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シミュレーション&ゲーミングに関する研究を評価するFOST賞,今年は情報社会におけるモラルを教育する模擬授業ゲームが受賞
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印刷2015/03/05 19:54

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シミュレーション&ゲーミングに関する研究を評価するFOST賞,今年は情報社会におけるモラルを教育する模擬授業ゲームが受賞

画像集 No.001のサムネイル画像 / シミュレーション&ゲーミングに関する研究を評価するFOST賞,今年は情報社会におけるモラルを教育する模擬授業ゲームが受賞
 公益財団法人 科学技術融合振興財団(FOST:foundation for the Fusion Of Science and Technology)は本日(2014年3月5日),東京都内で「第8回FOST賞授賞式」を開催した。

 FOSTは,シミュレーションやゲーミングの研究を通して社会に貢献しようとする研究者をサポートしている財団だ。今回の授賞式では,FOSTが助成する研究の中から優れたものを選んで表彰するFOST賞,若手研究者を対象としたFOST新人賞,そしてゲームの研究・開発・応用に関して社会貢献をした人または団体を表彰するFOST社会貢献賞が発表された。

 まずはFOSTの理事長である,コーエーテクモホールディングス 代表取締役社長の襟川陽一氏が登壇。「FOSTが設立されて昨年で20周年を迎えています。助成金と補助金の支給件数が529件,総助成金額が3億3600万円になるなど,さまざまな方々に助成や補助を提供させていただくことができました。最近はネットワークやiPhoneを使った研究テーマが増えてきており,時代を反映していると感じられています。これからもFOSTは豊かな社会と文化の創造に貢献していきたいと考えております。引き続き皆様のご理解とご協力をお願いします」と挨拶した。

FOSTの理事長である,コーエーテクモホールディングス 代表取締役社長の襟川陽一氏
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 続いて,FOST賞,FOST新人賞,FOST社会貢献賞の授賞が行われた。

■FOST賞
玉田和恵氏(江戸川大学 教授)
研究テーマ:
「3種の知識」と「情報的な見方・考え方」を統合した情報教育を普及させる模擬授業ゲームの開発

江戸川大学 教授 玉田和恵氏
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 今年度のFOST賞を受賞したのは,江戸川大学の教授である玉田和恵氏だ。タイトルになっている3種の知識とは,「人としてのモラル」「ネットワーク社会を判断するための情報技術と知識」「先の2つを組み合わせて使うための合理的な判断と知識」のこと。つまり,ネットワークの特性を理解したうえで,モラルを守りつつこれを利用できる人を育てる研究というわけだ。

 日常生活におけるモラルを持っていても,ネットワークの特性を理解していないとさまざまなトラブルを起こしてしまう可能性がある。ネットワーク上のコミュニケーションは「ひとたび発信したものは絶対に取り消せない」「個人的にやりとりをしているつもりでも,その内容は社会に向けて公開されている」など,現実社会のそれと異なった特性を持つためだ。これを理解していないと,個人情報を公開してしまって取り返しが付かなくなったり,人を傷つけるメッセージが意図せず広まる可能性がある。
 こうした事態に至らないようにするため,氏は小・中・高校の生徒のためのゲーミング教材と,これを教える教師のための指導モデルを作成した。

 ゲーミング教材を通し「ネットワーク上でのコミュニケーションでも相手の人を思いやらなければならない」「自分が被害に遭わないよう危険を回避する」「思慮深く様々な情報を調べて行動する」といった心構えが学べるという。
 玉田氏は最後に「今後も精進して,シミュレーション&ゲーミングが情報モラル教育へどのように活用できるかというテーマを発展させていきたいです」と今後の抱負を語った。

FOST賞の目録を渡す襟川氏と,これを受け取る玉田氏
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■FOST新人賞
一ノ瀬元喜氏(阿南工業高等専門学校 助教)
研究テーマ:
ネットワーク上の連続的なノード削除と追加に対する進化ゲームの頑健性

阿南工業高等専門学校 助教 一ノ瀬元喜氏
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 FOST新人賞を受賞した一ノ瀬氏の研究は,2人の囚人に互いに裏切りと協力を選択させる「囚人のジレンマ」というゲームがベースとなっている。お互いに協力すればそれなりの利益が,相手を出し抜いて裏切りに成功すれば最大の利益が得られるが,互いに裏切ると最悪の結果を迎えるという,人間同士の関係性をシミュレーションしているゲームだ。
 ゲーム理論をベースに人間の相互作用を考える研究を行っている一ノ瀬氏は,「人と人が協力的に関われる世界をいかに実現していくか」というテーマを重視しているという。これまでの研究では人と人がどのように繋がっていくかがあまり考えられてこなかったのではないか,という考えのもと,コンピューター上に囚人のジレンマを元としたシミュレーションモデルを作成した。「ネットワーク状に繋がりあった多数のエージェントが,お互いに囚人のジレンマを行い,得点が高い戦略がほかのエージェントに広がっていく」というものだ。
 ここでユニークなのが,さまざまな条件でエージェントの削除や追加を行い,人が社会へ新たに参加したり,消えていったりする状況をシミュレーションしたこと。こうしてエージェント同士の繋がりを変化させたうえで,互いに協力しあう戦略がどうすれば広がるかを調べたのだ。

 結果,高得点のエージェントを削除せずに残しつつ,新たに加えるエージェントを高得点の者と繋げた場合,互いに協力する戦略が最も広がったそうだ。ここから「お互いが協力し合う世界を実現するためには,影響力のある人物をいかに社会から出て行かせないかが重要である」という結論に至ったという。
 一ノ瀬氏は「こうした結果を組織のマネジメントなどに応用していきたい」と語って受賞の挨拶を締めくくった。


■FOST社会貢献賞
大西 昭氏(創価大学 名誉教授)
受賞理由:
日本におけるシミュレーション&ゲーミング学創世記における学問形成とこの学問の世界経済への活用を実証

故・関 寛治氏(元東京大学 名誉教授・元立命館大学 名誉教授)
受賞理由:
日本におけるシミュレーション&ゲーミング学創世記における学問形成とこの学問の世界平和達成への活用を実証

創価大学 名誉教授 大西 昭氏
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 FOST社会貢献賞は,戦後,シミュレーション&ゲーミングという概念が日本に入ってきたばかりの段階からこれに関わってきたという大西氏と関氏(故人)が揃って受賞した。大西氏は,どうすれば経済が安定して平和になるかという視点から世界経済をシミュレートして,政策的な問題にまでアプローチしたことが,関氏は,日本におけるシミュレーション&ゲーミング学の成立に多大な寄与をしたことに加え,平和学会を創設するなどといった活動が,それぞれ評価された。
 大西氏は最後に「現代はパラダイムシフトの時代ですが,幸福になる秘訣はお金持ちになることではありません。生きている間に世のため人のために尽くす。そうすれば必ず幸せな将来が待っています」とコメントした。

左から,東海大学名誉教授でFOSTの理事,FOST賞では審査委員長を務めた白鳥 令氏,一ノ瀬氏,玉田氏,大西氏,襟川氏
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科学技術融合振興財団 公式サイト

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