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印刷2010/02/12 16:11

業界動向

奥谷海人のAccess Accepted / 第252回:冬の時代を迎えた? 欧米産MMORPG事情

奥谷海人のAccess Accepted

 最近,欧米ゲーム市場においていささか元気のないジャンルがMMORPGだ。以前は,多くのメーカーが次々に新作を発表するなど活況を呈していたが,最近は新作の数も減っている。そんな中,久々の新作として「Star Trek Online」が登場し,スタートダッシュはなかなか好調の様子。今回は,そんな欧米MMORPGの展望を考察してみよう。

第252回:冬の時代を迎えた? 欧米産MMORPG事情

 

2010年,久々の新作MMORPG「Star Trek Online」が登場
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 2010年2月2日,北米生まれのMMORPGとしては久々のビッグタイトルとなる,「Star Trek Online」が正式サービスを開始した。タイトルどおり,世界的な人気を誇るSFテレビシリーズ,「スタートレック」の世界をMMORPG化した作品である。
 スタートレックといえば,2009年春に8年ぶりとなる新作映画が公開されたばかりで,ワールドワイドの興行収益も400億円近くに達するという大健闘ぶりを示した。“トレッキー”と呼ばれる昔からのファンばかりでなく,新しいファン層も増えたはずだ。

 映画の成功は,Star Trek Onlineを開発したCryptic Studiosや,版権を有するAtariにとっても追い風になったようで,2010年1月第2週から始まった「Steam」や「Direct2Drive」のプレオーダーでも,本作の予約本数は上位に食い込んでいる。ローンチ後は,イギリスのPCゲーム部門のセールス第一位を獲得するなど,スタートダッシュは悪くはない。

 もっとも,これまでのことを考えると,Star Trek Onlineがどれだけ成功するのかは未知数といえる。例えば,同じCryptic Studiosが昨年(2009年)ローンチしたアクションヒーローものMMORPG,「Champions Online」や,世紀末後の世界を描いた「Fallen Earth」なども,予約段階ではそれなりの話題を集めていたものの,どちらもプレイヤー数は10万人未満だと推測されている。

 Star Trek Onlineは,その題材がChampions OnlineやFallen Earthなどとは比較にならないほど高い知名度を持っており,それなりの数のコアなファンによって支えられていくことは間違いないだろう。しかし,惑星上に降りて戦ったり,宇宙船同士が戦闘を行ったりというアクション性の高いゲームシステムに,既存のMMORPGファンがなじめないのではないかという見方もあるようだ。

 スタートレックを題材にしたゲームの成功例は,知名度に反してあまりない。1980年代から1990年代にかけて,InterplayやActivisionなどが盛んにスタートレックもののコンバットフライトシミュレーションをリリースしていたが,皮肉なことに,最も人気が高かったのは,Quakeエンジンで制作された「Star Trek: Voyager‐Elite Force」で,せいぜいスタートレックの世界観をちょっと借りた程度のFPSだった。
 まだサービスが始まったばかりのゲームであり,今後の道のりはまだ分からないが,欧米のMMORPG市場では,しっかりとした世界観を持ったゲームといえども必ずしもヒットしないというのは,例えば「Star Wars Galaxies」や「The Matrix Online」などの例を見ても明らかだ。現在もサービスが続いているゲームとして,「The Lord of the Rings Online: Shadows of Angmar」や「Warhammer Online: Age of Reckoning」「Age of Conan: Hyborian Adventures」などがあるが,熱心なコアプレイヤーは多いものの,ビジネス的に順風満帆とはいえなさそうだ。

 

2011年以降が正念場の欧米MMORPG業界
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欧米産MMORPGの注目株が「Star Wars: The Old Republic」である。期待度の高さは,「そろそろβテスターの募集方法を考えます」とBioWareが漏らしただけで,公式サイトがサーバーダウンしてしまうほど。確定情報ではないが,2011年の始め頃に正式ローンチとなるようだ

