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印刷2011/11/14 18:09

業界動向

Access Accepted第324回:発売から1年を迎えたKinectの現状をレポート

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 2010年11月に発売された「Kinect for Xbox 360」は,モーションセンサーや音声認識用のマイクを備えた画期的なデバイスだったが,専用タイトルの中にはカジュアルなものが多く,コアゲーマーに十分アピールしているとは言い難かった。そんなKinectが2011年11月に発売からちょうど1年を迎えるのだが,最近の傾向として,対応タイトルが「カジュアル」から「コア」へ切り替わりつつあるのが見られる。
 今回は,画期的な“体まるごとコントローラ”の現状と将来についてレポートしよう。


コアゲーマーに向けたKinectの新たな取り組み


ショッピングシーズンを迎える北米では,価格は149.99ドルですえおきながら,3本のソフトを同梱するバンドルバージョンで市場のさらなる開拓を目指すMicrosoftのKinect。今後はコアゲーマー向けのタイトルの拡充を進めていく様子だ
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 アメリカでは2010年11月4日,日本では11月20日にリリースされた「Kinect for Xbox 360」(以下,Kinect)。2011年3月には1000万台のセールスを記録したと発表され,北米での定価149.99ドルという,高価な部類に属する周辺機器としては,珍しいほどの大ヒットになった。住宅事情のため,Kinectを設置するスペースがなかなか取れないという話は,日本だけでなく世界的にもよく聞くが,サードパーティからセンサーの近くでも正確な認識が可能なレンズアダプターが発売される(関連記事)など,最近ではかなり使えるデバイスになっている。

 Kinectは,任天堂のWiiに採用されたモーションコントローラーのコンセプトをさらに進め,コントローラーなしでゲームの制御を可能にしたものだ。コピーにもあるように,“体まるごとコントローラー”なのだ。この画期的なデバイスの発売に合わせて,いわゆる「ローンチタイトル」が15本,リリースされたが,評判は必ずしも芳しくなかった。
 欧米主要メディアのレビュー得点を集めたMetacriticを見ると,評価ポイントであるメタスコアで80点以上を取ったのは,Harmonixの「Dance Central」一本だけ。Kinectに同梱された「Kinect Sports」と,ペットゲーム「Kinectimals」が70点をやや上回っただけで,ほかは軒並み50点以下という厳しい評価になってしまった。

「Dance Central」
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 ローンチタイトルを制作したメーカー側も,Kinectによる操作方法に試行錯誤した部分が見られ,中にはとってつけたようなインタフェースのゲームがあったのも事実。また,ゲームのレビューを掲載するサイトは,どうしてもコアゲーマー寄りで,単純なカジュアル向けのゲームには辛めの点数が付きやすいこともあるのだろう。
 その傾向は現在も続いており,これまで北米でリリースされた75本の専用/対応ゲームのうち,筆者の調べた限り,メタスコアで80点を超えた作品は,「Dance Central 2」「Child of Eden」「The Gunstringer」,そして最近リリースされた「Forza Motorsport 4」の4本だけだ。

 しかし,Microsoftに,Xbox 360ユーザーの大半を占めるコアゲーマーをKinectに取り込みたいという思いはあるはず。その例といえるのがForza Motorsport 4だろう。
 Kinectを使うことで,車をあらゆる角度からじっくり眺めることができるようになる「Autovista」機能や,プレイヤーの頭の動きをトラッキングして,それに従ってゲーム画面が左右に移動するといった仕様は,コアゲーマーにもかなりアピールしそうだ。つまり,必ずしもKinect専用ではなくとも,Kinectを使うことでさらに面白い要素が付け加えられるという形で,コアゲーマーが遊びたいと思えるゲームを目指しているわけだ。

 以下に,そうした方向でKinectを活かした3本のタイトルをリストアップした(ただし,「Fable:The Journey」はKinect専用タイトル)。いずれも,2012年にリリースされる,一般にコアゲーマー向きのタイトルとされている作品であり,Kinectの機能を取り込むことで,ゲーム性をアップしようとしているのが分かる。

