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【山本一郎】それぞれのモンケン。クラウドファンディングのあした
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印刷2014/09/06 00:00

企画記事

【山本一郎】それぞれのモンケン。クラウドファンディングのあした

切込隊長 / アルファブロガーにしてゲーマー。その正体は,コンテンツ業界で今日も暗躍(?)する投資家

切込隊長:茹で蛙たちの最後の晩餐

ブログ:http://kirik.tea-nifty.com/



 プロジェクト,それは儚い。プロジェクトと言っても,それを形作るのは人間であって,人間の塊がグループでありネットワークであり組織である以上,人間同士の些細な心の機微や触れ,すれ違いによって,容易にプロジェクトは崩壊し,共に誓ったはずの夢も野望も崩れ去るわけである。

 ビジネスによって繋がれた人間の絆はまだ割り切りがきくので,一般的には組織に入るのも出るのもそこまで困難ではない。まあ,たまに辞めさせてくれないブラック企業とか,学生ノリが抜け切れないまま甘えに支配された会社などもあるんだけど。でも,ビジネスによって作られた組織には概ね目標が設定されており,それが管理されることで役割分担が明確になって,個人個人がパフォーマンスを出すことが求められる。誰が何を求められ,何を担うことで対価をどのくらい得るのかは,ある程度の相場によって左右されることで,業界が成り立っているのだ。

Kickstarter」のサイト
 しかし,昨今の制作現場は結構変わってきた。いろんな意味で過去の事例に囚われない豊かで個性的な発想によって,従来とは違う人間同士の絆の組成が行われる。リスクマネーの調達も,今まではパブリッシャーの長ったらしい会議で,背広に身を包み眉間に皺を寄せた経営陣や,無理な若作りのクリエイティブオフィサーなどによって承認される方法しか手段がなかったものが,そうではなくて,そのコンテンツを欲しがるであろう人たちが直接お金を投じて,実現してくれるであろうプロジェクトに「カネを張る」仕組みができて,インディーズの世界は一気に多様化した。そのうち,もっとも有望な方法のひとつがクラウドファンディングだ。事業体が企業として(またはファンドなどとして)の承認を行うのではなく,欲しいと思う個人がプロジェクトを物色してリスク承知でお金を投じる仕組みは,ただでさえ水物の極致であるゲーム作りの世界に着実に浸透していっている。何しろ,最初にカネを出してくれるファンからなにがしかのお金が回収できるのだから,リスクが小さくなるに決まっている。

 一方,往々にして,クラウドファンディングには失敗が付きまとう。例えば,先にアメリカのクラウドファンディングのプラットフォームである“Kickstarter”において,日本のハードウェアベンチャーを標榜するログバー社が立ち上げた画期的(な感じのする)新しいコンセプトのウェアラブルデバイス「Ring」。当初目論んでいた機能はすべてを実装するに至らず,またリリース時期も遅延を重ねた上に公式のアナウンスが不充分であったために,返金騒動がキックスターター上で発生して文字通り炎上気味になっている。もともと「Ring」のコンセプトは素晴らしかったが,ある程度ハードウェアについての知識のある人間からすれば,かなり難度の高いプロジェクトであった。量産工程に乗せることすらもなかなかの困難が付きまとうという,まさに冒険野郎がイカダ一丁仕立てて「お宝目指して大航海してきますわー。資金募集中!」みたいな状態なわけだよ。そこに世界中の物好きが集って88万ドル(約9,000万円)も銭突っ込んだんだから,夢見る人のなんと多いことか。あるいはどこにそんな金が余ってんのか。


 我が国のゲームシーンにおいても,ゲーム業界では著名なクリエイターで「アクアノートの休日」「巨人のドシン」などの代表作を持つ異才の士,飯田和敏さんらが参加するプロジェクト「モンケン」も騒ぎになった。呼びかけ人は,プロジェクトのオーナーで原案をもって発起人となったゲーム業界のセミナー「黒川塾」を主宰する黒川文雄さん。そこへ,各種サウンドで業界の音楽シーンの先頭を走ってきた中村隆之さんや,「牧場物語」やゲーム以外でも日本科学未来館常設展示物のアートディレクションを担った納口龍司さんといった,ゲーム業界で長年活躍してきた人物がチームを組んだので,それは当然,業界では話題になるだろう。現役で活動する一線級のクリエイターたちが集まってインディーズのど真ん中でクラウドファンディングをするわけだから,好事家が集結するのも当たり前だ。

