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注目の新作がついに発売,「バトルフィールド2142」のファーストインプレッション
2006/10/20 17:41
 雪の降る町を〜,ゆっきの降る町を〜,などと油断していたら氷河期である。西暦2142年,地球は氷河期を迎え,ヨーロッパの大半やカナダやロシアは雪と氷に閉ざされ,人類は,わずかに残された可居住地域と資源をめぐる激しい戦いの時代に突入したのだ。ウィンタースポーツが好きなので,雪は大歓迎だなボカぁ,なんて悠長なことは言ってられない厳しさなのである。

 というわけで,バトルフィールドシリーズの最新作「バトルフィールド2142」(以下,BF2142)がついに本日(10月20日),エレクトロニック・アーツから発売された。「バトルフィールド1942」(2002年)で第二次世界大戦を描き,「バトルフィールド ベトナム」(2004年)で1960〜'70年代のベトナム戦争を,そして「バトルフィールド2」(2005年)で数年後の世界での現代戦をテーマにしてきたシリーズだが,今度はタイトル通り,100年以上先の未来の戦争,つまりSF戦を描いているのだ。設定が2142年ということで,筆者の“バトルフィールド約30年周期説”が見事に覆された格好だが,そんなことはどうでもいいであろう。
 戦場には二足歩行のバトルウォーカーやロボット兵器,さらには巨大空中要塞「タイタン」といった未来のアイテムが続々と登場し,ネット上に用意された未来のバトルフィールドに集まった未来戦士達が未来ライフルを撃ったり撃たれたり,未来戦闘機を墜としたり墜とされたりの激しい戦闘を繰り広げるのである。
 北米とヨーロッパ地域では10月17日にすでに発売されており,今のところ,あちらの各メディアでの評価も上々のようだ。Electronic Artsオフィシャルを含め多数のサーバーが立ち上がり,日々激戦が続いていたが,ついに日本のプレイヤーが参戦する日がやってきたというわけだ。そんな,新しいバトルフィールドはどうなったのか? 新しく導入されたゲームシステム「タイタンモード」とは? 未来兵器の使い勝手はいかが? などを中心に発売直後のBF2142をレポートしてみようではないか。



■新ゲームモード,タイタンとは?

 空中に浮かぶ巨大要塞「タイタン」を攻めあうゲームモードで,開発の初期からアナウンスされてきた本作の目玉フィーチャーである。BF2142には,それ以外に,おなじみの「コンクエストモード」(拠点の奪い合い)と,チームメイトと協力してAI側と戦う「コンクエストCo-op」モードが用意されている。とはいえ今日現在,例によってCo-opモードはほとんどサーバーが立っていない状況で,今後に期待したい。個人的に好きなゲームモードなので,ちょっと残念だ。

 さてそのタイタン,あなたがもしバトルフィールド1942の経験者なら「珊瑚海」のマップを思い出せば理解しやすいかもしれない。珊瑚海マップでは小さな島を挟んで日米の空母が対峙しており,どちらかの空母を沈めれば勝利となる。とはいえ,通常の爆撃で空母を沈めるのは至難であり,最も効果の高い雷撃はきわめてデリケートな魚雷投下が必要で,上級パイロットでも骨が折れる。筆者も海面スレスレの低空からの雷撃に失敗して愛機を何度も海の藻屑にしたものだ。うふふ。懐かしいなあ。
 空母の撃沈が難しいため,バトルフィールド1942ではあまり人気のあるマップではなかったが,デベロッパのDigital Illusion(D.I.C.E.)がこのアイデアを敷衍してタイタンモードを作ったことは想像に難くない。こちらはまあ,要するに敵のタイタンを沈めれば勝利なわけだが,それには二つの方法がある。まずは,敵タイタンに侵入し,深奥にあるリアクターコアを破壊すること。もう一つは通常兵器で地味に攻撃を続け,真綿で首を絞めるように防御力をじりじり削っていくことだ。だがそこはSF。タイタンは未来ならではのエネルギーシールドで守られているので,まずはそれをチャラにしなければならない。それにはマップの各所にあるミサイルサイロを占領し,対シールド用のブロック3 アンチ-タイタンミサイルを撃ち込むことが先決だ。つまりはコンクエスト同様,タイタンモードでもまずは拠点の奪い合いが発生することになる。




