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日本語版の発売も間近な北米発CGアニメ「RWBY」はいかにして生まれたのか。制作コアメンバーに聞くマシニマの今と,夭折の天才・Monty Oum氏の人物像
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印刷2015/11/14 00:00

インタビュー

日本語版の発売も間近な北米発CGアニメ「RWBY」はいかにして生まれたのか。制作コアメンバーに聞くマシニマの今と,夭折の天才・Monty Oum氏の人物像

画像集 No.011のサムネイル画像 / 日本語版の発売も間近な北米発CGアニメ「RWBY」はいかにして生まれたのか。制作コアメンバーに聞くマシニマの今と,夭折の天才・Monty Oum氏の人物像
 北米のオンラインビデオ配給会社Rooster Teeth ProductionsがYouTube上で展開している「RWBY」は,セルルックの3Dグラフィックスで表現された“日本のアニメ風キャラクター達”が,ギミック満載の武器を手に,スタイリッシュなアクションやコメディを繰り広げる,オリジナルの学園ものアニメだ。
 無料視聴可能な作品でありながら,2014年度のInternational Academy of Web TelevisionではBest Animated Seriesに選出されたほか,日本国内でもそのビジュアルやスピーディなアクションシーンが大きな話題を呼び,来たる2015年11月14日には豪華声優陣による日本語吹き替え版の劇場公開(2週間限定)が,12月9日にはBlu-ray&DVDの発売が予定されている。

 Rooster Teethといえば,「Halo」シリーズの映像を利用したマシニマ「Red vs. Blue」で一躍有名になったスタジオであり,今年初頭に訃報が伝えられた「RWBY」のディレクター・Monty Oum氏も,過去には「Haloid」「Dead Fantasy」といったゲームのキャラクターを使った二次創作ムービーを制作したことでも知られている。本作は純粋な映像作品ではあるものの,その背景にはゲーム文化と切っても切れない縁があるのだ。


 本稿では,東京ゲームショウ2015に合わせて来日したRooster Teethのコアメンバー達──Gray Haddock氏Michael P. Hadwin氏Alan Abdine氏へのインタビューをお届けする。Rooster Teethの成り立ちから,「RWBY」が生まれた理由,そして「RWBY」制作の中心人物だった故・Monty Oum氏が一体どんな人物だったのかなど,さまざまな切り口で話を聞いてみた。「RWBY」やMonty Oum氏のファンは,ぜひご一読をいただければ幸いだ。

左からMichael P. Hadwin氏,Gray Haddock氏,Alan Abdine氏
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3DCGアニメ「RWBY」日本語版公式サイト

Rooster Teeth公式サイト(英語)



「Halo」シリーズのマシニマからスタートした会社,Rooster Teeth Productions


4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。まずは自己紹介からお願いできますか。

Gray Haddock氏(Rooster Teeth/Head of Animation)
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Gray Haddock氏(以下,Gray氏):
 Rooster Teethでアニメーション部門長を務めるGray Haddockです。「RWBY」では共同監督を務めており,また,ローマン役の声優も担当しています。

Michael P. Hadwin氏:
 ゲーム開発部門のディレクターを務めているMichael P. Hadwinです。

Alan Abdine氏(以下,Alan氏):
 主にビジネスのマネジメントを務めているAlan Abdineです。ええと,私はペニーの乗っていたリムジンの運転手役をやったぐらいで,「RWBY」作中での大きな役はありません。……ああ,(やられ役で)何回か死んだことはありますけど(笑)。

(一同笑)

4Gamer:
 今日はその「RWBY」について,詳しくお話をうかがっていきたいと思います。が,御社のことをよく知らないという人のために,まずRooster Teethという会社について聞かせてください。

Alan氏:
 ええ。Rooster Teethは,ロサンゼルスで映像特殊効果の技術者をしていたMatt Hullumと,テキサスのオースティンで通信会社の社長を務めていたBurnie Burnsが立ち上げた会社です。2人はもともと大学の同期生であり,大学時代から一緒に映画を制作していた仲でした。13年ほど前,彼らは趣味で「Halo」シリーズを題材にしたマシニマ「Red vs. Blue」を制作し,それをインターネットに投稿しました。そうしたら,これが爆発的な人気を呼んだんですね。驚いた彼らは,そうした映像制作を仕事にできると考え,Rooster Teethを設立することにしました。

4Gamer:
 自分がRooster Teethの名前を初めて知ったのは,2007年に発売された「Halo 3 Legendary Edition」に収録された,「Red vs. Blue」のエピソードでした。つまり,これはマイクロソフトから公式にライセンスを受けていた,ということですよね?

