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[CGWORLD 2012]やり過ぎこそがフロム・ソフトウェアの味?――「ARMORED CORE V オープニングCG メイキング」レポート
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印刷2012/11/01 13:53

業界動向

[CGWORLD 2012]やり過ぎこそがフロム・ソフトウェアの味?――「ARMORED CORE V オープニングCG メイキング」レポート

画像集#042のサムネイル/[CGWORLD 2012]やり過ぎこそがフロム・ソフトウェアの味?――「ARMORED CORE V オープニングCG メイキング」レポート
 東京都文京区の文京学院大学本郷キャンパスにて行われた,映像業界および学生向けのイベント「CGWORLD 2012 -クリエイティブ カンファレンス-」。そのなかで,フロム・ソフトウェアのCG制作チームによる講演「ARMORED CORE V オープニングCG メイキング」が行われた。


 これは,同社が2012年1月に発売した「ARMORED CORE V」のオープニングムービーについて,制作者がプロセスやコンセプトを語るというもの。
 ARMORED COREシリーズのオープニングムービーといえば,「アーマード・コア4」しかり「アーマード・コア フォーアンサー」しかり,非常にハイクオリティなことで知られているわけだが,今回の講演は,そんな映像をどうやって作っているのか,その一端がうかがい知れる興味深い内容となっていた。

講演を行ったのは,フロム・ソフトウェア CGセクションのリーダーを務める室 隆之氏(写真左)と,サブリーダーの平沢翔太氏(写真中央),そしてデザイナーの渡邊俊一郎氏(写真右)の3名
画像集#045のサムネイル/[CGWORLD 2012]やり過ぎこそがフロム・ソフトウェアの味?――「ARMORED CORE V オープニングCG メイキング」レポート

 講演は,まず室氏による挨拶からはじまった。
 4Gamerを読んでいるような読者には改めて説明する必要もないかもしれないが,フロム・ソフトウェアは,初代PlayStationの時代にゲーム事業に参入し,「キングスフィールド」や「ARMORED CORE」などのヒットシリーズを制作したことで知られるゲームメーカー。今では,従業員数が200名を超える,国内有数のゲーム会社となっている。
 室氏が率いるのは,企画,エンジニアなど,各ある部門の中の一つであるグラフィックス部門で,その中でもムービー制作を中心に担当しているチーム。自社タイトルの映像はもちろんだが,それ以外にも,社外のCG映像制作を請け負うなど,下請け的な仕事も行っているそうだ。チームの具体的な人数は「秘密」とのことであったが,「比較的小規模な人数」で構成されているという。

 さて。そんな室氏らが請け負うゲームのオープニングムービーは,主に2〜3分程度のショートムービーが中心。ただ,社内タイトルであるにもかかわらず,「ARMORED CORE V」では,ゲーム自体の方向性が途中で大きく変更されたために,ゲーム内容とオープニングムービーの内容に齟齬が生まれ,大きな方向転換を迫られた……と振り返る。

 具体的には,元々「ARMORED CORE」といえば,ハイスピードなロボアクションが売りのシリーズで,「リアルさ」よりも「ヒロイックなかっこよさ」を重視していた。「ARMORED CORE V」における目玉の一つである「オーバード・ウェポン」も,企画当初はそういったヒロイックさ寄り……つまり,今よりもかなりはっちゃけた演出が念頭に置かれていたという。
 しかし,開発していく過程で,「ARMORED CORE V」自体のコンセプトが,従来の「ヒロイックなかっこよさ」よりも,「リアルさ」を重視するという方向性へとシフトしていったのだ。室氏は,「いや,ほんと,これまでの工数どうすんだよって議論もありました」と語る。