 ミサイルによってシールドを無力化すれば,航空機もしくはポッドによる突入が可能になり,リアクターコアの破壊まではもう一歩。また,ミサイルを撃ち込み続けてもタイタンの防御力は漸減するので,そのまま地上戦を継続するのもあり。このあたりの詳細は,いずれ稿を改めて紹介しようと思うが,実際にプレイしてみるとこの二段構えのゲームはかなり白熱する。とりわけお互いのシールドが無力化されてからの攻守のバランスが難しく,タイタン攻略グループと地上のサイロ攻略グループの比率が重要だ。
 言うまでもなく,地上部隊がどんどんタイタンに突入してしまうと地上のサイロを敵に奪われてこちらのタイタンが危険になり,といって,サイロの取り合いに熱中していると,敵にこちらのコアを破壊される危険性が高まるのだ。コンクエストモードでチケットが「100対6」などという状況に陥れば,もはや勝負は諦め,ふてくされて草でも撃っているしかないが,コアの破壊は一発逆転の可能性を持つ。敵タイタンの防御力を99%削り,ほとんど勝ったと思っていたのに,いきなりこちらのコアを破壊されて敗北,などということもしばしば発生する。そのため,緊張感が持続するのだ。
 地上の戦闘が相変わらずバトルフィールド2(以下,BF2)ばりの大型兵器による叩き合いが中心なのに対し,タイタン内部の戦いはフットソルジャー同士の銃による白兵戦が主体となり,どちらも一挙に楽しめる,一粒で二度おいしいモードと言うこともできる。というわけで,タイタンモードのファーストインプレッションは非常に良好だ。「22世紀にもなって旗を取り合うのはいかがなものか?」という向きにはぜひオススメしたい。ゲームには「タイタン攻略チュートリアルムービー」も付いているので,とりあえず見ておきなさい。



■魅惑の未来兵器を使いこなせ

 登場する数々の未来兵器も本作の最大の魅力の一つだ。
 前作までは実在の兵器をモデルとしていたため,ゲームバランスの都合で本物より強くなったり弱くなったりはするものの,実際の兵器のアナロジーが通用した。しかし本作はそうはいかない。二本足のバトルウォーカーが何を相手にしたときに一番実力を発揮するのか? 弱点はどこか? など,とんと見当が付かないだろう。だいたい,どっから乗るんだろう,これ?
 航空機類はジェット機のようなヘリコプターのようなトリッキーな動きが可能だし,APCや輸送機にはタイタンモードで威力を発揮するポッド射出機能がある。APCの後席でうっかりマウスを右クリックし,ポッドで中天高く打ち上げられてしまったという愉快な経験をしたのは私だが,驚いたのなんの。もっとも,前作までのプレイヤーならシングルプレイを遊んだり,マルチを数プレイこなしたりすれば,たぶん概略はつかめるレベルだ。難しいのは,各兵士の武器/アイテム類かもしれない。