 そんなプロジェクト「モンケン」が,クラウドファンディング国内大手「CAMPFIRE」で資金募集をしたのは2013年4月22日。いまから約一年半前の出来事である。その立ち上げにあたっては,プロジェクトオーナーである黒川さんがCAMPFIRE上でのプロモーションを巡って,そのCAMPFIREの運営元であるハイパーインターネッツの設立者家入一真さんと揉め事を起こしたりもした。そこへ通りかかった合併前のどこぞのkawangoさんが家入さんのことを「いまだ現役バリバリの一流ゲームクリエイターを,すでに終わった三流IT起業家がロートル呼ばわりする不思議」と腐す一幕もあって,嫌が応にも話は盛り上がる。

 ……ところが,いつまで経っても「モンケン」はリリースされない。インディーズですよ? 集まったお金はせいぜい250万円。まじめなゲーム制作であれば一か月もしないうちに底をつくような金額だ。いつしか,CAMPFIRE上での告知もなくなり,いつリリースされるのか,どこまで開発が進んでいるのかまったく情報が出てこなくなってしまった。

モンケン
モンケン モンケン

「モンケン」の「CAMPFIRE」内ページ

「モンケン」公式サイト



「モンケン」のその後


 あれだけのメンバーが揃って立ち上がったはずの「モンケン」はどうなったのか。

 疑問に思った私は,TGSに向けての準備もたけなわの今年8月下旬,飯田和敏さんのFacebookに,深夜おそるおそるメッセージを送ってみた。

「モンケン,どうなりましたか?」

 夜更けにもかかわらず,飯田さんからは物凄い勢いで返事が返ってきた。

「聞いてくださいよ!!」

 その後の話は大変長くなるので割愛するが,状況はよく分かった。要するに,プロジェクト「モンケン」は崩壊し,開発は事実上止まってしまっていたのである。

 その理由は,ズバリ人間関係の不和。メンバー間の信頼関係が失われたプロジェクトが最後まで完走することなど,そうあるものではない。雇った雇われたであれば会社にカネの続く限り,デスマーチで死んでくれるプログラマーを探すことはできるが,ただ「モンケン」はインディーズであり,プロジェクトである。話を聞く限り,チーム「モンケン」ではチームの中心人物である「黒川さん」と「黒川さん以外」で,壮絶な批判の応酬,というか,うんこの投げ合いに発展していたのだ!

 お互いの信頼関係が喪失していく過程は,黒川さん本人側と,黒川さん以外である飯田さん,中村さん側とで,事実関係に齟齬は無い。どちらサイドも,関係が悪くなった事情についてはまったく嘘はついていない。ただただ,粛々と仲が悪くなっていったのである。面と向かって私が取材してみると,お互い「あのときはエキサイトしすぎた」「言い過ぎた」と冷静に反省するも,少なくとも取材したその日まで「約一年間,黒川さんとは口もきいてない状態」(飯田さん)であり,「飯田さんから送られてくるメッセージは罵倒の嵐」(黒川さん)だったという。

 どうしてこうなってしまったの。

困惑を隠せない飯田さん。お客さんを楽しませようと思って立ち上げたせっかくのプロジェクトが頓挫する徒労感は相当なものだ。
 突き詰めていくと,黒川さんが発案し,企画として飯田さんが煮詰めたこの「モンケン」の立ち上げ当初は,誰もが手弁当であり,みんながみんな,良いゲームを作るために頑張ろうと思っていた。実際,取材してみるとゲーム作りへの熱意はひっしひしと伝わってくる。しかも,プロとしての自負もある。ここだけ見ると,面白いゲーム作りをするのに失敗する要素は微塵も感じられない。

 しかし,現実に立ち塞がる壁は厳しい。大きく分けて2つあるが,まず第一に,制作技法に対する,持っている経験の違い。そして第二に,プロジェクトとは無関係に襲ってくる生活の問題だ。

