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印刷2009/05/01 17:17

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奥谷海人のAccess Accepted / 第216回:ゲームデバイスの進化とゲームの関係

奥谷海人のAccess Accepted

 ゲームそのものの進化に伴い,その周辺機器も進歩しているのはご存じの通りだ。画面の前にいる人の動作を感知するジェスチャー・リコグニションは飛躍的に進化し,かなり浸透した。また,いままでになかった画期的なデバイスの実験が進められている。ゲームデバイスの進化は,ゲームにどのような影響を与えるのだろうか。

第216回:ゲームデバイスの進化とゲームの関係

 

進化するジェスチャー・リコグニション
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Softkineticのジェスチャー・リコグニションは,プレイヤーの手足の些細な動きを感知でき,それぞれ独立してゲームに反映される。今後,コンシューマ機用のデバイスが登場すれば,より広まるかもしれない。欧米のゲーム業界では,かなり関心を持っている人が多いようだ

 ソニー・コンピュータエンタテインメントの「EyeToy」,Wiiの標準コントローラであるWiiリモコンなど,画面の前にいる人の動作を感知するジェスチャー・リコグニションと呼ばれるテクノロジーは,かなり浸透してきた。日本ではWiiのヒットによって広く知られることになったが,技術そのものは,かなり以前から存在していたのである。

 1990年には「パワーグローブ」という,手に装着するグローブ型のコントローラの動きを3点のセンサーで認識するデバイスがファミリーコンピュータ用に発売された。またSEGAは,GENESIS(メガドライブ)用デバイス「SEGA Activator」を発売。これは,大きな八角形のセンサーを床に設置し,その中に立つプレイヤーの動きを認識するというものだ。どちらも,プレイヤーの動きをうまく認識できなかったようで,家庭にはあまり広まらなかった。

 その後,デジタルカメラの小型化が進み,製造コストが下がると,1998年にゲームボーイ向けの周辺機器「ポケットカメラ」が発売され,2000年にはドリームキャスト向けに「ドリームアイ」もリリースされた。どちらも写真やビデオを撮るデバイスであり,動作認識にまで利用されることはなかったが,のちに発売されたEyeToyに大きな影響を与えたといわれている。

 EyeToyは,SCEE(ソニー・コンピュータエンタテインメント・ヨーロッパ)のリサーチセンターでソフトウェア部分の開発が進められ,ハードウェアは初期版がLogitech,後継機である「PlayStation Eye」はNam Taiが担当した。対応ソフトは,SCEEだけでなくサードパーティからも発売され,欧州を中心にヒットしたのである。

 最近では,EyeToyに追随しようという製品が登場しており,ベルギーのSoftkineticというメーカーが, 3Dジェスチャー・リコグニション用の「iisu」というミドルウェアを開発して話題になっている。
 iisuは,赤外線によって人の動きを感知し,3Dゲームのキャラクターも動かせるようにしたものだ。かなり複雑な動きを感知できており,公式サイトで公開されているプロモーションムービーを見れば,ジェスチャー・リコグニション技術の進歩を感じるはずだ。

 Softkineticのiisuは,すでにゲーム以外の分野で活用されているが,最近はゲーム業界へのアピールを図っている。同社は,2009年3月にサンフランシスコで開催されたGame Developers Conference 2009に参加して,社長であるMichel Tombroff (ミシェル・トンブロフ)氏が「PCだけでなくすべてのゲームシステムで活用できるテクノロジーだと確信している。2010年には本格的な対応ゲームソフトがリリースされる」とコメントし,コンシューマ機での展開を示唆した。

 

ヘンテコデバイスの向こう側
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ストーン博士が率いる研究チームは,「Half-Life 2」を使った嗅覚デバイスを開発している。硝煙や電線の焦げる匂いだけでなく,アップルパイや皮軍手などの匂いも,特製のワックスを組み合わせて作り出せるという。さらにストーン博士は,味覚などの再現にも意欲を見せているらしい……

 ゲーム用デバイスは,なにもジェスチャー・リコグニションを応用したものだけでなく,さまざまな開発が行われており,なんと嗅覚を刺激するデバイスの研究が進んでいるのだ。
 こちらの記事でも紹介されているように,イギリスにあるUniversity of BirminghamのBob Stone(ボブ・ストーン)工学博士の研究チームは,政府の援助を受けて「匂いでプレイヤーを刺激する」という技術を開発しているのである。これはSDS 100という八つの小型容器に,アメリカのBiopacが開発したワックスが入っており,これらを組み合わせることで,さまざまな匂いを生み出すのだ。

 現在では,火薬や可燃物の臭いを察知する訓練をするといった,軍事シミュレーター分野に属するシリアスゲーム用のデバイスとして開発が進められている。まだ,試作品の段階であり,今後は傷ついた兵士に応急処置をする医療兵や,異国に潜入する兵士のトレーニングなどに使えるようなものを作っていくようだ。

 とはいえ,嗅覚を刺激するデバイスが,一般的なゲームに不可欠な周辺機器として広まるかどうかは疑問である。確かに匂いを感じられれば,臨場感は大幅に増す。匂いによって敵の位置が分かるといったこともあるだろう。だが,下水道に潜むモンスターとか,襲い掛かってくるゾンビの臭いを感じたいと思う人はあまりいないはずである。料理が登場するようなゲームで利用できればかなり興味深いが,現状のゲーム市場を見渡すと,あまり匂いを感じたくないもののほうが圧倒的に多い。
 また,匂いを生み出す元となるワックスの補充が必要になるので,維持費がかかる。多くの人にとって“試してみたいけど,自分では買いたくないもの”の一つとなりそうだ。

 とはいえ,そういったデバイスの開発が無駄なのかといえば,決してそんなことはない。最近では,脳波で操作するヘッドマウントコントローラや,画面に表示されているものの触感が分かるデバイス「Novint Falcon」などが商品化された。決してヒット商品にはなっていないかもしれないが,こういったチャレンジを積み重ねることで,新たなゲームが生みだされるきっかけになる可能性は高い。とくにPCは,コンシューマ機と違ってプラットフォームホルダーによる制約がないため,ほぼ自由にさまざまなデバイスを開発できる。ゲームの発売に関する制約も少ないので,新デバイスによる画期的なゲームが生まれる土壌が整っているのだ。

 また,新デバイスはゲームに利用するためでなく,職業トレーニングなどを第一の目的として開発されることが多い。そういった部分を利用して,社会的な地位の向上につながるアピールをすることで,いままでゲームに興味を持っていなかった人達の関心を得ることも可能だろう。今後も各メーカーは,商業的な成功だけを目的にせず,さまざまなデバイスの開発に取り組んでいってほしいものだ。ゲームの進化につながるのだから。

 

■■奥谷海人(ライター)■■
本誌海外特派員。最近,庭でトマトの栽培を始めた奥谷氏。表面が黒っぽいロシア産のものや,“ビーフステーキ”と呼ばれる重量が500gを超える実をつけるトマトなど,かなり変わったものを育てているという。初めは一般的なものから育てるのがセオリーだと思いますが,どうにもこうにも普通はイヤな性分らしい。
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