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日本のアニメを強く意識した,新作MMORPG「風林火山」開発者インタビュー
2006/12/22 22:09
 武侠の世界観を下敷きにしたMMORPGは,中国や韓国では根強い人気を保っているものの,日本における人気はいま一つといったところだ。最近は,武侠をテーマとした映画などで日本でも少しずつ認知度が高まりつつあり,エムゲームジャパンでも,「英雄オンライン」「熱血江湖オンライン」など,武侠モノMMORPGをサービスしているが,やはりまだまだ西洋風ファンタジーが主流である。義理人情や勧善懲悪,恋愛と冒険や,超人的な武術といった個々のモチーフは日本人にとっても分かりやすいものの,武侠というカテゴリで捉えるには馴染みが薄いのかもしれない。
 しかし,韓国mGameが開発中のMMORPG「風林火山」は,日本人にとってのとっつきにくさを,同社が「トゥーンリアルレンダリング」(Toon-Real Rendering)と呼ぶアニメ調のグラフィックスによって,ビジュアル面から中和しようとしている。キャラクターデザインには日本人イラストレーターを起用し,日本のアニメをかなり意識したという。これまでの武侠モノにあったような,コテコテの東洋風グラフィックスではなく,日本人にもすんなりと受け入れられそうな,アニメ的なグラフィックスが特徴だ。開発元であるmGameのプロジェクトマネージャーDong-Hoon,Lee氏にインタビューを行ったので,本作に関心のある人は目を通してほしい。



■日本のアニメを強く意識した演出とキャラクターデザイン

Dong-Hoon,Lee氏
4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。

Dong−Hoon,Lee氏(以下,Lee氏):
 こちらこそよろしくお願いします。

4Gamer:
 まずは,風林火山の開発状況を教えてください。

Lee氏:
 すでにゲームの設定やグラフィックスの作成などはすべて完了し,公式サイトのフォーラムといった,ユーザーコミュニティ機能の準備も終わっています。現在は,(2006年)12月初めに韓国内で第一次クローズドβテスト(編注)を行うことを目標に開発を行っていて,主に,プレイヤーを引き付けるための新しい要素の追加といった作業を進めています。

4Gamer:
 ということは,もうすでにクローズドβテスト目前なわけですね。では,風林火山というタイトルの由来について教えてください。

Lee氏:
 純粋にゲームのイメージと,この言葉がマッチするのではと考えました。ご存じかもしれませんが,風林火山というのは,中国古代の兵法書「孫子」の一節から採られた言葉です。「その疾(はや)きこと風の如く,その徐(しず)かなること林の如く,侵掠(しんりゃく)すること火の如く,動かざること山の如し」というのが,それです。

4Gamer:
 ええ,もちろん知っています。日本人にとっても,特別な印象を持った言葉ですよ。ところで,先ほど見せてもらったムービーに登場した四人のキャラクター達が,この「風」「林」「火」「山」の四つの属性と何か関係があるように見えたのですが……。

Lee氏:
 ええ,そのとおりです。例えば,刀を持ったキャラクターは「風」の属性,といったように,先ほど見ていただいたキャラクターそれぞれに,「風」「林」「火」「山」の四つの属性が与えられています。

4Gamer:
 やはりそうなんですね。これらのキャラクターは,プレイヤーキャラクターなのでしょうか?

Lee氏:
 ええ,プレイヤーが操作するキャラクターになります。プレイヤー自身が,それぞれの属性を与えられた,これら四人の主人公を演じるという設定です。あらかじめ用意した四人のキャラクターによって,キャラクターそれぞれの個性を際立たせ,ほかのゲームとの差別化を図るのが狙いです。



4Gamer:
 主人公が四人ということは,選択できる職業もそれに合わせて四つということになるんですか?

Lee氏:
 はい,選択できる職業は,それぞれのキャラクターに合わせた四つです。最近のオンラインゲームには,職業やキャラクター作成の自由度が非常に高いものが多いですが,それにもかかわらず,結局はただ流行に乗って,個性のないキャラクターを作るだけになってしまいがちです。
 だから本作では,確実にキャラクターの個性を出すために,あえてある程度選択肢を限定しています。また,キャラクターごとの背景ストーリーも用意してあります。キャラクターは今後,1〜2種類追加する予定で,個性を崩さない範囲での転職や,クラスの分岐なども予定しています。

4Gamer:
 選択肢は多いに越したことはありませんが,確かにそういった傾向はあるかもしれませんね。そういえば,本作のキャラクターデザインには,日本人のイラストレーターを起用したそうですね。

Lee氏:
 そうです。当初は,韓国人のイラストレーターを起用しようと思って探していました。しかし,イラストのクオリティやゲームのコンセプトなどを考慮して検討してみたところ,ある日本人イラストレーターの作品が私達のコンセプトに非常に合っていると分かったのです。そこで,その方を起用することになりました。
 このときに重視したコンセプトというのは,アニメの一場面のようなシーン,アニメに登場するようなキャラクターを作ろうというものです。日本はアニメ先進国でもあり,この“アニメのような”という部分を考えたときに,実際に日本でアニメ制作にも携わっているそのイラストレーターの作品が,私達のイメージにぴったりと当てはまったのです。
 それに加えて,日本のアニメの影響力は,韓国においても無視できないものがあります。日本アニメの影響力や価値というものを考えると,当然の帰結として日本人のほうがそれに適しているという結論になりました。

4Gamer:
 その方のお名前を教えてもらえますか?

