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印刷2012/03/12 19:52

業界動向

Access Accepted第337回:「日本のゲームの未来」を考えさせられたGDC 2012


 GDC終了後の本連載では,例年,GDCで見えた欧米ゲーム業界のトレンドのいくつかをピックアップしてお伝えしているが,今年は「日本のゲームはダメなのか?」という一つの話題について考えてみたい。インディーズゲームを含めて,なにかとイケイケムードの欧米ゲーム業界に対して,日本の開発現場にはある種の閉塞感が漂っているように見える。はからずもGDC 2012で日本のゲームにまつわる出来事がいくつか起きたので,紹介しよう。


時代に応じて様変わりを続けるGDC


 2012年3月5日から3月9日まで,世界最大のゲーム開発者会議Game Developers Conference(以下,GDC)がサンフランシスコで開催された。今年は,プラットフォームホルダーの基調講演が行われず,GDCも大きな転機を迎えているのではないかと思わせるイベントになっていた。
 振り返ると2001年,ビル・ゲイツ(Bill Gates)氏が自ら登壇して,初代Xboxを多数のゲーム開発者にお披露目。翌2002年からは「Developers' Choice Award」が始まり,そこに登場する有名人,例えばウィル・ライト(Will Wright)氏やジョン・カーマック(John Carmack)氏の話を聞くため,以前にも増して多くのメディアが参加するようになった。この頃からGDCの巨大化は顕著になり,日本を含めた海外からの参加者も増え,メディア向けイベントとしての重要性も増していった。

毎年,2万人近いゲーム業界関係者を集めて行われるGDC。2012年は,「ソーシャル」「モバイル」,そして「インディーズ」の隆盛を示すようなセッションやイベントが多かったが,日本人の開発者が直視しなければならない大きな問題が提起されたイベントでもあった
Access Accepted第337回:「日本のゲームの未来」を考えさせられたGDC 2012

 だが今回のGDC 2012では,キーノートスピーチなどイベントとしての華やかな部分を削り,本来あった「ゲーム開発者達がゲーム開発についてじっくり話し合うことができる」ための場としての性格を明確に打ち出すことにしたようだ。
 また,基調講演の代わりとして,講演予定者達が割り当て時間の中で次々に「なぜ,私のセッションは面白いのか」を解説していくという実験的なプレゼンテーション「Flash Forward」が行われた。このほか,ゲーム開発者や学生のためのキャリアブースも例年に増して充実したものになるなど,総じて,GDC 2012は最近の欧米ゲーム業界の事情にうまく対応した変化を遂げつつあると言えそうだ。

 日本のGREEやDeNAが参加するなど,モバイル関連のプレゼンスが大きく増したのもGDC 2012の特徴で,既存のゲームメーカーから多数の人材が移動していったソーシャルゲームからの積極的なアプローチがあったという点でも,これは見逃せない。もちろん,最近の欧米ゲーム業界では大きな存在になりつつあるインディーズゲームの,これまで以上の元気ぶりも印象的だった。
 基調講演はなくなったものの,シド・マイヤー(Sid Meier)氏やクリフ・ブレジンスキ(Cliff Bleszinski)氏,そしてマルクス・ペルソン(Markus Persson)氏といった著名なクリエイターが登壇してセッションを行っており,セッションの内容も新技術の紹介から実践的なゲーム開発講座など,相変わらずバラエティに富んだものになっている。


GDC前夜のイベントで発生した一つの事件


 そんなGDC 2012初日となる3月5日の夜,サンダンス映画祭で公開されて話題になった映画「Indie Game: The Movie」が上映されるというイベントが行われた。カナダ人監督が撮影したドキュメンタリーであるIndie Game: The Movieは,インディーズゲーム市場で話題の「Super Meat Boy」「Fez」,そして「Braid」などを開発したカナダのインディーズゲーム制作者達の日常を追ったもの。映画の題材としてインディーズゲームが取り上げられ,話題にもなったということで,イケイケな雰囲気のイベントだったという。

 騒動は,映画の上映後に行われたQ&Aコーナーにおいて発生した。すでにブログやTwitterなどで話題になっており,知っている人も多いと思うが,このイベントに参加したある日本のゲーム開発者が,「日本のクラシックゲームとの対比が,映画の中で何度も出てきたことを誇りに思う。ところで,現在の日本のゲームについてはどう思うか」という主旨の質問をしたところ,Fezの開発者であるフィル・フィッシュ(Phil Fish)氏が,「お前達のゲームはサイアクだな」と返し,会場の雰囲気を変えてしまったのだ。

