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Access Accepted第326回:ゲームにおける暴力表現
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印刷2011/12/05 17:43

業界動向

Access Accepted第326回:ゲームにおける暴力表現

画像集#001のサムネイル/Access Accepted第326回:ゲームにおける暴力表現
 自分はゲームを遊ばないという人にとっては,ゲームはひたすら敵を撃ったり,剣や魔法でなぎ倒したりする暴力的なエンターテイメントに見えるだろう。欧米にはそうした表現を規制しようとする動きがあり,それはこの連載でも何度か取り上げてきたとおりだ。しかし,北米ゲーム市場では「M」(17歳以上購入可能)レーティングの大ヒット作が数多くあり,開発者達はさらに過激な表現に挑戦しようとしているように見受けられる。今回は,そんなゲームの暴力表現について考えてみたい。


はまると抜けられないSkyrimの世界だが


 筆者の暮らすアメリカで「The Elder Scrolls V: Skyrim」が発売されたのが2011年11月11日のこと。以来,約120時間を費やしてメインクエストと,重要なサブクエストのほとんどを制覇。最近ようやく「Tu'um Master」(シャウトを20種アンロックしたときのアチーブメント)を獲得し,今は,ストームクロークに入団して帝国の侵略者達を追い払うか,それとも民族主義の名のものに殺戮を繰り返すストームクロークを潰す側になるかを思案中だ。

 世間で言われているようにバグや強制終了の類も見受けられるが,やはりSkyrimにはプレイヤーを強く惹き付ける魅力があり,多少の問題は気にならない。ただ,個人的に少し気になるのが,敵を倒すときのフィニッシュムーブ。そこでときおり発動される首が刎ねられるシーン(Decapitation)。欧米のタイトルにおいて,こうした描写はSkyrimだけに限らないし,前作にもあった表現なのだが,本作で使用される「Creation Engine」を始めとするゲームエンジンのレベルアップによって,そのリアリティは格段に向上している。
 白熱した戦いの最中,見たくないのに首をはねるシーンがスローモーションで発動することもあり,切り離された首がコロコロと転がっていく。慣れてはいるつもりなのだが,やはりちょっと苦手だ。

「The Elder Scrolls V: Skyrim」には,NPCが首を刎ねられるシーンがメインクエストに少なくとも2か所あり,プレイヤーは強制的に見せられることになる。こうした表現には慣れているはずの筆者だが,ちょっとお腹いっぱいに
画像集#002のサムネイル/Access Accepted第326回:ゲームにおける暴力表現

 この首を集めてムービーを作り,YouTubeにアップした人がいる。投稿者は,Solitudeの街で手に入る自宅内に,首のない死体を大皿の上に置いたり,椅子に座らせたり,ベッドの上に飾り付けたりしており,ホラー映画風なBGMが背筋をゾクッとさせる。本棚にもまた首がきれいに並べられており,これにどれだけ時間をかけたのかを想像すると,それもまたホラーだ。
 投稿者のイメージはたぶん,シャルル・ペローの童話「青ひげ」だろうか。Skyrimでは,何かの原因で結婚相手が死ぬと新妻を娶れるのだが,彼女達の首も飾られているのだ。なんとも異様な雰囲気だが,心配になるのは,Skyrimの本当の素晴らしさを知らない,Skyrimをプレイしていない人が,この映像を見てゲームの内容を誤解したりしないかということだ。


表現の自由と規制


 Skyrimは,アメリカではESRB(エンターテイメントソフトウェアレーティング委員会)によって17歳以上でなければゲームソフトを購入できない「M」レーティングの評価になっている。審査の過程には興味深いものがあり,いずれ詳しくご紹介したいと考えているのだが,概略をいえば,審査する側はゲームをプレイするわけではなく,メーカーから提出された書類と編集されたゲームのDVDムービーを見て判断するのだ。
最近のゲームは,過激な表現に挑戦しているようだ。2011年11月8日に欧米で発売されて以来,すでに1200万本の大ヒット作になったという「Call of Duty: Modern Warfare 3」では,子供が犠牲になったように見えるシーンが登場する。ただ,今のところこれに対する批判は聞こえていない
画像集#003のサムネイル/Access Accepted第326回:ゲームにおける暴力表現
 ゲームの売れ行きに影響することもあるレーティング審査がこれほどシンプルなものであることに驚くが,ESRBは年間1000本以上ものゲームを審査するのだから,仕方ないのかも知れない。
 2011年にリリースされた,いわゆる大作タイトル,例えば「Assassin's Creed: Revelations」「Batman: Arkham City」「Battlefield 3」「Call of Duty: Modern Warfare 3」,そして「Gears of War 3」などは,すべてそのように審査され,Mレーティングを与えられている。つまり,暴力やスラング,飲酒,性的な描写などを含むタイトル(つまり,Mレーティングのゲーム)が,依然として市場を牽引しているわけだ。欧米におけるゲームの主要購買層は18歳から35歳の男性といわれているので,開発者達にとってMレーティングによって被るデメリットは少ない。

 欧米におけるゲームの暴力表現の規制を求める運動については,この連載でも何度か紹介してきた。もはや毎年の行事という感じがあるが,今年もカリフォルニア選出の民主党議員,リーランド・イー(Leland Yee)氏が「ホリデーシーズンに子供に買い与えてはいけない暴力的なゲーム」のリストを公開した。リストには上記のタイトルのほか,「ダークソウル」「デッドライジング 2 オフ・ザ・レコード」といった日本産ゲームソフトの名前も並んでいる。

 また,2011年7月には,ノルウェーで77人が犠牲になった銃撃事件が起き,逮捕された容疑者が「Call of Duty: Modern Warfare 2で訓練を積んだ」「World of Warcraftにハマッていた」という書き込みをネットで行っていたと報道されたため,再びゲームが問題にされることになった。世間の批判により,上の2タイトルやノルウェーのレーティングで「R18+」(18以上のみ購入可能)のソフトが一時的に小売店から撤去されている。
 ちなみに,実際の因果関係は不明だが,最近の報道によると,精神鑑定の結果,容疑者に責任能力はなく,裁判は行われない公算が強くなったとのことであり,「ゲームが犯行の誘因になった」という可能性は想定された以上に低くなると見られている。

 いずれにせよ,ゲーマーにとっては当たり前ともいえるレベルの暴力描写が,ゲームをしない人々とってショッキングである場合も少なくなく,ゲーマーは,そのことを常に意識している必要があるだろう。グラフィックス,アニメーションともに高度になった現在,目の前に繰り広げられる光景もますますリアルになっており,それを受けて,多くの開発者達がさらに過激な表現に挑戦しているように見受けられる。首を並べたムービーはさすがにどうかと思うが,プレイヤーは節度ある大人としてそれらを楽しむべきだろう。

著者紹介:奥谷海人
 本誌海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,北米ゲーム業界に知り合いも多い。この「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年に連載が開始された,4Gamerで最も長く続く連載だ。バックナンバーを読むと,移り変わりの激しい欧米ゲーム業界の現状が良く理解できるはず。

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