ニュース
「君主」開発者に聞く,この夏のアップデートのすべて。“政治経済MMO”は,サーバーも国境も越えて広がっていく!
2006/07/21 15:37
<Oh. Joon Kyung氏プロフィール>
1982年2月18日大韓民国ソウル生まれ。2001年,ゲーム雑誌やゲームポータルサイトなどで,フリーライターとして活躍。2002年7月,Joyon Entertainmentに入社し,グラフィックスデザイナーとして「巨商」の開発に携わる。2003年7月,Ndoorsに入社,君主プロジェクトに参加する。2004年12月には君主の企画チーム長に抜擢され,翌2005年8月,君主の海外開発チーム企画チーム長に就任。2006年現在は,ゲーム開発1本部 チーム長という肩書で,君主海外開発チームのプロジェクトマネージャーを務めている
 「君主」は,現在日本でサービス/テストされている数多くのMMORPGの中でも,かなりユニークな作品といえる。特徴はいろいろあるが,中でも目を引くのは,株式システムをはじめとした,現実社会そっくりの政治経済システムが導入されていることだ。そういった意欲的とも思える数々の要素と,2Dの親しみやすいグラフィックスとが相まって,プレイヤー達を熱狂させているのである。

 その君主が,この夏に大きくパワーアップするとのことで,開発元である韓国Ndoorsでプロジェクトマネージャーを務めるOh. Joon Kyung(オ・ジュンギョン)氏に,インタビューを行った。
 この夏,君主ではついに,国境やサーバーの垣根を越えて経済活動を行えるようになるという。従来のサーバーシステムでは予想だにしない話が続々飛び出す本インタビュー,「君主」プレイヤーはもちろん,ありきたりのMMORPGには少し飽きてきたという人も,ぜひ目を通してみてほしい。


■海外のサーバーとの間でも交易を行えるシステム

4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。よく来日されるんですか?

Oh. Joon Kyung氏:
 そうですね,結構頻繁に来てますよ。君主の日本ローカライズはかなりの作業量で,新たなタイトルを作るくらいの心構えでいます。だから,だいたい月に1回くらいのペースで来日してますね。

4Gamer:
 うわ,今,通訳さんを介さずに,ダイレクトに反応しましたよね。日本語を話せないまでも聞き取れるとは,来日することが多いというのも納得です。……いっそのこと,日本で仕事したらどうですか?(笑)

Oh. Joon Kyung氏:
 うちの社長にも同じことを言われています(笑)。

4Gamer:
 あはは,いかに日本通なのかがよく分かるエピソードですね。
 では早速本題へと移ります。君主では今,「真夏の激動3連続アップデート」と題して,順次アップデートを行っていますよね。具体的には,どのようなアップデートが行われるのでしょうか?

Oh. Joon Kyung氏:
 君主が,政治と共に,経済にも重点を置いたゲームシステムになっているのはご存じでしょうか。例えば,ゲーム内の国が,現実社会の株式会社のような仕組みになっていて,それぞれ株式で運営されています。また,ゲーム内のほとんどのアイテムをプレイヤー達が自ら作れるというのも特徴で,それらの売買による経済活動も,ゲームの中心的要素となっています。
 今回,このアイテムの売買を,サーバーの垣根を越えてできるようにします。面白いのは,海外のサーバーとの間でも“貿易”ができるということですね。

4Gamer:
 つまり,例えば韓国サーバーのプレイヤー相手に貿易ができると。

Oh. Joon Kyung氏:
 そうです。具体的には,サーバー間貿易を行うための専用エリアというのを設けます。そこで出品したり,逆に他国のサーバーなどからの出品アイテムを確認して入札したりできるわけです。