 会場では,賛同を示す拍手と批判のブーイングが入り乱れたというが,日本人開発者は感謝の言葉を述べて自分の席に戻り,その後,会場から去ったという(席を移っただけで,そのまま最後まで残ったという報道もある)。その直後から,この出来事が「謙虚な日本人と,粗暴な発言のフィッシュ氏」という感じで大きく取り上げられ,このイベントに協力した映画監督がフィッシュ氏を名指しで「恥さらし」と批判するなど,フィッシュ氏のTwitterが炎上に近い状態になった。

Fish氏らカナダのPolytronが開発中の「Fez」は,エッシャー的な視覚効果を使ったパズル系のプラットフォームゲーム。「Independent Game Festival」でグランプリを受賞するなど,発売前からその評価は高い。Fezは,2012年第2四半期中にXbox Liveで配信される予定だ
Access Accepted第337回:「日本のゲームの未来」を考えさせられたGDC 2012

 すでに当事者間のやり取りで円満に収まっているようで,この出来事については筆者自身,これ以上問題にすることはなにもないと思っている。フィッシュ氏らインディーズゲーム開発者達がスポットライトを浴びて大いに盛り上がっている矢先(質問者の正確な文言は分からないものの)「昔の日本のゲームの模倣をしている」というトーンの質問を受けたと誤解したフィッシュ氏が,カチンときた可能性もあるのだろう。
 フィッシュ氏はその後,「面と向かってなじるような言い方をしたことは謝罪するが,発言の内容は撤回しない。最近の日本のゲームは何も生み出せていない」と語っている。
 ここで重要なのはフィッシュ氏の発言に少なからず賛同の拍手があがったことで,欧米ゲーム開発者の中にはフィッシュ氏と同様に感じている人が少なからずいるということだろう。フィッシュ氏の一件はその後も議論が続いており,果たして日本の最近のゲームは本当に何も生み出せていないのかという論点にも移りつつある。これまで,欧米のゲーム開発者達がなんとなく感じていたことが,思いもよらない形で論争の的になっているのだ。


「最近の日本のゲームは,何も生み出せていない」


今回のGDCでも,「日本人は,自分達に足りないものを自覚して,世界に立ち向かって行ってほしい」と日本人ゲームクリエイター達に向けてメッセージを発していた稲船氏
 日本のゲーム業界の現状は,comceptの稲船敬二氏がGDC 2012で行ったセッション「The Future of Japanese Gaming」(日本ゲームの未来)でも取り上げられた。稲船氏は,2010年10月に4Gamerが行ったインタビューが海外でも大きく報道されるなど,日本のゲーム業界では珍しい直言の士として知られる人物だ。このセッションそのものについては3月9日に掲載した記事を参照してほしいが,その中で,日本のゲーム業界はすでに敗者であり,今のゲーム開発者達はそれを認めなければならない,といった趣旨の発言を行っている。
 筆者としては,面白いゲームであればどこの国で開発されたものでも構わないので,稲船氏の言う「勝つ」「負ける」という言葉の真意がつかみきれていないのだが,ともあれ,欧米のゲーム業界でも話題になるだけの作品を生み出すという心意気を日本のゲーム開発者達に促しているのは間違いない。

 実際,日本のゲームの状況には翳りの色が濃く,市場規模は年を追うごとに減少している。世界におけるシェアも,コンシューマ機市場に限定すれば10%ほどだというデータもあり,いずれ「日本市場」という括りではなく,「アジア地域」に組み込まれてしまうかもしれない。

 クリエイティブな面でも稲船氏の警告するとおりで,1980年代から1990年代にかけては,「マリオ」「ポケモン」「ゼルダ」「ソニック」「メガマン」「ストリートファイター」「ファイナルファンタジー」「メタルギア」「グランツーリスモ」など数々のIPで世界を席巻していたが,2000年代以降になると「Grand Theft Auto」「Call of Duty」「Halo」などと販売本数で競合できる世界的な新ブランドはほとんど生まれていない。
 稲船氏が言うように,欧米のゲーマーやゲーム開発者達が日本の過去の作品を賞賛する一方,日本から登場するゲームが評価されることが少なくなっているのだ。

