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“お祭り”であることと,格闘ゲームであることの両立を――11年の沈黙を破り登場した「MARVEL VS. CAPCOM 3」,プロデューサー新妻良太氏インタビュー
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印刷2011/03/05 01:43

インタビュー

“お祭り”であることと,格闘ゲームであることの両立を――11年の沈黙を破り登場した「MARVEL VS. CAPCOM 3」,プロデューサー新妻良太氏インタビュー

人気キャラクターの夢の共演。そのチョイスの訳は? 気になる追加キャラクターについても聞いてみた


4Gamer:
 ではいよいよ本番といいますか,ファンが気になるキャラクターの話に移っていきたいと思います。これまでも散々聞かれたとは思うんですが,登場キャラクターの選択は,どのような基準で選ばれたんでしょうか。

新妻氏:
 そうですね,カプコンサイドのキャラクターについては社内で調整をして決めていきました。それぞれのキャラクターの担当に相談して、今の19人に決まっていったわけです。
 MARVEL側のキャラクターは,先方の担当者と意見を出し合いながら,じっくり決めていきました。カプコンとしては動かして面白いキャラクターというのが条件なんですが,MARVELからの提案としては,「今このキャラクターが人気あるから,これでどう?」といった基準でのチョイスもありました。

画像集#025のサムネイル/“お祭り”であることと,格闘ゲームであることの両立を――11年の沈黙を破り登場した「MARVEL VS. CAPCOM 3」,プロデューサー新妻良太氏インタビュー

4Gamer:
 能力はすごいけど,格闘ゲームにはちょっと合わないキャラクターというのも,当然ありますよね。

新妻氏:
 ゲームにすると味が出にくいキャラクターってのはありますね。それから個性が被っているキャラクターも今回は除外しています。パワー型,スピード型,スタンダード型など,キャラクターのカテゴライズにも気を使って偏らないようにしていますし,あとは男女比であるとか,善玉と悪役のバランスとか,枠組はいろいろありますね。
 逆にMARVELから「このカプコンキャラクターを出してくれ」といった要望もあったんですが,権利関係で難しいこともありました。そのあたりはちゃんと説明して,納得してもらっています。

4Gamer:
 キャラクターの選定には,やっぱりファンからの要望を反映した部分もあるのでしょうか。

新妻氏:
 さすがにすべてに応えることはできませんでしたが,一部反映されているものもあります。ただ,キャラクターに関しては二転三転しましたね。マヴカプ2にいたキャラクターで,今回は出ていないキャラクターも何体か結構いますし。

4Gamer:
 そういえば,ベノムやガンビットなんかは今回出ていないですね。

新妻氏:
 そのあたりはやっぱり出したかったキャラクターなんですが,今回は見送られた形です。ベノムなんかは,人気も高いんですが,設定が当時と今では変わっている部分があって,難しいみたいで。見た目もかつてのものとは変わってますし。

画像集#043のサムネイル/“お祭り”であることと,格闘ゲームであることの両立を――11年の沈黙を破り登場した「MARVEL VS. CAPCOM 3」,プロデューサー新妻良太氏インタビュー 画像集#044のサムネイル/“お祭り”であることと,格闘ゲームであることの両立を――11年の沈黙を破り登場した「MARVEL VS. CAPCOM 3」,プロデューサー新妻良太氏インタビュー
画像集#045のサムネイル/“お祭り”であることと,格闘ゲームであることの両立を――11年の沈黙を破り登場した「MARVEL VS. CAPCOM 3」,プロデューサー新妻良太氏インタビュー 画像集#046のサムネイル/“お祭り”であることと,格闘ゲームであることの両立を――11年の沈黙を破り登場した「MARVEL VS. CAPCOM 3」,プロデューサー新妻良太氏インタビュー

4Gamer:
 ということは,今回追加されたデッドプールドーマムゥX-23あたりは,MARVELのイチオシキャラなんですね。

新妻氏:
 そうですね。ただ,もちろんそれだけじゃなくて,先ほどのキャラクターの枠組の話から選んでいます。デッドプールなんかは日本ではそれほど知名度がないですが,向こうではかなり人気のキャラクターで,設定とか見てもすごく面白い。

