特集:“あの”木屋善夫氏が「ソーサリアンオンライン」にもの申す!?(後編)

“あの”木屋善夫氏が「ソーサリアンオンライン」にもの申す!?伝説的なスタープログラマーが見る,現代のゲーム(後編)

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Interview by Iwahama/ginger,Photo by 市原達也 

 

 昨日(5月1日)お届けした前編に引き続き,後編では「ソーサリアンオンライン」の話題を中心に,現在から未来にかけての話題をたっぷりとお伝えする。インタビューの内容は,ソーサリアンオンラインの開発にまつわるエピソードや,今後予定されている,木屋氏と電遊社とのコラボレーション,さらには木屋氏自身の今後にまで及んでいるので,ぜひ最後までじっくりとお楽しみいただきたい。

 

現在:木屋氏が見た,現代のゲーム「ソーサリアンオンライン」〜大切なのは,プレイヤーに“運営の顔が見える”ということです〜

 

木屋氏がソーサリアンオンラインにもの申す!

 

4Gamer
 そろそろさすがに電遊社のみなさんの視線が痛くなってきたので,いよいよ現在の話に移ります。初代から20年経ち,オンラインゲームとなったソーサリアンを見て,率直にどんなことを感じていますか? この(電遊社のスタッフが3人もいる)状況では,言いにくいかもしれませんが(笑)。

 

木屋善夫氏(以下,木屋氏)
 どう言おうかな(笑)。そうですね……,私がザナドゥ,ロマンシアを作っていた頃の気持ちと,いまソーサリアンオンラインを作っている人達の気持ちは,非常に近いんじゃないかなという印象ですね。

 

4Gamer
 と,言いますと?

 

木屋氏
 つまり,商売を考えていないな,と(笑)。
 もちろん,好き勝手に作っているということではないですよ。ゲームとしての面白さを追求していくと,どうしても初心者にとってはハードルの高いものになってしまいがちです。そこでビジネスという面で考えると,どうしても妥協しなくてはいけないラインがあるんです。
 ソーサリアンオンラインの場合は,そのへんのことはひとまず横に置いておいて,面白いものを作ろうとしている部分があるように見えますね。

 

4Gamer
 なるほど,確かにハードルの高さは私も少し感じました。昔のソーサリアンファンが,試しにちょっと触ってみて,よく分からないからやめる,というのではもったいないですよね。

 

木屋氏
 プレイヤーの好き嫌いがすごくはっきりと分かれるタイプのゲームだと思います。最近はこういったゲームが多いのかもしれませんが,ソーサリアンオンラインも,片時も目を離さずに,ずっと操作を続けていなくてはいけないですよね。そしてこれが,良いところでもあり,悪いところでもあると思うんですよ。

 

4Gamer
 オリジナルのソーサリアンは,オフラインゲームだから当然ですが好きなときにポーズができますし,基本シナリオならば,それほど時間がかからずに遊べましたからね。ちなみに木屋さんの場合,ソーサリアンオンラインのハードルの高さは,どういったところに感じましたか?

 

木屋氏
 こんなことを言っちゃっていいのかな? まず,タイトル画面がどうしてこんなに重いのかが気になりますね。それと,ゲームを作るときに大事なことは,プレイするために必要な知識を,徐々に出すようにするということです。ソーサリアンオンラインでも,やるべきことが少しずつ増えていくという手順を意識していると思うんですが,もう少し改善できる余地があると思います。

 

4Gamer
 確かにそれは重要なことですね。ではそれらを踏まえつつ,今後の電遊社と木屋さんとのコラボレーションで,どういったことを行っていくのか,ぜひ教えてください。

 

林省吾氏(以下,林氏)
 いま木屋さんとお話ししているのは,今後実装するシナリオについて,木屋さんに監修をしていただこう,ということです。では,実際にどのシナリオについてそれをやっていくのかというのは,これから決めていきたいと思っています。

 

・失われたタリスマン
ソーサリアンオンラインで次期実装予定のシナリオ「失われたタリスマン」の,オリジナル版。比較的シンプルなシナリオで,このあと話題に出る吊り天井のシーン以外は,それほど苦労せず再現できそうな気もするが……

4Gamer
 現在は,「消えた王様の杖」「ルシフェルの水門」の,二つのシナリオが実装されていますが,次のシナリオは「失われたタリスマン」でしたっけ?