Alan Abdine氏(Rooster Teeth/SVP,Business Development)
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Alan氏:
 そうです。もともとは趣味としてスタートした「Red vs. Blue」ですが,アップロードしてすぐ,マイクロソフトの目に止まったようです。当然無許諾の作品でしたから,マイクロソフトとしては我々に配信を止めさせることだってできました。しかし,彼らは非常に喜んでくれて,すぐに公認してくれました。

Gray氏:
 「Red vs. Blue」のSeason 1が配信された直後,つまり「Halo: Combat Evolved」の頃の話ですね。

Alan氏:
 ええ。その後も我々は,例えばゲームの「Halo」シリーズに声で出演したり,新しいキャラクターモデルをすぐに提供してもらったり,我々の考案したゲームタイプを実際に作ってもらったり……。

4Gamer:
 「Halo 3」で追加された,Grifballのことですね!

※フィールド中央に出現するボールを相手のゴールに持ち込めばポイントとなる,FPSらしからぬゲームタイプ。「Red vs. Blue」の登場キャラクター,GrifをネタにしたSeason 4作中のギャグが発端となり,実際に制作されるに至った。

Alan氏:
 そのとおり! というように,私達にとってマイクロソフトは,もっとも重要な関係を持つ会社です。そして,今現在のRooster Teethは,従業員140名を数える規模にまで成長し,「RWBY」を始めとするアニメーション,実写映像,ゲーム実況動画,ポッドキャスティング,そしてゲームそのものの開発といった,さまざまなコンテンツを手がけています。

Gray氏:
 映像作品について言えば,YouTubeのRooster Teethチャンネルは,これまでに40億ビューを達成するに至りました。毎週約50の作品をリリースし,月に1億7500万回ほど視聴されています。これはオンライン上の映像配給会社としては,おそらく世界でトップ5に入る数字です。

4Gamer:
 お話にも出ていた「Red vs. Blue」がまさに象徴的ですが,北米ではマシニマという文化が深く根付いている印象です。日本ではあまり馴染みがありませんが,このマシニマという映像制作手法について,簡単にレクチャーしていただけますか。

Gray氏:
 マシニマというのは,”ゲーム映像,主にFPSのリプレイ機能やカメラアングル変更機能を利用してシーンを制作し,その後に音声を付ける”という映像制作の方法です。既存のゲームコンテンツを元にするわけですから,簡単に映像を作り出せるのが大きな利点です。

4Gamer:
 日本で言えば,二次創作の同人誌や,MAD動画に近い文化と言えそうです。

Gray氏:
 そうですね。ゲーム機とゲームソフト,そして録画用デバイスさえあれば良く,ゲームに含まれるアセット(※素材,ここではキャラクターモデルや風景など)への深い理解も必要としないので,作り手は脚本に集中できるのも大きいですね。


4Gamer:
 北米にマシニマが根付く要因としては,どんな理由があったのでしょうか。もちろん,「Red vs. Blue」の存在は大きかったと思いますが。

Gray氏:
 我々としても,「Red vs. Blue」がマシニマの普及に大きく貢献したと自負しています。ただ,当時の北米では,“そもそも良いアニメーションに触れられる機会が少なかった”ことが,マシニマが人気となった理由の一つではないでしょうか。

4Gamer:
 マシニマをとりまく昨今の動向はいかがですか。

Gray氏:
 過去人気があった時期と比べると,今は何とも言えない状況です。というのも,今はValveのSource Engineや,Epic GamesのUnreal Engineといったゲームエンジンが,半ば無料で提供されるようになっています。わざわざインゲームの映像を経由しなくても,比較的楽にアニメーションが制作できる環境が整ってきているんです。

4Gamer:
 なるほど。Rooster Teethも,今はそうしたゲーム系エンジンを使っているのですか。

Gray氏:
 まだ公開していない新しいプロジェクトの中には,Unreal Engineを利用しているものもあります。とはいえ「Red vs. Blue」は,今でも半分は純粋なマシニマですね。もう半分は,アニメーションツールを用いることがありますけど。

