■航空管制をパズルゲームに仕立てた
ロングセラーの最新作
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| ゲーム画面だけ見るとシミュレーションゲーム風に情報が詰め込まれているが,実際の操作は比較的単純だ |
ロングセラーではあるのだが,4Gamer.netではレビュー初登場ということで,まずは基本的なゲーム内容を紹介するところから始めたい。「で,具体的にどこがどう楽しいゲームなの?」という部分が気になる人は,「■飛行機好きならばプレイして損はないシリーズ」を先に読んでしまってほしい。
「ぼく管」が取り上げているテーマは,タイトルが示すとおり航空管制の業務。空港で多数の飛行機に順序よく指示を与え,停滞しないように離発着を捌いていくのがゲームの目的となる。ただし,シミュレーション性が濃いとはいえ,ジャンルとしてはリアルタイムのパズルゲームといったところだ。
もう少し具体的に踏み込んでみよう。本作での管制作業は,5人の管制官が役割を分担して受け持つ。着陸する飛行機を空港近辺まで誘導する「アプローチ」,離着陸許可を与える「タワー」などだ。離陸/着陸は,担当管制官が順を追って適切な指示を出していくことで進んでいく。例えば民間機の着陸ならば,
(1)アプローチ管制が飛来してくる飛行機に経路を指示
(2)アプローチ管制が着陸する滑走路を指示
(3)タワー管制が最終着陸許可
(4)着陸後,グラウンド管制がスポット(駐機場所)を指示してタキシング(地上での移動)を許可
といった手順を踏む。
こうした指示や許可自体は,簡単な操作,具体的にはマウスクリック1〜2回で出せる。しかし一度指示出しに入ってしまうと,担当管制官は対象機のパイロットとの交信(航空無線の雰囲気を出したボイスデータが流れる)が終わるまで,ほかの飛行機に指示を出せなくなる。交信には数十秒かかるものもあるから,順序の見極めを間違えると,ほかの機体を大幅に待たせたり,時間的にクリティカルな着陸指示の出し損ないをしてしまう。
また,焦って指示を出すと,たとえばタキシング途中の飛行機同士が鉢合わせしてしまうこともある。このようなトラブルを避けて,複数の飛行機に対してタイミング良く離発着の管制を行っていくのが,「ぼく管2」のプレイ内容なのだ。ちなみに交信の音声は,プレイするごとに数人分のデータからランダムに選ばれるが,話すスピードの差によって指示すべき順序が微妙に変わることもある。
こうした管制業務は,ゲーム内時間で30分から2時間程度(「新千歳」に限れば1時間〜1時間半)の「ステージ」として設定されおり,プレイ内容に対して得点が与えられていく。
ステージの最後まで事故を起こさずにプレイして,なおかつ目標得点を上回ればステージクリアだ。ただし,飛行機がタキシング途中でぶつかるといった致命的なミスを起こすと,その時点でゲームオーバーになる。ちなみに,実際のプレイ時間はゲーム内時間の1/3程度,1時間半のステージなら30分ほど掛かることになる。
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| 下段の「運航票」をクリックして飛行機を指定すると,上段の下部に,指示できる内容がボタンとして並ぶ | 内容によっては2回の指示で指定が完結する。左では駐機場所を指定,この上では移動経路を指定している | 着陸許可はタイミングを失すると大きな得点ロスになるため,最優先で注意を払わなければならない |
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| 滑走路が2本使える場合は,離陸(画面では奥),着陸(手前)で1本ずつ使い分けると効率的だ | 経路指示をミスして,飛行機同士がぶつかってしまうと即時ゲームオーバーとなる。当然ながら許されないミスだ | 描画ウィンドウは,分離して画面の横幅一杯に拡大できる。3D性能が十分ならこの設定がお勧めだ |
■新千歳は自衛隊基地併設の大空港
冬場には雪との戦いも
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| 「新千歳スノースケープ」で見る新千歳空港3景。民間側は半円形のターミナルビルが美しい |
今回紹介している「新千歳SnowScape」が取り扱っているのは,文字通り北海道の空の玄関,新千歳空港だ。ステージ数は夏期と冬季で三つずつ用意されている。シリーズ他作品と比べたときの特徴としては,
・自衛隊千歳基地が併設されており,民間機/自衛隊機の両方を管制する
・民間機の交通量でも国内上位で,国際便や国際貨物便も就航している
・冬のステージでは滑走路の除雪も管制対象になる
といったところが挙げられるだろう。
自衛隊機そのものは過去のシリーズにも登場しているが,「ぼく管2」では初登場となる要素として,ここをホームベースにする政府専用のジャンボ機がある。通常は,自衛隊機が2本,民間機が2本の滑走路を使い分けられるため,夏期ならば滑走路のやりくりはそんなに大変ではない。しかし,民間機だけとっても交通量はかなり多いため,ステージによっては管制業務が非常に忙しい。
