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“パラドゲー”の原典ともいえるEU2を高解像度で遊べる「フォー ザ グローリー【完全日本語版】」のレビューを掲載
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印刷2010/08/26 10:30

レビュー

“パラドゲー”の原典たるEU2の,さまざまな点を改良して面白く遊びやすく

フォー ザ グローリー【完全日本語版】

Text by 徳岡正肇


 「フォー ザ グローリー【完全日本語版】」(以下,FtG)は,中世末期〜ナポレオン時代までを扱ったParadox Interactiveの戦略級ストラテジーゲーム「ヨーロッパ・ユニバーサリスII」(以下,EU2)をベースとして作られた,いわば「EU2の改良版」である。

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 この作品は,EU2のゲームエンジンである「Europe Engine」が無料公開されたことを受けて,Crystal Empire Gamesが作成したものだ。この会社はもともとEU2のファンコミュニティを基盤として設立されており,そういう意味では「ファンの作った商業版・公式超巨大MOD」とも言える。
 ゲームとしての基本部分についての変化はEU2からとくになく,操作性,画面の視認性,歴史イベント,ゲームバランスを中心とした改良がなされている。当然ながらEU3とはゲーム的なつながりはなく,またEU2の拡張パックではないので,FtG単体でプレイ可能だ。
 今回は,この「洗練されたEU2」を簡単に紹介しよう。

「フォー ザ グローリー【完全日本語版】」公式サイト


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そもそもEU2ってどんなゲーム?


 まずは簡単に,EU2自体のおさらいから。詳しくはレビュー記事を見ていただくのが良いだろうが,以下にできるだけ短くまとめてみる。

「ヨーロッパ・ユニバーサリスII〔完全日本語版〕」のゲーム画面
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 EU2は,1419年から1820年まで約400年間の,「全世界」を舞台としたストラテジーゲームだ。プレイヤーは,この時期に存在した国家/勢力のうち,いずれかの指導者となって歴史の荒波を“生き延びていくこと”が第一の目標となる(もちろん国家を繁栄させることができれば,なお良い)。
 ゲームではポーズをかけない限り自動的に時間が流れていく,セミ・リアルタイムとでもいう方式で,ゲーム内の最小ターンは1日。ポーズのタイミングは任意で,かつゲーム時間の経過速度も自由に変更できるので,いわゆるRTSのようなアクション性はない。
 操作はフルマウスで可能。キーボードショートカットも存在するが,ごく一部を除けば覚える必要はない。

国旗を右クリックで,選択肢がぐっと広がる。表示されるすべての国家に等しい勝ち目があるようなゲームバランスは存在しない。歴史は非情である(※こちらはFtGのゲーム画面)
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 EU2は,いわゆる「パラドゲー」(Paradox Interactiveが自社制作する世界史ストラテジーゲーム)の,ほぼ原典となる作品であり,同社の歴史はここから始まったと言っても過言ではない。
 ゲーム要素には,宗教や文化,技術の発展,“大航海時代”などなど,世界史のエッセンスが詰め込まれており,史実に即して発生する「歴史イベント」によってゲームプレイはダイナミックに変化していく。
 またプレイヤーが選択できる勢力が,当時世界に存在していた,ほぼすべての国家というのも特徴だ。タイトルのとおりヨーロッパ偏重ではあるにせよ,部族集団というべきレベルの勢力までプレイ可能なのである――それで何ができるかはともかく。



インタフェースを改善,MODの拡張性も向上


 さて,先に「パラドゲーの原典」と述べたEU2だが,これはつまり,それだけ古いゲームでもあるということで,総じて言うなら操作性はあまりよろしくない。というか,今では一般的となった「パラドゲーは操作性に難がある」という評価は,EU2のヒットとともに生まれたしたと言ってもいいだろう。
 FtGでは,そんなEU2のインタフェースに対してさまざまな改善策が講じられている。

この手のアラートが出るようになったのは,とても便利。ダブルクリックすれば問題の画面まで直行できる
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 最も大きな改善点は,各種アラートの実装だ。プロヴィンスで代官の昇格が可能であるとか,軍隊の維持費を削減できるのにしていないとか,政体スライダーを移動させられるとかいった警告が,EU3と同じフォーマットで画面左上に表示される。これには「うっかり操作し忘れる」ことを抑止すると同時に,「そういう操作が可能で,かつ行ってもよい」ことを初心者に認識させる効果がある。
 マップ上に中核州が直接表示されるようになったのも,便利な変更点と言えるだろう。中核州マーカーの表示/非表示も切り替えられるので,ちょっと目にうるさいと思えば,非表示にしてしまえばよい。