4Gamer:
 簡単かつスピーディに映像が制作できる利点は,まだ生きているわけですね。現在,北米ではどんなマシニマが人気なのでしょうか。

Gray氏:
 うーん……「Red vs. Blue」でしょうか(笑)。

(一同笑)

Gray氏:
 ああ,そうそう。我々が10年以上前に制作していた,「The Sims」を題材にした「The Strangerhood」という作品があるのですが,このプロジェクトが最近復活しまして。途中で中断していたシリーズなんですが,「Lazer Team」という実写映像作品の制作資金をクラウドファンディングで募ったときに,Burnieが「The Strangerhood」のseason 2制作をストレッチゴールに設定したんです。半ばジョークだったのですが,どうやら設定金額が低すぎたようで。あっという間に達成してしまって,我々はその義務を果たさなければならない状況になりました(笑)。

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オリジナル作品「RWBY」はいかにして生まれたのか


4Gamer:
 「Red vs. Blue」や実写映像を手がけたのち,2012年末に「RWBY」が発表されたわけですが,この作品に欠かせない存在として,今年(2015年)の初頭に亡くなられたMonty Oum氏の存在があると思います。「RWBY」についてうかがう前に,Rooster TeethとMonty氏の出会いについて聞かせてください。

Gray氏:
 出会った頃のMontyは,独学で3Dアニメーション制作を学んでいた若者でした。Rooster Teethの創設者達は,彼がお気に入りのゲームを活用して制作した「Haloid」や「Dead Fantasy」を見て,そのアクションやカメラワークの虜になってしまったんですね。


4Gamer:
 氏の作品としては,ともに日本でもよく知られているムービーですね。

Gray氏:
 当時,MattとBurnieは「Red vs. Blue」の作風に変化を欲しがっていて,Montyを起用すればそれが実現できるのではないかと考えました。それで「一緒に遊ばないか?」と声をかけたんですよ。そうした経緯でMontyはRooster Teethに入社し,その時点から「Red vs. Blue」は純粋なマシニマだけでなく,アニメーションツールを駆使した映像──カスタムアニメーションの作品に変わっていきました。

Alan氏:
 例えば,Season 8のChapter 3で,“ワートホグが壁をぶち破って大きくジャンプするシーン”があるのですが,これはゲーム内では再現できません。ファンもそこで初めて「これはマシニマではなくて,カスタムアニメーションだったんだ!」と気付いたみたいです。

4Gamer:
 ああ,確かにちょうどその辺りから,アクションシーンが派手になった覚えがあります。「Haloid」もかくやというような。

Gray氏:
 イエス! Montyが「Red vs. Blue」に関わったのはSeason 8から10までですが,彼の手法を取り入れることで,映像に大きな変化がもたらされました。とくにSeason 10では,1つの物語の中に“現在”と”過去”という2つのストーリーラインを用意し,”現在”はすべてマシニマ,”回想“はすべてカスタムアニメーションで制作するという手法にチャレンジしています。これがRooster Teeth初のカスタムアニメーションシーンであり,そしてそれが「RWBY」の制作につながっているのです。

4Gamer:
 「RWBY」の制作の経緯について,改めて聞かせてください。

Gray氏:
 「Red vs. Blue」Season 10制作の最中,Montyも入社3年目を迎えて,そろそろ何か違うことがやりたいと考えていたようでした。そんな中で彼は,「それぞれ異なる色を持った4人の女性の戦士達が戦う」という夢を見たそうです。その翌朝,彼は私と(脚本およびジョーン・アークの声優を務める)Miles Luna,(脚本およびネプチューン・ヴァシリアスの声優を務める)Kerry Shawcrossの3人に,「今日見た夢の話をベースに作品を作ってみたい」と相談を持ちかけてきました。これがプロジェクトが立ち上がる,最初のきっかけになりました。

4Gamer:
 「RWBY」といえば,日本風のキャラクターデザインをセルルックの3Dグラフィックスで表現していることが大きな特徴ですが,そうしたアイデアもその時から?

