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印刷2008/06/06 22:35

業界動向

奥谷海人のAccess Accepted / 第175回:復活の兆しが見えてきた宇宙ものゲーム

奥谷海人のAccess Accepted

 宇宙飛行士の星出彰彦氏によって,日本実験棟「きぼう」船内実験室の国際宇宙ステーションへの取り付けが行われた。我々にロマンを感じさせる宇宙だが,少しずつながらも人類の宇宙進出は始まっているのである。そこで今回は,ゲームジャンルを問わず,宇宙がテーマのゲームにスポットを当てて,その歴史を紹介しよう。

宇宙なくして語れないゲームの歴史
宇宙なくしてゲームの歴史も語れない

 ゲームは,その黎明期から“宇宙”というテーマと密接な関わりを持っていた。史上初のコンピューターゲームとされる「Spacewar」(1962年),日本のゲームセンター文化を育てたタイトーの「スペースインベーダー」(1978年),さらにはAtariの黄金期に名を馳せた「アステロイド」(1979年)と,ゲーム史には数々の宇宙/SF作品が存在する。

 宇宙というのは,果てしないフロンティアであり,好奇心や冒険心を掻き立てるテーマなので宇宙/SF作品が多かった。と言いたいところだが,簡単に描けた黒い背景が宇宙を連想させたから,というのが本当かもしれない。

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「ファンタジー」や「戦争」といったテーマに押され気味な宇宙ものだが,「Wing Commander」のようにゲーム史に大きな足跡を残した作品も少なくない。画像の「Wing Commander II: Vengeance of the Kilrathi」は,ゲーム業界でもいち早くキャラクターに声を当てたマイルストーン的な作品だ

 「宇宙」と聞いてPCゲーマーが思い浮かべるのは,スペースコンバットシミュレーションではないだろうか。その中でも,とりわけ有名なタイトルが,「Wing Commander」(1990年)だろう。開発元のOrigin Systemsにとっては,Ultimaシリーズとの二枚看板をなすほどに人気を集めたのだ。当時若干22歳だったChris Roberts(クリス・ロバーツ)氏によって生み出されたというのも印象的だった。

 Wing Commanderは発売当時,「WW2 in Space」(宇宙で第2次世界大戦)というキャッチフレーズでプロモーションされた。当時(90年代初頭)人気ジャンルの一つだったフライトコンバットシミュレーションのドッグファイトアクションに,映画「スター・ウォーズ」シリーズの影響を受けた,スペースオペラの要素を組み合わた作品だった。

 Wing Commanderは,ドッグファイトのアクションに「ドラマ」という要素をたくみに取り込んだだけでなく,技術の面でもかなり先進的だった。例えば,シリーズ2作目の「Wing Commander II: Vengeance of the Kilrathi」(1991年)は,声優によるキャラクターボイスが収録されており,アニメーションのキャラクターがしゃべるという,当時としては画期的な試みも行われた。

 さらに,「Wing Commander III: Heart of the Tiger」(1994年)では,機体をポリゴンで表現していたのだ。また,スター・ウォーズのルーク・スカイウォーカー役で知られるマーク・ハミル氏などを起用したムービーもあり,パッケージ内容はCD-ROMで6枚組みという破格のボリュームを誇っていた。

 4作目の「Wing Commander IV: The Price of Freedom」(1995年)では,1200万ドル(約12億円)という,当時としては前代未聞の製作費が投じられるなど,Wing Commanderシリーズは時代の先端を走っていた。

 

姿を消したスペースコンバットシミュレーション

 もう一つ,スペースコンバットシミュレーションを代表する作品として忘れてはならないのが, LucasArts Entertainmentの「Star Wars: X-Wing」(1993年)だろう。映画本編を補足する形でミッションが構成されており,1994年にリリースされた「StarWars: TIE Fighter」と共にヒット。スペースコンバットシミュレーションとしては,最も売れたゲームと言われている。「Star Wars: X-Wing vs. TIE Fighter」(1997年)では,戦闘機や宇宙船にテクスチャー・マッピングが施され,グラフィックスが格段に進化していた。また,8人までプレイできるマルチプレイには,当時では珍しいCo-op(協力)モードもあったのだ。

 PCゲーム史において一時代を築いたスペースコンバットシミュレーションだったが,1990年代後半になると売り上げが急激に落ち,発売されるタイトルも減ってしまった。そんな状況を打破すべく,Wing Commanderシリーズは新規3Dエンジンで開発された「Wing Commander: Prophecy」(1997年)として再出発したのだ。だが,シリーズの生みの親であるロバーツ氏がOrigin Systemsをすでに退社していたことなどもあり,売り上げは芳しくなかった。当初は,3部作から成るProphecyシリーズになる予定だったが,続編が発売されることはなかったのである。

