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印刷2010/01/15 12:41

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奥谷海人のAccess Accepted / 第248回:来るか! 3Dゲームの新時代

奥谷海人のAccess Accepted

 最近の欧米ゲーム業界でよく聞かれるキーワードの一つが“3D”。専用メガネをかけると,画面内のさまざまなオブジェクトが飛び出して見えるというアレだ。コンピューターグラフィックス用語的には,すでにほとんどのゲームは3Dであり,仮想空間内を自由に行き来できるのは当たり前。したがって,ここでいう3Dとは正確には「ステレオスコピック3D(Stereoscopic 3D);3D立体映像」なのだが,ややこしいので記事中では単純に3Dと書いていく。そのへん,ぜひご了承を。さて,ハリウッドでは3D映画が当たり前になりつつある昨今の,飛び出す映像と欧米ゲーム業界の動きを紹介していきたい。

第248回:来るか! 3Dゲームの新時代

 

CES 2010で幕が切って落とされた「3D」の新時代
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世界中に3D映像ブームを巻き起こしたジェームズ・キャメロン監督の「Avatar」は,世界総計の興行収入が3週間で1000億ドルを突破するという大ヒット作になった。PCおよびPlayStation 3,Xbox 360での3D表示に対応したゲームタイトル,「アバター THE GAME」は日本でもリリースされたばかり

 北米時間の2010年1月7日から9日まで,ネバダ州ラスベガスで開催されたCES(Consumer Electronic Show)については,4Gamerを含む数多くのメディアがフォローしているので,読者の皆さんもよくご存知のはずだ。数多くのメーカーが一斉に新製品をお披露目するCESは,その年のトレンドがよく分かる世界最大の家電業界イベント。そのなかにあって,今年,大きく注目されていたのが「3Dテレビ」(3D HD TV)だった。
 3D機能をビルトインしたBravia LXシリーズをSonyが展示していたのを始め,152インチという世界最大のサイズを誇るPanasonicのプラズマTV,そしてリモコンに小型のタッチスクリーンテレビを備えたユニークなSamsungのC9000など,各社の3D HD TVが一挙に公開されており,専門家も2010年後半には,一般家庭に3Dテレビが普及し始めると予測している。

 もっとも,ハードウェアが増えてもコンテンツが不十分では,アーリーアダプターでさえ食指を動かしにくい。これに関しては,ハリウッドと太いコネクションを持つSonyがアメリカのテレビ業界にアプローチを続けており,その結果,スポーツ専門局として知られるESPNが,2010年の夏に3D専用チャンネルをオープンする見込みになっている。続いて2011年にDiscovery ChannelとIMAX Channelがスタートする予定で,「2012年までには30〜50%近いテレビコンテンツが3D化されているだろう」という予測もある。

 3Dといえば,昨年(2009年)末に劇場公開されたジェームズ・キャメロン監督の映画「Avatar」を忘れてはならない。制作費2億3700万ドル(約218億円),さらにマーケティングに1億5000万ドル(約138億円)も費やしたものの,ビジュアルに比べてストーリーの魅力に乏しく,公開前の大方の予想は「興行的失敗」というものだった。しかし,フタを開けてみると,公開から3週間の興行収入が1000億ドル(約920億円)の大台に乗り,キャメロン監督の「Titanic」の記録を大きく塗り替える成功作になったのである。その理由の一つが3D映像にあったことは,間違いないだろう。

 

拡充が進められる3D映像のコンテンツ
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2010年の発売が予定されているアクションゲーム,「Dead to Rights: Retribution」で知られるイギリスのBlitz Games Studiosは,PlayStation 3およびXbox 360で3D映像を実現するソフトウェア技術を開発した。新作タイトルやミドルウェアとしての公開が期待されている

 筆者が子供の頃,「東映まんがまつり」などで赤と青のセルロイドをはめたメガネを使った3D映画を見た記憶があるし,遡れば,1950年代のハリウッドにも3D映画ブームが存在したという。数年前からIMAXシアターなどで盛んに3D映画が上映されてはいたが,限られたものであり,「イロモノ」という雰囲気は避けられなかった。だが,このAvatarの成功を機に,本格的な3D立体映画の時代がやってきたとする向きが,テレビや映画の関係者に増えてきている。
 例えば,スティーブン・スピルバーグ監督率いる映画制作会社,Dreamworksは「今後発表する新作映画は,すべて3Dになる」と発表している。また,ディズニーもジョニー・デップが出演するティム・バートン監督映画「Alice in Wonderland」のほか,アニメ「Shrek Forever After」や「Toy Story 3」などを3D映画にして2010年夏に公開する予定だ。

