,キャラクターをコントロールしているCPUのパワーが必要になる。同時に,マルチスレッドへの最適化はほとんど行われていないので,CPUの実クロック順に並んだこの結果は納得といったところだ。

 

 

 

Core 2 Duo E6750の低消費電力に注目
恐るべきG-0ステッピングの威力

 

 気になる消費電力についてもチェックしてみよう。ここではWindowsの起動後30分放置した直後を「アイドル時」,CPUだけに負荷をかけるべくMP3エンコードソフトをベースとするベンチマークソフト「午後べんち」を30分間実行したとき,最も消費電力の高い時点を「高負荷時」と設定。それぞれの時点におけるシステム全体の消費電力を計測して,スコアにすることとした。
 アイドル時については,Core 2ファミリーが採用する省電力機能「Enhanced Intel SpeedStep Technology」(拡張版 インテル SpeedStep テクノロジー,以下EIST)の有効/無効それぞれの条件でスコアを取得する。ただし,QX6850@3.66GHzとQX6800については,それぞれオーバークロック状態であることから,EIST有効時のスコアをN/Aとしている。

 

 というわけでグラフ10を見てみると,EIST有効時のスコアでCore 2 Duo E6750がCore 2 Duo E6700より10Wも低い。EIST有効時の動作クロックは前者が333MHz×6の2GHz,後者が266MHz×6の1.60GHzなのだが,CPU-Zで電圧変化を追ってみた限り,EIST有効時の動作電圧は前者が0.88V,後者が1.2V台で,これがかなり効いているようだ。
 クアッドコアCPUを見てみると,Core 2 Extreme X6850と同QX6700で,アイドル時高負荷時とも,消費電力の違いはほとんどない。動作クロックでは約333MHzの違いがあり,アイドル時のクロックも異なることを考えると,これも新しいG-0ステッピングの効果といえるだろう。
 また,さすがにQX6850@3.66GHzのスコアは高い。今回グラフ化したのは上で示した条件でのテスト結果だが,3DMark06やロスト プラネット エクストリーム コンディションを実行させてみると430Wを超え,テストに用いた電源ユニットの限界に迫ってきた。QX6850はオーバークロックのチャレンジしがいがあるCPUではあるものの,クロック分だけ消費電力も上がっていくことはしっかりと押さえておく必要があるだろう。

 

 

 次に,グラフ10の時点におけるCPU温度をCPUモニタリングツール「CoreTemp 0.95」で測定したものをグラフ11に示した。CPUクーラーはCore 2 Extreme X6700の製品ボックスに付属するIntel純正品で,システムはケースに入れない,バラックの状態でテストしている。測定時の室温は24〜26℃である。

 

 さて,ここでもまず注目したいのはCore 2 Duo E6750のスコアだ。高負荷時に47℃というのは,かなり衝撃的である。PWM制御されるIntel純正クーラー(のファン)なので,横並びの比較はできないが,むしろファンの回転数はCore 2 Duo E6700の冷却時より小さいので,やはり発熱はかなり低そうだ。
 Core 2 Extreme QX6850と同QX6800/QX6700,X6850@3.66GHzは,ほぼ同じファン回転数となったが,ここでもCore 2 Extreme QX6850のCPU温度は一段低い。
 ただし,オーバークロックをしたQX6850@3.66GHzは,Tcaseからしてそろそろ限界といえる80℃を高負荷時にマークしており,かなり熱くなる。オーバークロックで劇的な速さを手に入れられるのは魅力だが,常用を目的とする場合,冷却にはかなり難儀するだろう。

 

 

 

Core 2 Extreme QX6850はクロックなりの性能
デュアルコアの低消費電力はかなり魅力的

 

 現時点でCoreマイクロアーキテクチャ採用CPUの最上位となるCore 2 Extreme QX6850だが,これはクロックなりの性能向上が見られ,クアッドコアの恩恵があるアプリケーションならなお高速になるCPUということになる。消費電力と発熱の低減は魅力だが,それで押し切れるほど高いパフォーマンスを叩き出しているわけではない。多くのゲームテストで,Core 2 Extreme QX6800とスコアにそう大きな違いがあるわけではなく,クアッドコアの恩恵を受けられる場面もまだまだそれほど多くない。これで実勢価格は14万円前後(2007年7月25日現在)なので,決してすべてのゲーマーに勧められる製品ではない。

 

 ただし,低解像度時に存在するスコアの違いが高解像度でまったくなくなるような場合,それこそHalf-Life 2やロストプラネットでは,nForce 680i SLIでサポートされるNVIDIA SLIでパフォーマンスの向上を狙えるのも確かだ。予算度外視で,あらゆる局面に通用する最速のゲーム用プラットフォームを用意したいのであれば,Core 2 Extreme QX6850+nForce 680i SLIという組み合わせは考慮に値するだろう。

 

 さてもう一つの主役,Core 2 Duo E6750だが,FSB 1333MHz化については「意味はあるが,それを理由に選択するほどではない」といったところ。Intel 900系に対応しないというのも少々ハードルは高いが,一方で消費電力と発熱の低さはかなり魅力的だ。実勢価格も,今回入手したCore 2 Extreme E6750で2万7000円前後,一つ上のCore 2 Duo E6850でも3万8000前後(いずれも7月25日現在)で,コストパフォーマンスは非常に高い。次世代CPU「Penryn」(ペンリン,開発コードネーム)時代が訪れるまで,ゲーマーにとっての主役はCore 2 Duo E6750/E6850クラスになりそうな予感だ。

■■Jo_Kubota(ライター)■■
PCに関連した守備範囲の広さに定評のあるテクニカルライター。それを生かして――というより,長い付き合いの担当編集からそこに目を付けられて――4Gamerでは,グラフィックスカードやCPU,サウンドカードなどといったハードウェアから,OSなどソフトウェアの検証に至るまで,八面六臂の活躍を見せる。DOS時代からThrustmasterのステアリングコントローラを握り続けている,無類のレースゲーム好きという顔もアリ。
タイトル Core 2
開発元 Intel 発売元 インテル
発売日 2006/07/27 価格 モデルによる
 
動作環境 N/A

(C)2006 Intel Corporation