4Gamer:
15本の初期シナリオだけを見ても,ソーサリアンオンラインに入れにくいんじゃないかな,と思うものがありますよね。例えば,オリジナル版では3人パーティでしかプレイできないシナリオ(編注:NPCがパーティに入るシナリオ)もありましたが,これはソーサリアンオンラインではどういった形で実現するんでしょうか?
倉大輔氏(以下,倉氏):
NPCが後ろからついてくる,といった形を考えています。ただ,この場合も3人制限にはしないつもりです。4人パーティで挑戦した場合も,NPCが共に行動します。
そういえば,次に入るという「失われたタリスマン」は,天井からトゲのついた吊り天井が落ちてくるシーンが印象的でしたね。あの再現も難しいのではないでしょうか?
あのシナリオだと,吊り天井が落ちてきたときに,ギリギリのところで現れた女の子が助けてくれるわけですが,ソーサリアンオンラインでもぜひ実現したいですね。
では開発側から見て,これは実現が難しそうだなと思うものはありますか?
「呪われたクィーンマリー号」(※7)ですかねぇ……(笑)。
やっぱり(笑)。これも,どうするのかと心配していたシナリオです。
実は,今のところ最後に実装しようと思っています。
このシナリオについては私もはっきり覚えていて,お気に入りの一つなんですが,ほとんど戦闘がないシナリオですからね。
そうなんですよ。作ることはできるんですが,オンラインゲームとして面白くなるかが問題ですね。
ひたすら,あっちに行って話を聞いて,こっちに行って話を聞いてという。
ええ。オリジナル版だと,ジャンプで移動したりといったアクション要素があったんですが,ソーサリアンオンラインの場合,ジャンプはありませんので。ただあっちこっちをウロウロするだけ,というわけにもいきませんしね。
何か具体的なアイデアはあるんですか?
やはりシステム的な部分で何かを追加する必要があるだろうと考えています。
どのように実現するのか,楽しみにしていますね。まだ少し先のようですが……。
「失われたタリスマン」と,その次の「呪われたオアシス」までは,システムも含め開発の準備に入っています。シナリオに必要なボスや,ダンジョンのデザインといったところですね。それと並行して,オリジナル版の要素をどうやってソーサリアンオンラインのシステムに落とし込むかといった,大まかなプラン作りを行っている段階です。
「呪われたオアシス」については,ボスのゴールドドラゴンのデザイン原画と,3Dモデルが出来上がったところですね。
(原画を見せてもらいながら)ソーサリアン,そして木屋さんといえば,やはりドラゴンですよね。今後はぜひ,「ドラゴンとたたかう」モードも実装してほしいところです。
「呪われたクィーンマリー号」では船を用意しないといけないので,その点も難しいだろうと思っていたんですが,ほかのシナリオはどうでしょう。
大きな樹に登っていく「紅玉の謎」や,「盗賊たちの塔」なんかも,実装が難しそうですね。ソーサリアンオンラインではジャンプがありませんので,オリジナル版で高さのあるマップを使っていたものは,全般的に難しいと感じています。
ダンジョン全般に言えることなんですが,オンラインゲームではなかなか実現が難しいシステムが多いので苦労していますね。
すでにあるものを,別のゲームのシステムに落として込んでいく必要があるわけですから,確かに大変だと思います。すでに実装されている二つのシナリオについても,いろいろと苦労されたんですよね。
「消えた王様の杖」については,オリジナル版を遊んだ人が,たぶん真っ先にプレイするシナリオだと思うので,懐かしんで遊んでもらえるように雰囲気を大事にしました。高低差がつけにくいので,どうしても実現が難しい部分についてはモンスターを配置して,パーティで倒してもらうといったアレンジが施してあります。
オリジナル版は奥行きのないゲームでしたから,高さと横の広がりだけでどうやって表現するかということを考えていましたが,ソーサリアンオンラインでは逆に,奥行きがあって高さがないので,そこへ落とし込むのは,すごく大変だと思います。
だから,もっと割り切っていかないとダメだろうと思います。オリジナルを完全に再現するというよりは,発想を柔軟にして,面白さを前面に出していく必要があるんじゃないでしょうか。
似せる前に,面白くするべきだと。