 現在βテスト段階にある「Kinect for Windows」が正式にリリースされれば,ゲームにとどまらない広範な利用が考えられ,それがゲームにフィードバックされることも起きるだろう。1周年という節目を迎えたKinectだが,今後の動きには注目する価値がある。


Tom Clancy's Ghost Recon: Future Soldier
発売元:Ubisoft Entertainment
開発元:Ubisoft Paris/Red Storm
発売予定日:2012年3月


 「Tom Clancy's Ghost Recon: Future Soldier」は,姿が消えるカメレオンスーツに身を包んだ特殊部隊“ゴースト”の活躍を描いたスクワッドベースのミリタリーシューティングだ。シリーズ最新作となる今回の敵は,最近やたらと多い気がする「ロシアの超国家主義者」になる予定だが,ガンマニアなら跳びあがって喜びそうなのが,本作で採用されている“Gunsmith”というフィーチャーだ。

 これは,ゲーム中でプレイヤーが利用できる銃器を,ジェスチャーやボイスコマンドによって分解したり,新たなパーツを取り付けたりできるもので,プレイヤーは,ルーレット状になったインベントリを手の動きで回して好みのカテゴリを選び,銃倉,スコープ,ガスチャージャーはもちろん,ペイントやデカールの変更なども自由に行える。
 さらには,「Optimize for Accuracy」「Optimize for Damage」といったプレイヤーの言葉によって,特定のシチュエーションに最適な武器を自動的にカスタマイズしてくれて,それをテストしてみることも可能だ。
 最終的にどうなるかは分からないが,筆者がゲームショウなどで見た限り,操作は適度に抽象化されており,“エア銃”を構えて撃つといった,ちょっとカッコ悪いことはしなくてもいいようになっていた。

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Mass Effect 3
発売元:Electronic Arts
開発元:BioWare
発売予定日:2012年3月


 シリーズ最終章になるといわれる「Mass Effect 3」は,地球に侵略してきたリーパーに対して,主人公のシェパードが仲間を集め,支援を仰ぎながら最終決戦に臨むという,壮大なスペースオペラだ。リアルな表情を見せるキャラクター達との複雑な会話も特徴の一つだが,今回は,Kinectの音声認識機能を利用した会話システムも用意されている。

 これまでのMass Effectシリーズの会話システムは,複数の選択肢が画面に表示され,それを選んで話を進めていくという,システムとしては普通のものだった。しかし,Mass Effect 3では,この選択肢を声に出して読み上げることで,プレイヤーはコントローラに触れることなく会話を続けていけるようになったのだ。
 また戦闘シーンでは,一緒に戦っている二人の仲間に,「前に進め」とか「特殊パワーを使え」といった指示を出すことも可能で,これにより,臨場感のある戦闘シーンを満喫できるというわけだ。


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Fable: The Journey
発売元:Microsoft Games Studios
開発元:Lionhead Studios
発売予定日:2012年中


 「Milo & Kate」というデモをE3 2009で公開し,Kinect向けのゲーム開発に最も力を入れていると思われるLionhead Studiosの最新作は,Kinect専用タイトルになることが発表されている「Fable the Journey」だ。E3 2010では,コントローラを手に持たないデモ担当者が,左右に広げた手を前に押し出すことでファイアボールを放ったり,パン生地を伸ばすような動作で電撃を棒状に伸ばし,それを槍のように投げるといったシーンが見られた。

 前作「Fable III」から50年後のアルビオンを舞台に,“Corruption”と呼ばれる得体の知れない敵から逃げる主人公の姿を描く本作では,馬車を使って自由に移動することが可能だ。上記のデモから,ベルトコンベアに乗っているように自動的に動きつつ,アクションを繰り出していくタイプのゲームと考えられていたが,馬車を使った,ある程度自由な散策ができるようだ。
 2001年に発売された「Black & White」では,マウスで模様を描いて魔法を発動するという試みを行ったピーター・モリニュー氏だけに,Kinectを使った面白い試みをいろいろとしてくるはずだ。

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著者紹介:奥谷海人
 本誌海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,北米ゲーム業界に知り合いも多い。この「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年に連載が開始された,4Gamerで最も長く続く連載だ。バックナンバーを読むと,移り変わりの激しい欧米ゲーム業界の現状が良く理解できるはず。
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