 BF2142では,前作で7種類もあった兵科が4種類に減っている。内訳は偵察兵,突撃兵,工兵,援護兵だが,それぞれの兵科で武器/アイテムのカスタマイズが可能になっており,そのことによってバリエーションが出るシステムである。以前の記事で,「兵科をまたがるカスタマイズ(例えば工兵の能力を併せ持つ偵察兵など)も可能になるのではないか」と書いたが,結局それはできなかった。あくまで突撃兵の武器はアサルトライフル,偵察兵の武器は狙撃銃,といった具合に決まっており,そのカテゴリの中で,例えば大口径だが連射の利かないタイプか,小口径だが撃ちまくれるタイプを選ぶ,という感じだ。カスタマイズで選択できる兵器はBF2と同様,戦功を積んでランクが上がるに連れてアンロックされていく。
 4Gamerの「こちら」に掲載した本作のデモ版の不満といえば,やはり武器のアンロックが許されていなかったことだろう。設定が近未来なので,これまでにはなかったような面白い武器/アイテムが次々に登場し,それらが本作を待つファンの興味の中心の一つだと言えたのに残念。まあ,兵士の「カスタマイズ」画面でそれらのアイテムをクリックすることにより,それぞれの性能や能力は分かるものの,やはりアイテムは使ってなんぼ,という気持ちもありますわね。
 いずれにしろ,かねて噂になっていたアクティブ・カモフラージュ(兵士が半透明になれる)とか,プレイヤーの頭上に浮遊し,自動的に敵を攻撃する航空歩哨ドローン,設置するだけで自動的に敵を攻撃するロボットセントリーガンなどがいよいよ使えるのは楽しみだ。期待半分不安半分で,個人的にはこの瞬間が一番好き。


 さて,ここで心配になるのが,「長くプレイしているプレイヤーほどアンロックアイテムが増えて強くなるのではないか」ということだ。MMORPGならごく普通だが,メジャーなマルチプレイFPSではまず見られない仕様である。似たようなシステムはBF2にもあったが,各兵科1〜2種類ほどの武器がアンロックできるだけであり,またそれらが「前に持ってたもののほうが良かったかな?」というレベルなので,結局ほとんどゲームに影響を与えなかったような気がする。
 本作について現在の印象としては,ランクアップのスピードが割と速く,BF2と同様に腕前を凌駕する決定的な武器/アイテムは見当たらないため,ハンディが付いてしまうという問題より,ゲームを続けるモチベーションになる利点の側が勝っているように思う。海外のパブリックサーバーを見ると,すでに多くのプレイヤーがかなりの種類のアンロック武器/アイテムを使っており,ちくしょう,早くオレ様も使ってみたい,という気持ちになるのは私だけではないだろう。このあたりはメーカーも分かっているはずで,今後,ハンディが付かない方向でバランス調整が行われるのは間違いない。

■シリーズの面白さを継承した堅実な仕上がりの最新作

 コマンダー/分隊システムなど,ゲームシステムのかなりの部分は前作BF2に準じている。100年以上先の未来戦争とはいえ,戦場のドタバタ感覚はバトルフィールドシリーズそのものであり,前作までの経験者なら違和感なくプレイできるだろう。
 コンクエストモードのマップは10枚用意されており,そのうち5枚がタイタンモード,別の5枚(重複あり)がコンクエストCo-opモードとの兼用になっている。ボリューム的には問題ないが,“未来っぽさ”“氷河期っぽさ”という点ではちょっと物足りない気も。
 グラフィックスはBF2に使われた描画エンジンを改良して使用しているということで,見た目はBF2に近く,かなり美しい。タイタンをはじめとする各種オブジェクトも細密に描かれ,爆発や発砲のエフェクトも相変わらず迫力あるものだ。空中でタイタン同士が激しく撃ち合い,ミサイルやポッドがどんよりした空を長い煙の尾を引いて飛び,地上ではバトルウォーカーやホバータンクが木っ端微塵。そんな未来戦争のパノラマを目の当たりにできるBF2142。第一印象としては,オリジナリティにはやや欠けるものの,タイタンモードや未来兵器が非常に面白く,シリーズのプレイアビリティを確実にキープした手堅い一本になっているようだ。さらに詳しいレビューを近々掲載する予定なので,ぜひ楽しみに待っていてほしい。(松本隆一)


バトルフィールド2142
■開発元:Digital Illusions CE
■発売元:エレクトロニック・アーツ
■発売日:2006/10/20
■価格:オープンプライス
→公式サイトは「こちら」

【この記事へのリンクはこちら】

http://www.4gamer.net/news/history/2006.10/20061020174126detail.html