4Gamer:
 オープニングムービーのダンテとの絡みはすごくイイですよね。

新妻氏:
 どっちもあまりマジメに戦わないキャラクターですし(笑)。X-23なんかはMARVEL側の女子枠として,オススメされたキャラクターです。比較的最近登場したキャラクターなんですけど,年齢設定も若くてイチオシとくれば,もうこれしかないって感じでしたね。

X-23
画像集#038のサムネイル/“お祭り”であることと,格闘ゲームであることの両立を――11年の沈黙を破り登場した「MARVEL VS. CAPCOM 3」,プロデューサー新妻良太氏インタビュー

4Gamer:
 MARVEL作品といえば,近年はハリウッド映画としても話題になっていて,そちらで知ったファンも多いと思うんですが,映画の影響というのは考慮されましたか。

新妻氏:
 そこに関しては,僕等はあまり考えなかったですね。その辺りはMARVEL側の展開になるので,キャラクター選びに関しても,先方の意向を大切にした形です。だから僕等の立ち位置としては,あくまでゲームに必要なキャラクターとして,ウルヴァリンアイアンマンハルクといったキャラクターを選んでいった感じですね。

4Gamer:
 デザイン面などでも,映画版はあまり参考にしていないのでしょうか。

新妻氏:
 それも例えば,MARVELから「映画の設定には近づけないでほしい」と希望が出た場合はそうしてますし,「そのままでもいいですよ」という時は,そのままの姿になってます。そもそもアイアンマンなんて,元となるデザインだけで60種類くらいあるんですよ(笑)。そのどれに似せればいいのかなんて,僕等には分からない。結局新たなデザインを作って,チェックしてもらいました。

4Gamer:
 長い歴史があるキャラクターですから,デザイナーさんもどんどん変わっているわけですね。……ちょっとMARVEL側の話ばかりになってしまったので,カプコン側のキャラクターについてもお聞きしたいと。個人的に,ハガーの参戦に結構ビックリしたんですが。

闘う市長こと,ハガー
画像集#034のサムネイル/“お祭り”であることと,格闘ゲームであることの両立を――11年の沈黙を破り登場した「MARVEL VS. CAPCOM 3」,プロデューサー新妻良太氏インタビュー

新妻氏:
 ハガーは実は海外で結構人気があって,「何でハガー出ないの」といったご意見を,常日頃からたくさんいただいてました。ただ,今までマッチョ系の枠は毎回ザンギエフが持って行ってしまっていて。今回はストリートファイターのキャラクターの数は絞る形にしたかったので,代わりのパワーキャラとして,候補にあがってきました。

4Gamer:
 「ファイナルファイト」世代からすると,ハガー参戦は「ついに来た!」って感じです。

画像集#022のサムネイル/“お祭り”であることと,格闘ゲームであることの両立を――11年の沈黙を破り登場した「MARVEL VS. CAPCOM 3」,プロデューサー新妻良太氏インタビュー
新妻氏:
 だと思います(笑)。ただハガーは,ザンギエフに比べるとどうしても地味になってしまうので,投げ技の部分をいかに特性として付け加えるかとか,マヴカプの派手な部分をどう表現するかで,結構苦労しましたね。ファイナルファイトであったパンチハメとか,ダブルラリアットで体力が減るとか,元ネタが分からない人にはちょっと難しい(笑)。

4Gamer:
 たしかに(笑)。

新妻氏:
 パンチハメって,最初は元ネタどおり,ちゃんと後ろと前に判定を付けようって言ってたんですよ。でもよく考えたら「あれ? 後ろ意味ないじゃん」って(笑)。それで結局前だけになったとか,そういう小ネタもありました。