Gray氏:
 そうですね。Montyとしては,「Red vs. Blue」の制作に使っていたPoserというアニメーションツールを使って,いかに日本のアニメに近い映像を制作できるかにチャレンジしてみたかったようです。それは,日本のアニメを見て育った私や,Miles,Kerryにとっても大変エキサイティングなアイデアでした。
 北米のアニメ制作会社がそうした作品をあまり作らないことを知っていましたし,我々が持っている日本のアニメに対する愛を表現できるチャンスだと思ったからです。

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4Gamer:
 「RWBY」のトレイラーを見たとき,「やられた!」と感じたのを覚えています。日本の中二病テイストが,ついに外人に理解されてしまった,という感じで(笑)。

Gray氏:
 そう言っていただけると,とても光栄ですね(笑)。我々としては,ただ単純にカッコいいアクションとコメディ,そしてアメリカ的な物語の語り口に,日本のアニメが持つ繊細さを加えた作品が作りたかっただけなのですけど。それともう一つ,これはまさにマシニマの特徴でもあるのですが,少人数のチームかつ低予算の環境下で,我々がどこまでの作品を作れるのか。それを追求したのが,「Red vs. Blue」であり,そして「RWBY」だったんです。

4Gamer:
 ああ,それは大いに納得できるお話です。

Gray氏:
 そうして我々は,Montyが一人で制作した「RWBY "Red" Trailer」と,MilesとKerryが手がけたストーリーのアウトラインを材料に,会社の経営陣にプレゼンテーションを行い,そこから「RWBY」の制作が本格的にスタートしました。Redのトレイラーをお披露目したのが……確か2012年のNew York Comic Conでした。


4Gamer:
 北米では珍しいビジュアルスタイルの作品ですが,公開時の反響はいかがでしたか。

Gray氏:
 トレイラーを公開してから,本編シリーズが始まる前に,我々自身でコンベンションを開催しましたが,そこでもうルビー・ローズのコスプレが現れるほど,反応はポジティブでした。またWeb上でも,日本のファンを含むたくさんの人達が,素敵な二次創作イラストをアップロードしてくれていましたね。制作中は正直不安の方が大きかったので,あれはとても嬉しかった。

4Gamer:
 ちなみに,北米ではどのキャラクターが人気なんですか。

Gray氏:
 主人公であるルビーやヤンはもちろん人気があります。あと,実はノーラの人気が高いですね。彼女は……とても愉快な性格をしているから(笑)。

4Gamer:
 ああ,想像していたとおりですね(笑)。ちなみに私はペニーとワイスが大好きです。ワイスはツンデレだけど誇り高い,理想的なお嬢様キャラクターですね!

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Gray氏:
 ありがとうございます。もちろんペニーも人気があります。あと,私が声優を務めているローマンを好きだと言ってくれる人が大勢いるのも嬉しいですね(笑)。

4Gamer:
 では,Grayさん自身はどうですか?

Gray氏:
 もう,嘘偽りなくすべてのキャラクターが好きですが,1番は冒険心の強いヤンですね。Volume 1で,生徒達がいきなり森に飛ばされて慌てるシーンがありますが,彼女だけそれを楽しんでるようなところがあって(笑)。でもルビーの前向きなところも好きだし,ブレイクの寡黙で知的なところもステキだと思います。ワイスは好きになるのに時間がかかりましたが,友人に対してとても真摯であることが分って,彼女のことも大好きになりました。

4Gamer:
 そう言われると,ワイスの印象はトレイラーと本編で,大きく変わったように思います。"Red""White"のトレイラーはストーリーテリングの要素が薄かったこともありますが。

Gray氏:
 おっしゃるとおり,彼女達のトレイラーを作っているときは,本編の物語はまだ制作途中でしたね。トレイラーの背景となった物語も,アイデアはたくさんありましたが,プロットに組み込めなかったものも多いんです。どこかのタイミングで,ファンの皆さんにお見せする機会があればいいのですが。

「RWBY」のキャラクターデザインは,Monty氏とEileen "Einlee" Chang氏によるもの。Gray氏によると,「Montyは世界のファッションのトレンドを良く研究していて,それは間違いなく「RWBY」制作の初期段階において,各アーティストへのディレクションに大きな影響を及ぼしていたと思う」とのことだ
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夭折の天才・Monty Oum氏の人物像


4Gamer:
 Monty氏について,もう少し聞かせてください。「RWBY」を始め,Monty氏が手がけた映像作品は,なんといってもバトルシーン──中でも複数人が入り乱れてのハイスピードな殺陣が魅力的です。ああいったシーンは,一体どうやって生み出されていたのでしょうか。

2015年2月1日に亡くなったMonty Oum氏(Facebookのプロフィールより)。「RWBY」や「Dead Fantasy」といった映像作品だけでなく,同名のアニメを題材としたアクションゲーム「Afro Samurai」のコンバットデザイナーを務めるなど,ゲーム開発にも携わっていた
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Gray氏:
 「RWBY」のバトルシーンは,ほとんどがMontyの手によるものです。まず,Monty自身の思い付きや,皆の会話の中から出てきた“カッコいいアクション”を2つ3つ制作して,シーンに配分する。当然,アクションとアクションの間が抜けているので,ときには我々からの意見を参考にしながらつなぎの部分を作り,シーンを拡張させていきました。そうした工程を何度も繰り返して,完成に近付けていくという流れです。

4Gamer:
 では,最初に絵コンテを描くようなことはなかったと?