 今後の欧米MMORPG市場はどうなるのか? 残念ながら,Star Trek Onlineがローンチされたあと,「World of Warcraft: Cataclysm」の2010年内投入が予定されている程度で,ヨーロッパの小規模なプロジェクトを除くと新作のローンチはない。
 2011年以降になると,DC Comicsの世界観をMMO化した「DC Universe Online」や,NCsoftの「Guild Wars 2」,そして「The Longest Journey」の熱狂的ファンが喜びそうなFuncomの「The Secret World」といったタイトルが控えており,それなりに明るい材料が揃っているようだ。

 とくにMMORPGファンが期待して待っているのが,LucasArts Entertainmentと,Electronic Arts傘下のBioWareが共同開発している「Star Wars: The Old Republic」だろう。
 映画が制作されることはもはやなさそうだが,子供向けのテレビシリーズ「Star Wars: Clone Wars」などが続いており,ベースとなった物語の知名度の高さは別格だ。開発を担当するBioWareも,Blizzard Entertainmentと同じく「失敗作のない,トリプルAクラスの開発チーム」として評価が高く,オースチンのスタジオに集まった有能な開発者達が本作の制作にあたっている。

 市場にとって問題になるのは,むしろその後のことかもしれない。2010年〜2011年のローンチが見込まれる上記の作品群のほかに,新作の開発状況がまったく聞こえてこないのだ。一般的に,MMORPGの開発には5年程度の時間がかかる。したがって,2012年より先に登場するタイトルの名前がそろそろ明らかになっていてもいいはずだが,それが何もない。
 次から次へと新作の話題が聞こえてきた2002年頃の状況と比べると,MMORPGファンにとってはなんとも寂しい時代になりそうだ。思いつく限りで有望そうなプロジェクトといえば,ボストン・レッドソックスの投手として活躍した名選手Curt Schilling(カート・シリング)氏が設立した38 Studiosによる,「Project Copernicus」くらいだろうか……。

 欧米のMMORPG市場の元気が今一つない理由は,月額課金制によるMMORPG市場の65%を「World of Warcraft」が占めている現実にある。World of Warcraftのプレイヤーが一時的に新しいタイトルに移動するということはあるが,過去5年間,彼らは結局World of Warcraftに戻っており,欧米ではもはやMMORPG市場ではなく,「WoW市場」だと言われるほどだ。
 面白いタイトルに人気が集まるのは当然の話なのだが,MMORPGの場合,十分な数のプレイヤーが集まらなければゲームシステムがうまく機能しない場合があり,一作に人気が集中すると,どうしてもほかのタイトルの元気が奪われてしまうのだ。

 また,長い期間と予算を注ぎ込んで新作をリリースし,そのタイトルがある程度の軌道にのったとしても,万が一,Blizzardが「World of Warcraft 2」なり「StarCraft Online」なりを投入してきた場合のことを考えると,メーカーとしては膨大な予算のかかる本格的なMMORPGなど,なかなか作れないだろう。

 「売り切り」のパッケージソフトに比べて,MMORPGには継続的なサービスが求められる。そのためには,資金的に体力のあるパブリッシャがサービスを行い,それなりの数のプレイヤーが存在していなくてはならない。いつ終わるか分からないタイトルに,新規プレイヤーは集まってこないのだ。また,MMORPGの魅力の一つであったコミュニケーション機能も,最近勢力をのばしつつある基本料金無料のブラウザゲームにお株を奪われつつあり,このように,WoWを除いた欧米MMORPG市場の状況にはなかなか厳しいものがある。
 このままMMORPGの開発が終了するわけではないだろうが,新作が減っていけば,今まで培ってきたテクノロジーやノウハウも失われていくことにもつながる。欧米生まれのMMORPGが「過去のジャンル」にならないためにも,開発プロセスの合理化や,ビジネスモデルの革新が求められており,それらがうまくいけば,再びMMORPG市場は活況を呈するだろう。

 