首都をクリックすると,中核州表示のオン/オフができる。マップ上,星マークが出ているのが中核州。これくらいの解像度なら常時表示でも,ほとんどうるささを感じない
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 また,「アーセナル オブ デモクラシー」(以下,AoD)と同様に,画面表示を高解像度化できるようになったのは非常にありがたい。AoDほど,一画面で同時に確認したい情報が多いゲームではない(なりにくい)とはいえ,大航海時代に入って植民地が増えてくると,高解像度化の威力はてきめんに現れてくる。
 情報の一覧画面から,プロヴィンス名をクリックすると直接そのプロヴィンスにジャンプできるのも便利だ。というか,「それって今まで何でできなかったの?」と思いたくなるが,できなかったのは事実なのだから仕方ない。素直に改善を喜ぶべきであろう。
 この他,ゲームバランスに関する変更点は非常に多いが,いささか話題が専門的になりすぎるので割愛したい(「◯◯という数値が2から3になった」的な話は,EU2をプレイしていた人でさえ「それにはどういう意味が?」と思うレベルの話だ)。より詳しく知りたい場合は,公式フォーラムやWikiなどを確認してもらうほうがよいだろう。

割と細かに設定が可能……なように見えるが,最重要ポイントは「解像度」のみ
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 一方,表からは見えにくいが,操作系/情報系と同じくらい重要な改良がある。それは「MOD関係」だ。
 FtGでは,Europeエンジンを拡張し,歴史イベントをより深く作り込めるようにしたり,データベース関係に大幅な拡張を行ってボリュームの上限を増やしたりしている。手を加えられるデータの範囲も増大しており,EU2よりさらに踏み込んだMOD作成が可能になっている。もちろんMODの作りやすさはEU2譲りだ。
 また,FtGには最初から大型MODが2本組み込まれている。そのうちの一本「AGCEEP」は日本のEU2コミュニティでも有名な超大型MODだが,これを商業ベースでローカライズしたというのは一種の偉業と言ってもいいだろう――それくらい,詳細かつ膨大なMODである。AGCEEP自体も,以降のアップデートはFtGをベースとして行うというアナウンスを出しており,事実上,EU2の今後の基礎はFtGに置かれると考えて良い。

MODが最初から2つ入っていて,選択式で起動できる
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大型MODの一つ「AGCEEP」。もうこの段階から「こいつぁ巨大だな……」という風情を漂わせている
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もう一つの大型MOD「The Age of Timur」は,ティムール全盛期を扱ったMOD。史実どおりモンゴル復興を目指して明と戦うもよし,まったく異なる未来を描くもよし
AGCEEPでイングランドをプレイ。ちょうどクロムウェルの時代で,アイルランドを踏みつぶし,スコットランドを踏みつぶし,イングランドは「イギリス」への道を爆走する。イベント密度の濃さはAGCEEPならでは
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あれれ,こんなに難しかったっけな……?


 さて,EU2からさまざまな部分が改善されたFtGだが,それでもインタフェースが「明瞭になった」とは言いがたい。EU2をプレイしていた人であれば「なんて親切で便利な!」と思うこと受けあいだが,いきなりFtGに触れた場合,そもそも「そこにクリッカブルなボタンが存在している」ことすら分からない可能性も否定できない。

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画面左上,この国旗の部分がボタンになっているということに,初見で分かる人がいるのだろうか……
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ここもクリッカブル。右側に見える十字架アイコンも同様だ。気づけというほうが無理

 またゲームの難度も結構なもので,イングランドやカスティーリャといった恵まれた国家でスタートしても,はじめのうちはあっという間に巨大な戦乱の嵐に巻き込まれて,わけも分からないままに,あちこちの領土割譲を強いられるといった展開になるのは,ほぼ間違いない。
 とりあえず,最初はゲーム難度を一番簡単な設定にしておくことをお勧めしたい。とりあえずこれで即死祭りは回避できるはずだ。また予算配分を国庫に割り振ると,やがてインフレで死んでしまうので,基本的には国庫には予算を配分せず,財政は年に一度の税収で賄うことも覚えておくといいだろう。ま,大きな戦争が始まると,そんな悠長なことは言ってられませんが。