4Gamer:
 振り向きパンチのネタは,「ストリートファイターZERO3」のコーディでもありましたね。

新妻氏:
 カプコンはどうも,その手の身内ネタというか,コアなネタが好きみたいで(笑)。

4Gamer:
 先ほどストリートファイターのキャラは,数を絞ったという話がありましたが,それは何故なんでしょうか。

新妻氏:
 それもやはり枠の問題で。まずリュウと春麗は外せないとして,海外で人気のキャラクターと考えると,次が豪鬼なんですよね。

4Gamer:
 となると,その時点で3人。四天王(ベガ,サガット,バルログ,バイソン)は悪役キャラとして被るので,出しづらくなりそうですね。

新妻氏:
 いわゆる波動昇龍キャラも,差別化が難しくなります。そこで4人目を考えるとザンギエフなんですが,今回はそこにハガーを持ってきた形です。

4Gamer:
 あれ,ストリートファイターだとまだヴァイパーが居ますよね。

新妻氏:
 ヴァイパーはストIVの枠ですね。開発のタイミング的に,スパIVからは間に合わなかったので。ストIVの新キャラの中で,マヴカプに合ったキャラクターとなると,やっぱりヴァイパーかな,と。

C.ヴァイパー
画像集#053のサムネイル/“お祭り”であることと,格闘ゲームであることの両立を――11年の沈黙を破り登場した「MARVEL VS. CAPCOM 3」,プロデューサー新妻良太氏インタビュー

4Gamer:
 ヴァイパーもやはり海外で人気のキャラクターなのでしょうか。

新妻氏:
 人気はありますね。ただ人気という意味では,ほかのストIV新キャラ3人も決して引けを取らないんですが,立ち位置が被っていたり,マヴカプの中ではちょっと地味だったりして。ヴァイパーは最初,ストIVのモデルをそのままイメージして動かしてみたんですが,その時点でもう,かなりマヴカプキャラとして成立していた。じゃあ,あと20%くらい派手にしとこう,という感じで調整しました。

4Gamer:
 ストIVキャラの中では唯一の女性キャラでもありますし,確かに納得かもしれません。よく見ると「ヴァンパイア」からのキャラクターも,3キャラクターすべてが女性キャラですね。

新妻氏:
 ヴァンパイアキャラは,ほとんど僕の独断で決めましたね(笑)。そこはMARVEL側から女子枠に出せるキャラクターというのがあまりいなくて,カプコン側から出さざるを得なかったというバランスもあります。ヴァンパイアのキャラクターって,どれもすごくキャラが立っていて,マヴカプの中でも見劣りがしないんですよね。そういう意味ではすごく貴重で,扱いやすかったです。

4Gamer:
 ということは,トロンも女子枠ですか。

トロン(左)とアイアンマン(右)
画像集#036のサムネイル/“お祭り”であることと,格闘ゲームであることの両立を――11年の沈黙を破り登場した「MARVEL VS. CAPCOM 3」,プロデューサー新妻良太氏インタビュー

新妻氏:
 トロンも女子枠なんですが,かつパワーキャラというのが,どうしてもほしくて。そこで両方の条件を満たしたトロンに白羽の矢が立ったんです。グスタフ(トロンが乗り込んでいる万能歩行型戦車)に乗っててメカ要素も入るし,しかもコブンも付いてくるということでキャラ立ちもする。前作にも登場してますしね。

4Gamer:
 確かにトロンは複数の条件を満たしていますね。あと気になるキャラクターだと……「大神」から登場するアマテラスや「デビルメイクライ」のダンテ,「バイオハザード5」のクリスウェスカーあたりが,比較的新し目のキャラクターですね。

画像集#026のサムネイル/“お祭り”であることと,格闘ゲームであることの両立を――11年の沈黙を破り登場した「MARVEL VS. CAPCOM 3」,プロデューサー新妻良太氏インタビュー
新妻氏:
 アマテラスの反響はすごく大きかったですね。クリスとウェスカーについては,先にも話した,ここ10年のカプコンが目指した路線,頑張ってきたタイトルの中から出したいというのがありまして。そこでバイオハザードから,この二人に登場してもらいました。デザインも,当時発売したばかりだった「バイオハザード5」のものになっています。