新興MMORPG開発元の厳しい現状

 最後に,これまでにMMORPGの開発を発表している新しいメーカーが,最近どうなっているのかについて紹介してみよう。上記のように,2012年以降,新作MMORPGのローンチは予定されておらず,彼らの発表した新作もいつのことになるのか,そもそも開発されているのかどうかも分からない。期せずして,欧米MMORPG市場の厳しい状況をよく表したものとなっているだけに,今後の彼らの奮起に大いに期待したい。

Red 5 Studios

 南カリフォルニアをベースにするRed 5 Studiosは,2006年末に元Blizzard Entertainmentのプロジェクトリーダー,Mark Kern(マーク・カーン)氏や,アートディレクターのWilliam Petra(ウィリアム・ぺトラ)氏らが設立した会社だ。設立当初,公式サイトで「ロボットの残骸に立つ小さなキャラクター」というアートワークを公開し,「Offset Engine」というMMORPG専用ゲームエンジンを使ったタイトルを開発中であることを明らかにしていたが,以来,長らくなんの音沙汰もないままだった。
 2009年に入ると,まず上海にあったスタジオを夏頃クローズ。その後,中国資本の企業に買収された。さらに,2010年1月には,何人かの開発者をレイオフするなど,ゲームの公式発表のない時点で,相当なリストラを進めている様子だ。そのときにリリースされた公式サイトでは,時期は未定ながらも「ワールドワイドでのリリースを目指して開発を進めている」とされているので,その進展に期待したい。

 

Slipgate Ironworks

 Slipgate Ironworksは,「DOOM」の開発者として一世を風靡したJohn Romero(ジョン・ロメロ)氏が設立した会社だ。Romero氏は,2001年にEidos Interactive傘下のION Stormで「Anachronox」をリリースしたあと,携帯電話向けのゲームを作ったり,Midway Entertainmentでプロデューサーとして働いたりしたが,どれも長続きせず,2005年夏にSlipgate Ironworksを設立した。参加メンバーには,BlizzardやCryptic,Sony Computer Entertainmentなどの出身者が揃っている。
 設立から5年以上が経過しているが,開発中のタイトルは「MMORPGである」こと以外,新たな情報も発表されていない。2009年には,Romero氏はGazillion Entertainmentという新しい企業を誕生させており,Slipgate Ironworksはその一部門になったようだ。Gazillion Entertainmentは,NetDevilの開発する「LEGO Universe」のほか,いくつかのプロジェクトを抱えている。

 

Cheyenne Mountain Entertainment

 開発中のスクリーンショットやムービーなどが公開され,βテストの告知まで始まっていた「Stargate Worlds」。それを開発していたのが,Cheyenne Mountain Entertainmentだ。  スター・ウォーズやスタートレックに比べればマイナーだが,アメリカである程度のファン層を持つSFシリーズ,「Stargate」をベースにしたゲームは,ファンや開発者の情熱も手伝って,かなり順調に開発が進められていた……はずだった。  ところが,昨年あたりから雲行きが急激に怪しくなってきたのだ。どうやら開発資金が底をついてしまったのが原因らしく,サーバーのレンタル料を払えなくて訴訟されるというトラブルまで発生している。同社サイトのニュースがアップデートされたのは,2009年の4月が最後になっており,Stargate Worldsは「オンホールド」(開発無期限延期)の状況であるという。  もっとも,Cheyenne Mountain Entertainmentは解散したわけではなく,2010年前半にリリースされるというオンラインシューティング,「Stargate: Resistance」にリソースを集中しているようだ。MMORPGの開発には多額の費用がかかる事から,とりあえずはパッケージソフトを優先して,資金を調達しようということらしい。

 

 

■■奥谷海人(ライター)■■
サンフランシスコ在住の4Gamer海外特派員。ゲームジャーナリストとして長いキャリアを持ち,多様な視点から欧米ゲーム業界をウォッチし続けてきた。業界に知己も多い。本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,連載開始から200回以上を数える,4Gamerの最長寿連載だ。
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