インタビュー
バンダイナムコはなぜ「VR ZONE Project i Can」を立ち上げたのか。プロジェクト仕掛け人のコヤ所長とタミヤ室長にいろいろ聞いてみた
ただ,この施設にはいろいろと不思議なところもある。
たとえば,プロジェクト名称の「Project i Can」には「VR」を連想させる要素はない。そして実際に施設に足を踏み入れても,バンダイナムコエンターテインメントのロゴは最小限でしかなく,ゲーマーに馴染み深いIPが使われているわけでもない。また,確かに利用料金は(ゲームセンターと比較すると)高めだが,「儲かって儲かって仕方ない」というほどではなさそうだ。
関連記事:バンダイナムコがお台場ダイバーシティに仕掛けた“VRエンターテインメント研究施設”「VR ZONE Project i Can」をじっくりと体験してみた
果たして,VR ZONE Project i Canはどんな経緯で,何を目指して誕生したのだろうか。掲げる理想から収支にまつわる話まで,気になるところを仕掛け人であるコヤ所長こと小山順一朗氏,タミヤ室長こと田宮幸春氏に尋ねてみた。
「VR ZONE Project i Can」公式サイト
施設名称:VR ZONE Project i Can
施設面積:165.26坪 (約545.4平方メートル)
所在地:東京都江東区青海1-1-10 ダイバーシティ東京プラザ 3F
(ゆりかもめ台場駅徒歩5分/りんかい線東京テレポート駅B出口徒歩3分)
TEL:03-5579-6141 (2016年4月15日より)
対象年齢:13歳以上(13歳未満のお子様はVRアクティビティのご利用ができません)
料金:
スキーロデオ 700円 (651バナコイン)
リアルドライブ 700円 (651バナコイン)
高所恐怖SHOW 1,000円 (930バナコイン)
脱出病棟Ω 800円 (744バナコイン)
トレインマイスター 700円 (651バナコイン)
アーガイルシフト 700円 (651バナコイン)
※施設内チャージの場合
※入場無料
※本施設のご利用は「バナコイン」でのお支払いとなります。「バナコイン」はバンダイナムコグループの様々なサービスを利用できる電子マネーです。施設エントランスにてご購入(チャージ)してご利用いただけます。
ご利用方法:予約制
営業時間:10:00〜21:00(不定休)
施設運営:株式会社ナムコ
VR ZONEを半年で完成させた秘訣とは
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。
まず最初に,そもそもなぜバンダイナムコが「VR ZONEを運営しよう」と考えたのかを教えてください。
田宮幸春氏(以下,田宮氏):
大枠のお話をしますと,まず弊社は長らく「バンダイナムコゲームス」という社名でしたが,2015年4月より「バンダイナムコエンターテインメント」と改めました。ゲームだけではなく,さまざまなエンターテイメントを広く提供していく,という方向性になったわけです。
この変化を示す新コンテンツの1つとして,Project i Canを立ち上げたというのが,VR ZONEのきっかけと言えますね。その一環として,お台場で今までにはなかった雰囲気のゲーム関連施設,つまり「ゲームセンターの枠に留まらないアミューズメント展開をチャレンジしよう」という話になりました。
4Gamer:
企画自体がスタートしたのは,2015年4月以降ということですか。
田宮氏:
もちろん,それ以前にも社内での独自技術研究は進めていましたが,Project i Canが正式にスタートしたのは2015年の8月です。コンテンツのリストも店舗計画も何もないところから,半年でVR ZONEを仕上げた感じですね。
4Gamer:
それはすごいですね!
