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[E3 2007#07]初登場から18年,方針の大転換を図る「SimCity Societies」とは?
2007/07/12 19:35
 「SimCity」といえば,もちろんWill Wright(ウィル・ライト)氏の出世作。天才ゲームクリエイターの名前をほしいままにする彼だが,それもこれもSimCityの大成功あってのことだ。そんなライト氏は,現在,2008年に発売が延期されてしまった野心作,「Spore」の制作に没頭しており,したがってSimCityシリーズの新作は当分おあずけであろうと思っていた。
 ところが,2007年6月13日の記事でもお伝えしたように,4年ぶりのシリーズ最新作「SimCity Societies」(邦題 シムシティ ソサエティーズ)の制作が電撃的に発表されたのである。
 しかもこのE3 Summit 2007で公開されたのは,「なんだったらそのまま売っちゃってもいいんじゃないの」というぐらいの見栄えだったのだから,驚いたなもう。

 開発はおなじみのMaxisではない。ライト氏が1987年に設立したMaxisは,1997年にElectronic Artsの傘下に入り,Sim Divisionとして再編成された。これまで「The Sims 2」の拡張パックや「The Sims: Life Stories」などの制作を行ってきているが,冒頭で述べたとおり「Spore」の制作も大忙しなので,SimCityの新作を作っている余裕はないと考えて間違いないだろう。ご苦労様です。



■箱庭シムで実績のあるTilted Millが作る
■「根底から変化」した新しいSimCity


 というわけで,開発に当たっているのはTilted Mill Entertainment。ここは「Immortal Cities: Children of the Nile」「Ceaser IV」など,要するに“SimCityタイプの”シミュレーションを作ってきたデベロッパであり,こうしたゲームはお手の物。まあ考えてみれば,Nintendo DS用の「シムシティDS」は日本のエレクトロニック・アーツが制作しているし,「SimCity 64」や「ぼくとシムのまち」など,コンシューマ機用のSimCityはMaxis以外が作ってきたので,そう驚くことではないのかもしれない。
 しかし,さすがにPC版をMaxis以外のデベロッパが開発するのは初めて。そして結論からいうと,SimCity Societiesは,シリーズ従来作のゲーム性から大きく逸脱し,まったくといっていいほど違ったゲームになっているのだ。

 本作は,なによりまずそのグラフィックスに目を奪われる。2003年に発売された「SimCity 4: Rush Hour」(邦題 シムシティ4 ラッシュアワー拡張キット)までは見下ろし型の擬似3D画面だったが,E3 Summit 2007エキスポ会場であるBaker Hangarで公開された最新作ではついに完全3D化を達成。SimCityのコンセプトを援用した類作はとっくのとうに3Dになっているが,ついに本家がそれに追いついた格好だ。なので,今作ではあらゆる角度から自分の街を眺めることができるし,ぐっと接近すれば,道行く人々の姿まで見られる。それゆえ,人口数千万人のメトロポリスを作るのはシステム的に難しく,規模としてはだいたい数千人単位といったところになるが。
 街には時間も流れ,海に沈む夕日に赤く照らされた町並みに灯がともると,その美しさに思わず息を呑むほどだ。空には雲が流れ,雨が降ったり霧が出たりと,天候も時々刻々に変化する。つかみはオッケー。これだけでも凄い。

 ゲーム性は大きく変化した。そもそもSimCityシリーズは,プレイヤーが市長となって住民の要望を聞きつつ,街を発展させていくゲームだ。一見すると,神のごとき力を持つプレイヤーの自由度は非常に高そうだが,基本的に住民の要望はだいたい同じなので,プレイを繰り返して発展のコツをつかめばつかむほどに出来上がる街は似てくる。発電所を建て,水を供給し,道路を道路を敷き……,うーん,プレイヤーによって街の発展する速度や見てくれこそ大きく違うが,子細に観察するとどの街も内容は似てくる。
 その点SimCity Societiesでは,そのコンセプトがまったくといっていいほど変更された。住民の幸せなどすっかり忘れて,プレイヤーの作りたい街を作る方向に舵が切られたのだ。



 従来作のような“エリア”はなくなり,プレイヤーは好きなところに好きな建物を建てられる。350種類以上にもおよぶ建物は,それぞれIndustry(産業),Wealth(富),Authority(権威),Knowledge(知識),Devotion(社会貢献),Creation(創造)といった6種類の「Social Energies」(社会的エネルギー)を持っており,例えば「アクタースクール」は,建てるとやがて20人のパントマイマーを生み出し,人々を幸福にする。とはいえ,権威の値の高い街の住人は「そんなおふざけはやめろ!」と怒り出したりもするようだ。
 あるいは,「タフ省」を建てると,やがて黒服の男が生み出され,人々をスパイしたり告げ口をしたりして,ますます権威的な街になったりする。

 新しいSimCityは,それぞれの建物が持つ,六つのパラメーターの複雑な絡み合いを楽しむゲームに変わったのだ。市民の意向は(あまり)関係ないのである。もっとも,以前のSimCityのテイストも微妙に残っており,街の真ん中に鉄工所を建てると,たちまち煤煙で空は黄色くなり,道には(なぜか)ひび割れが入り,住民達は次々に逃げ出したりするんだけど。

 さて今回のバージョンだが,どうも,実際にはまだいろいろ手を入れている段階のようだ。建物には「昼だけ開いている」とか「週三日使える」とかいったパラメータもあるのだが,ミニゴルフ場が夜だけ開いているという設定を見た私は,やはりゴルフは日光の下で楽しむべきだと,まあ話のついでに感想を述べたところ,Electronic Arts側のプロデューサーであるDaniel Alioto氏は,うーん……と頭をひねり,その件についてメモを取っていたのである。
 というわけで,もし製品版でミニゴルフ場が昼も開いていたら,ぜひ私のおかげだと思っていただきたいが,そのせいでゲームバランスがおかしくなったとしても,怒りのメールなどは送ってこないでほしい。

E3 Summit 2007で展示されていたバージョンのSimCity Societies。ユーザーインタフェースなどは,なかなかいい感じに出来上がっていた


 ところで,こうしたドラスティックなゲーム性の変化に対し,マニア筋から非難の声が上がっているのも事実だ。開発の発表直後,Tilted Mill Entertainmentが「SimCityのゲーム性を根底から変化させる」と発言したことや,それでいて詳細をまだ説明できなかったこと,そして公開された一点のスクリーンショットがSimCityっぽくなかったことなどが悪い方向に働き,フォーラムには「こんなのSimCityじゃない」というファンの怨嗟の声が殺到した。PC版なのにMaxis(まあ,EAのSim Divisionだが)がまったく関係しないというのもファンにとってショックだったようだ。

 だが,ライト氏は最近メディアのインタビューに答え,続編と類作ばかりのゲーム業界に強い調子で苦言を呈している。SimCityはシリーズモノもいいところなのだが,本作がMaxisおよびライト氏の手を離れ,そのうえでゲーム性を徹底的に作り変えたのは,もしかするとライト氏が望んでいたことだったのかも,という気がしないでもない。
 いずれにしろ,このSimCity Societiesは,欧米では2007年ホリデーシーズンの発売が予定されている。(松本隆一)



SimCity Societies
■開発元:Tilted Mill Entertainment
■発売元:Electronic Arts
■発売日:2007年内
■価格:N/A

【この記事へのリンクはこちら】

http://www.4gamer.net/news/history/2007.07/20070712193520detail.html