 CAMPFIREでプロジェクトがサクセスして約半年後の去年9月,すでに崩壊しかかっていたプロジェクトメンバー同士の信頼関係の修復は困難と考えた中村さんは,新宿にある喫茶店「西武」に黒川さんを呼び,サシで「これ以上,関わらないで欲しい」と要請したという。黒川さんは難渋しつつも「必要なことがあれば手伝う」ということで,いったんはプロジェクトから外れる決意をする。まるで“バンドメンバーの方向性の違いでの解散”のような流れだ。

 ここでいったんは問題となった黒川さんが事実上プロジェクトから外れたので,速やかに「モンケン」は完成するかと思いきや,今度は制作チームのリソースの問題にぶつかった。確かにチーム「モンケン」はゲーム業界におけるドリームチームには違いなかったが,開発の中心にいるべき,肝心のプログラマーがいないのである。それまでは,とある方法で某スーパープログラマーがかかっている仕事の勤務時間外で制作を手伝ってくれていたが,いざ本業が忙しくなると途端に開発はストップしてしまう。誰か雇って制作してもらおうにも,そもそも250万円しか資金を募集しておらず,イラストその他の発注や「モンケン」Tシャツの制作で資金を使っていて,残金は100万円あまりを残すのみの状態だったと黒川さんは言う。まあ,普通に考えればお金は使っちゃいますわな。

 ノリで始めたプロジェクトは,最初は楽しくとも現実に直面し,後々だんだん厳しくなってしまうのは同人であろうがインディーズゲームであろうが変わらない。趣味で始めた作業が締め切りが迫ると途端にプレッシャーとなるのは,制作に携わる人間誰しもが共通して経験する苦難だろう。

 「モンケンは出せないんじゃないか」

 私は黒川さんにそう言った。お金は集めたけれど,リリースできないのであれば,期待して投じてくれた皆さんに謝りつつお返しするしかない。すでに使ってしまったお金を黒川さんは自分で埋めて返金する覚悟であるという。実際,このまま黒川さんと黒川さん以外サイドの話がまとまらなければ,モンケンを世に出すことは困難だ。そうすると,一番損をするのは楽しみにしていたお客さま,パトロンである。

 でも,お客さんの本音は謝罪や返金を求めているのではない。どういう形であれ,あの楽しそうだったプロジェクトチームの面々が,笑顔で「モンケン」をリリースしてくれることを願っているのだ。改めて,中村さんにお目にかかり,できるところまででリリースすることの可能性や,実際どこまでできてるの? って話を伺ってみると……。

楽しそうにほぼ完成状態のモンケンをプレイする中村さん。できてるじゃねーか!

 できてるじゃん! 目の前で動いている「モンケン」を見ていると,あのチーム立ち上げのころに各メンバーが嬉しそうに構想を語っていたあの内容そのままに「モンケン」がプレイできるじゃん。
 これの何が問題なの。なんでチームは崩壊してしまったの。

 「ここまで,できてはいるんですけどね」中村さんは恥ずかしそうにそう言う。これでどうしてプロジェクトは止まったままなのか。リリースすればいいじゃない。出した後で,チューニングするなり機能追加する方法を考えればそれでいいはずだ。そう疑問に思った私は,率直に中村さんにリリースできない理由を尋ねると「いや,ほら,オンラインで皆さんプレイするじゃないですか。スコアランキングとかやっぱり実装したいですよね」。

 いや,充分完成してますから。もうすでに楽しそうですから。立派に動いているじゃないですか。で,飯田さんにも確認してみると「このぐらいの状態で”完成品だ”と思ってほしくてモンケン立ち上げたんじゃないので」。

 まあ,ゲームの作り手としての職業病といいますか,もっといいものを作りたいという欲だったんですかねえ。もっとプレイヤーに喜んでもらいたいという,職人としてのこだわりと言うか。袂を分かった両者の話を聞いた私自身が,どうしてこの状態でチーム解散しちゃうのって驚くぐらいに,実にもったいない理由で「モンケン」は足踏みをしていただけだった。