4Gamer:
 DLCではジルも登場するんですよね。

新妻氏:
 ジルは後から決まったんですけど,これはどちらかというと海外,カプコンヨーロッパからの要望です。僕自身のキャラクターは今回何一つなくて,すべてが借り物なので,そういう社内の協力あってのラインナップになってます。

4Gamer:
 DLCでは,MARVEL側からシュマゴラスも登場しますよね。

新妻氏:
 シュマゴラスはカプコン側からの強い要望で入ったキャラクターで。MARVELからは,「それだったら,こっち入れようよ」とか,さんざん言われたんですけど。そこはシリーズのマスコットみたいなものなので,ってしつこく説明して,最後は「じゃあDLCならいいよ」と。

ジル(左)とシュマゴラス(右)
画像集#037のサムネイル/“お祭り”であることと,格闘ゲームであることの両立を――11年の沈黙を破り登場した「MARVEL VS. CAPCOM 3」,プロデューサー新妻良太氏インタビュー

4Gamer:
 ちなみにジルとシュマゴラスのほかの追加キャラクターって,予定されているんでしょうか。

新妻氏:
 今のところ予定はないですね。追加自体は難しくないんですが,ネットワーク対戦でどう扱うかなど,調整が必要な部分がありまして。今の段階では何ともいえません。

4Gamer:
 今回は入れられなかったけど,次の機会があったら入れてみたいというキャラクターはありますか?

新妻氏:
 うーん,そうですね。やっぱり個人的にヴァンパイアシリーズが好きなんで,ヴァンパイアのキャラクターはもうちょっと入れたかったですね。さっきも言いましたが,あのシリーズのキャラクターって相当濃いので,マヴカプシリーズに入れても全然薄まらないと思うんです。あとやっぱりカテゴリ的に大きいので,ロックマンシリーズからできればもう1キャラくらいは出したいですね。

私立ジャスティス学園
画像集#041のサムネイル/“お祭り”であることと,格闘ゲームであることの両立を――11年の沈黙を破り登場した「MARVEL VS. CAPCOM 3」,プロデューサー新妻良太氏インタビュー
4Gamer:
 今回登場していない作品ではどうですか?

新妻氏:
 さっき出た「私立ジャスティス学園」のキャラクターとかも,実は出したかったんです。でもキャラ立ちはしているんだけど,人気からいくと波動昇龍キャラになってしまいそうだし,海外での認知度を考えると,どうしても一段落ちてしまうかな,と。

4Gamer:
 残念ですが,確かにそうかもしれませんね。ところで,これだけキャラクターが多いと,どれを使うか目移りしてしまいそうですが,初心者にオススメのキャラクターってありますか?

新妻氏:
 リーチが長くて便利という意味では,ダンテなんかいいと思いますよ。技も多いしアシストに使っても強いので,動かしていて楽しいキャラクターですね。あとスーパースクラルも,連打系など一通り技が揃ってるんで,使いやすいと思います。

4Gamer:
 では,ちょっと癖のある上級者向けキャラは?

新妻氏:
 そうですねぇ。ドーマムゥは完全に遠距離型なので,いかに相手を近づけさせないかがカギになります。なので初心者の方にはちょっと扱いにくいかもしれないですね。あと原作からして魔界村なので当然なんですけど,アーサーも砲台型ですね。

4Gamer:
 ちなみに,今作からグラフィックスがドットではなく,ポリゴンの3Dグラフィックスになってますが,旧作からのファンには好意的に受け入れられたのでしょうか。

新妻氏:
 「思ったよりも違和感ない」という意見が多かったです。グラフィックスは3Dになってますけど,ゲーム自体は2D格闘なので,そこまで3Dに対する異和感はないのかなと。

4Gamer:
 であれば,2D表現にこだわる理由もとくにないと?

