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印刷2011/02/26 10:00

連載

ホロとロレンスの二人旅もついに終着。「放課後ライトノベル」第32回は『狼と香辛料』で最後の大勝負



/人◕‿‿◕人\「僕と契約して,魔法少女になってよ!」
筆者「うわ! なんだこの可愛いけど目も口も動かなくてちょっと胡散臭い魔法少女アニメのマスコット的生き物は」
/人◕‿‿◕人\「僕はキュゥべえ。僕と契約して,魔法少女になってよ! そして,魔女と戦ってほしいんだ!」
筆者「いや,俺男なんだけど」
/人◕‿‿◕人\「大丈夫。僕の力があれば,しょっぱいラノベレビューで小銭稼ぎをしてる非モテキモメンライターだって魔法少女になれるよ!」
筆者「てめえ舐めてんのか! ……まあ,それはいいや。で,その魔法少女?になったらなんかいいことあるわけ?」
/人◕‿‿◕人\「もちろん。なにか一つ,何でも好きな願い事をかなえてあげられるよ」
筆者「えっ! マジで!?」
/人◕‿‿◕人\「うん。今,キミが抱えてる,締め切り当日なのにまだ1文字も書けてない原稿を代わりに書くこともできる」
筆者「おお!」
/人◕‿‿◕人\「今回だけじゃない。次回以降も担当することだって可能さ!」
筆者「すげえ!」
/人◕‿‿◕人\「どうだい,僕と契約するかい?」
筆者「するする!」

 と,いうことで今回の原稿はキュゥべえに任せて,俺……ううん,わたしは「魔法少女うさみ☆マギカ」として魔女退治に行ってくるね! ああ,締め切りに追われることのない,なんて素晴らしい生活! これで,もう何も怖くな――(ぱくり)

 と,いきなりうさみが魔女に食われてしまったので,今回の「放課後ライトノベル」は僕,キュゥべえがお届けするよ。まあ,これも契約だからね。今回は,うさみと同じく耳と尻尾のある相手と契約した男がいろいろ大変なことになるお話をご紹介。取り上げるのは二度にわたってアニメ化された人気作にして,2011年2月に本編完結を迎えた経済ファンタジー『狼と香辛料』だよ。もっともこっちの「耳と尻尾の持ち主」は,大変なことになると分かっていても契約したくなるほど魅力的なんだ。

狼と香辛料 海を渡る風
『狼と香辛料XVI 太陽の金貨〈下〉』

著者:支倉凍砂
イラストレーター:文倉十
出版社/レーベル:アスキー・メディアワークス/電撃文庫
価格:641円(税込)
ISBN:978-4-04-870265-2

→この書籍をAmazon.co.jpで購入する


●経済+ファンタジー! 賢狼と行く,新感覚の旅物語


 各地を回り,行く先々で取引をして生計を立てている行商人,クラフト・ロレンスは,パスロエ村に立ち寄った折,一人の少女と出会う。少女の名はホロ。狼の耳と尻尾を持つ彼女は,齢数百年を重ねた,賢狼と呼ばれる狼の化身だった。紆余曲折の末,彼女と旅を共にすることになったロレンスは,彼女の故郷・ヨイツ目指して旅をしていくことになる。

 中世ヨーロッパ風の世界観,狼の化身であるヒロイン……。一見古きよきファンタジーを思わせる設定を持つ『狼と香辛料』だが,その内容は「ファンタジー」と聞いて多くの読者が想像するであろうものとは大きく異なる。なにしろこの作品,剣を手に戦う勇者も,人知を超えた現象を起こす魔法も,強大な力を持つ竜も登場しないのだ。舞台は架空でありながら,作中に登場するものは実在していそうなものばかり。起こる出来事も徹頭徹尾地に足が着いており,現実離れした出来事といえばホロが正体を現し巨大な狼に変身することくらいだ。そもそも主人公が騎士や魔法使いではなく行商人というだけでも,このファンタジーの特異性が分かろうというものだろう。

 剣も魔法も登場しない――果たしてそんなファンタジーが面白いのか? と疑問に思う向きもあるだろう。だが,心配無用。本作では,魔王を倒す救世の旅の代わりに,それに勝るとも劣らない興奮と緊張感に満ちたあるものが,物語の中心に据えられているのだ。
 それが「商売」である。


●恋愛も商売も手抜きなし! もどかしさ全開の会話劇を堪能せよ!