ゲームセンターと言えば,バンダイナムコはこれまでにいわゆる「体感ゲーム」を多数制作されています。VR ZONEのコンテンツでも,シートが動いたり振動したりといった体感ゲームの影響のようなものを感じました。
田宮氏:
我々はお客様に体験を与えるマシンの開発をいくつも行ってきました。
そして,ここ数年でVR対応ヘッドマウントディスプレイ(以下,VR HMD)の性能が急激に向上している。これを踏まえて,VR HMDと体感マシンをうまく組み合わせれば,コンシューマ向けVRとはまったく違う面白さが提供できる――そんな確信があったんです。
私が会社(当時はナムコ)に入ったのは1990年でしたが,その頃にも「VRブーム」があったんですよ。アミューズメント施設向けの「ギャラクシアン3」は,弊社が当時のVR技術を採用したゲームの1つですね。
同時期にはセガさんの「バーチャ」シリーズをはじめ,任天堂さんの「バーチャルボーイ」,タカラさんの「ダイノバイザー」がリリースされて,業界全体で大きな動きがありました。でも1990年代のVRブームは,結局尻すぼみに終わってしまった。
それが近年,あらためて「仮想現実」「バーチャルリアリティ」への興味や関心が高まっています。「VRって何?」と思っている人は非常に多いですよね。
この興味に対して,ただ画像や映像を見るだけではなく,実際に自分が仮想空間の内部を移動したり,そこで仲間と会話したりといった「ほかではできないこと」が,我々なら提供できると思ったんです。
4Gamer:
そこに体感ゲームの知見が生きていると。
小山氏:
自分たちでもいろいろなHMDを試してみましたが,ソニーさんに試作段階のPlayStation VRを体験させてもらったのは大きかったですね。当時はまだ「Project Morpheus」と呼ばれていた頃ですが。
そこで「これはいける!」と思ったから,弊社の原田(勝弘氏。鉄拳プロジェクト チーフプロデューサー)が「サマーレッスン」を開発したわけです。「サマーレッスン」で一定の評価をいただいたことを踏まえて,次はもっと「動く」ものを作ろうという機運が高まりました。
4Gamer:
VRコンテンツの中には「面白いんだけど,すごく酔う」といったものが存在します。個人的には「ADR1FT」の体験が強烈だったのですが……(苦笑)。しかし,VR ZONEのVRコンテンツではほとんどVR酔いがありませんでした。
小山氏:
そこは「機動戦士ガンダム 戦場の絆」で得た知見やノウハウが大いに役立ちました。
あのプロジェクトは13年前に始まったものでしたが,とにかくそれまでのゲーム制作における常識がまったく通じなかったんです。開発中は,開発者もテストプレイヤーもゲーゲー吐きまくりで(笑)。
田宮氏:
「戦場の絆」の経験は,VR ZONEのコンテンツにもかなり活用されています。カメラ制御に関してだと,従来のアクションゲームでは「物理的に衝撃を受けた」ことを表現するためにカメラや景色を揺らしたりするのが定石ですが,VRコンテンツでそれをやるとてきめんに酔う,とかですね。
ゲームの行き詰まりを見据えながら
4Gamer:
ところで,プロジェクト名の「Project i Can」の由来を教えていただけますか。極端な話,「バンダイナムコVRゲームゾーン」みたいな名称にするという選択肢もあったと思います。
まず,我々の考え方として「VR体験は,ビックリ体験とは違う」というものがあります。日常生活の中でできなかったことが,VRによって実現できる。VRの凄さは,日常の体験の延長線上にあると思うんです。そして,お客様もそういう体験こそ求めているんじゃないか,と。
つまり,施設やコンテンツのコンセプトが「i Can」というわけです。
小山氏:
「大人になってもできないことが,できる」という感覚ですね。だからVR ZONEのコンテンツは,基本的に「現実」がベースになっているものが多いんです。
それに,現実と何ら変わらないところから始まって,酷い目に遭う展開のほうが面白いじゃないですか(笑)。
4Gamer:
その意味で言うと,「アーガイルシフト」だけはちょっと毛色が違いますね。
田宮氏:
そうですね。完全なSFモノです。
ただ,「アーガイルシフト」はプレイされたお客様の反応がとても面白くて,普段あまりゲームをしないという人ほど,驚かれない傾向があります。「スキーロデオ」や「高所恐怖SHOW」では,「驚いた」「怖かった」と言われるんですが。
これは「どうしてだろう?」と思って話を聞いてみたら,「ロボットに乗って戦う世界だったら,これくらいのことは起きるでしょう」と(笑)。なるほどなぁ,と感心しました。