Gray氏:
 日常シーンには絵コンテがありますが,バトルシーンにはありません。制作チームの面々は,世界中のアクション映画が大好きなので,お気に入りのシーンを見つけたら,それをメモしておいて,ちょっとした休憩時間にそれを送り合うんです。なかでもMontyは,デスクに7枚ぐらいモニターがあって,その中の1枚で作業をしていました。残りのモニターは,それぞれ違ったアクション映画やアニメを常にループさせているんですよ。「まるでマトリックスのオペレーターみたいだ!」ということで,社内でも有名でしたね(笑)。

(一同笑)

Gray氏:
 しかも,そのデスクはモーションキャプチャ用のステージから6メートルと離れていなかったので,彼はモーションキャプチャスーツをずっと着たままで,デスクとキャプチャステージを往復しつつバトルシーンを組み立て,眠くなったらそのままデスクで寝る──それがMontyの平均的な一日でした。

4Gamer:
 家にはほとんど帰っていなかった?

Gray氏:
 オフィスから道路一本隔てたところに小さなアパートを借りていましたが,そこにはベッドと箱が幾つかあるぐらいで。ごく稀に帰っても,寝るだけだったみたいです。

4Gamer:
 うーん,なるほど。しかし,「RWBY」のアクションをモーションキャプチャで作るとなると,相当なカンフーマスターでないと難しそうですが,Monty氏はそんなに動ける人だったんですか?

Gray氏:
 「RWBY」におけるモーションキャプチャーデータは,あくまでも作業を早めるための参考用でしたから,そういうわけではありません。皆さんがご覧になっているアクションは,そのデータを元に加工したものなのです。

4Gamer:
 ああ,3D格闘ゲームでも似たような手法でアクションを作ると聞きますし,言われてみれば納得です。

Gray氏:
 ただ,彼は一度見た動きを真似るのが非常に上手で,それはモーションキャプチャを利用するうえでとても役立っていたと思います。それと,彼はカンフーマスターでこそありませんでしたが,「DanceDanceRevolution」(以下,DDR)のタツジンでした! 誇張抜きで,私が見た中で最もうまいプレイヤーでしたね。……まあ,彼がオフィスから出るとしたら,家に寝に帰るか,ゲームセンターでDDRを数時間ぶっ続けで遊ぶかのどちらかでした(笑)。

(一同笑)

4Gamer:
 Monty氏についてお話をうかがってきましたが,作品の中核を担っていた氏を失ったことで,「RWBY」の今後について心配しているファンも多いと思います。Volume 3を制作中とのことですが,その辺りはいかがでしょうか。

Gray氏:
 まず,物語の大まかな流れは,MontyとMiles,Kerryの手により既にほとんど完成しています。また,アニメーション制作では,Montyの元で勉強をしていた数人のアニメーター達──彼の考え方を熟知しているスタッフが,これからの「RWBY」をリードしていくことになるでしょう。Volume 3の制作は,日々Montyとの思い出を振り返るような,ちょっとほろ苦い体験になりましたが,今年の深い秋頃には皆さんにお見せできるんじゃないかと思っています。


4Gamer:
 今後もシリーズは続いていくんですね。それを聞いて安心しました。

Gray氏:
 とはいえ,Montyの代わりは誰にも務まりません。例えるなら,お気に入りのバンドのリードミュージシャンが一人抜けてしまった状態であり,制作チームにも大きな進化は求められていると思います。
 ただ,このような状況下にあっても,なんとかシリーズを続けようと立ち向かっている制作チームを私は誇りに思いますし,ファンの方々にもそう感じてもらえれば嬉しいです。少なくともVolume 3を見て頂ければ,同じバンドの作品であることは分っていただけるはずです。

