連載
インディーズゲームの小部屋:Room#268「Waking Mars」
太古の昔に購入し,そのまま部屋の片隅に積まれていたガレージキットをいいかげん作ろうと思い,久々にカッターを握って細かい作業をしたら,次の日,右腕が筋肉痛になってしまった筆者がお届けする「インディーズゲームの小部屋」の第268回は,Tiger Styleの「Waking Mars」を紹介する。本作は,地球外生物が発見された火星の洞窟を探索し,火星の謎に迫るというアクションゲーム。それにしても,いったいどれだけ筋力がないんだぜ……。
西暦2007年,火星に無数の洞窟が見つかり,同2093年にはその洞窟内に生命が存在することが発見された。その4年後,火星探索チームの一員となり,地下空洞の調査に乗り出した主人公のLiang。初めのうちは順調に調査を行っていたLiangだったが,地表の前線拠点が崩壊するほどの地殻変動に襲われ,火星の地下に閉じ込められてしまう。この窮地から脱出するには,地下深く潜って洞窟を踏破し,峡谷の底にあるベースキャンプに何とかして辿り着くしかない。果たしてLiangは無事,生還できるのか……。
というわけで,プレイヤーは火星の地下に単身取り残されてしまったLiangを操作し,未知の洞窟を探検することに。Liangは背中にジェットパックを装備しており,W/A/S/Dキーで洞窟内を自由に飛び回れる。たいていの場合,この手の装備には燃料などの制限があり,一定時間しか飛べなかったりするものだが,本作ではそうした制限がなく,思うさま飛行できるので実に気持ちいい。しかし,あまり高いところから無防備に落下するとダメージを受けてしまうので注意が必要だ。
そしてもう一つ,洞窟探索の鍵を握っているのが“シード”と呼ばれる火星の植物(?)の種。シードを拾い,マウスで狙いをつけて左クリックで洞窟内の特定のポイントに植えると,たちまち成長して画面右上にある“バイオマス”の数値が上昇する。バイオマスは火星の生態系の活性度をあらわしており,数値が上昇して生態系が活発になると,それまで仮死状態だったほかの生物が目覚めて活動を始めるのだ。最初はただの岩場でしかなかった洞窟内が,次第にたくさんの火星生物によって埋め尽くされていくさまは見ていて楽しい……が,わさわさ動き回る昆虫みたいなのはちょっと気持ち悪いかも。
Liangがこうしてわざわざ生態系を復活させているのには,もちろん理由がある。1つは本来の目的である火星生物の調査のためだが,もう1つは洞窟から脱出するために,生態系の活発化が不可欠だからだ。洞窟内の通路は,あちらこちらが活動を停止した植物(?)によって封鎖されており,生態系が蘇ることでそれが解除されて通れるようになるというわけ。そして,深い眠りについていた火星を目覚めさせながら,さらに地下深く進んでいくLiangは,やがて驚くほど高度に発達していたその生態系を目の当たりにし,太古の火星の謎に迫っていく。やっと前フリとつながった!
ジェットパックを使って飛び回る爽快感と,シードを利用した生態系の復元,そして火星の謎をめぐるストーリーが見事に結びつき,ついつい時間を忘れてのめり込んでしまう本作。英語があまり得意でない人は,ゲーム中の会話についていくのが大変だが,基本的にはどんどんシードを植えて生態系を取り戻していけばいいので,純粋なアクションゲームとして楽しむこともできるだろう。そんな本作は,公式サイトやSteam,Desuraで9.99ドルにて発売中。また,iOS版が450円,Android版が429円で販売されているので,スマートフォンで遊びたい人はそちらをどうぞ。
■「Waking Mars」公式サイト
http://www.tigerstylegames.com/wakingmars/- この記事のURL:
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