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Access Accepted第456回:映画市場への進出を狙う「Steam」
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印刷2015/04/06 12:00

業界動向

Access Accepted第456回:映画市場への進出を狙う「Steam」

画像集 No.001のサムネイル画像 / Access Accepted第456回:映画市場への進出を狙う「Steam」

 これまで,ゲームに関連したドキュメンタリー映画をいくつかラインナップしていた,「Steam」に,このたび,ゲームとはまったく関係のないコメディ映画が加わった。4500以上のタイトルを擁し,PCゲーム市場に大きな影響力を持つSteamが,さらに大きなプラットフォームに成長する戦略として,インディーズ映画などに門戸を開いたとして,欧米ゲーム業界で注目を集めている。そして,彼らの視線の先には,これまでなかったタイプの映画も映っているようだ。


Steamで映画の配信サービスが開始へ


 2015年3月31日,「シリアス サム」「Hotline Miami」シリーズのパブリッシングで知られるDevolver Digitalが,Valveのゲーム配信サービス「Steam」で,コメディ映画「Motivational Growth」の配信を開始した。これまで「Indie Game: The Movie」「Free-to-Play」など,“ゲーム業界をテーマにしたドキュメンタリー映画”をいくつか配信した実績はあったものの,Steamがゲームと直接関係のない劇場公開映画を扱うのは,これが初めてのことになる。

Steamでの配信が始まった「Motivational Growth」は,汚れたバスルームの片隅で成長したカビに,人生のアドバイスをもらうというダサい男を主人公にしたコメディ映画。ゲームと関係のある内容の映画ではないものの,監督と脚本をこなすDon Thacker氏はゲーム開発の経験もあるという
画像集 No.002のサムネイル画像 / Access Accepted第456回:映画市場への進出を狙う「Steam」

 2003年に正式サービスを開始したSteamは,当初「Counter-Strike 1.6」などのValveタイトルやインディーズゲームを主に扱っていた。やがて,デジタル配信の利便性や経済性に気づいた大手パブリッシャが試験的に参加し,時間をかけて現在の姿に成長してきた。
 現時点で4500にもおよぶタイトルをラインナップしており,ユーザー数は約1億2500万人。同時接続者数は,最大で900万人にも達すると言われる。Valveが実数を発表しないため,あくまで推測値になるが,PCゲーム市場の70%以上を占有すると見られている。

 ご存じのように,映画のダウンロードやストリーミング配信については,すでに多くのサービスが存在する。全世界で10億台以上のAndroidデバイスがアクセスするという「Google Play」や,アカウント数は8億といわれる「iTunes」と比べれば,さすがのSteamはまだ小さな存在だ。しかし,契約者数約4000万人という「Netflix」や,5000万アカウントを数える「Amazon Prime」を数字の上では超えているとされており,「PlayStation Network」「Xbox Live」に比べても遜色のないプラットフォームであることは疑いがない。
 そんなSteamが,ついに映画に進出するとして,欧米ゲーム業界の注目を集めているわけだ。もっとも現在ところ,Valveが映画の配信を今後,どうしていきたいのか,ライブラリを拡充していく予定があるのかなど,詳しいことはアナウンスされていないのだが。


“3D 360°映画”市場のメインプラットフォームに?


 2013年2月に初公開された「Motivational Growth」は,Imago Filmsという独立系映画会社が配給を担当し,18万ドル(約2000万円)の興行成績を記録したという。評価もそれなりで,おそらく日本では知る人も少ない作品だろう。2014年10月にはDVDやBlu-Rayがリリースされ,いくつものオンライン映画配信サービスでも売られている。そんな作品だけに,改めてSteamでリリースされたところで,映画産業に大きなインパクトを与えるものではない。

 しかし,Devolver Digitalの公式サイトを見ればお分かりのように,同社は設立当初からゲームと映画配給に同等の力を入れ,経験を積んできたメーカーであり,Valveとは,2年以上前から映画配信についての協議を重ねてきたのだという。映画の配信は,今回の「Motivational Growth」だけで終わる話ではなさそうだ。

書斎からリビングへの進出を狙うValveの「Steam Machines」。ゲームをしていない時間帯に映画や音楽を楽しむプラットフォームとして,十分に価値がありそうだ
画像集 No.004のサムネイル画像 / Access Accepted第456回:映画市場への進出を狙う「Steam」
 ほかの映画配信サービスに比べて,Steamには映画の視聴にも役立ちそうな機能がいくつかある。例えば,高解像度テレビと親和性の高いインタフェースの「Big Picture」や,ハイエンドPCの映像をリビングの大型テレビに配信できる「Steamホームストリーミング機能」など,こうした便利な機能を使えば,ゲームをプレイしていないとき,シームレスに映画や音楽が楽しめるはずだ。
 また,GDC 2015で発表された「SteamVR」関連記事)対応のヘッドマウントディスプレイ,「HTC Vive」も,ゲームだけでなく映画の視聴にも役立ちそうだし,あまり噂を聞かなくなってしまったが,リビングルームに置いた「Steam Machine」を使って,手軽に映画を楽しむことも可能になるだろう。これらを考え合わせると,Steamで映画を楽しむこと自体が自然な流れに思えてくる。

 ちなみに,SteamVRの話ではないが,Oculus VRの「Rift」の開発キット「DK1」と「DK2」に対応した「Zero Point」というショートムービーがSteamで販売中だ。これは,宇宙から見たE3会場の様子や,Oculus VRの開発者インタビュー,そしてアメリカ陸軍の実戦さながらの訓練の模様をつなぎ合わせた映像で,特殊なカメラで撮影されているため,Riftを使うことで,あらゆる方向を立体的に見ることができる。
 映像にインタラクティブ性はないが,まるで自分が実際にそこにいるような錯覚を覚えるし,宇宙船のドッキングや兵士の訓練といった動きの激しい映像では,首を回すことであらゆる状況が観察できる。
 こうした映像は最近,「3D 360°映画」と呼ばれるようだが,新たな映像表現の手法として,今後ますます注目されていくことは確実で,そのスタンダードな視聴プラットフォームとして,Steamはきわめて有利な位置に立っているように思われる。

Condition Oneという映像制作会社によって生み出された「Zero Point」(https://www.reelhouse.org/conditionone/zeropoint)は,1つの映画というよりはデモ映像集といった体裁のショートムービー。VRヘッドマウントディスプレイの市場進出に伴い,こうしたタイプの映画も増えていくことになるだろう
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 Steamの映画への進出が今後,どうなっていくのかは分からないが,Steamには,10年をかけてPCゲームの流通モデルを驚くほど変えてしまったという実績がある。短期的には大きな変化はないかもしれないが,いずれ「3D 360°映画」をSteamで楽しむのが当たり前という時代が訪れるのかもしれない。


著者紹介:奥谷海人
 4Gamer海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年の開始以来,4Gamerで最も長く続く連載記事。欧米ゲーム業界に知り合いも多く,またゲームイベントの取材などを通じて,欧米ゲーム業界の“今”をウォッチし続けている。
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