また,冬季になると,滑走路のやりくりも大変になる。というのも,北海道ならではの"除雪"という要素が出てくるからだ。ややネタバレになるが,ステージによっては民間機側,あるいは自衛隊機側の滑走路が一時的に完全閉鎖されることもある。除雪作業の完了を見計らうタイミング調整が必要になってくるわけだ。
こうした新千歳独自のポイントや,すでに触れたようなこのゲームの基本的な流れは,ゲーム内に用意されたチュートリアルで,一通り説明が受けられる。ただし,指示に従って実際の操作を行えるタイプのものではないため,本作をいきなりプレイしようとすると,やはり多少操作にはとまどうかも知れない。
実際の操作をガイドしてくれるステージは,羽田を扱った1作めの「東京ビッグウィングA」,または拡張パックとの統合版「同Complete」や,2ステージを含む体験版「ぼくは航空管制官2 チャレンジ!2」に用意されている。完璧を期したいならば,これらのタイトルを先にプレイしておいたほうが良いかもしれない。
なお「ぼく管2」のプレイには,ある程度の3D描画能力が要求される。「新千歳」の場合,CPUはPentiumIII/1GHz以上,グラフィックスはVRAM 32MB以上で3Dアクセラレーション可能なビデオカードが必要だ。これは,各種フライトシムよりはだいぶ軽いが,PentiumIII世代のノートPCやスリムデスクトップでは,必須環境を満たせないものも多そうだ。
ただし,実際にはテクスチャ使用量を減らす設定も用意されている。3Dアクセラレーションが使えるグラフィックチップなら,VRAMは16MB程度でも(画質を多少落とすことになるが)プレイは可能そうだ。Pentium4/1.8A GHzとIntel 865Gの統合グラフィックス機能でプレイしてみたが,この条件ではXGA(1024×768ドット)解像度,描画ウィンドウ最大の条件(画像参照)で,十分に快適なプレイが可能だった。比較的最近のPentium4,PentiumM系PCであれば,スペック的には心配無用だろう。
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| 1-1から順番にクリアしていかないと上位のステージに進めない。画面は一度コンプリートした状態だ | チュートリアルの情報は有益なのだが,シリーズの初心者にとってはやや内容不足の感がある点は残念 | 環境設定画面の中段で設定を変更することで,描画パワーが不足気味のPCでもある程度対応できる |
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| 民間機は実名で多数の会社が登場。北海道を地盤とするエア・ドゥも,もちろん登場している | 航空自衛隊機は,政府専用機のほかではF-15イーグルが目立つ。タッチ・アンド・ゴー訓練も盛んに行われる | 除雪作業には事前の滑走路チェックも含め長い時間がかかる。関係車両の滑走路進入許可も管制官の仕事だ |
■飛行機好きならばプレイして損はないシリーズ
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| 飛行機同士がタイミング良くすれ違うよう指示できると,シーンとしても美しく決まった画面が見られる |
パズルゲームとしての概要はこれまで紹介したとおりで,難度の高いステージでは一発クリアは難しい。まず,自分がミスしたところや危なかったところを分析して,うまい指示手順を考えていくことになる。
実際のプレイでは,自分の指示出しの遅れや,前述したボイスデータの違いによって,とっさの調整を行いながら指示手順をこなしていくわけだ。ステージのクリアに至るまでには,戦略性とリアルタイム性をともに楽しめる。しかも反射神経や微妙な操作は必要とせず,一般のリアルタイムゲームが苦手な人でもトライしやすい。
一方,プレイに慣れて「このステージは楽勝」と思えるようになってくると,今度は余裕を持ってゲーム内の映像や音を楽しめるようになる。飛行機好きや無線好きの人ならば,航空無線の雰囲気がたっぷりの交信音声だけで気分が盛り上がるだろう。また,離発着の前後には,搭乗のお知らせやキャビンアテンダントが発着前に機内で流すアナウンスも聞こえる。このアナウンスが,空港特有の華やいだ雰囲気を醸し出しているのだ。
良くできたパズルゲームとして,また,フライトシムと比べて気軽な操作で飛行機の世界を感じられるソフトとして,広いユーザー層にお勧めできる。とくに飛行機好きならば,いずれかのシリーズ作品を買っておいて損はないはずだ。
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| 7〜8機相手の指示ともなるとパニックを起こしそうになるが,うまく乗り切ったときの充実感は格別だ | 慣れてくると「中級」ステージならば余裕で対処できる。空港の景観や雰囲気を楽しみながらプレイしよう | シリーズ製品は地図を模した共通のランチャーで起動できるため,シリーズを揃えていく楽しさもあるだろう |



