はい。例えば先ほど,吊り天上が落ちてくるシーンの話がありましたが,ソーサリアンのプログラム上では,ああいったものはすべてモンスターとして処理していたんです。画面の中に表示できるのは,プレイヤーと背景,モンスターだけでしたから。そして,その組み合わせですべての表現をしていたわけです。
うーむ,そうだったんですか。そういった制約の中で,シナリオライターの作ったさまざまなシーンを実現していったわけですね。
はい。地面から岩が噴き出すようなエフェクトも,実は全部モンスターだったんですよ。
……そんな工夫があるとは,気がつきませんでした。
当時はマシンのスペックもきつかったですからね(笑)。でも,工夫をすれば,現状のシステムを変えなくても,できることはたくさんある,と思うわけです。
なるほど。当時の名プログラマーと呼ばれた人達は,本当に職人技といった感じでしたね。
そうですね。当時のゲームプログラムの中でも,ソーサリアンほどいろいろな要素がモジュール化されていたものはなかったんじゃないでしょうか。ゲームエンジン部分とシナリオ部分が分離されているだけではなくて,サウンド関連や,ディスクI/O関連の部分を差し替えるだけで,PC-8801からX1へ移植ができるような作りになっていました。
そのようにして作られたゲームを,まったく別のゲームシステムにそのまま移すのは……そりゃ難しいですし,時にはナンセンスになってくると。
縦,横の違いと,オンラインゲームであるという部分が大きいですね。
オンラインの場合,自分以外のプレイヤーがいて,その人が何をしているか分からないというのが,シナリオを作っていくうえでの難関ですね。
2Dでは難なく表現できていたことが,3Dでは実現が難しいときがあるんですね。ただ,いまの木屋さんのお話を聞いて,もっと単純な工夫でできることがあるんじゃないだろうかと感じました。
そうですね。まったく同じである必要はないけれど,オリジナル版を遊んだ人がニヤリとするような,うまい方法を考えていかないといけませんね。
早速木屋さんのアドバイスがプラスに働いているようですね(笑)。そういえば,先ほど木屋さんのお気に入りは戦国ソーサリアンだというお話もありましたが,まだまだ導入すべきシナリオはたくさん残されていますよね。木屋さん,そして電遊社のみなさんの手腕に,期待していますね。
NPCが後ろからついてくる,といった形を考えています。ただ,この場合も3人制限にはしないつもりです。4人パーティで挑戦した場合も,NPCが共に行動します。
4Gamer:
そういえば,次に入るという「失われたタリスマン」は,天井からトゲのついた吊り天井が落ちてくるシーンが印象的でしたね。あの再現も難しいのではないでしょうか?
洋谷龍氏(以下,洋谷氏):
あのシナリオだと,吊り天井が落ちてきたときに,ギリギリのところで現れた女の子が助けてくれるわけですが,ソーサリアンオンラインでもぜひ実現したいですね。
4Gamer:
では開発側から見て,これは実現が難しそうだなと思うものはありますか?
倉氏:
「呪われたクィーンマリー号」(※7)ですかねぇ……(笑)。
・吊り天井 「失われたタリスマン」の中でも印象的な,吊り天井のシーン。あわやという場面で,女の子が助けてくれる。これを3Dで,どのように再現してくれるのだろうか |
・呪われたクィーンマリー号 船の中で起きた殺人事件を解決するという,ミステリ仕立てのシナリオ「呪われたクィーンマリー号」。BGMも実によく,とくに人気の高いシナリオの一つだが,ソーサリアンオンラインでの再現は難しそうだ |
4Gamer:
やっぱり(笑)。これも,どうするのかと心配していたシナリオです。
洋谷氏:
実は,今のところ最後に実装しようと思っています。
4Gamer:
このシナリオについては私もはっきり覚えていて,お気に入りの一つなんですが,ほとんど戦闘がないシナリオですからね。
洋谷氏:
そうなんですよ。作ることはできるんですが,オンラインゲームとして面白くなるかが問題ですね。
4Gamer:
ひたすら,あっちに行って話を聞いて,こっちに行って話を聞いてという。
洋谷氏:
ええ。オリジナル版だと,ジャンプで移動したりといったアクション要素があったんですが,ソーサリアンオンラインの場合,ジャンプはありませんので。ただあっちこっちをウロウロするだけ,というわけにもいきませんしね。
4Gamer:
何か具体的なアイデアはあるんですか?