4Gamer:
 君主をプレイしていない人にはあまりピンと来ないかもしれませんが,それって,かなり凄いことですね。画期的といっていいと思います。

Oh. Joon Kyung氏:
 まず,君主というゲームが,サーバーごとに世界が大きく違うということを知っていないと,このことの本当の意味が分からないかもしれませんね。君主では,サーバーの設立時期などの違いによって,独自の経済バランスが育っていきます。貨幣価値もまったく変わってくるので,そこに商売のチャンスも生まれてくるわけです。
 さらに君主では,韓国版と日本版は,まったく違うゲームといっていいほど,いろんなところが違います。そもそも,ストーリーからして違いますからね(編注:韓国版は,16世紀の朝鮮を舞台にしているが,日本版の舞台は,なんと27世紀。グラフィックスもほぼ新たに書き起こされているなど,かなり大規模なローカライズが行われている)。
 韓国版にしかないアイテム,日本版にしかないアイテムというのも当然いろいろとあるわけですが,それも,このサーバー間交易によって売買できるようになる予定です。

4Gamer:
 極端な話,二つの別のゲーム間で,アイテムの売買ができるようなものですよね。確かに,これは凄い。しかし,いろいろと破綻も出てくるのではないでしょうか?

Oh. Joon Kyung氏:
 そこで,貨幣価値を共通化するために,統一通貨として新たに「ACU」(アキュー)を用意し,プレイヤーはこの貨幣でサーバー間貿易を行うようにしました。コンセプトとしては,ヨーロッパ圏における「ユーロ貨幣」に近いですね

4Gamer:
 なるほど,……つまり,為替レートを利用した“商売”もできるということでしょうか?

Oh. Joon Kyung氏:
 もちろんです。そういう,現実世界にそっくりな経済システムが,君主の魅力ですからね。

4Gamer:
 いいですねぇ。ちなみにプレイヤーは,そのACUをどのようにして入手するのですか?

Oh. Joon Kyung氏:
 GMが公募イベントを行い,それを通じて入手します。先ほどもお話ししたように,君主では国ごと,サーバーごとに経済バランスがバラバラですので,当然ACUのレートも変わってきます。1ACU=5000Qのサーバーもあれば,500Qのサーバーもあるんです。
 また,今話題に出たように,プレイヤー間での取引でもACUを手に入れられます。

4Gamer:
 プレイヤー一人当たりのQがたくさんあるようなサーバーだと,1ACUあたりに必要なQも増えていく,ということですか。

Oh. Joon Kyung氏:
 その通りです。

4Gamer:
 ちなみに,現在の君主のサーバーは,世界にどのくらいあるのでしょうか?

Oh. Joon Kyung氏:
 日本が2基,韓国が14基(編注:「NetMarble」が運営する3基を含む),そしてグローバルサーバーが1基という構成です。

4Gamer:
 グローバルサーバーというのは,具体的にはどこの国の人がプレイしているのでしょうか?

Oh. Joon Kyung氏:
 韓国と日本以外は,すべてこのサーバーですね。主にシンガポールか米国のプレイヤーがプレイしており,クライアントは英語ローカライズ版となります。

4Gamer:
 英語版クライアントも存在したんですね。そういった,現実世界の“外国”の人と,ACUを通じてアイテム類をやりとりできる,と。

Oh. Joon Kyung氏:
 ええ,そうなんです。君主ではサーバーによって,アイテムの製造技術や,必要な材料における需要/供給バランスが違ってきます。例えば生産が活発なサーバーでは,材料品の値段が高騰する傾向が強い。ここで,他サーバーとの貿易の必要性が生じるのです。
 生産者の視点で考えれば,材料の価格が安いサーバーから購入し,生産をしたうえで,今度は完成品の価格が高いサーバーへ売ると,一番儲けが出るわけですね。なお,実装時には材料のみ交易可能ですが,いずれは装備品や,各国でしか入手できない特産品や特殊装備品といったものも,交易で入手可能となります。

4Gamer:
 なるほどなるほど,壮大なシステムですね。

サーバー間貿易専用のマップ。プレイしている国に関係なく,いろんなサーバーから交易品を売買したい人が集まってくる


■サーバー間貿易システムの,その次

24歳にしては昔のゲームに妙に詳しいOh氏。とくに“namcot”ブランドだった頃のナムコが大好きとのこと
Oh. Joon Kyung氏:
 実際に,生産技術は後れているが戦闘が盛んなサーバーとか,逆に生産が進んでいるが戦闘はほとんど行われないサーバー,といったような個性が出てきています。そこでサーバー間貿易システムを活用すると,すべての作業を同一サーバー内で処理するよりも大きな利益を得られるわけです。
 しかし,まだこのくらいでは,“壮大”とはいえないと思います。実は,さらにこの続きも考えているんですよ。

4Gamer:
 といいますと?