Lee氏:
 ごめんなさい,いまはまだ公表できません。

4Gamer:
 うーん,それは残念です。ちなみに,韓国ではどんな日本のアニメに人気があるんですか?

Lee氏:
 「犬夜叉」や「攻殻機動隊」といったアニメに人気がありますね。それとスタジオジブリの作品にも人気があります。どれか一つを挙げろと言われたら困ってしまうほど,子供から大人まで,幅広い人達に親しまれている作品がたくさんあります。

4Gamer:
 なるほど,日本と同じような作品に人気があるんですね。アニメ的な演出といえば,ムービーでは,キャラクターがスキルを作った瞬間に,カメラがキャラクターの周りをぐるっと回る演出などもありましたね。

Lee氏:
 ええ,ああいった演出がゲームの随所に出てきます。先ほど見ていただいたムービーは,すべて実際にプレイをしながらキャプチャしたもので,例えば,ボスモンスターにとどめを刺した最後の一撃,といった決定的な瞬間などにも使われています。

4Gamer:
 こうした演出は,ほかのプレイヤーからも同じように見えるのでしょうか?

Lee氏:
 その部分については現在細かい調整を行っていますが,ほかのプレイヤーには,その人の視点に合わせた形で見えるようになっています。



■ゲームパッドにも対応した,アクション性の高い戦闘

4Gamer:
 では,ゲームの舞台や背景についても教えてください。

Lee氏:
 まず舞台に関してですが,幅広くアジア全体と考えてください。オリエンタルというと,中国の中原地域をイメージするかもしれませんが,そうではなくてアジアのさまざまな文化を体験できるように設定しています。例えば,モンゴルや東南アジア,韓国,日本といった地域が舞台となります。
 そして,大きな災害が起こって一度文明が滅び,その大災害から再び文明を起こそうとする,という時点からストーリーが展開していきます。刀や魔法なども登場するので,一見すると過去を舞台にしたストーリーかと思うかもしれませんが,過去,現在,未来までを含んだ話になっています。

4Gamer:
 ストーリーはどのように展開していくのですか?

Lee氏:
 ストーリーについて詳しく話すと長くなりますので,簡単にお話しすると,ストーリーの起点となる大災害は,“異界”との次元が重なったことによって引き起こされたものです。そして,これによって多くの文明が消滅してしまいます。
 こうした中で,人間と人間以外の生命体/モンスターが戦う,というのがゲームの一つの軸となります。それと同時に,人間の世界でも二つの勢力に分かれて対立が起こります。しかし,最後はこの二つの勢力が協力しあい,人類にとって共通の敵であるモンスターに挑んでいく,というのが大まかなストーリーになっています。

4Gamer:
 人間同士も二つの勢力に分かれてしまうんですね。そういえば本作の特徴として,PvPにかなり力を入れていると聞いています。

Lee氏:
 ええ,モンスターとの戦闘より,PvPに重点を置いています。ゲームシステム的に,二つの勢力が宿命的に分かれざるを得ないようになるものを考えています。異なる勢力に属するプレイヤー同士がフィールドで出会ったときに,お互い牽制しあったり,ときには攻撃を仕掛けたりと,緊張感のあるものにするつもりです。
 PvPのイメージとしては,対戦型の格闘ゲームのようになっていて,それに合わせた操作方法なども開発しています。さらに必殺技のようなものもあって,多彩なスキルを用いた攻撃や防御を行えます。

4Gamer:
 なるほど,かなりアクション要素が高そうですね。

Lee氏:
 確かにそうですね。本作の戦闘は,かなりスピード感のあるものになります。また,プレイヤーがスキルの組み合わせを研究して,自由度の高い動きができるようなものを目指しています。
 最近はほかのオンラインゲームでもアクション性の高いものが増えてきましたが,本作でも,アニメーションのような,スピード感のある動きを基本に置いています。例えば,巨大なモンスターがプレイヤーキャラクターをつかんで放り投げるといった,いままでのPCゲームではあまり見られなかった,コンシューマゲームのような動きを実現しています。