ともあれ,「ゲームに慣れていない人に現実世界を体験してもらう」という方向性は,VRの間口を広げるという意味で,間違っていなかったと再確認しましたね。
4Gamer:
「SFなんだから,これくらい当然」というのは,確かに面白い反応ですね。
田宮氏:
これは「トレインマイスター」でも違う形で発生している問題で,普通の人には「電車を運転している」という実感が持てないんです。その結果,全長220メートル,500トンの巨大な物体を運転するという感覚ではなく,自動車を運転する気分のままプレイされてしまうわけです。
こうなると「なんで,こんなにブレーキの効きが悪いんだ!」「なんで,全然加速しないんだ!」という,ストレスの高いドライブゲームになってしまう。
そこでシートの前に電車の模型を用意して,これから自分が運転する乗り物に対するイメージを確認してもらうと同時に,インストラクターの前説で重量について言及するようにしました。「これはそういうものなんだ」という入り口をうまく作ると,体験自体の納得感が高まるんです。
小山氏:
もう1つ補足すると,施設名に「ゲーム」と明示していないのにも理由があります。
そもそも僕らは,ゲームでもアトラクションでもなく,「VRアクティビティ」という新しいジャンルを作るという方針でプロジェクトを進めてきました。それは,僕がゲームに対して「ちょっと行き詰まってるな」と強く感じているからなんです。
4Gamer:
ゲームの行き詰まり,ですか。
小山氏:
ええ。ゲームというのは多かれ少なかれ,僕ら制作側がルールや世界を作って提供し,プレイヤーがそれを「解く」コンテンツです。
ここにおいて「より進んだゲーム」を追い求めていくと,ルールも世界もどんどん複雑化していきがちです。そして気づいたときには,誰もついていけないゲームができてしまうのではないかと。
この「ついてこれなさ」を解消するためにチュートリアルを用意するわけですが,それでもゲームの複雑化が進むにつれて,独自のお約束や操作方法に対するチュートリアルが必要になります。ゲームがリッチになればなるほど,必要なチュートリアルは増えていく。このループは,あまり良いものではないですよ。
4Gamer:
リッチになることで複雑さや煩雑さが増して,ゲームを楽しめない人が出てくるということですね。
VR ZONEのコンテンツでは,いわゆる「チュートリアル」を用意していません。チュートリアルがない状況で何が作れるのかという挑戦であり,ゲームのリッチ化とチュートリアルの増加というループをリセットしようという試みでもあります。……ちょっと挑戦的過ぎますけど(笑)。
いったんゲームから離れることで,ゲームもまた新しい方向に進めるのではないか。そんな思いから,あえて施設名に「ゲーム」という単語を入れませんでした。
ついでに言うと,「バンダイナムコ」の社名も前面に押し出していません。それは,バンダイナムコのゲームセンターという認識ではないからです。
4Gamer:
さまざまな人気IPを抱えるバンダイナムコの施設なのに,不思議にもそれらを使ったコンテンツがありません。
田宮氏:
会社の冠やIPが表に出ると,どうしても「ゲーム」という先入観が強くなってしまうんですね。ただ,先ほども説明があったように,どうしてもそれは避けたかったんです。
もちろん戦略面で言えば,施設の名前が広まるのと同時にバンダイナムコも知られるようになったほうが望ましいのですが……非常に悩ましいところでしたね(笑)。
4Gamer:
少し話を戻しますが,「ゲームでもアトラクションでもなく,VRアクティビティという新しいジャンルを作る」との話にあった,アトラクションではない,とはどういう意味でしょうか。
小山氏:
遊園地のアトラクション,たとえばジェットコースターに乗った人は,みんな同じ体験をしますよね。もちろん座席によって多少の差はあれど,「一斉に同じ体験をする」というのがアトラクションの現状だと思います。
これに対して,VRアクティビティは「一人ひとり,それぞれが異なる体験を得る」ようにデザインできます。そうである以上,アトラクションを作ってしまうつもりはなかったということです。
想像を越える「事案」が起きる実験場として
4Gamer:
ゲーム色を表に出さず,東京・お台場にオープンしたVR ZONEですが,実際にはどんな客層になっていますか。
田宮氏:
平日は業界関係者やVRに強く興味を持っている人を中心に,お一人でのご予約も多いですね。