洋谷氏:
やはりシステム的な部分で何かを追加する必要があるだろうと考えています。
4Gamer:
どのように実現するのか,楽しみにしていますね。まだ少し先のようですが……。
洋谷氏:
「失われたタリスマン」と,その次の「呪われたオアシス」までは,システムも含め開発の準備に入っています。シナリオに必要なボスや,ダンジョンのデザインといったところですね。それと並行して,オリジナル版の要素をどうやってソーサリアンオンラインのシステムに落とし込むかといった,大まかなプラン作りを行っている段階です。
林氏:
「呪われたオアシス」については,ボスのゴールドドラゴンのデザイン原画と,3Dモデルが出来上がったところですね。
・ルワンとゴールドドラゴン 「呪われたオアシス」のボスは,砂漠王ルワンとゴールドドラゴン。左がオリジナル版,中央・右が現在開発中のソーサリアンオンライン版の原画だ。原作の雰囲気を残しつつ,3Dグラフィックス向けに新たにデザインし直されている。動いている画面をはやく見たいものだ |
4Gamer:
(原画を見せてもらいながら)ソーサリアン,そして木屋さんといえば,やはりドラゴンですよね。今後はぜひ,「ドラゴンとたたかう」モードも実装してほしいところです。
「呪われたクィーンマリー号」では船を用意しないといけないので,その点も難しいだろうと思っていたんですが,ほかのシナリオはどうでしょう。
洋谷氏:
大きな樹に登っていく「紅玉の謎」や,「盗賊たちの塔」なんかも,実装が難しそうですね。ソーサリアンオンラインではジャンプがありませんので,オリジナル版で高さのあるマップを使っていたものは,全般的に難しいと感じています。
倉氏:
ダンジョン全般に言えることなんですが,オンラインゲームではなかなか実現が難しいシステムが多いので苦労していますね。
4Gamer:
すでにあるものを,別のゲームのシステムに落として込んでいく必要があるわけですから,確かに大変だと思います。すでに実装されている二つのシナリオについても,いろいろと苦労されたんですよね。
倉氏:
「消えた王様の杖」については,オリジナル版を遊んだ人が,たぶん真っ先にプレイするシナリオだと思うので,懐かしんで遊んでもらえるように雰囲気を大事にしました。高低差がつけにくいので,どうしても実現が難しい部分についてはモンスターを配置して,パーティで倒してもらうといったアレンジが施してあります。
木屋氏:
オリジナル版は奥行きのないゲームでしたから,高さと横の広がりだけでどうやって表現するかということを考えていましたが,ソーサリアンオンラインでは逆に,奥行きがあって高さがないので,そこへ落とし込むのは,すごく大変だと思います。
だから,もっと割り切っていかないとダメだろうと思います。オリジナルを完全に再現するというよりは,発想を柔軟にして,面白さを前面に出していく必要があるんじゃないでしょうか。
4Gamer:
似せる前に,面白くするべきだと。
木屋氏:
はい。例えば先ほど,吊り天上が落ちてくるシーンの話がありましたが,ソーサリアンのプログラム上では,ああいったものはすべてモンスターとして処理していたんです。画面の中に表示できるのは,プレイヤーと背景,モンスターだけでしたから。そして,その組み合わせですべての表現をしていたわけです。
4Gamer:
うーむ,そうだったんですか。そういった制約の中で,シナリオライターの作ったさまざまなシーンを実現していったわけですね。
木屋氏:
はい。地面から岩が噴き出すようなエフェクトも,実は全部モンスターだったんですよ。
4Gamer:
……そんな工夫があるとは,気がつきませんでした。
木屋氏:
当時はマシンのスペックもきつかったですからね(笑)。でも,工夫をすれば,現状のシステムを変えなくても,できることはたくさんある,と思うわけです。
4Gamer:
なるほど。当時の名プログラマーと呼ばれた人達は,本当に職人技といった感じでしたね。
木屋氏:
そうですね。当時のゲームプログラムの中でも,ソーサリアンほどいろいろな要素がモジュール化されていたものはなかったんじゃないでしょうか。ゲームエンジン部分とシナリオ部分が分離されているだけではなくて,サウンド関連や,ディスクI/O関連の部分を差し替えるだけで,PC-8801からX1へ移植ができるような作りになっていました。
4Gamer:
そのようにして作られたゲームを,まったく別のゲームシステムにそのまま移すのは……そりゃ難しいですし,時にはナンセンスになってくると。
倉氏:
縦,横の違いと,オンラインゲームであるという部分が大きいですね。
洋谷氏:
オンラインの場合,自分以外のプレイヤーがいて,その人が何をしているか分からないというのが,シナリオを作っていくうえでの難関ですね。
倉氏:
2Dでは難なく表現できていたことが,3Dでは実現が難しいときがあるんですね。ただ,いまの木屋さんのお話を聞いて,もっと単純な工夫でできることがあるんじゃないだろうかと感じました。
洋谷氏:
そうですね。まったく同じである必要はないけれど,オリジナル版を遊んだ人がニヤリとするような,うまい方法を考えていかないといけませんね。
4Gamer:
早速木屋さんのアドバイスがプラスに働いているようですね(笑)。そういえば,先ほど木屋さんのお気に入りは戦国ソーサリアンだというお話もありましたが,まだまだ導入すべきシナリオはたくさん残されていますよね。木屋さん,そして電遊社のみなさんの手腕に,期待していますね。
(※7)……バラエティ豊かな初期シナリオの中でも,とくにユニークなシナリオ。貨物船クイーンマリー号で起きた殺人事件を調査するというミステリ仕立てとなっており,戦闘はあまり発生しない。主に,NPC達に話を聞いて“フラグを立てていく”ことでシナリオを進めていく。