画像集#018のサムネイル/“お祭り”であることと,格闘ゲームであることの両立を――11年の沈黙を破り登場した「MARVEL VS. CAPCOM 3」,プロデューサー新妻良太氏インタビュー
新妻氏:
 やはり2Dグラフィックスだと,表現の幅が頭打ちになってしまう部分があるんです。その点3Dだと,マックスまで表現できる。もちろん2Dには2Dの良さがあるんですが,選択肢を狭めてしまうくらいなら,3Dのほうがいいと思っています。

4Gamer:
 マヴカプ3の前に,ストIVやタツカプで3Dグラフィックスを採用した実績があるからこそ,プレイヤー側も安心できるのかもしれませんね。

新妻氏:
 そうですね。最近ウチはずっとこのスタイルですので,その辺の安心感はあると思います。あとは作品自体をきっちり作って,2D格闘ゲームとしての完成度を上げることで,より安心してもらうという方向ですね。
 ちなみにマヴカプ3は,ストIVなどよりも,スーパーコンボなどでのロック演出が,全体的に短く調整されてます。やはりスピーディーな部分がウリのゲームなので,あまり演出が長いとだれてしまいますし。

4Gamer:
 あぁ,瞬獄殺とか,なんかすごく急いでる感ありますね(笑)。

新妻氏:
 えぇ,開発チームにもそこは意識してもらいました。ただ開発側には開発側で「もっと色々表現したい!」という要望はあって,長めの演出も一部残っちゃいましたけどね(笑)。

画像集#039のサムネイル/“お祭り”であることと,格闘ゲームであることの両立を――11年の沈黙を破り登場した「MARVEL VS. CAPCOM 3」,プロデューサー新妻良太氏インタビュー

4Gamer:
 確かにマヴカプシリーズだと,モタモタした演出を見せられても興ざめかもしれません。

新妻氏:
 そうなんです。MARVELからも「カッコイイからもっとやんなよ!」って言われれましたが,我々としてはやっぱりゲームとしての面白さが優先で。そこは相談しながら決めていきました。

4Gamer:
 キャラクターの魅力を前面に出したいMARVEL側からすれば,そういう意見も当然かもしれませんね。

新妻氏:
 自社のキャラクターをカッコ良く見せたいというのは,IPホルダーの使命ですから。気持ちはすごく分かるんです。そのせめぎ合いの部分をいかにゲームに落とし込んでいくかが,マヴカプシリーズの使命というか,宿命ですね。


対戦格闘ゲームは日本が発祥。その気概は大事にしたい


画像集#051のサムネイル/“お祭り”であることと,格闘ゲームであることの両立を――11年の沈黙を破り登場した「MARVEL VS. CAPCOM 3」,プロデューサー新妻良太氏インタビュー
4Gamer:
 先ほどからのお話の中でも,海外市場を視野に入れたタイトルであることがうかがえるのですが,発表した当初の海外の反響,また日本の反響はどうだったのでしょうか。

新妻氏:
 発表時は「よくぞ出してくれた」という意見が多かったですね。「プレイフィールがどうなるのか」とか,「どのキャラクターが出るのか」という話題で,皆すごく盛り上がってくれました。2010年4月の“Captivate 2010”という海外のイベントが初お披露目だったんですが,日本のプレイヤーの熱意も負けないくらい凄くて,Twitterなどを通して色々な反響をいただきました。発売後についても,今度はゲームバランスやネット対戦で盛り上がっていただいているようで,開発者としては嬉しい限りです。

4Gamer:
 本作が海外で人気というのは,やはりMARVELキャラクターが登場するというのが大きいと思いますが,それだけではないですよね。海外でこれだけ人気を獲得した理由って,どこにあるとお考えですか。

新妻氏:
 うーん,一概にはいえないですけど,カプコンとしては,格闘ゲームというジャンルの中で,ストリートファイターシリーズやヴァンパイアシリーズ,そしてマヴカプシリーズと,いろいろ取揃えてきたつもりなんです。その中でマヴカプシリーズが備えていたゲームの方向性が,たまたま海外市場にマッチしていたのかなぁ,とは考えています。もちろん海外の人が好きそうなネタが,沢山盛り込まれているというのはありますが。