Oh. Joon Kyung氏:
 サーバー間で貿易を行ったり,ACUの為替レートに注目していくうちに,きっとほかのサーバーの状況に関心が出てくると思います。そこで,他サーバーに所属するプレイヤーと,メッセージをやりとりするシステムも現在検討しています。

4Gamer:
 確かに,それはプレイヤーとして欲しい機能だと思います。具体的にはどういうものを考えているのでしょうか?

Oh. Joon Kyung氏:
 例えば,他国サーバーのユーザー宛に製造依頼の必要性が生じたときに,簡単な単語を組み合わせる形のツールを制作中です。これによってアイテム名や値段といった,サーバー間貿易時に最低限必要な情報はやりとりできます。

4Gamer:
 「ファイナルファンタジーXI」や「ファンタシースターオンライン」における,翻訳用定型文を用いるスタイルですか?

Oh. Joon Kyung氏:
 イメージとしては近いですね。ただ,本来はまったく別のサーバー同士がやりとりを行うため,リアルタイムでのチャットは技術的に厳しいのです。
 ちなみに将来的には,サーバー間戦争システムもぜひ実現したいですね。交易していた相手と,今度は戦場で相まみえるわけです。

4Gamer:
 おおお,まさに“壮大”という言葉にふさわしいシステムですね。期待しています。
 ではいったん今回のアップデートに話を戻しますね。ACUの供給量は,どのようにして決まるのでしょうか?
 というのも株式システムの実装直後には,株の供給量があまりにも少なくて,なかなか買えないといった状況でした。万事がそんな感じだと白けてしまいますよね。

Oh. Joon Kyung氏:
 ACUの供給量は,もちろん適当に決めるわけではありません。複雑な計算式に基づき,サーバー内の経済状況に応じて,自動的に調整されるようになっています。
 サーバーによってACUの価格は違ってきますが,希望者に行き渡るくらいの供給バランスなので,その点はご安心ください。

4Gamer:
 ちなみに現在のレートはどのくらいでしたっけ?

Oh. Joon Kyung氏:
 日本の場合ですと,最初のサーバー“エナレット”が1ACUあたり4000Q。最近出来た“アルディア”は400Qといったところです。

4Gamer:
 同じ日本のサーバーですら10倍も違うんだから,確かにサーバー間貿易には大きな意味がありますよね。

Oh. Joon Kyung氏:
 現在は日本内のサーバー間のみで貿易が可能ですが,実際にそれで儲けている人もいるでしょうね。近々行うアップデートで,これがグローバルエリアまで拡大されます。

4Gamer:
 サーバーが14基ある韓国では,この貿易システムはどのように受け入れられてるのでしょうか。

Oh. Joon Kyung氏:
 韓国版サーバーでは,すでに装備品のトレードも行えるようになってます。非常に好評で,かつてないシステムだと言われてますよ。

4Gamer:
 となると次は,ほかの国のサーバーとの交易に期待が集まりますよね。先ほど話に出てきた,国固有の特産品とはどのようなものなのでしょう?

