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次世代GPU「Pascal」と次々世代GPU「Volta」はよく似たものに。NVIDIA,スパコン用GPUに関する説明会で将来製品の情報を少し公開
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ゲーマーにはいささか縁遠い話題ではあるものの,そのCORALを通して今後のNVIDIA製GPUや関連技術に関して見えてくる部分もあったので,簡単にレポートしてみたい。
3つの国立研究所が共同調達するスーパーコンピュータに次々世代のGPU「Volta」を使用
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さて,テーマであるCORALとは,「Collaboration of Oak Ridge, Argonne, and Livermore」の略称で,その名にあるとおり,オークリッジ国立研究所(Oak Ridge National Laboratory),ローレンス・リバモア国立研究所(Lawrence Livermore National Laboratory),そしてアルゴンヌ国立研究所(Argonne National Laboratory)という米国の研究機関が,2017年の稼動を目指して共同で調達するスーパーコンピュータプロジェクトの名称である。
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しかし,おそらくはコストの関係だろうが,次世代のスーパーコンピュータは3研究所別々にではなく,共同で調達することになったという。そのプロジェクト名がCORALというわけだ。現時点では,オークリッジ国立研究所が「Summit」,ローレンス・リバモア研究所が「Sierra」というスーパーコンピュータを導入する予定とされている。なお,アルゴンヌ国立研究所に導入される予定のシステムだけは,SC14時点では発表されていない。
さて,そのCORALでは,アプリケーションの移植がしやすい点などを考慮して,GPUベースのスーパーコンピュータとなることが決定している。その概要を示したのが下のスライドだ。CPUにはIBMのPOWER 9シリーズを採用し,GPUにはMaxwellの2世代先となるアーキテクチャ「Volta」が使われる予定となっている。
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CORALで実現される演算性能の「90%はGPUによるもの」と林氏はアピールしていた。これらのスーパーコンピュータを実現し得るのは,POWER 9ではなくVoltaというわけだ。
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ちなみに,SummitとSierraは同じアーキテクチャを採用するものの,予算の都合で性能は異なるものになるそうだ。スライドでも,Summitの演算性能を150
第2世代NVLinkがCORALでは大きな意味を持つ
NVIDIAにとってのCORALの意義はなにか。林氏は「NVLinkによって,設計段階からNVIDIAが関与することになった。これが大きい」と強調する。NVLinkとは,CPUとGPU,あるいはGPUとGPU間を,PCI Express 3.0比で5〜12倍の実効帯域幅を持つ高速なバスで接続するという規格だ(関連記事)。NVIDIAのGPUでは,次世代GPUとなる「Pascal」から導入される予定である。
実際,CORALのシステムではNVLinkが非常に大きな意味を持つようだ。たとえば,POWER 9とVoltaは同じメモリ空間を共有し,コヒーレント(Coherent,一貫性または整合性のある)なメモリになるという。POWER 9はNVLinkを内蔵しているためVoltaと高速なインターコネクトで接続可能なうえ,メモリのコヒーレンシを保つような仕組みも盛り込まれるようだ。
なお,CORALに利用されるNVLinkは第2世代のものになる予定で,Pascalで採用される「第1世代のNVLinkより高速化される」(林氏)という。第1世代のNVLinkは1レーンあたり20GB/sの帯域幅を持ち,Pascalではそれを4レーン備えることが明らかにされているので,トータルでは80GB/sの帯域幅を持つことが公表されている。ゆえに,CORALで使われるNVLinkは,これよりも帯域幅が広くなるのは確実と思われるが,その詳細は明らかにされなかった。
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先述したとおり,CORALで導入されるスーパーコンピュータは,2017年の稼動開始が予定されている。つまり,Voltaは遅くとも2017年にはリリースされることになるわけだ。そして,その1つ前,Maxwellの次となるPascalは,2016年にリリースされる予定だ。
ただ,2014年に登場したMaxwellと次世代となるPascalには2年の間があるのに対して,PascalとVoltaの間はたった1年しかない。他人事ながら「ちゃんと開発は終わるのかな」という思いが頭をよぎる。林氏もこれについて,「少し心配している」というのだが,その一方で,「PascalとVoltaは非常によく似ている」(ので大丈夫)とも述べていた。
Pascalはそもそも,2014年3月に行われた「GTC 2014」で発表された次世代GPUだ。それまでNVIDIAのロードマップでは,Maxwellの次がVoltaとなっていたので,Pascalがその間に割り込むことが発表されたときには,驚きを持って受け止められたものである。
林氏の発言やリリース時期の差から想像すると,もしかしたらPascalは,Voltaで導入される仕様を実地でテストすることも目的とするGPUなのかもしれない。
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ところで,現在のTeslaは「Kepler」世代のアーキテクチャを利用し続けているが,これらがMaxwellに切り替わることはあるのだろうか。
これについて林氏は,明快にその可能性を否定した。曰く,「Maxwellは倍精度(浮動小数点演算ユニット)がないのでTeslaのような形で使われることはない。(次に)倍精度が入るのはPascalになる」とのこと。つまり2015年のNVIDIAは,グラフィックス分野ではMaxwellへの移行を進めるものの,HPC分野では引き続きKeplerを展開していくことになるわけだ。
だが,PascalがHPC用途を重視して倍精度演算用ユニットを導入するのであれば,グラフィックス向けとしてはいささか過剰な機能を備えたGPUになる。そうなると,ハイエンドからローエンドまで,幅広いラインナップに展開するのは難しいのではないか。
もし幅広いラインナップをPascalで置き換えるのは難しいとNVIDIAも考えた場合,ウルトラハイエンドGPUとしてPascalをリリースする可能性は否定できないものの,ハイエンド以下のラインナップは,2016年以降もMaxwellを引き続き主力に据えていくこともありえるのではないだろうか。そうなった場合,Maxwellは意外に息の長いGPUアーキテクチャとなる可能性もあるだろう。
いずれにしても,答えが分かるのは2016年だ。それまではPascalの続報を気長に待ちたいところである。
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