映像の作り方自体は,「おそらく,ほかとそんなに変わらないのでは」と室氏はいう。具体的には,まず打ち合わせで決めた内容を「字コンテ」という形でまとめ,さらにそれを元に「絵コンテ」を起こし,それを見ながら技術的難度の高い部分の割り出しや,内容についての詰めを行っていく。さらにその後,ビデオコンテ(いわゆるプリビジュアライゼーション)を制作していくわけだが,そこで細部までの入念な検討を行い,本制作に入るまえの社内的なコンセンサスを取るようにしているそうだ
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 ともあれ,オープニングムービーをコンセプトから練り直すことになったCGチーム。なかでもディレクションを担当した平沢氏は,「ARMORED CORE Vにおけるリアルをどう表現するか」について,頭を悩ませることになった。架空の世界のお話で,実際には存在しないロボットをどうリアルに見せるのか……。

 悩んだ末に,平沢氏が出した結論は,「リアルな戦場感」を出すこと――つまり,「現実と地続きであるかのように感じさせる」という方向性だった。具体的に何をしたのかというと,要するに,戦闘シーンそのものではなく,あえて戦闘の裏側にあるものを描くことで,あたかも実在するかのような“本物っぽさ”をプレイヤーに感じてもらうというやり方だ。
 「兵器としての運用風景を描く」「兵器試験場,兵器組み立て工場の作業風景を描く」など,現実世界に実在する場面を丁寧にARMORED COREの世界観で表現してみせることで,「現実との地続き感」つまりは「リアルさ」を表現したのだという。平沢氏は,「要するに,これは現実にあるものをACの世界観に置き換えていくという作業でした」という。いやはや,ロボット物は整備シーン燃えるよね! という感覚を,平沢氏は“よく分かって”いる(何が)。

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 平沢氏がこだわったのは,シーンについてだけではない。そのシーンを撮影したであろう「撮影環境」の再現も,“リアルな映像”を作るうえで重要なファクターだと,平沢氏は考えていたという。
 つまり,最新の技術を駆使した“美麗なCG映像”というものではなくて,まるでビデオカメラで撮影したような雰囲気,あたかも実際に誰かがその場で撮影したかのような映像を平沢氏は追求した。
 通常は30フレームで映像を作るところをあえて24フレーム(フィルムっぽさを再現するため)にしていたり,一度HDサイズで作ったCG映像をSDサイズに圧縮し,それを再度HDサイズに引き延ばして使ったり(映像をわざと劣化させることで,ハンディカメラっぽさを出す)と,そのこだわりは細部にまで及んでいる。



 極めつけは,「モーションキャプチャした人のモデルにカメラを持たせて,手ブレしないように頑張っているかのような映像」を再現していたというエピソードで,これには上司の室氏も「え,これってそういう想定のカメラワークって話じゃなくて,実際にモデルにカメラを持たせてたの?」と呆れる始末。それに対して平沢氏は「とても大事……だと思うんですけど僕だけですかね(笑)」と答えていたのはとても印象的だった。
 ほかにも,平沢氏がこだわった箇所を解説するなかで,「素人目には,どこがどう違うのか分からない」という場面がいくつかあったのだが,そのたびに,「これ……本当に必要だったんかな」という室氏に,「いやいや,重要ですから!」と平沢氏が返していたのが,なんだかコントを見ているようで,個人的には非常に興味深かった。
 ともあれ,そんなやりとりを経ながら講演は進行。最後に「今,CGデザイナーを募集しています。ウチはこんなことをやっている会社ですけど,そこで一緒に働いてみたいという人がいたら,ぜひ応募してみてください」と室氏が述べて,イベントは終了となった。

 平沢氏の,なかば「やり過ぎ」とも思えるこだわりを「無駄」と見るか,それとも必要な作業だと見るかは,正直なかなか悩ましいところであろう(とくに企業運営という意味では)。しかし,フロム・ソフトウェアの作品に関して言えば,こういったこだわりが作品全体に“染み出している”感がなくもなく,そこがフロム・ソフトウェアらしさにつながっていることを考えると,これはこれで必要な部分なのかな……と思わされた次第。
 こういったこだわりが許され,そしてちゃんと認められる制作環境は,フロム・ソフトウェアの良さなのだろう。やり過ぎかもしれないけど,端から見てる分には面白いから,ぜひそのまま突っ走ってほしい――今回の講演を聞いて,無責任にもそんなことを思ってしまった。


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フロム・ソフトウェア CG制作チーム

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