4Gamer:
 コンシューマゲームのような動きということですが,ゲームパッドなどでも操作ができるんでしょうか。

Lee氏:
 PCゲームですので,基本はマウスとキーボードでの操作になっていますが,現在,ゲームパッドでも遊べるように開発を進めています。ゲームパッド対応については,すでに技術的な部分は完了していて,いまはいかに効率的に操作ができるかという部分の調整を行っています。
 例えば,ゲームパッドを使いながら,一方でマウス操作も必要ということになると,非常に不便ですよね。ですので,家庭用ゲーム機でプレイしているような操作性に近づけたいと思っています。ちなみに,先ほど見ていただいたムービーは,ゲームパッドとマウスで操作したものですよ。

4Gamer:
 日本ではゲームパッドに慣れている人が多いので,ゲームパッドでも快適に遊べると嬉しいですね。ところで,PvPと並んで本作の見どころといえるのが,パズル要素の高いダンジョンだと思いますので,ぜひ簡単に紹介してください。

Lee氏:
 パズル要素は,RPGとアドベンチャーを合わせたようなものを考えています。これまでの多くのRPGは,モンスターを倒して経験値を得るだけという単純な繰り返し作業でしたが,そこから抜け出したいというのがあります。
 力だけではなく頭も使うような謎解き要素をパーティで協力してクリアしたりと,新鮮な気持ちで遊べるようになっています。

4Gamer:
 具体的にはどういった仕掛けがあるんでしょうか。

Lee氏:
 そうですね。例えば,フィールドにある岩を崩したり,壁に見える場所を壊したりすると道ができるといった感じです。ある木を切り倒すと,それがスイッチの役目を果たしていて新たな道が開けたりすることもあります。そのほかにも,入るたびにランダムに構造が変わるダンジョンや,入るたびにある一定の法則に従って変化するダンジョンなどもあります。

4Gamer:
 それはなかなか楽しみなシステムですね。



■課金スタイルは未定。日本上陸は2007年上半期?

4Gamer:
 正式サービス後の課金スタイルはどうなるのでしょうか?

Lee氏:
 課金スタイルに関しては,韓国でのサービスについても,いまのところ未定となっています。これからプレイヤーの反応を見ながら,いくつかの課金モデルの中から選択することになると思います。最初から特定の課金システムを想定して開発を行っている,というわけではありません。

4Gamer:
 分かりました。では,日本でのサービス予定についても教えてください。

Lee氏:
 本作では,韓国内はもちろんですが,日本市場も非常に重要視しています。ですから,韓国である程度のテストが済んだ段階で,当然日本でのサービスについても検討することになると思います。韓国でのテストが終わって,詰めの段階に入るのは,大体2007年の上半期になると思います。日本での課金システムについても,日本のプレイヤーの意識を調査して決めていく予定です。

4Gamer:
 日本アニメを意識した本作が,日本でどのように受け止められるか楽しみですね。では最後に,読者へのメッセージをお願いします。

Lee氏:
 プレイヤーに,自分がアニメの主人公になったような体験をしてもらうのが,本作の目標です。これまでアニメがゲームになるという事例はたくさんありましたが,逆にこのゲームからアニメが作られるような,そんな作品にしたいと思います。
 日本のアニメは,ジャパニメーションという言葉が生まれるくらい,大きな影響力を持っています。ビジュアルやコンテンツの詰めの作業を行って,目の肥えた日本の皆さんにも楽しんでもらえるものにしていきますので,ぜひ期待していてください。

4Gamer:
 本日はありがとうございました。

 Lee氏が繰り返し強調しているように,本作は日本のアニメを強く意識している。キャラクターデザインに日本人イラストレーターを起用し,ゲーム中の雰囲気もインタビュー中にあるように,「犬夜叉」(アニメのほう)や家庭用ゲーム機で人気の「天外魔境」シリーズに近い。
 どちらの作品も,大雑把にいってしまえば武侠の枠に当てはまるものであるが,巧みにその枠組みから離れて,より広義の“東洋風ファンタジー”ともいうべきカテゴリに昇華されたことで,幅広い人気を集めることに成功している。そして本作も,これらの作品同様,東洋風ファンタジーとして日本で受け入れられる素養が感じられる。
 4Gamerでは,すでに本作のプロモーションムービーを紹介しているので,興味を持った人はぜひそちらもチェックしてほしい。エムゲームジャパンから公式な発表はないが,本作の日本でのサービスの可能性は濃厚とみていいだろう。ゲームパッドへの対応なども含め,日本人の好みに的を絞った本作が,日本のプレイヤーにどのように受け止められるか,いまから非常に楽しみだ。(ginger)

編注:本作は2006年12月22日現在,第二次クローズドβテストまで終了している

(2006年11月16日収録)


風林火山
■開発元:mGame
■発売元:エムゲームジャパン
■発売日:2007/夏
■価格:N/A
→公式サイトは「こちら」

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http://www.4gamer.net/news/history/2006.12/20061222220939detail.html