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HTML5ゲームとクラウドゲームは,ゲーム市場に何をもたらすのか。「黒川塾 五十一(51)」をレポート
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印刷2017/07/19 15:34

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HTML5ゲームとクラウドゲームは,ゲーム市場に何をもたらすのか。「黒川塾 五十一(51)」をレポート

 トークイベント「エンタテインメントの未来を考える会 黒川塾 五十一(51)」が2017年7月18日に東京都内で開催された。同イベントは,メディアコンテンツ研究家の黒川文雄氏が,ゲストを招いて,ゲームを含むエンターテイメントのあるべき姿をポジティブに考えるというものである。

メディアコンテンツ研究家 黒川文雄氏
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 今回のテーマは,「HTML5ゲームとクラウドゲーム市場の未来を語る」。ガンホー・オンライン・エンターテイメント 代表取締役社長 CEO 森下一喜氏,ゲームクリエイター 中 裕司氏,コーエーテクモゲームス 執行役員 藤田一巳氏,バンダイナムコエンターテインメント NE事業部 第2プロダクション ゼネラルマネージャー 手塚晃司氏,ヤフー ビジネスプロデューサー 脇 康平氏の5人が,昨今注目を集めているHTML5ベースのブラウザゲームおよびクラウドゲームについてトークを展開した。

 最初の話題は,当日発表されたばかりの新プラットフォーム「Yahoo!ゲーム ゲームプラス」(以下,ゲームプラス)について(関連記事)。脇氏によると,ヤフーは4年ほど前からHTML5ゲームの可能性を検討しており,今回,クラウドを介したゲームのストリーミングと合わせ,満を持してサービスを展開することにしたという。

ヤフー ビジネスプロデューサー 脇 康平氏
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 ゲームプラス最大のセールスポイントは,Webブラウザが動作する環境さえあれば,いつでもどこでもゲームをプレイできること。脇氏は,ヤフーが展開しているほかのサービスをゲームプラスに連携させることで,集客を含め,ゲームの新たな面白さを提供していきたいと語った。
 また,これまであまりデジタルエンターテイメントと縁がなかった層,たとえば年配のヤフーユーザーが,ゲームプラスで初めてゲームに触れたときに何が起きるのだろうかといった期待もあるとのこと。

 2018年春よりHTML5ゲームのサービスを提供するバンダイナムコグループの新会社・BXDの代表取締役社長に就任する手塚氏も,やはりさまざまな事業を展開しているグループ全体の強みを活かして,新しい遊びを作り出したいと話す。
 また,HTML5に関する研究は2年ほど前から進めており,内部では発表済みの3タイトル以外にも複数の開発ラインが稼働しているという。

バンダイナムコエンターテインメント NE事業部 第2プロダクション ゼネラルマネージャー 手塚晃司氏
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 コーエーテクモゲームスは,ゲームプラスにてHTML5ゲーム「Turn」(コードネーム)を配信すると発表した。藤田氏によると,その背景には「ゲームとして表現したいものを実現できる環境が整っていれば,プラットフォームにこだわらない」という考え方があるとのこと。今回HTML5を選んだ理由の1つは,技術的な条件が整ってきたからだそうである。

コーエーテクモゲームス 執行役員 藤田一巳氏
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 森下氏も,「ゲーム開発者の観点からすると,プラットフォームは何でもいいんじゃないかと考えている」とし,ガンホー社内でもHTML5ゲームの研究を進めていることを明かした。実際,「パズル&ドラゴンズ」のプロジェクトが本格的に始動する前,「HTML5で作ってみたらどうなるだろう」と考えたこともあったという。

ガンホー・オンライン・エンターテイメント 代表取締役社長 CEO 開発統括本部長 エグゼクティブプロデューサー 森下一喜氏
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 中氏はHTML5ゲームのメリットの一つとして,ユーザーにURLを送るだけで,インストールなどの手間をかけることなく,すぐに遊んでもらえる可能性があることを挙げた。たとえばゲームプラス独自の短縮URLをユーザー間で相互に送り合う仕組みを作り,さらにはニンテンドー3DSの「すれちがい通信」のように送り合うこと自体を遊びにしてしまえば,大きくブレイクするのではないかと展望を語った。