 ヨイツに向かう旅の途上,立ち寄った先の町や村で,ロレンスとホロは商人たちがめぐらせるさまざまな取引に巻き込まれ,あるいは自ら首を突っ込む形で関わることになる。各地の領主や教会が大きな権力を握り,人々の生活を縛っている中にあって,儲けを第一とする商人の考え方は極めてシンプル。彼らは日々わずかな商機も見逃さず,少しでも多くの利益を得ようと,知恵と知識を駆使している。ロレンスもまた,一人の行商人として,行く先々で権謀術数渦巻く取引の現場に加わっていくことになる。

 こんなふうに書くと,いかにも地味で退屈そうに思えるかもしれないが,それは大きな間違い。たしかに見た目の派手さには乏しいが,取引の現場に立った商人たちの醸し出す,ひりつくような緊張感は本物。情というものが通用しないシビアな世界である分,剣や魔法によるバトルより,よほど手に汗握るかもしれない。破産やほかの商人からの信用を失うといったリスクも当然ある中,ロレンスとホロが起死回生の一手で事態を打開していく様は実に胸がすく。

 が,困ったことにこの二人,その頭のよさを男女関係にまで存分に発揮してくれる。
 旅の中で,二人はそれほど時間がかからないうちに互いを憎からず思う関係になるのだが,二人ともそうやすやすと相手に対して愛の言葉をささやいたりしない。代わりに展開されるのは,互いの本心を試すかのような言葉の応酬。思いが通じ合ったあとも繰り返されるやり取りの数々は,「どれだけこっちを悶えさせれば気がすむんだ!」と憤りたくなるほど。近刊の会話シーンなどは,もはやドMチェッカーとしておすすめしたいレベルの悶絶具合だ。

 ちなみにやり取りの結末は,頭の回転で勝るホロにロレンスがやり込められて終わる,というケースが大半。もっとも賢狼としての老獪さと,童女のような無邪気さを併せ持つホロが相手とあっては,ロレンスでなくとも参ってしまうこと間違いなし。そんなホロの可愛らしさが,『狼と香辛料』という作品を根っこから支えているのは間違いない。


●襲い来るシリーズ最大の危機。その先にある,旅の終着点とは?


 度重なる危機と,甘やかな会話の数々を経て,二人はいよいよヨイツの目前まで辿り着く。最後の舞台となるのは,デバウ商会が実権を握る北の町レスコ。塀も税もない,まるで楽園のようなこの町で,ロレンスは長年の夢であった,自分の店を構えることを決意する。デバウ商会が発表したある大事業に町が沸き返る中,幸福を噛み締めるロレンスとホロだったが,その矢先,とんでもない事態が勃発。否応なくこれに巻き込まれた二人は,事態を解決するために別行動を取ることになる。

 最終巻だけあって,ロレンスたちに突きつけられたのはいまだかつてない一大危機。天国から地獄へと叩き落とされた形の二人の姿に,商売の恐ろしさ,人間の強欲さを改めて痛感せずにはいられない。この期に及んで離れ離れにならなければならない悲しみ,度重なる裏切りや,硬貨一つで変心する人の醜悪さ……ロレンスたちを襲う運命の悲惨さは,あと一歩で幸せを手にしていたところだっただけに実に重い。それでも商売人としての矜持を忘れず,あくまで「商人」として生き抜こうとするロレンスの姿には,胸を熱くせずにはいられない。

 その結末は読者一人ひとりに確かめてもらうとして,長く続いたこの物語も,16巻でようやく完結。ただし,今夏発売予定の新刊にて後日談が描かれるとのこと。魅惑的な狼との旅は,もう少しだけ続くようだ。

■無類の獣耳好きのための,支倉凍砂作品

『ばけらの!』(著者:杉井光,イラスト:赤人/GA文庫)
→Amazon.co.jpで購入する
狼と香辛料 海を渡る風
 『狼と香辛料』の著者,支倉凍砂は1982年生まれ。同作で第12回電撃小説大賞銀賞を受賞し,2006年にデビュー。『狼と香辛料』は新人のデビュー作でありながら,経済を軸に据えたこれまでにないファンタジー作品として注目を浴び,二度のアニメ化のほか,ゲーム化,コミック化なども行われる一大メディアミックス作品へと成長した。最近は講談社「goodアフタヌーン」連載のマンガ『ビリオネアガール』(作画:桂明日香)の原作も担当。こちらもデイトレードで巨額の資産を得た少女がヒロインであるなど,『狼と香辛料』と似たエッセンスを持っている。
 『狼と香辛料』で「経済ファンタジー」という新境地を開いた支倉凍砂だが,一方で無類の獣耳好きという一面も持っている。ちなみに,著者自身と親しい作家をモデルにしたキャラクターが多数登場する杉井光の『ばけらの!』(GA文庫)には,「葉隠イヅナ」なる少女がヒロインとして登場。名前からもお分かりのとおり,支倉凍砂がモデルとなっており,狼の耳と尻尾を持っているのは言うまでもない。

■■宇佐見尚也キュゥべえ(魔法生物/こんなの絶対おかしいよ)■■
宇佐見氏が「みんなも何か契約するときはきちんと説明を聞き,疑問に思うところがあればちゃんと質問しようね! キュゥべえとの約束だよ!」という言葉を残して魔女に食われてしまったので,今回の原稿を代筆してくれた魔法生物兼ライター。幸い,宇佐見氏のソウルジェムは無事だったので,来週には元気に復活しているんじゃないでしょうか。
  • 関連タイトル:

    狼と香辛料 海を渡る風

  • 関連タイトル:

    狼と香辛料 ボクとホロの1年

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