Oh. Joon Kyung氏:
 主なものとしては,装備品ですね。例えばグローバルサーバーにおいてのみ,中世風の鎧を生産できます。これは日本や韓国では生産できないので,入手するには貿易システムを用いねばなりません。一方の韓国サーバーでは,韓国文化にちなんだ鎧があります。そして日本は,まぁ大体予想がつくとは思いますが,実装されてからのお楽しみということで……。

4Gamer:
 そういえば,つい先日も温泉ダンジョンが追加されるなど,日本風のものはちょくちょく実装されていますね。27世紀とはいえ,舞台は中世アジア風ですし,日本風の装備アイテムも期待しています。
 ちなみに,これら国固有の装備品の性能は,どの程度のバランスなのでしょうか?

Oh. Joon Kyung氏:
 装備条件のレベルに対して,性能はかなり高めに設定しています。そのため,韓国サーバーで実装されているものについては,マーケット価格も非常に高いですね。

4Gamer:
 あまりにも性能が高いと,きっとそれに人気が集中しちゃいますよね。普通に考えると,アイテム課金と相性が悪い気もするのですが。

Oh. Joon Kyung氏:
 課金アイテムは現在衣服だけで,装備品はないから,その点は問題ないですね。仮に装備品をアイテム課金で入手できると,ユーザーが生産する楽しさが損なわれる危険性もあります。だから現時点では,装備品を課金アイテムにするつもりはありません。

4Gamer:
 なるほど,分かりました。ところで,これまで話を聞いていて思ったのは,貿易システムが,かなり上級者向けのコンテンツだということです。このあたりはいかがでしょうか?

Oh. Joon Kyung氏:
 まだシステムを実装してから間もないので,多くの人から注目されており,そのために流通価格が高くなっている面はあると思います。貿易システムは,いうなれば“マーケット”の拡張機能のようなものです。なので初心者の間はマーケットで十分に遊べると思いますし,それに慣れた人がステップアップとして,貿易システムを利用してもらえたらと考えています。

4Gamer:
 確かにマーケットも貿易も,お金を貯めていくという面白さは共通ですね。チャリンチャリン貯まっていくのはたまらないです。

Oh. Joon Kyung氏:
 私も,個人的に,ゲーム内の資産順位を見るのが楽しいですね(笑)。



■地域によるプレイスタイルの違いについて

4Gamer:
 ところで,韓国と日本でプレイスタイルに大きな違いがあったりしますか?

Oh. Joon Kyung氏:
 日本のプレイヤーの動向を見ていてとくに驚いたのが,コミュニティ活動が活発だということです。例えば国家に登録した多くの人が,オークションなどのイベントに参加しています。株主になった人も,積極的に国守に意見を述べている。国守の中には自分でサイトを作り,活動方針を政策として公約もしています。こういった動きは見ていてとても面白いですね。
 一方で韓国サーバーの上級者は,どちらかというと「とにかくお金を集めて最大の株主になる!」といった人を多く見かけます。

4Gamer:
 よく,韓国のゲーマーは戦闘が好きと言われますので,経済に重点を置いた君主をどのように遊んでいるのか気になっていたのですが,なるほど,お金稼ぎで勝負をしているわけですね。

Oh. Joon Kyung氏:
 そうですね。戦闘好きというより,競争/勝負好きという認識が正しいかもしれません。とはいえ,やはり戦闘を好んでプレイしている人も多いですよ。割合でいうと,韓国サーバーでは60%程度の人が戦闘メインの遊び方です。生産メインという人が30%で,残りの10%が交易や政治を中心に遊んでいます。

4Gamer:
 日本とグローバルサーバーではどうでしょう?

Oh. Joon Kyung氏:
 日本サーバーでは生産寄りの人が多く,いま言った順番だと「50%,40%,10%」です。グローバルサーバーは,多くの地域から人が参加する都合上,コミュニティが形成されにくく,戦闘が70%といったところですね。

4Gamer:
 最も多くのプレイヤーを抱える韓国で戦闘寄りの人が多いということは,それに沿う形でゲームバランスが調整されるのでしょうか。例えばレベルキャップに違いがあったりします?

Oh. Joon Kyung氏:
 どこの国のバージョンでも基本システムは同じですが,韓国サーバーのレベルキャップは200で,日本は100になっています。とはいっても,実は,レベルキャップに達するまでに必要な総経験値量は同じなんです。

4Gamer:
 といいますと?