Polytronのフィル・フィッシュ氏。彼は海外メディアのインタビューに答えて「ゼルダを3年間ずっとプレイしていた」という思い出を語っており,日本文化や日本人を嫌っているわけではない。画像は,映画「Indie Game: The Movie」の公式トレーラーから


クリエイターの努力だけでは進めない日本の現実


 GDCにおいても,「ICO」「塊魂」のようなタイトルがセッションで取り上げられ,日本のクリエイティビティが賞賛されていた時期があったが,2008年のDevelopers' Choice Awardで「ゼルダの伝説 夢幻の砂時計」が携帯ゲーム部門を受賞して以来,受賞作品は出ていない。

 筆者自身は,日本の開発者達の努力だけで日本のゲーム業界を活性化できるかは疑問だと思っている。欧米のゲーム開発現場は想像以上に自由で,サポート体制が十分に整っており,効率化されているからだ。

pic Gamesのティム・スウィーニー氏,「DOOM」の生みの親のジョン・ロメロ氏,そしてインディーズゲーム業界の新星マルクス・ペルソン氏らが,GCD 2012を舞台にインディーズゲーム開発について熱く語った
Access Accepted第337回:「日本のゲームの未来」を考えさせられたGDC 2012

 冒頭に挙げた騒動を招いたフィッシュ氏は,もともとモントリオールのデベロッパで働いていたが,仲間と独立して新たにPolytron Interactiveを設立し,カナダ政府から与えられた助成金を利用してゲーム開発を続けてきた。彼らのFezは,GDCと併催される「Independent Games Festival」(IGF)で,グランプリに相当するSeamus McNelly賞を受賞するほどの作品に仕上がりつつある。
 今回のGDCでは,supernovaの代表取締役である殿岡康永氏が,京都府から出資された資金で起業したことなどを講演で語っていたが,国家レベルでのゲーム産業支援に関して,日本が明らかな後れを取っていることは事実だろう。

 また欧米では,ゲーム開発者が起業するとき,ベンチャーキャピタルが出資するケースが多い。一方,日本ではベンチャーキャピタルがあまり育っておらず,また,普通の中小企業でさえ銀行から借り入れするのが難しい現状で,売れるか売れないか分からないゲームに対して出資をする銀行などまずないはずだ。
 その結果,Tango Gameworksや,ヴァルハラゲームスタジオなど,日本のゲーム業界を支えてきたクリエイターが独立する際,海外資本に頼るという状況が生まれている。「塊魂」の高橋慶太氏は,現在シアトルに本拠を置くソーシャルゲームメーカーに属しており,このようなケースで顕著になるゲーム業界の人材流出は今後も続くだろう。

 欧米のゲーム企業では,ゲーム制作費として100億円規模の予算を使うメーカーも珍しくなくなっているが,予算が大きくなるにつれて,迅速に開発を進めるための「アジャイル開発手法」やアウトソーシングの有効活用という,コスト削減,リスクヘッジのための合理的な手法も確立しつつある。
 フィッシュ氏の出来事に関するネットの書き込みの中には,日本に5年ほど働いていたという外国人開発者が「日本では開発者が2倍いても,半分の仕事しかできない」と述べるなど,日本の開発現場の合理性の欠如を批判したものも見られた。繰り返しになるが,日本のゲーム開発者達は,個人ではどうにもできない問題にも直面しているのだ。

 GDC 2012に参加する日本のゲーム開発者は,個人的な印象として300〜500人程度だが,彼らと話すと,こうした日本の閉塞感を破ろうという人も多く,危機意識は言われるまでもなく十分に持っていると思っている。しかし,予算的にもシステム的にも欧米ゲーム開発現場との違いが大きな影響を及ぼすようになったという今,ゲーム業界だけでなく,政府や他業種までを含めた大きな改革が求められているのかもしれない。

著者紹介:奥谷海人
 本誌海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,北米ゲーム業界に知り合いも多い。この「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年に連載が開始された,4Gamerで最も長く続く連載だ。バックナンバーを読むと,移り変わりの激しい欧米ゲーム業界の現状が良く理解できるはず。
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