4Gamer:
 期待しています。ああ,肝心なことを聞き忘れていました。日本語吹き替え版のキャスティングについては,Rooster Teethの意見も反映されているのでしょうか。

Gray氏:
 いえ,ワーナージャパンさんから送られてきた候補リストを見てみたら,大好きなアニメに出演している声優さんばかりが並んでいて……。制作チーム一同感動して,即座に承認したんですよ(笑)。

(一同笑)

Gray氏:
 キャスティングリストを見ただけで,ワーナージャパンさんがどれほど深く「RWBY」のキャラクター達の本質を理解してくれているか分りましたし,一日も早くこの耳で聞きたいと思っていました。今回の来日でようやくその目的が果たせたのですが,まさに「夢が叶った!」という感想です。

4Gamer:
 ますます楽しみになってきました。それでは最後に,日本の「RWBY」ファンに向けてメッセージをお願いします。

Gray氏:
 まず,オリジナルの「RWBY」を見つけ,楽しみ,共有してくださった日本の皆さんに,感謝の気持ちを伝えたいです。日本語吹き替え版の制作を実現できたのは,皆さんのサポートがあったからこそだと,我々Rooster Teethは考えています。
 また,日本語吹き替え版を待ち望んでくれている日本のアニメファンの皆さんが,この作品にどんな感想を抱くかを楽しみにしていますし,好きになってくれることを願っています。既に英語版を見た人も,日本の声優のパフォーマンスの素晴らしさを味わっていただければと。
 そして,もしVolume 1を好きになってくれましたら,ぜひオリジナルのVolume 2もチェックしてみて下さい。引き続き,素晴らしい体験が待っているハズです。

4Gamer:
 Volume 2の日本語吹き替え版にも期待しています。

Gray氏:
 もちろん,私達も期待しています!

4Gamer:
 本日はありがとうございました。

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 これから「RWBY」を見る人のために,その魅力を端的に説明するなら,”日本のアニメ風デザインを取り入れながらも,独特のセンスでまとめあげられたキャラクターと,緻密に組み立てられたアクションシーン”ということになるだろう。また寄宿舎での学園生活が描かれる日常シーンは,アメリカのティーンエイジ文化をベースにしており,どことなくアメリカンドラマの雰囲気が感じられるのも面白い。昨今の深夜アニメを見なれていると,ちょっと懐かしさを感じる演出もあり,そのあたりのギャップを楽しむのもいいだろう。

 しかし,制作の現場の話を聞くにつれ,「キャラクターもアクションシーンもひっくるめて,制作陣がとにかく作りたいものを全力で作った結果がRWBYなのだ」ということに,改めて気付かされた次第だ。作品のそこかしこから尋常ならざる熱意を感じ取れるからこそ,一度捉えた人を離さないのだろう。そんな,「RWBY」の魅力の根源を知ることができただけでも,得難いインタビューとなった。

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 ちなみに,Monty Oum氏は格闘ゲームもプレイしていたそうで,格闘ゲーマーである筆者としては,「メラニー・マラカイトが“Yellow”Trailerで見せたテコンドーは,「鉄拳」シリーズのファランより,『Dead or Alive 5』のリグに近い気がするのだけど」とか,「『ディシディア ファイナルファンタジー』をTeam NINJAが共同開発するそうだけどどう思う?」とか,色々と聞いてみたいと思っていたのだが……。今となってはそれも叶わない。記事中ではあるが,早逝した氏に謹んで哀悼の意を表したい。

 最後になるが,来たる11月14日には,新宿ピカデリー,シネ・リーブル池袋,109シネマズ川崎,109シネマズ名古屋,なんばパークスシネマ,MOVIX京都の全国6館にて,「RWBY」日本語吹き替え版の先行上映が2週間限定で予定されているとのこと。各上映館では,劇場限定版Blu-rayの先行販売もあるとのことなので,ファンはこちらもチェックしておこう。

12月9日発売の「RWBY Volume1<初回生産限定版Blu-ray>」(税別8000円)。本編映像のほか,2枚組のサウンドトラックCD,Rooster Teeth描き下ろしのイラストアウターケース,12ページのブックレット,30種のイラストポストカードなどが付属する。もちろん通常版のBlu-ray(税別5800円)とDVD(税別4800円)も同日発売だ
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3DCGアニメ「RWBY」日本語版公式サイト

Rooster Teeth公式サイト(英語)

  • 関連タイトル:

    RWBY: Grimm Eclipse

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