 

林氏
 ええ,そうですね。

 

4Gamer
 実装はいつ頃の見通しなんでしょうか。

 

林氏
 時期は調整中で,まだはっきりとは決まっていません。

 

4Gamer
 しかし,当初の予定では,とっくに実装されているはずの時期ですよね。

 

林氏
 それに関しては,プレイヤーの皆さんに本当に申し訳ないと思っています。また,だからこそ,今は具体的な時期を言えないということもご理解ください。これ以上,裏切るわけにはいきませんので。確実なことが言える段階で,発表します。

 

4Gamer
 ちなみに,この「失われたタリスマン」については,木屋さんも何か関わっているんですか?

 

林氏
 木屋さんとこうしたお話をし始めたのが,今年の3月くらいからなので,その次のシナリオ,「呪われたオアシス」から協力をお願いしようと考えています。ただ,もし木屋さんのお時間があれば,早速「失われたタリスマン」でも,何かお手伝いいただくかもしれません。

 

4Gamer
 監修といってもイメージがわきにくいのですが,具体的にどのようなことを予定しているのでしょうか?

 

林氏
 シナリオは一から作ることもできるのですが,通常はエディットツールを使ってダンジョンを作成したり,モンスターを配置していったりするんです。そこでまずは,こちらである程度作ったものを木屋さんに見ていただいて,いろいろなアイデアやアドバイスをいただこうと思っています。

 

・呪われたオアシス
同じく,ソーサリアンオンラインへの実装が近いとされる「呪われたオアシス」の,オリジナル版。美しい夕暮れの景色と,悲しげなBGMが印象的なシナリオだった。果たして,どのようにソーサリアンオンラインで再現されるのだろうか

4Gamer
 なるほど,文字どおりのアドバイザーの立場ということですね。
 ところで,「失われたタリスマン」の次は「呪われたオアシス」とのことですが,つまりこれまでに実装されたものも含め,すべてオリジナルのソーサリアンの,Disk 1のシナリオですね。ただ,順番でいうと,「失われたタリスマン」と「ルシフェルの水門」が逆です。どのように順番を決めているんですか?

 

林氏
 それについては開発スケジュールを見ながら,比較的早く完成できるものと,手間ひまのかかるものとを交互に選んでいます。最初の二つは,比較的早くできるもの,ということですね。

 

4Gamer
 ということは,「失われたタリスマン」の次は,もう少し早いペースで出せるということでしょうか?

 

林氏
 2か月ごとに一本のペースで出していきたいのですが,なかなか難しい現状ですね。

 

4Gamer
 現在はどんなところがネックになっているんでしょうか。

 

林氏
 スタッフ数が少ない中で開発を行っているというのが,一番の悩みどころですね。

 

4Gamer
 うーん,なるほど。これはある意味,最も手強い問題ですね。とはいえプレイヤーは楽しみに待っていますし,大変だとは思いますが,ぜひコンスタントにシナリオを出せるよう,お願いします。
 木屋さんは,ソーサリアンオンラインの開発に関して,何か思うところなどはありますか?

 

木屋氏
 頑張って作っているようですし,良くできているなと思うところもありますが,まだまだ荒削りです。だから私がもっと磨きをかけて,キラキラになるようにできないかなあと思っているんですよね。

 

4Gamer
 ぜひキラキラになったものを見せていただきたいですね。……それでまた開発が遅れてしまうのも困り者ですが(笑)。

 

林氏
 何だか,プレッシャーが……(笑)。実際問題として,いったん流れに乗ってしまえば,2か月に一本というペースは守れると思ってはいるんですけどね。ご期待ください。

 

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タイトル ソーサリアンオンライン
開発元 電遊社 発売元 電遊社
発売日 2006/11/16 価格 基本プレイ無料(アイテム課金)
 
動作環境 OS:Windows 2000/XP(DirectX 8.1以上),CPU:Pentium 4/2.4GHz以上,メモリ:512MB,HDD空き容量:2GB以上,グラフィックスカード:ピクセルシェーダ対応グラフィックスメモリ128MB(GeForce 4Ti,Radeon 9700以上),サウンド:AC97対応,通信回線:ホストはADSL12Mbps以上,クライアントは56kモデム以上

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