4Gamer:
 当時の日本でも,マヴカプ2が決して不人気だったわけではないと思うんですが,海外だと未だにマヴカプ2の大会が開かれるくらい盛り上がってますよね。この差はなんなのかなぁ,と思ってしまうんですが。

新妻氏:
 やはりMARVEL COMICが持つコンテンツのパワーって,海外では計り知れない強さを持っていますから。それに加えてマヴカプというゲームが根強く遊ばれることで,さらにプレイ人口のすそ野が広がって。そのお陰で,今でも大会が開かれるんだと思いますよ。

本作のテレビCMより
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4Gamer:
 なるほど,やはりコンテンツパワーが大きいということですね。ちなみに新妻さんから見て,海外と日本の格闘ゲームプレイヤーって,なにか違いを感じられますか?

新妻氏:
 アメリカって,物事に真面目に取り組む人に対して,すごく理解があるんですよ。日本だと「ゲームやってます」って胸張ると,「えっ」ってなっちゃうところが少なからずあると思うんです。だけどアメリカだと「おれはマンガやアニメが好きだ!」って言っても,それに対する熱意が本物なら,ちゃんと周りが理解してくれる。だから表面に出てくる熱量がすごく高いですね。内なる熱意という意味では,日本の人も負けてないと思うんですが,どうしても内にこもってしまう傾向にあるので。

4Gamer:
 プレイヤーの気質というよりは,環境の違いということですね。

新妻氏:
 そうですね。その熱量を受けとめられる環境ができてくると,また違ってくるんじゃないかな,と。

4Gamer:
 では,ちょっと意地悪な質問かもしれませんが,マヴカプ3のメインターゲットって明らかに海外じゃないですか。日本市場なんて,数字的に見たらオマケみたいなものですよね。でも日本向けにテレビCMなんかもしっかり作られていて,正直意外に感じたんです。これは何故なのでしょうか。

画像集#019のサムネイル/“お祭り”であることと,格闘ゲームであることの両立を――11年の沈黙を破り登場した「MARVEL VS. CAPCOM 3」,プロデューサー新妻良太氏インタビュー
新妻氏:
 根本の話をすると,やはりカプコンは日本の会社だということですね。北米だけで盛り上がっていて,日本では全然となると,やっぱりカプコンとしてはGOが出せない。なので日本をなおざりにするなんてことは,ありえないです。

4Gamer:
 しかしストリートファイターIVの例だと,日本と海外の売り上げ比率には,10倍近い開きがあると聞きます。本作の場合だと,その比率は,もしかするともっと極端になるかもしれない。

新妻氏:
 幾ら海外で盛り上がろうとも,お膝元である日本で全然なのであれば,やっぱりダメだと思います。なんといっても対戦格闘ゲームって日本が発祥という意識が僕等の中にはあるので,その気概は大事にしたいです。精神論も入ってますけど,海外のことだけ考えていると,チームの意識は落ちていくし,ズレていくと思うんですよね。

4Gamer:
 これはストリートファイターIVの小野プロデューサー(小野義徳氏)にもお聞きしたことなんですが,かつてカプコンが牽引した格闘ゲームブームは,その後一度は衰退しましたよね。その理由って何だったとお考えですか。

新妻氏:
 単純にゲームのジャンルが増えて,細分化していったのだと思います。昔に比べて色々な娯楽が出てきたので,娯楽のすそ野が広がっていった。あと普段ゲームをやらない層がゲームを始めたことによって,熱が薄まってしまったのかな。

4Gamer:
 格闘ゲーム自体が面白くなくなったのではなく,時代の流れだったと?

新妻氏:
 格闘ゲーム自体に,全ての衰退の原因が内在してるとは思えないんですよね。今モンスターハンターをやっている人の中にも,昔は格闘ゲームやってたという人がいますし。単に分かれて行ったんだろうなと感じています。

4Gamer:
 では,昨今また格闘ゲームが盛り上がりつつある理由については,どうお考えですか?

