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印刷2011/05/09 13:34

業界動向

奥谷海人のAccess Accepted / 第302回:ゲームを超えた展開を探る,Ubisoft Entertainment

奥谷海人のAccess Accepted

 フランスに本拠を置くUbisoft Entertainmentは,現在,世界28か国に5000人を超える従業員を抱える大手ゲームメーカーだ。日本でも知名度の高い「Assassin's Creed」や「Prince of Persia」シリーズを筆頭に,最近はダンスゲーム「Just Dance」などもヒットさせており,携帯機向けからPC向けまで幅広いラインアップを誇っている。北米のメーカーとはちょっと違ったチャレンジをすることでも知られるUbisoftの,最近の動きをチェックしてみよう。

第302回:ゲームを超えた展開を探る,Ubisoft Entertainment

 

Assassin's CreedやJust Danceなど大ヒットを連発中
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Ubisoftのクリエイター,ミッシェル・アンセル(Michel Ancel)氏が1996年に制作した「Rayman」は,アメリカや日本での知名度は低いものの,ヨーロッパではTVアニメシリーズ化されるほどの人気を獲得したキャラクターだ。もっとも,最近ではそこから派生したウサギ型の醜い宇宙人Rabbidsのほうが人気が高いようだが。画像は,2010年の「Raving Rabbids: Travel in Time」のパッケージアート

 この連載に目を通すゲーム好きなら,Ubisoft Entertainmentの名前を聞いただけで,さまざまなゲームタイトルが思い浮かべられるはずだ。「Assassin's Creed」や「Prince of Persia」シリーズはいうまでもなく,「Tom Clancy」や「Far Cry」シリーズ,カジュアルなところでは「Just Dance」や「Petz」シリーズ,反対に濃い目なところでは,「Anno」や「Might & Magic」「Silent Hunter」シリーズなど,幅の広いラインアップを取りそろえる大手ゲームメーカーだ。最近では,Kinect対応タイトルやニンテンドー3DSのローンチタイトルなどを積極的に手がけており,日本での知名度も高い。

 Ubisoftが設立されたのは今から四半世紀前の1986年のことで,ビジネススクールを卒業したての現社長Yves Guillemot(イブ・ギルモ)氏が,家族の協力を得て起業したのが始まりだ。設立当初は,Electronic ArtsやSierra On-Line(現Sierra Entertainment)などが制作したゲームをローカライズして発売するメーカーだったが,1992年に自前の開発スタジオを開設,そして1996年には株式市場への上場を果たし,それ以降,急速に成長してきた。

 人材の豊富なカナダのモントリオールに他社に先駆けて進出し,新たな開発拠点を設けたのは1997年のことで,2000年には「Tom Clancy」シリーズのRed Storm Entertainment(アメリカ)を,続く2001年には「The Settlers」のBlue Byte Software(ドイツ)を買収するなどして着々と開発力をつけていった。同時にBroderbundやMindscape,SSIといった,アメリカで廃業していた有名ゲームメーカーのIP(知的財産権)を買い取ってラインアップを一気に増やしたりもしている。2008年には同社の25年の歴史で初めて売上が10億ユーロに達し,現在ではActivision BlizzardとElectronic Artsに次ぐ,欧米で第3位のゲームメーカーに成長している。

 そんなUbisoftの看板タイトルといえば,やはりここ数年絶好調のAssassin's Creedシリーズだろう。シリーズ累計で2800万本という同社きってのセールスを記録しており,シリーズ第4弾となる「Assassin's Creed: Revelations」も発表されたばかりだ。

 2004年には,Electronic Artsが敵対的買収を行って20%近いUbisoft株を保有するという出来事もあったが,最近,Electronic Artsが株式資産をすべて売却すると発表したことで一件落着の気配。本連載の第299回「モントリオールで起きた人材引き抜きをめぐる裁判」に見られるような人材流出に悩んではいるが,非常に多数の開発者を抱えるUbisoft作品の質がいきなり低下してしまうようなことは,少なくとも短期的には起こり得ないだろう。