Oh. Joon Kyung氏:
 日本サーバーの1レベルは,韓国サーバーの2レベル分になります。韓国のレベル200と日本のレベル100は,能力的に,ほぼイコールなんですよ。

4Gamer:
 うお,それは初耳でした。ただ,レベルアップ時にはステータスポイントを獲得しますが,そういった面でのバランスに差はないのでしょうか?

Oh. Joon Kyung氏:
 確かに,同じ経験値でレベルが倍になる分,ステータスポイントを獲得できるチャンスは韓国サーバーのほうが多いです。しかし,1ステータスポイントあたりの効果も半減されており,実質的な違いはほとんどありませんよ。

4Gamer:
 それを聞いて安心する日本人のプレイヤーも多いと思います。それにしても,いったいどのような経緯があって,レベルアップの違いが生じたのでしょう?

Oh. Joon Kyung氏:
 韓国サーバーのレベルキャップは最初100で,それから150→200と段階的に拡張しています。200になった段階で,日本語ローカライズ版の話が出てきて,じゃあどうしようかという話になりました。
 ご存じのように君主は経済システムに重点を置いたタイトルなので,レベル上げ以外の要素にも注目してほしい,という思いがあり,最終的に数値上は100に決めました。

4Gamer:
 なるほど。戦闘とレベルアップが大半のゲームになってしまうと,君主らしさが失われてしまいますからね。
 ただ,韓国サーバーの6割もの人が戦闘に夢中のようですし,今後もレベルキャップが上げられることになるかと思いますが。

Oh. Joon Kyung氏:
 実際のところ,韓国サーバーでレベル200に達している人は,片手で数えられる程度の数しかいません。もちろん,いつかは考慮しなければならないかもしれませんが,かなり先の話になるのではないでしょうか。開発側としても,君主らしさを保つために当面は経済システムに重点を置きたいですね。
 ちなみに日本人の最高レベルは,92が2〜3人いたと記憶しています(編注:インタビューは2006年7月20日に行った)。


■戦闘と生産の両面でメリットがある「ギルド」機能

4Gamer:
 今後の君主におけるアップデートについて,ほかにとくに大きなシステムといったものはありますか?

Oh. Joon Kyung氏:
 最も大きなものとしては,「ギルド」を予定しています。既存の大規模なコミュニティといえる「国」とは異なり,こちらは,プレイヤー達が自主的に運営できるコミュニティという位置付けです。ギルドに参加することで,キャラクターの成長に役立つさまざまなメリットを得られます。

4Gamer:
 ギルド機能は多くのMMORPGで実装されていますが,君主ならではのシステムはありますか?

Oh. Joon Kyung氏:
 ギルド用の倉庫などがありますが,とくに特徴的なのは,ギルドメンバーのみが利用可能な狩り場の存在です。この狩り場は,いわゆるインスタンスエリアとなります。
 ここでは,ギルドメンバーが力を合わせることで,生産用のレアアイテムを獲得できます。ただしレアアイテムをレシピとして用いた生産は,有能な職人が複数人いないと行えません。

4Gamer:
 戦闘や生産に長けたメンバーが,それぞれ自分の得意分野で力を発揮して,協力し合うというわけですね。
 では,例えば生産に特化するようなギルドは,レアな材料品をマーケットを通じて入手するしか方法はないのですか?