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歴史イベントは固定されたものだけでなく,こういった「事故」の類もランダムで発生する。このあたりはEU2譲り
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基本,月の収支はマイナス。翌年の収入予測が出るので,これをもとに今年の予算を考えよう

 筆者の場合,なんのかんのでEU3をプレイしている時間のほうが多くなってしまったこともあって,「おかしいぞ。隣国のプロヴィンスを占領したのに,プロヴィンスが斜線表示にならない」など,EU3脳から戻ってくるのに,だいぶ時間がかかった。またインタフェースについては,やはりEU3で大幅に改善されたのだなあという思いを新たにせざるを得ない。それくらい,いまやEU3というのは「よくできた」作品として完成しているのだ。

戦争で他国の領地を占領しただけでは,その土地は自国に編入されず,和平交渉で領土割譲を認めさせる必要がある。もっとも,相手が「非文明国」であれば占領=即割譲。文字どおりの「ヨーロッパ・ユニバーサリス」である
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 一方,FtGはFtGで魅力的な作品であるのは間違いない。次々に発生する歴史イベント,思うに任せない国家運営,そしてそれらを乗り切って国家に平和をもたらした瞬間の安堵感と,それと同時に思う「さて次はどこを狙おうか」という相反する野心。FtGには,パラドゲーの持つ最も根源的な面白さが凝縮されているように思う。
 AoDとHoI3の比較の時にも述べたが,FtGとEU3もまた,「どちらが良い」という問題ではない。FtGにはFtGの良さがあるし,EU3にはEU3の良さがある。ただ個人的には,EU3以降のパラドゲーしかプレイしていない方には,一度でいいからFtGに触れてみてほしい,というのが素直な思いだ。

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基本,月の収支はマイナス。翌年の収入予測が出るので,これをもとに今年の予算を考えよう
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技術の進歩とともに,さまざまな建造物が建築できるようになったり,軍隊が強化されたりする



血みどろの歴史を体で覚えろ!


 FtGは,ベースがEU2ということもあって,動作は全体に軽快だ。そもそもがPentium IIIとかIVとか言っていた時代の作品が基礎なのだから,当然である。ゲームがしばしば落ちるのは相変わらずなので,オートセーブおよび,こまめなセーブは必須ではあるが。
 また,最初は何をやったらいいのかさっぱり分からないことも多いと思うが,これについてはとにかく「死んで覚える」のが一番早い。また,クリッカブルなボタンがどこにあるかを把握するのにはチュートリアルが最適なので,最低限のインタフェースはチュートリアルで把握しよう。

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チュートリアルは存在するが,正直これで本作のすべてを理解できるとは思えない。とはいえ,ないよりはずっといい
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とりあえず何をすればいいかが分かりやすい国家の一つがカスティーリャ。国力も十分

 FtGをプレイするにあたって筆者が個人的にお勧めするのは,イングランドかカスティーリャ。
 前者は大陸領をそそくさと放棄して100年戦争を速攻で終わらせてしまえば,あとは内政&大航海時代への準備となる。目立った戦争はスコットランド併合くらいで,これも焦る必要はない。
 後者はイングランドに比べると危機も多いが,イスラーム勢力と地続きになっている大国(=好き放題殴れる相手がお隣さん)という魅力がある。戦争や外交の基礎を覚えるのに便利だし,一度軌道に乗れば大航海時代はすぐそこだ。

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1492年スタートのシナリオ。コロンブスが今や遅しと待機中。もちろん,彼の探索能力を使って別の地域を探検しても構わない
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探検隊が出発した頃,グラナダがスペインに併合される。レコンキスタの終わりは,次の大地を目指す時代の幕開けでもあった

 FtGは,いろいろと洗練されきらない部分も多いゲームだが,最初の苦労を乗り越えるだけの価値がある作品でもある。欧州における血で血を洗う歴史を体験したいのであれば,本作は最高の作品の一つだ。

 ……ちなみに。ゲームの一時停止を行うショートカットキーはF9である。スペースバーを押してもポーズはかからないので注意されたい。これだけでFtGの快適度は段違いに変わるはずだ。

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「フォー ザ グローリー【完全日本語版】」公式サイト


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