中 裕司氏
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 実のところ中氏の提案は,BXDがやりたいことの1つであるとのこと。手塚氏は「SNSでURLが送られてきたり,店頭でQRコードを読み込んだりするだけで,ゲームが起動したりガチャが回ったりする。そういったHTML5ならではの新しいゲーム体験が提供できるのではないか」と説明した。

 藤田氏は,操作が複雑だったり,予備知識が必要だったりといったような,プレイヤーが強いられる「ゲームの学習コスト」に言及した。「ゲーム開発者は,ゲームのカロリー(面白さやコンテンツの規模・密度など)を高めるために,学習コストを高くしがち」と指摘し,たとえHTML5ゲームのURLを送り合う環境が実現しても,学習コストの高いゲームばかりでは誰も遊ばなくなると予想。「これからのゲームは,学習コストが低くカロリーが高いことが重要」と語った。

 またゲームプラスでは,ユーザーが痩せると,ゲーム内のキャラクターもスリムになるといった,リアルとゲームを連動させるタイトルも提供していくという。
 脇氏によると,そうした遊びは必ずしもプレイヤーに向けたアピールというだけではなく,ゲームの作り手の視野を広げる意味があるとのこと。「たとえば任天堂は,携帯ゲーム機を2画面にしてタッチパネルを採用することで,作り手にも新しい遊びを考える余地を与えた。そのように,我々がゲームを作りたくなるような動機を用意し,クリエイターがすばらしいゲームを作り,ユーザーが喜ぶというサイクルを実現したい」と話していた。

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 トークの話題は,クラウドゲームに移った。クラウドを使ったゲームのストリーミングサービスといえば,これまでいくつか事例があったものの,今のところ大きな流れにはなっていないという印象だが,ここに来てゲームプラスが取り組む理由を,脇氏は「安価で大容量の高速データ通信を利用できるなど,通信インフラが整ってきたから」と説明。ある意味,通信業界大手のソフトバンクグループに属するヤフーだからこその判断ともいえそうである。

 ただ,ほかの登壇者は「関心がある」「可能性がある」としつつも,クラウドゲームを全面的に肯定しているわけではないようだ。藤田氏は,「レイテンシーなどの技術的な課題が解決したとしても,多くの人が同時に遊ぶとなると,そのぶんバックボーンに負担がかかる。それを解決するには,今のところ巨大な資本が必須」と指摘。
 手塚氏は,「クラウドゲームでハイクオリティを目指すと,必ず技術的な課題が生ずる。それよりも,クラウドならではの遊びを実現するべき」と語った。
 そして中氏は,過去のゲームタイトルを遊べるアーカイブを充実させるといいのではないかとコメント。森下氏もそうしたアーカイブには一定の需要があり,簡単に移植できるのであればメーカーとしても喜ばしいとした。

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 最後の話題は,ビジネス的な側面について。現状,App StoreやGoogle Playを介してゲームタイトルを提供する場合には,手数料を支払う必要があったり,あるいは事前審査があったりして,それがパブリッシャやデベロッパの負担になっているとする声もある。

 手塚氏と中氏は,全世界にゲームを配信する手続きや手間を踏まえると,AppleやGoogleが不当に高い手数料を取っているわけではないとしたが,脇氏は,ゲームプラスでは無償シリアルコードの配布OK,審査は基本的に事後承認といったように,制約をできるだけ少なくするとのこと。

 藤田氏は「手数料とは,いってみれば場所代。他人が作った一等地でビジネスをするのか,過疎地でもビジネスが成立するようなものを作るかのどちらかしかない」とし,「我々としては,その地に見合ったゲームを出す努力をすることと,見合いそうなプラットフォームに乗るだけ」と語った。

 そして森下氏は,App StoreとGoogle Playが世界を席巻している中に,日本からゲームプラスやBXDが台頭していくと,より面白い状況になるのではないかとの展望を示した。

 最後に,脇氏がゲームプラスについて,あらためてコメント。「クリエイターの皆さんが,一旗揚げてやろう,面白いものを生み出してやろうと思ってくださるような環境を追いかけていきます。たとえば,ここにいる中さんはゲーム業界のレジェンドですけれども,そういった方が面白いゲームを生み出してくだされば,ユーザーは幸せになれます。HTML5やクラウドのような技術が,そのきっかけとなればと思っています」として,トークを締めくくった。

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