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Access Accepted第420回:マトリック体制に完全移行したZynga
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印刷2014/04/28 10:00

業界動向

Access Accepted第420回:マトリック体制に完全移行したZynga

画像集#001のサムネイル/Access Accepted第420回:マトリック体制に完全移行したZynga

 「Facebook向けゲームの雄」として知られたゲームメーカー,Zyngaだが,2010年にNASDAQに上場して以降,苦しい経営が続いてきた。そんな中,創業者であるマーク・ピンカス(Mark Pincus)氏が退任を発表し,2013年にCEOに就任したドン・マトリック(Don Mattrick)氏が同社の舵取りを引き受けることになった。幹部の刷新やモバイルゲーム市場への取り組みなど,Zyngaの最近の動きをまとめてみよう。


Natural Motion買収や幹部刷新から見えてくるZyngaの今


 ゲームビジネスの経験がまったくなかったマーク・ピンカス(Mark Pincus)氏が2007年にZyngaを設立して,およそ7年が経過した。一時はActivision Blizzardに続く業界第2位のゲーム企業になり,2011年12月にはNASDAQへの上場にも成功したものの,現在,その株価は上場当時の半分以下である4ドルほどに低迷している。PCのブラウザゲームが中心だった同社は,急速なモバイルゲームの台頭に対応できず,またこれまで同社の収益を支えてきたゲームの多くが古くなってしまったこともあり,赤字から脱却できていない。

 2014年4月23日,Zyngaは大きな決断を行い,これまでChief Product Officerとして同社の運営を行ってきたピンカス氏が非常勤の会長に退くことを発表した。経営責任を取って辞めるべきだという意見は以前からあったが,筆頭株主でもあるピンカス氏はこれまでそれを拒否し続けてきた。しかし,同社の業績が思うように好転しないため,ついにピンカス氏自らが「大手術」を決断したわけだ。

2013年7月,ZyngaのCEOに就任したドン・マトリック氏(右)と,彼を迎えたマーク・ピンカス氏(左)のツーショット。2014年に入り,Zyngaの運営はピンカス氏からマトリック氏へ完全にバトンタッチされた
画像集#002のサムネイル/Access Accepted第420回:マトリック体制に完全移行したZynga

 これにより,今後のZyngaは,2013年7月からCEOに就任したドン・マトリック(Don Mattrick)氏の体制に一本化される。マトリック氏については,本連載の第389回「ドン・マトリック氏の電撃移籍が生み出す波紋」で詳しく説明しているが,Electronic ArtsやMicrosoftなど,欧米ゲーム業界で30年以上経験を積んできた氏がZyngaをどのような方向に導いていくのか,注目が集まっている。

画像集#004のサムネイル/Access Accepted第420回:マトリック体制に完全移行したZynga
 振り返ってみれば,2014年に入ってからZyngaの経営方針転換に向けた動きは活発だった。2013年末の時点で2034人だった従業員の15%にあたる314人をリストラし,さらに,利益の出なかった「YoVille」など,複数のタイトルをクローズ。その一方,モバイルゲーム市場で大きな話題になった「CSR Racing」の開発元であるNatural Motionをこの1月,5億2700万ドル(約540億円)で買収するなど,モバイルタイトルへのシフトを加速させている。

 「Facebookゲームの雄」として知られたZyngaだが,現在同社が運営しているゲームのうちFacebook向けが11タイトルであるのに対し,モバイル向けは17作がリリースされている。同社の収益の3分の2を占めるという「FarmVille」「FarmVille 2: Country Escape」「Zynga Porker」,そして「Words with Friends」も,すべて2013年内にFree-to-Play型のモバイルゲームへの移植を完了させており,現在はZyngaで開発中のゲームの75%がモバイル向けのプロジェクトだという報道もある。


正念場を迎えつつあるZynga


 Zyngaを率いることになったマトリック氏はこれまで,経営陣の刷新も進めてきた。2013年には,DeNA WestやHasbroなど,ゲーム業界で長い経験を持クライヴ・ダウニー(Clive Downie)氏を,同社の実質ナンバー2となるChief Operations Officerに就任させたほか,家電量販店チェーンのBest Buyで財務戦略担当重役として活躍していたデイビッド・リー(David Lee)氏を熱心にスカウトしてChief Financial Officerに迎えている。

 また,MicrosoftでXbox Live担当マネージャーとして映画や音楽,スポーツなどのコンテンツ拡充に功績のあったアレックス・ガーデン(Alex Garden)氏を開発部門のヘッドに起用。同氏は以前,Relic Entertainmentで「Home World」「Company of Heroes」などを手がけたプロデューサーであり,マトリック氏とは25年におよぶ仲であるという。
 さらに,Dreamworksの特殊効果スペシャリストとして映画「マイノリティ・リポート」などの制作に携わったヘンリー・ラバウンタ(Henry LaBounta)氏を,Chief Visual Officerというポジションを特別に設立して招聘するなど,Zyngaに新しい血を次々に導入して,同社を自分のカラーに染めつつあるのだ。重役達の顔ぶれからは,マトリック氏が,ゲーム性やビジュアル面でも高いレベルのゲーム開発を狙っている姿が浮かんでくる。

 2013年,Zyngaは8億7300万ドル(約895億円)の収益に対して,3700万ドル(約38億円)の赤字を計上しており,依然として経営状況は厳しい。また,人員整理を断行したにも関わらず,Natural Motionの買収によって,従業員総数はリストラ前とあまり変わらないという。

一端はサービス中止が発表された「YoVille」だが,Zyngaを解雇された開発者達が設立したBig Viking Gamesによって運営が継続されると発表された
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 現在はマトリック体制に移行したばかりであり,Zyngaの進路を占うような新規プロジェクトはとくに発表されてはいないが,イギリスではオンラインカジノbwin.partyとの提携を行い,このジャンルが盛んなヨーロッパで足がかりをつかみつつある印象だ。Natural Motionからはすでに「Clumsy Ninja」という作品がAndroid向けにリリースされているが,このような,これまでのZyngaとは毛色の異なるプロジェクトは今後も増えていくだろう。
 7年前,Facebookの台頭と共にゲーム産業に大きな変化をもたらしたZynga。ゲーム業界の裏表をつぶさに知り尽くしたマトリック氏へのバトンタッチでどのような変化を見せることになるのだろうか。

著者紹介:奥谷海人
 4Gamer海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年の開始以来,4Gamerで最も長く続く連載記事。欧米ゲーム業界に知り合いも多く,またゲームイベントの取材などを通じて,欧米ゲーム業界の“今”をウォッチし続けている。
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