前を向く黒川さん。これはこれできちんと着地したことだし,また新しいことに取り組めばそれでいいさ
 黒川さんに,改めて「中村さん,9月にゲーム出せるって言ってますよ」とお伝えしたところ,それまでの硬い表情を粉々にして笑った。「ああ,良かった良かった」とか仰る。や,彼が離れている期間も,チームはそれなりに機能して,完成品目指して開発が進んでいたってことだよ。ただ,そこで燃料となっていたのは,お金じゃなくて,ゲーム制作者としての根性とか気魄などといった性質のものだと思うんだよね。いいものを作って,みんなに喜ばれたいという。

 結局,この取材の後に「黒川さん」と「黒川さん以外」は,この「モンケン」をきちんとリリースするために9月中にパトロンの皆さんに発表し,ゲームを頒布すること,債権債務関係をきっちりした上で発展的にチームを解散することを覚書で交わすこととなった。なんだ,これで一件落着じゃないか。そりゃあ100点満点の自負はないかもしれないけれど,とにかく期待に応えてゲームが制作できてリリースするってところまでやって,プロジェクトなんだよね。

 飯田さんは最後の最後まで「プレイヤーに喜んでもらえるものを作りたい」って繰り返していたのが印象的で。こりゃあもうね,執念だ。黒川さんは黒川さんで,また新しい何かを実現するべくあれこれ動いているという。この「モンケン」を新しい基点にして,また業界人が次なる挑戦をすればいいんじゃないだろうか。


クラウドファンディングが我々に提示してくれたもの


 最後には返金騒動寸前までいった本件「モンケン」だが,返金など万一のこともあるので,その資金を集めるのに一役買ったCAMPFIREにも話を聞きに行った。石田光平代表と広報の矢崎海さんが対応してくれたのだが,あくまでプラットフォームとしてのCAMPFIREは資金を求めるプロジェクトと,それに共感し資金を出したいというパトロンを繋ぐための役割に徹しているという。

 何よりも,驚いたのは事業開始以来900件以上のプロジェクトが登録され,求める資金が集まるのはなんと半数以上の約500件。そして,規約上は返金だなんだとセーフティーネットは用意されている。成立したモノが完成しない状態でクレームが殺到,というような事例をCAMPFIREが把握したことはほとんどなく,結果的に履行できないプロジェクトで返金を促したという事例はあれども,それはたったの2件なんだそうだ。なにその日本人のいい人具合。ひょっとしてそういうスーパーレアな事例にこの「モンケン」もなる可能性があったんだろうか。それはそれで,ゾッとするわけだが。

 石田代表は淡々と語った。「基本的に,やりたいという人が,きちんと支援される仕組みができて,パトロンとしっかりコミュニケーションをとりながらモノを頑張って作って,返していける。そういう文化にしていきたいんだよ」と。いろんな問題はありつつも,クラウドファンディング自体がそれなりにちゃんと定着している現状は良く分かる。

 そういう文化を作り上げていくのも,あまり考えずプロジェクトをノリで立ち上げる勢いだけでなく,最後のところは作り手としての魂が一つひとつ集まって,そういう新しい形の資金調達を回していく文化を形作っていくんじゃあるまいか。

 「モンケン」は建物を壊していくゲームだが,そのリリースはそういう何か見えないものを作り上げる一石になっていくことを期待してやまない。

関連記事:
黒川さん,飯田さん,なんでこんなことやってるんですか?――ベテランゲーム開発者がインディーズゲーム&クラウドファンディングに挑む理由

プロジェクトは,儚い。だからこそ,頑張って取り組む価値があるのだ

■■山本一郎■■
言わずと知れたアルファブロガーで,その鋭い観察眼と論理的な文章力には定評がある。が,身も蓋もない業界話にはもっと定評がある。ゲーマーとしても知られており,時間が無いと言いつつも,膨大に時間を浪費するシミュレーションゲームを愛して止まない。最近は,テレビや雑誌でもよく見かけるようになるなど,なにやら立派な人になってしまった感のある山本氏。陰ながら氏の言動をチェックしている担当編集者的には,もっとくだらないこと(ゲームを含む)に時間を使い,もっとくだらないこと(ゲームを含む)に一喜一憂する。貴方という人はそういう人間ではなかったのですか!……とか言う隙がまったくないくらいには今も相変わらずなご様子なので,いつも安心してTwitterなどを拝見しております。原稿ありがとうございました。
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