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Access Accepted第393回:次世代ゲームソフトはどうなるのか
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印刷2013/08/12 12:00

業界動向

Access Accepted第393回:次世代ゲームソフトはどうなるのか

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 2013年は据え置き型の新型コンシューマ機が2台登場し,その高い性能を活かしたゲームも次々とリリースされる予定だ。どちらのプラットフォームを購入するか,そしてどのゲームを遊ぶかと,今から悩んでいる人も多いと思うが,やはり注目されるのは,「AAA(トリプルA)タイトル」と呼ばれる,多額の予算をつぎ込んだ超大作ソフトだろう。今週は,次世代コンシューマ機で動く「ゲームソフト」にフォーカスして,最近の欧米ゲーム市場の話題を紹介しよう。


次世代機向けタイトルの価格は大きくはね上がる?


 具体的な日時は未発表であるが,「2013年末」とされるPlayStation 4Xbox Oneの発売が迫っている。北米市場では,PlayStation 4のベーシックモデルが399ドル,Xbox Oneが499ドルという価格になっているが,多くのゲーマーにとってもっと重要になるのが,ゲームソフトの価格ではないだろうか。

2013年11月の欧米リリースが噂されるPlayStation 4とXbox One。ゲームの開発費用はそれほど高騰せず,販売価格に変化はないと見られている
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 7月,イギリスを中心に展開する小売りチェーンGAMEの情報として,「現時点で販売価格を提示しているのはElectronic Artsで,それは54.99ポンド」という情報がメディアに流れた。54.99ポンドを米ドルに換算すると約79.99ドルで,現行のPlayStation 3/Xbox 360向けソフトより20ドルほど高くなる。

 そのため,ちょっと騒がれたものの,これは「友達の友達から聞いた」式の,あまり信憑性の高い情報ではなかったようだ。Electronic ArtsのCFOであるブレイク・ヨルゲンセン(Black Jorgensen)氏は次世代機向けゲームの価格について,「開発コストは10%程度の上昇にとどまっており,ゲームソフトの販売価格は現在と同じ59.99ドルになるはず。娯楽としての価値を考えれば,コストパフォーマンスは現在よりも良い」と語っている。

 また,Sony Computer Entertainment AmericaおよびMicrosoftは,少なくともファーストパーティのゲームについては59.99ドルという販売価格に変化はないとしているので,サードパーティが競争力のない価格を付けることは考えにくい。

 新しいアーキテクチャが採用されたPlayStation 3/Xbox 360の時代には,開発の困難さと,それに伴う開発費の高騰が叫ばれていたが,PlayStation 4/Xbox OneはPCに使われているx86系のCPUを採用していることなどから,すでに開発ノウハウやツールは揃っている。ヨルゲンセン氏の言う「開発費の10%アップ」は,より大きなメモリに展開されるゲーム世界を埋めるアセットの作成や,プログラムの大型化によって複雑になるバグチェックなどの品質管理に由来するものであるようだ。

 これらの広大なマップや高品質のテクスチャなどが要求されるのは,大手パブリッシャが手がける,いわゆる「AAA(トリプルA)タイトル」が中心になるが,各社ともアウトソーシングやストックの再利用などによって開発コストの上昇をできる限り抑えているという。また,品質管理については,最近のPCタイトルでよく見られるβバージョンの早期リリースによる開発手法がコンシューマ機市場に取り入れられていくかも知れない。「体験版」のフィードバックによる製品のブラッシュアップは,すでにいくつかのタイトルで行われていることでもある。


問題を指摘される「AAAタイトル」


 筆者も書いてしまうが,この「AAAタイトル」という奇妙な表現は,もともと「すべての面でAランク」という意味合いで使い始められたもののようだ。単にゲームが面白いだけでなく,「膨大な開発費をかけた」「バグがない」「入念に作られている」といった付帯条件も含まれるらしいが,もちろん,とくに定義があるわけではない。
 こうした「AAAタイトル」は,2005年に北米でXbox 360が発売され,翌年PlayStation 3が続いて以来,目立つようになってきた。巨額の開発費と宣伝費用を投入し,数千万本も売れるタイトルが次々に登場。こうしたタイトルが欧米だけでなく世界のゲーム市場を牽引してきたという印象だ。現在,欧米ゲーム市場の規模はハリウッドの映画産業をしのぐものになったという。

 その一方,「AAAタイトル」という「ハイリスク・ハイリターン」なビジネスに付いていけなくなったパブリッシャが倒産したり,デベロッパが大手メーカーの傘下に入るといったことから,業界の再編成も促すことになった。リスク低減のため開発本数が絞られ,作られるタイトルもヒット作の続編ばかりといった状況も生み出している。

2014年以降にUbisoft Entertainmentからリリースされる予定の「Tom Clancy's The Division」は,レイモンド氏のいるUbisoft Quebecではなく,「Far Cry 3」を担当したスウェーデンのUbisoft Massiveが開発中
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 こうした「AAAタイトル」を軸とするビジネスについて,Ubisoft Quebecで「Tom Clancy's Splinter Cell: Blacklist」の開発を指揮するゲーム開発者,ジェイド・レイモンド(Jade Raymond)氏が疑問を投げかけている。アメリカの総合エンターテイメントサイト「Digital Spy」の質問に答えてレイモンド氏は,「より多くの人材が必要となる高性能ハードが発売されて,どうやって開発費を抑えることができるのか」と述べており,大きな販売実績が求められるなか,ゲームがマンネリ化して,新たなイノベーションが生み出しにくくなっていると憂慮している。

膨大な資本や人材を注ぎ込むことなく,アイデア一つで成功するインディーズメーカーが次々に現れている。今の欧米ゲーム業界はパブリッシャ主導型だが,今後はデベロッパ主導型に変わっていくのかもしれない。写真は,「Minecraft」で知られるMojangの社内風景
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 次世代ハードウェアが登場した以上,その能力を十分に使い切ったビッグタイトルを遊びたいというのはゲーマーの基本的な欲求だろう。そのためには,多額の開発費と人材が必要であり,当分「AAAタイトル」がゲーム市場の中心になるのは間違いない。
 とはいえ,コンシューマ機市場が次の世代に進んだとき,どのような変化が待っているのかは分からない。完成度の高いFree-to-Playタイトルやインディーズ作品が脚光を浴びつつある現在,従来型のパッケージビジネスに変化が求められる可能性は高く,ハイリスク・ハイリターンの「AAAタイトル」を抱える大手パブリッシャは,今後しばらく難しい舵取りを強いられそうだ。
 現在は,PlayStation 4/Xbox Oneというハードウェアそのものに関心が集まっているが,それらがリリースされたあと,欧米ゲーム市場がどう動くかということこそ,さらに注目し続けていかなければならない,大切なポイントなのだ。


著者紹介:奥谷海人
 4Gamer海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年の開始以来,4Gamerで最も長く続く連載記事。欧米ゲーム業界に知り合いも多く,またゲームイベントの取材などを通じて,欧米ゲーム業界の“今”をウォッチし続けている。

お知らせ
来週の「奥谷海人のAccess Accepted」は,Gamescom取材のため,休載いたします。次回の掲載は,2013年8月26日を予定しています。
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