 

ゲームパブリッシャーらしくない,新たな活動を模索
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Ubisoftの開発拠点であるUbisoft Montrealにあるのが,ユニークなアーティスト集団,UbiWorkshopだ。ゲームスタジオというよりアート工房といった感じだが,どういう理由によるものか,Assassin's Creedの主人公Ezioがアメリカ市民戦争に参加しているというアートを公式サイトに掲載したために,「次回作はアメリカが舞台になる」というウワサがまことしやかに流れた。写真右のロボットは,マスコットキャラクターのVolt

 このUbisoftが,最近ちょっと変わった動きを見せている。アメリカの映画情報サイトVarietyによると,Ubisoftは映画プロダクション部門となるUbisoft Motion Picturesを設立。今後,Ubisoft自らが映画やテレビドラマの制作を行っていくといわけだ。

 Ubisoftのタイトルを元にした映画としては,ハリウッドのプロデューサーとして知られるジェリー・ブラッカイマー氏が2010年夏に制作した「プリンス・オブ・ペルシャ/時間の砂」が成功し,約3億3500万ドル(約269億円)の興行収入をあげている。これを見たUbisoftが,もっとダイレクトにコンテンツのコントロールを図ろうと考えたのだろう。

 もともと同社は,2007年の時点でUbisoft Digital ArtsというCGアニメーションスタジオを設立し,Assassin's Creedをテーマにした短編アニメ映画などを作っているし,昨年(2010年)にはモントリオールの特殊効果専門の会社,Hybride Technologiesを買収するなどしており,映画制作については以前から積極的だった。
 ジェームズ・キャメロン監督の「アバター」とのタイアップゲームでは思うような結果を出せなかったようだが,例えば,Assassin's CreedやSplinter Cellを映画化するのであれば,当然ながらかなり突っ込んだメディアミックス戦略が可能になるだろう。

 さらにUbisoftは,2010年にUbiWorkshopというアーティスト集団を,モントリオールスタジオに内に設立している。こちらは,コミックスや絵画,模型などを制作するグループであり,公式サイトでは,非常に洗練されたデザインのTシャツなどが販売されている。Tシャツ販売がそれほど同社の売上に貢献しているとは思えないが,こうしたインハウスのアーティスト達にさまざまな作品を作らせことでゲームの開発チームにインスピレーションを与え,さらに広報やマーケティングにも使うという,ほかではあまり見られない面白い試みだ。

 知っている人もいるかと思うが,Ubisoftは,数年前に「Lifestyle Games」というジャンルを提唱し,ニンテンドーDSで外国語を学んだりできる「My Coach」シリーズや,さまざまな職業をゲーム化して子供達の将来の夢を実現させる「Imagine」シリーズなどを次々にリリースしている。最近のUbisoftの“オフゲームシーン”における活動を見ていると,同社はゲームを単なるエンターテイメントとしてではなく,さらに広い視点から見ているのではないかという気がする。

 例年同様,Ubisoftは6月のElectronic Entertaiment Expo直前にプレスカンファレンスを開催する予定だが,そこでまた何かしらの発表が行われるだろう。Assassin's Creed: Revelationsのほかにも,「Driver: San Francisco」「Tom Clancy Ghost Recon Future Soldier」「I Am Alive」,そして「From Dust」のような魅力的な作品が,2011年末から2012年にかけて発売予定となっていることもあり,今後要注目のゲームメーカーであることは間違いないだろう。

 

■■奥谷海人(ライター)■■
本誌海外特派員。サンフランシスコ在住の4Gamer海外特派員。ゲームジャーナリストとして長いキャリアを持ち,多様な視点から欧米ゲーム業界をウォッチし続けている。2004年に開始された本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,4Gamerで最も長く続く連載だ。
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