連載
インディーズゲームの小部屋:Room#422「Shardlight」
GDC期間中に開催されるIndependent Games Festivalの授賞式の行方が今から気になる筆者がお届けする「インディーズゲームの小部屋」の第422回は,Wadjet Eye Gamesの「Shardlight」を紹介する。本作は,核戦争後の荒廃した世界を舞台に,人々を支配する特権階級と,その打倒を目指す地下組織のあいだで翻弄される主人公の姿を描いたアドベンチャーゲームだ。さて,今年はどの作品が受賞するのかなあ。
核爆弾が投下され,世界に終末がもたらされてから20年,人々はいまだに飢えと病気に苦しんでいた。食料や水は足りず,“Green Lung(緑色の肺)”という謎の病気が蔓延し,ワクチンすらも不足している。こうした生きるか死ぬかの生活を送るしかない人々は,“The Aristocracy(貴族)”と呼ばれる特権階級に支配され,彼らが配給するワクチンのチケットと引き換えに,危険な汚れ仕事を引き受けて日々を生き延びている。
本作の主人公である女性メカニックのAmyも,その一人。ほかの多くの人々と同様,Green Lungに侵されている彼女は,ある貴族の依頼で壊れた動力炉の修理に向かう。今にも崩れそうな下水道を抜けて動力炉にやって来たAmyは,そこで瓦礫の下敷きになって死にかけている男と出会い,一通の手紙を託される。そして,この手紙がもとで彼女は貴族達に反旗を翻す地下組織の存在を知り,やがて大きな陰謀に巻き込まれていくことに……。
本作はいわゆるポイント&クリック型のアドベンチャーゲームで,画面のあちこちをクリックして移動し,調べたいものにカーソルを合わせてこれまたクリックするという,今さら説明する必要もないほど伝統的なゲームシステムを採用している。プレイヤーはAmyを操作して,あちこちのロケーションを探索し,人々と会話して情報を集め,手に入れたアイテムを使ってパズルを解きながらストーリーを進めていく。
グラフィックスは細部まで描かれたピクセルアートで表現されており,くすんだ色彩のなかに,毒々しいまでに鮮やかな緑色をワンポイントに使った終末世界の描写が見どころの1つ。荒廃し,雑然とした雰囲気ながらもある種の活気を感じさせるスラムの様子と,整然とした街並みが残る高級住宅街の対比が印象的で,理不尽な世界の中でどうにか生き延びようとするAmyの姿と,徐々に不穏な影を色濃くしていくストーリーにぐいぐい引き込まれる。
一部の謎解きは手順が非常にややこしく,自力で解こうとするとかなり苦労させられるが,次にすべきことは比較的分かりやすく提示されているので,その点で迷うことは少ないだろう。むしろ,全編英語なのに会話の途中でメッセージを止められないため,ストーリーを十分に理解するにはそれなりの英語力が必要となる点が一番のハードルだが,アドベンチャーゲームが好きな人にはぜひお勧めしたい一本だ。そんな本作はSteamでデモ版が配信されているほか,製品版が1480円で発売中。誰か,ローカライズしてくれないかしら。
■「Shardlight」公式サイト
http://www.wadjeteyegames.com/games/shardlight/- この記事のURL:
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