Oh. Joon Kyung氏:
 それについては,現在開発している「オークション」システムで入手可能です。オークションは現在ある“マーケット”とは異なるもので,特定の場所に集まったプレイヤーキャラクター同士で,リアルタイムで入札します。レアな素材や銘入りといった,極めて高級なアイテムをここではやりとりできるようになります。

4Gamer:
 え,本当に1か所に集まるんですか? それは面白そうですね。「ネット」と付かない,本当のオークションなんですね。

Oh. Joon Kyung氏:
 確かにマーケットは便利なシステムです。しかしイベントとして見た場合,1か所にキャラクターを集めるほうが,きっと盛り上がりますよね。例えば,何かがとんでもない高値で落札されたら,その場にいた人が「おおっ,今の誰だ?」と,どよめいたり。とくにコミュニティ面の発達した日本サーバーでは,オークションが盛り上がるんじゃないかなと期待しています。

4Gamer:
 ええ,臨場感があって凄く面白そうですね。もっとシステマティックな,味気ないオークションを想像していました。


Oh. Joon Kyung氏:
 現在君主では,政治システムを通じて,特殊な権限のあるプレイヤーが,ほかのプレイヤーのキャラクターを監獄に入れたりといった処罰を行えます。もちろん,不正行為をしたプレイヤーに対してのみ処罰可能ですが。で,あまりにも悪質なプレイヤーに対しては,そのキャラクターの装備品を剥奪したうえで,オークションに出品したりといったことも考えています(笑)。

4Gamer:
 あはは,面白そうですね。

Oh. Joon Kyung氏:
 そのほか,日本版のみの機能も含めた,たくさんの構想がありますよ。

4Gamer:
 ……いやちょっと待ってください。それって,つまり,ゲームポットさんにそれだけたくさんの要望が来てるということなんでしょうか。

Oh. Joon Kyung氏:
 はい。君主はもともと,韓国版と日本版とでは,一部のグラフィックスどころかメインストーリーまで違いますが,その後も,それぞれ独自に発展している部分があるんです。だから日本のプレイヤーさんの声は,かなりゲームに反映していますよ。どんな意見でも,最大限前向きに検討するのがポリシーです。
 ちなみに,日本サーバーで最初に実装されたダンジョンが,後になって韓国サーバーに逆輸入といった展開もしばしばあります。

4Gamer:
 「日本のプレイヤーの声を,極力ゲームに反映させる」と言う開発会社は多いんですが,実際にはそうでもなかったりするんですよね(笑)。でも君主の場合は,これまでを見ていれば,そうではないことが分かります。実際に,韓国版と日本版で大きく違うわけですからね。
 ちなみに韓国のプレイヤーからは,どういった要望が多く寄せられていますか?

Oh. Joon Kyung氏:
 先ほども話題に出たレベルキャップの上昇や,あとはダンジョンやアイテムの追加など,キャラクターを成長させる方面が多いですね。

4Gamer:
 ふむふむ,国民性が出ていて面白いですね。
 ところで,君主って,ほとんどすべての情報がゲーム内で直接参照できますよね。あれがギルドシステムでも応用できると面白いんじゃないかなあ,と思いました。

Oh. Joon Kyung氏:
 ええ,それも構想段階ですが考えています。例えばギルドランキングや,どのギルドがどの国に常駐してるか,などなど。君主は経済に主眼を置いたMMOなので,それに関連したデータは最大限出していきたいです。

4Gamer:
 ギルドシステムの実装時期はいつ頃になりそうですか?

Oh. Joon Kyung氏:
 結構早いですよ。今年の秋を予定しています。


■政治・経済に主眼を置いた「君主」には今後も要注目

4Gamer:
 君主は経済システムもそうですが,政治システムを通じて,プレイヤーに与える権限の大きさも注目すべきだと思います。いったい今後,プレイヤーにどこまで権限を与えるのでしょうか?

Oh. Joon Kyung氏:
 できる限り広げていきたいですね。ただし,権限を与えるとトラブルが発生する可能性も増えるわけで,これとの兼ね合いにも気をつけてます。
 実は以前,韓国で,これから戦争を行う相手国のキーマンらを,権限を持ったプレイヤー(大臣)が監獄に入れてしまうといった事件がありました。その人達は無実だったので,国民が怒ってゲーム内で弾劾デモを起こし,最終的にはGMが出てきてその当時の“君主”を弾劾しました。

4Gamer:
 そういった,予測もつかないトラブルが起こる危険性については,どのように認識していますか?

