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Access Accepted第416回:イギリスの有名業界人が,6年ぶりに再始動
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印刷2014/03/31 12:00

業界動向

Access Accepted第416回:イギリスの有名業界人が,6年ぶりに再始動

画像集#001のサムネイル/Access Accepted第416回:イギリスの有名業界人が,6年ぶりに再始動

 「MotorStorm」のRevolution Studiosや「Project Gotham Racing」のBizarre Creationsなど,イギリスのリバプールにはレースゲームを得意とするメーカーが伝統的に多いが,そんな彼らがイギリスのゲーム業界ではよく知られた人物,マーティン・ケンライト氏のもとに集結している様子だ。筆者は,サンフランシスコで開催されたGame Developers Confernce 2014の会期中,そんなケンライト氏の再デビューについて話を聞く機会を得た。6年ぶりに帰ってきたケンライト氏の狙いなどを,ここで紹介したい。


イギリスの有名業界人が,6年ぶりに再始動


 2006年に欧米でPlayStation 3が発売されたとき,ローンチタイトルの一つだったこともあり,シリーズ累計で700万本近い大ヒットを記録した「MotorStorm」。このタイトルを開発したRevolution Studiosの設立者,マーティン・ケンライト(Martin Kenwright)氏が6年ぶりにゲーム業界に復帰し,出身地であるイギリスのリバプールで新たなゲームメーカー,Starship Group(以下,Starship)を立ち上げた。
 Starshipの存在は,これまで数か月にわたって秘密にされてきたが,筆者はGame Developers Conference開催中の2014年3月17日,GDCの会場から少し離れたフェアモントホテルで,新会社設立を発表する直前のケンライト氏を取材する機会を得た。
 取材の内容についてお話しする前に,ケンライト氏の経歴を紹介しておこう。

StarshipのCEOとして,6年ぶりにゲーム業界に戻ってきたマーティン・ケンライト氏。フライトシムやレースゲームなど,彼の作品は過去5回,BAFTA(British Academy of Film and Television Arts)にノミネートされている。自分達の新規プロジェクトについてケンライト氏は,「日本市場にもアピールできるはず」と語る
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 ケンライト氏は,1989年に設立されたゲームメーカー,DID(Digital Image Design)の創設者兼ゲームデザイナーとして業界でのキャリアをスタートさせている。同社の初タイトルは,NECのPC-9801や富士通のFM TOWNS向けにもリリースされたフライトシム「F29 Retaliator」(1989年)で,続いてリアルな操作感が評判のコンバットフライトシム「TFX」(1993年),そして「EF2000」(1995年)や「F-22 Total Air War」(1998年)といった作品を次々に開発し,DIDは1990年代のフライトシム市場でよく知られる存在になった。

 1999年,DIDがInfogramesに買収されると,ケンライト氏はDIDを退社。Psygnosisの創業者としてリバプールのゲーム産業に大きな影響を与えていたイアン・へザリントン(Ian Hetherington)氏を会長に迎え,新たにEvolution Studiosを設立した。
 そして,Sony Computer Entertainmentのイギリス初の専属スタジオとなり,テーマを戦闘機からレースカーへ変え,PlayStation 2向けの「World Rally Championship」(2001年)を制作した。この縁により,「MotorStorm」がPlayStation 3のローンチタイトルになったのだ。

 Evolution Studiosは現在,オンラインレーシングゲーム「Driveclub」を開発中だが,ケンライト氏は,「MotorStorm」の発売後,2007年にEvolution StudiosをSony Computer Entertainmentに1900万ユーロで売却している。これを元手に,過去6年間にわたって不動産業を営んできたそうだが,「まだゲーム業界で何かできるはず」という思いが日ごとに強くなり,ついに2013年,リバプールでStarshipを立ち上げたというわけだ。

写真右のクレメンス・ワンゲリン(Clemens Wangerin)氏は,1995年にPsygnosisに参加して以来,後身であるSony Studio Liverpoolが2012年に閉鎖されるまで,プロデューサーを務めてきた人物。StarshipではCOO(チーフ・オペレーティング・オフィサー)として,開発チームのマネジメントを行うという
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ゲームエンターテイメントから健康産業まで


 すでに20人ほどのメンバーが集まっているというStarshipだが,ケンライト氏の説明によれば,同社はゲーム業界における普通の意味でのパブリッシャでもデベロッパでもないという。むしろ投資会社に近く,ゲームの企画はStarshipで行い,それをリバプール周辺のサードパーティに委託するという,イギリスで“アンブレラカンパニー”とも呼ばれるビジネスモデルを採用している。
 ケンライト氏は,「ゲーム業界から離れていた5年間で気付いたのは,次のゲーム市場においては既存の販売モデルが完全に崩壊するということです。我々がやろうとしているプロジェクトのコンセプトは,従来とは異なるアプローチです。ゲームの開発や資金の運用,そしてマーケティング,販売についてまで,さまざまな側面で異なるものなのです」と述べた。

Starshipのメンバー達。彼らがコンセプトを作り,デベロッパに開発費を提供し,マーケティングや実際の販売を担当していくことになる
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 そのビジネスモデルに沿った新作タイトルもすでに開発中で,取材中,筆者もトレイラーを見せてもらったり,プレイアブルなものを少しだけ遊ばせてもらったのだが,諸般の事情により,今の段階で詳しい内容はお話しできない。印象だけを述べれば,それが従来と同じ意味で「ゲーム」と呼べるかどうか分からないもので,グラフィックスの美しさやシステムの面白さなどに留まらない,次世代のエンターテイメントをケンライト氏が目指していることが分かった。

画像集#004のサムネイル/Access Accepted第416回:イギリスの有名業界人が,6年ぶりに再始動

Starship Group公式サイト


 事実,ケンライト氏はゲームの枠を超え「健康やセルフヘルプ(身体に問題を抱える人が自立するための取り組み)といった分野を開拓することにも興味を持っている」と熱く語る。筆者が見たものと同じデモを体験したあるハードメーカーからは,ゲーム産業の守備範囲を広げるエンターテイメントアプリケーションになると,言われそうだ。

 ちなみに,リバプールにこだわる理由についてケンライト氏は「リバプールは,PsygnosisやDIDの時代からゲーム開発の長い歴史があり,まだまだ有能な人材がたくさん残っています。Revolution StudiosやSony Computer Entertainment Europe,そして『Project Gotham Racing』のBizarre Creationsなどで働いていた多くの開発者がリバプールに戻っており,私もその一人なのです」と,地域の活性化も合わせて狙う意図を見せた。

 新規プロジェクトの内容をお伝えできないため,どうしても歯切れが悪くなったが,これについては2014年6月にロサンゼルスで開催されるE3 2014で詳しく発表される予定だ。
 インディーズゲームやモバイルアプリ,デジタルディストリビューション,そして新たな仮想現実対応のヘッドマウントディスプレイの登場など,荒れる海のように変革を続ける欧米ゲーム業界でStarshipがどのような船出を見せるのか,発表を楽しみにしてほしい。

著者紹介:奥谷海人
 4Gamer海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年の開始以来,4Gamerで最も長く続く連載記事。欧米ゲーム業界に知り合いも多く,またゲームイベントの取材などを通じて,欧米ゲーム業界の“今”をウォッチし続けている。
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