新妻氏:
 単純に懐かしがってる人もいるだろうし,RPGとかシミュレーションを中心にやってきた若い層が,格闘ゲームに興味を持ち始めてきたというのもあると思いますね。

4Gamer:
 ということは,新しい格闘ゲームファンが増えつつあると。

新妻氏:
 そうですね。さすがに懐かしさだけで,これだけの人を集められるとは思えません。キャラクターの魅力から入ってきた新規層もいると思います。マヴカプ3もキャラから入ってきてほしい,という意図がありますんで。とくに北米市場でのメインターゲットは,格闘ゲームファンだけではなく,MARVELファンも意識しています。

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4Gamer:
 ではマヴカプチームが考える,格闘ゲームの魅力とはなんでしょうか。

新妻氏:
 自分自身の成長が目に見えて分かるので,ほかのジャンルに比べて達成感が大きいというのが大きな魅力だと思います。ハードルが高い部分も確かにありますが,それに伴って生まれる相手とコミュニケーションが楽しいんです。なのでマヴカプ3も,できれば友達の家に集まって,ワイワイ騒ぎながらやってほしいですね。

4Gamer:
 ネット対戦ではダメですかね? これだけネットで戦えるようになったら,あえて対面にこだわる理由って,そんなにないんじゃないか,という気もするんですが。

新妻氏:
 ネットはネットで,必須の機能だとは思いますけど,やっぱり別物かなと。やはりリアルでやる熱の部分,コミュニケーションって,ネット対戦ではなかなか味わえない部分だと思いますね。今のところ。

4Gamer:
 分かりました。それでは最後にプレイヤーへのメッセージをお願いします。

新妻氏:
 ゲームバランスは何年先でもプレイできるように作っていますので,今後も末永く楽しんでいただけると思います。本作の面白さにたどり着くのはほかの格闘ゲームよりも早いと思うので,格闘ゲームということで食わず嫌いせず,ぜひとも一回プレイしていただければと思います。よろしくお願いします。

4Gamer:
 本日は,ありがとうございました。


画像集#040のサムネイル/“お祭り”であることと,格闘ゲームであることの両立を――11年の沈黙を破り登場した「MARVEL VS. CAPCOM 3」,プロデューサー新妻良太氏インタビュー

 いかがだっただろうか。ストリートファイターシリーズを手本とし,その対極として作られたというマヴカプ3。もっと派手に,もっと爽快に,もっと簡単に,もっとハチャメチャならいいのに。そんな要望から生まれた本作は,その出自からしてゲームバランス,対戦バランスからは縁遠いところにあってしかるべきだろう。それが,こんなにも対戦ツールとして成り立っていることは,本来もっと驚いてよいはずだ。いやむしろ,ゲームとして成り立っていることさえ,奇跡に近いのではないか。

 新妻氏は“わざと緩く作っている”と軽く答えていたが,その裏側にはこれだけの“ハチャメチャ”をゲームにきっちり落とし込む,カプコンの業と意志が見て取れる。それはかつて格闘ゲームというジャンルを築き上げたカプコンの意地であり,格闘ゲーム発祥の地に在る,開発者の自負であろう。
 そもそも人様のキャラクターを借りてゲームを作るだけで,想像を絶するほど面倒なハズなのだ。社内の調整に四苦八苦した記憶のある社会人の方には,そのあたりも容易に想像がつくだろう。ましてや社外,海外のIPホルダーとなど。

 本作は,海外でこそセールスが期待されるタイトルである事は間違いない。その売り上げは,きっとカプコン格闘ゲームを“次のステージ”へ導いてくれるだろう。しかしその業と意志,魂を支える中心にこそ,日本のプレイヤーが必要なのだと,新妻氏は語る。その心意気に答えるためだけでも,私達は本作を手にしていいのではないか。新妻氏の言葉は,そう思わしめるのに十分な説得力をもっていた。少なくとも筆者には。さて,あなたにはどうだろうか。

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――2011年2月16日収録
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