Oh. Joon Kyung氏:
 君主が政治経済をテーマとしている以上,大きな権限は絶対に必要なのです。しかしおっしゃるとおり,権限の許容量を見極めるのが難しい。でも,難しいけどやるべき価値はあると思うし,それこそが君主らしさであるんじゃないでしょうか。

4Gamer:
 どこまでいくのかなあ。5年後はゲーム内世界が全然違っているかもしれませんね。
 こうやって話をしている間も,まだまだ大きなネタが眠っているんじゃないかな,という気がしてます。

Oh. Joon Kyung氏:
 せっかくなので,もう少し先のこともお話ししましょうか。サーバー間の貿易システムが一段落したら,その次は対人戦関連に取りかかろうかと思っています。1対1だけじゃなくてGvGや攻城戦,さらには,先ほど少しだけ触れた,サーバー間戦争システムまでいきたいですね。
 サーバー間戦争を実装させたら,ギルド内生産で,投石機といった攻城兵器作るなんてことも考えています。ちなみに,サーバー間戦争が起きる理由は,やはり“貿易摩擦”ですかね(笑)。このように,君主ならではの戦争のやりかたがあると思うんですよ。
 ゲームポットさんからも,常にたくさんの要望をいただいています。今後もできる限り要望を実現して,プレイヤーを楽しませていけたらと思ってます。

4Gamer:
 こうやって話していると,どのアイデアも,割合すぐに導入されちゃいそうな気がしてきますね。ぜひよろしくお願いします。
 では最後に,読者のみなさんにコメントをお願いします。

Oh. Joon Kyung氏:
 君主を楽しんでいる日本のみなさまに,もっともっと良い君主を見せられるように,今後も努力を続けていきます。
 まずは,サーバー間貿易システムやギルドシステムが,コミュニティ面の発達した日本でどのように受け止められるのか,楽しみに見守っています。

4Gamer:
 分かりました。本日はありがとうございました。


自前のノートPCで,ほかのサーバーと交易する模様を見せてくれたOh氏。右は,今回通訳も務めてくれた,ゲームポット エンターテイメント事業本部 オンラインゲームチーム マネージャー 三好平太氏
 一般的なMMORPGのサーバーは,それぞれが完全に独立したものである。それゆえサーバーが設置された国や,設置された時期によって異なる“文化”が形成され,それがサーバーの個性となっているのだ。
 しかし,君主が実装する「サーバー間貿易システム」では,その個性の違いをもゲームコンテンツとして取り入れている。そのコンセプトと,サーバー同士を結びつけるという技術面の両方において,非常に珍しい試みといってよいだろう。

 また今回判明した「ギルド」や「対人戦」のシステムについても,“ありきたり”な内容ではなく,本作ならではの経済概念がたっぷり盛り込まれたものになることが期待できそうだ。
 本作の経済と,そしてゲーム内でプレイヤーが行使できる権限は,一体どこまで広がってしまうのだろうか。一プレイヤーとしてはちょっと恐い半面,オンラインゲームを追い続ける記者としては猛烈に気になるのも事実だ。

 そしてプレイヤーにとっては,君主のローカライズ作業が単純な翻訳のみならず,日本人の趣向に合うようにゲームバランスを一から調整している,という姿勢が判明したのも嬉しかったのではないだろうか。4Gamerのニュース記事を見ている読者なら分かるように,現行のMMORPGで,ここまで大小さまざまな試みがなされているタイトルは,実は少ない。今回のインタビューで,君主は,コミカルな2Dグラフィックスからは想像もつかない個性的なMMORPGとして急速に成長しつつあるな,という印象を受けた次第だ。(Text by 川崎 政一郎 Photo by kiki)


君主 online
■開発元:NDOORS
■発売元:ゲームポット
■発売日:2006/03/31
■価格:基本料金無料+アイテム課金
→公式サイトは「こちら」

【この記事へのリンクはこちら】

http://www.4gamer.net/news/history/2006.07/20060721153723detail.html