 日本のメーカーが3D映像に力を入れるようになったのは,それが製品に高い付加価値を与えるからだ。現在主流のHD TVは,ここ数年で開発コストがぐっと下がっており,韓国や台湾,中国といった国々で安価な製品が量産されるようになっている。円高に苦しむ日本の家電メーカーは,テクノロジー面で洗練されたものを出し続けることで他国のメーカーをリードしていこうとしているのだ。
 映画産業にとっては,3Dによって映画のチケットやDVDの値段を上げられるという側面がある。日本に比べて安価に映画が楽しめるアメリカだが,筆者がAvatarを見た3Dシアターでは,成人一人の入場料が15ドルと,通常の映画より40%ほど高かった。設備投資も必要だろうし,3Dメガネを用意しなければならないというのも分かるが,それでも少々高い気がする。こうした鑑賞にかかる単価の高さも,Avatarの興行収入1000億ドルという結果に結びついているのだ。

 

ゲーム業界にも訪れた,本格的な3Dゲームの時代
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PCでは,すでにNVIDIAによって立体ゲームが楽しめる。写真のような3Dシャッターグラス付きのキットのほか,3D映像をサポートするモニターなどが必要で,今のところ需要は高くなさそうだが,時代を先取りしたい人にはうってつけだろう

 さて,ここまで家電メーカーや映画産業の話をしてしまったが,我々ゲーマーにとって気になるのはもちろん,「“3Dゲーム”の時代が来るかどうか?」ということだ。
 ご存知のように,立体ゲームの分野で先陣を切ったのは,Ubisoft Entertainmentが開発した,「James Cameron's Avatar: The Game」である。映画の劇場公開に先立つ2009年11月,さまざまなプラットフォーム向けにリリースされた作品だが,PCおよびPlayStation 3,そしてXbox 360版は,出力240Hzで表示できるHD TVと専用メガネがあれば,立体化されたゲームが楽しめる仕様になっている。
 ゲームの内容に対するメディアの評価がさほど高くなかったためか,欧米での販売成績は,PlayStation 3版とXbox 360版を合わせて50万本ほどと,大ヒットにはなっていない。ただ,最新技術を使って3D映像に挑戦したUbisoftの姿勢は評価すべきであり,将来,「3Dゲーム時代の嚆矢」と呼ばれることになるかもしれない。

 Avatar: The Gameのほか,まだ具体的なタイトル名が出ていない段階の3Dゲームプロジェクトもいくつか存在している。例えば,イギリスに本拠を置くBlitz Games Studiosは最近,コンシューマ機も含めて,1920×1080ドットの解像度で120fpsの立体映像を可能にする独自のソフトウェアレンダリング技術を発表して話題を集めた。Blitz Games Studiosは,Namco Bandai Gamesがリリースを予定するアクションゲーム,「Dead to Rights: Retribution」を開発中であり,それ以前は,Codemastersなどのためにカジュアルなタイトルを数多く制作してきたスタジオ。今後の動向が注目されている。

 プラットフォームホルダーでは,上記のようにSonyがテレビや映画の3D化戦略を進めているため,3D対応テレビを販売する手段としてSony Computer EntertainmentがPlayStation 3向けの3Dゲームを制作する可能性が高い。
 対するMicrosoftは,2010年末に「Project Natal」という大きなアップデートを控えており,どれだけ立体映像に力を入れてくるかは未知数といえるだろう。

 PCゲームに関していえば,2009年春に「GeForce 3D Vision」および「GeForce 3D Vision Discover」を発表したNVIDIAが一歩リードしており,「Fallout 3」や「Far Cry 2」,さらには「Medieval II: Total War」「Age of Empires 3」といった人気タイトルを含めた400本近いPCゲームが3Dに対応している。
 とくにカプコンの「バイオハザード 5」やEidos Interactiveの「Batman: Arkham Asylum」はNVIDIA 3D Visionテクノロジーをネイティブレベルでサポートしており,協力するゲームメーカーの数も増えつつあるようだ。

 3Dゲーム時代はまだ始まったばかり。今のところ,いささか混沌とした雰囲気があるが,映画業界の動きや家電メーカーの状況を見る限り,3D映像がゲームのスタンダードになる日は意外なほど近いかも知れない。

 

■■奥谷海人(ライター)■■
サンフランシスコ在住の4Gamer海外特派員。ゲームジャーナリストとして長いキャリアを持ち,多様な視点から欧米ゲーム業界をウォッチし続けてきた。業界に知己も多い。本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,連載開始から200回以上を数える,4Gamerの最長寿連載だ。
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