これが土日になりますと,カップルやファミリーなどグループでのご予約が多くなり,遊園地やテーマーパークの客層に近い雰囲気ではないかと思います。その傾向はオープン直後から,あまり変わっていませんね。
あと,「最先端のVR体験を獲得しに来た」という感じの人より,「面白い体験があるらしいから遊びに来た」というモチベーションの人のほうが多い印象です。
小山氏:
そもそも,HMDという技術の存在を知らない人もおられますから。「これってPlayStationのゲームなの?」みたいな(笑)。
ゲームセンターの料金と比べると,かなり強気の価格設定ですが,たくさん来場していただいて非常にありがたく思っています。
4Gamer:
話のキモと言えるところに入ってきたように思うのですが,ぶっちゃけ収益面はいかがでしょうか。
小山氏:
大人の言葉になってしまいますが,VR ZONEは「元を取る」ことを目標にした企画ではないんです。……といったところからご推察ください(苦笑)。
4Gamer:
個人的にVR ZONEの価格設定は妥当か,むしろ安いくらいだと思いました。
小山氏:
実際,「VRエンターテインメント研究施設」と名乗っているように,研究という側面が大きいんです。そこを含めたうえで,「収支」を語るべきだろうと思っています。
あと,HMDの普及に寄与できる場であることも重要かと思います。現状,いかにスゴイ技術とはいえ,HMDは高価なものですし,ハイエンドHMDを利用するためのPCも高価です。費用面だけを見ても,普及へのハードルが高いんですね。
でも,この施設で実際にHMDを被ってもらう。体験してもらう。そして「すごいものなんだ」と知ってもらうというのは,今後の日本のためになると思っています。
4Gamer:
将来を見据えた投資的な側面もあると。
小山氏:
少々大げさに聞こえますけどね(笑)。
現在,この施設は世界で最もHTCの「Vive」を酷使している施設です。要は「一般の人にViveを代わる代わる装着してもらった場合,どんな問題が起こりうるか」というデータを取れるのはVR ZONEだけなんです。「こう使うと,ここが壊れやすい」といったデータを伝えると,HTCには大いに感謝されますね。
……といった理想の話だけでなく,生臭い話もすると,いろいろと大変です(苦笑)。やはり,どうしてもオペレーションコストが高くなりますし。
4Gamer:
HMDの耐久性という点では,お客様がどこまで慎重にHMDを扱ってくれるかというのも焦点になりそうです。
田宮氏:
そのあたりも面白い話が満載ですね。
まず最初にお伝えしておくと,「ホラーコンテンツをHMDで体験していたら,あまりにも怖くてHMDを投げ捨てた」というエピソードがありますが,今のところ,VR ZONEではそういう事例は起こっていません。
このエピソードの発端となった事案※にしても,ベルトで固定せずに体験されていたから生まれたものです。ベルトで固定してないのは,さすがにマズイでしょうね。
※TV番組でホラーコンテンツを体験したタレントが,恐怖のあまりHMDを放り投げたケースのこと。このとき,HMDをベルトで頭部に装着しておらず,両手に持った状態で覗いていた。
実際,「HMDを丁寧に扱ってもらえるか」というのは問題の一部しか示せていないんですよ。
たとえば「高所恐怖SHOW」の場合,自由に歩けるコンテンツということもあって,いろいろな人にテストをしてもらい,そこで「行動の可能性」を調査してきました。でも,この施設をオープンして,VR初体験という人がプレイしたとき,完全に想定外の行動が見られました。
板の上から外に踏み出す,いわば「VR自殺」を試みたテストプレイヤーは何人もいました。しかし,あるお客様は「一歩踏み出す」のではなくて,「大の字になってダイブ」されたんですね。
4Gamer:
それは……ちょっと予想できないですね。
田宮氏:
「高所恐怖SHOW」ではお客様に命綱を装着してもらいますが,あれの半分くらいは演出効果を狙っています。「命綱を装着する」という一連の作業を通じて,今から体験するアクティビティに対して,より自然に,深く入り込めるようにしている。そういう技術なんですね。
まさか,あの命綱が本来の用途で機能するとは,ちょっと想定していませんでした。
小山氏:
HMDを被る前に見ているので,「ただの板」と認識しているはずなんですよ。
ともあれ,具体的な数字は出せませんが,VR ZONEの時間あたり客単価はすごく高いんですよ。「高所恐怖SHOW」のダイブ案件も含めて,まだまだ考えなくてはならないことは多いのですが,「これはいける」という手応えはあります。
田宮氏:
お客様の反応を見ていても,「ビジネスとして成立しそう」という感覚はかなり強くなっていますね。
VRをマネタイズするための基礎的な知見
4Gamer:
VR ZONEの今後の展開はどうでしょうか。
田宮氏:
まずはコンテンツの入れ替えを予定しています。
ただ,「あのコンテンツを体験したかったのに……」という人が出るのではないか,という心配もあります。どのタイミングが適切なのか,慎重に検討しているところです。
とはいえ,社内的には新コンテンツが順番を待っている状態で,「いつなの?」と突かれているという事情もありまして……。
小山氏:
「今後の展開」とは少しズレますが,この施設で得られた知見の共有を積極的に図っていきたいですね。
4Gamer:
おお,それはすばらしいです。
小山氏:
先ほど少し触れましたが「VRアクティビティは導入が重要である」ということは,ほとんどのVRコンテンツ開発者が理解しているでしょう。でも,そこには非常に多くの可能性があり得るし,まだまだ洗練できると思います。
そのうえで「VR初体験の人が,どんな反応を示し得るか」という知見についても,どんどん共有していくべきだと考えています。
4Gamer:
と言いますと。
小山氏:
やはり,お客様の安全確保ですね。
体験者が自由に歩き回れる「高所恐怖SHOW」には,一定の,そして予想できない危険性が潜んでいるというのは,先の「ダイブ案件」がよく示しています。そのほかにも「高所恐怖SHOW」では,「現実空間には存在しない柱や壁にもたれようとしてバランスを崩す」というお約束の現象から,「猫を救出した後,怖さのあまり急いで戻るため,VR空間の壁を突き抜けて現実の壁まで走っていく」みたいなものまで,多くの事案が発生しています。
これは,いわゆるルームスケールのコンテンツだけの問題じゃないんですよ。「スキーロデオ」では,スピードの速さに怖くなった体験者が筐体から降りてしまうといったこともありました。
4Gamer:
VRヒヤリハットの展示会のようですね。
この逆側の知見もありまして,面白いことに「危険ではないが極端な反応」をされる体験者は,むしろ現実世界でその手の経験が豊富だったりするというデータがあります。
最も分かりやすいのは「高所恐怖SHOW」ですね。このVRアクティビティでは,「一歩を踏み出せずにギブアップする」という人が時折おられますが,そのうちの結構な割合を鳶職や自衛隊員といった「高所で活動しているプロ」が占めています。
あとは,「スキーロデオ」が一番怖かったとおっしゃっていたお客様にお話を聞いたところ,バイク乗りの方だったりとか。
4Gamer:
それは意外な結果です。
田宮氏:
どうやら「本物の経験」が豊富にあるために,それらが目の前の状況を補完して「これは危ない,無理!」という判断を脳が下してしまうみたいですね。
このように身体的な反射や本能に属する領域については,まだお客様の反応が読めないところがあります。
4Gamer:
安全確保を万全にするという面で,こうした知見は早急に共有される必要がありますね。
小山氏:
我々は出し惜しみするつもりはありませんので,ぜひ積極的に情報交換を行いたいですね。
VR技術に関して言えば,「このままではアメリカに負ける」と強い危惧の念を抱いています。アメリカのゲーム産業はそれこそ20年30年と時間をかけて,「リアリティ」を追っていますから,そこで得た知見をVR研究に応用されると,日本としては差を感じてしまうところがあります。
だからと言って,放っておくと取り返しのつかないことになりますから,ここで頑張って追いついておきたいですね。
田宮氏:
日本に限らない話ですが,そろそろVRがちゃんとビジネスとして成り立つようになってほしいですよ。ありがたいことにVR ZONEは好評をいただいていますが,じゃあ,このコンテンツをそのままゲームセンターに持ち込んで大丈夫か,と言ったら無理でしょう。なにより,価格帯があまりにも違いすぎます。
ですが,VR ZONEを通じてマネタイズの方向性は見えてきた,という手応えはあります。
小山氏:
幸い,バンダイナムコグループには,ゲームを作り,映像を作り,そしてまた施設を運営するノウハウがあります。これらを複合して実現できるという強みを生かし,将来に向けて新しい体験をお届けしたいですね。
4Gamer:
大いに期待しています。本日はありがとうございました。
「VR ZONE Project i Can」公式サイト
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