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スペースコンバットシミュレーションを語るうえで外せないのがLucasArts EntertainmentのX-Wingシリーズだ。画像の「Star Wars: X-Wing vs. TIE Fighter」は,反乱軍と帝国軍の両サイドでプレイできるという前2作の合体版。8人までプレイできるマルチプレイモードには,当時では珍しいCo-op(協力)モードも備わっていた

 Origin Systemsを辞めたロバーツ氏は,弟のErin Roberts(エリン・ロバーツ)氏達と,Digital Anvilという開発チームを結成。宇宙をテーマにしたゲームの開発に再び携わっていく。

 Digital Anvilは,Microsoftをスポンサーとした独立系開発会社の先駆け的な存在であり,Wing Commanderの雰囲気を残した「Starlancer」(2000年)や「Freelancer」(2003年),宇宙ものRTS「Conquest: Frontier Wars」(2001年)をリリース。しかし,クリス・ロバーツ氏は映画版「Wing Commander」の制作を始めたのをきっかけに,ゲーム業界を去ったのである。

 その後,Digital Anvilは,Xbox用タイトルの下請け専門会社となり,最終的には,Microsoft Game Studiosに吸収される形で消滅した。

 X-Wingシリーズのほうも,1999年に「Star Wars: X-Wing Alliance」が発売されたものの,期待されたほどの結果を残せなかった。Lucas Artsは,「スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス」を題材にした「Star Wars: Starfighter」(2002年)をコンシューマ機から移植したが,初期の作品のようには売れず,一時はスタ・ーウォーズのゲーム版の中核ジャンルだったスペースコンバットシミュレーションだが,現在では同社から完全に忘れられた存在になっているようだ。

 X-Wingシリーズを開発していたTotally Gamesは,Star Wars: X-Wing AllianceをもってLucasArtsとの契約が切れており,そののちにTVドラマ「スタートレック」のゲーム化権を買い取ったActivisionと提携。結果として,「Star Trek: Bridge Commander」(2002年)というスペースコンバットシミュレーションを生み出した。しかし,本作は発売後わずか数か月で,小売店の叩き売り専用コーナーに直行するという屈辱を味わうという,悲しい結果に終わったのである。「Star Trek: Starfleet Academy」(1995年)や「Star Trek: Klingon Academy」(2000年)と続いてきたスタートレック系ゲームも,この失敗以降は発売されていない。

 

主戦場をMMORPGに移した宇宙がテーマの作品

 このように,宇宙をテーマにしたゲームは2002〜2003年を境に,メジャー路線からは姿を消していった。しかし,死滅してしまったわけではなく,活躍の場をMMORPGに移しているのである。

 SFもののMMORPGを最初に開発したのは,「Anarchy Online」(2001年)のFuncomと,マイナーながらも「Jumpgate: The Reconstruction Initiative」をローンチさせたNetDevilだ。

 さらに,Electronic Artsに吸収されたWestwood Studiosの開発者による「Earth & Beyond」(2002年)が登場。そしてSony Online Entertainmentが満を持して「Star Wars Galaxies」(2003年)をリリースした。Star Wars Galaxiesは,その拡張パック「Star Wars Galaxies:Jump to Lightspeed」(2004年)で,スペースコンバットシミュレーションの要素も取り入れた。しかし,これらのSF系MMORPGのほとんどは,ソ連の宇宙開発のように苦難の時代が続いたのである。

 その中で「EVE Online」(2003年)は別格で,現在でも20万人以上のプレイヤーが集うほどの人気だ。成功の要因はいくつかあるが,開発元のCCPが販売権を買い戻してまで,自己運営にこだわり,それがファンの支持を獲得したことが大きいようだ。

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Spacetime Studiosが手掛ける「The Blackstar Chronicle」は,スペースコンバットシミュレーションに携わってきた開発者達による新作MMORPGだ。Wing CommanderとFPS「Descent」を掛け合わせたような作風になるとのことだが,アニメチックなキャラクターデザインが公開されている

 現在のMMORPG市場は,ご存じのように「World of Warcraft」(2004年)の独走が続いている。だが,さすがに成長の鈍化が始まっており,その次を見据えた動きが活発になりつつある。ただ,ファンタジーという土俵では,太刀打ちできないと考える会社が多いのか,真っ向から勝負しようという大掛かりなMMORPGは,Funcomの「Age of Conan: Hyborian Adventures」と,EA Mythicの「Warhammer Online: Age of Reckoning」ぐらいだ。また,MMORPGではないが,NCsoftの「Guild Wars 2」も競合タイトルに挙げられるだろう。

 このようにMMORPGジャンルには,例えばNCsoftのSF系「Tabula Rasa」(2007年)やFlying Labs Softwareの海賊MMO「Pirates of the Burning Sea」(2008年)といった,ファンタジー以外のテーマが増えてきており,宇宙がテーマの作品も多い。その代表格といえるが,P2 Entertainmentが開発中の「Star Trek Online」,Cheyenne Mountain Entertainmentの「Stargate Worlds」だろう。

 また,スペースコンバットシミュレーションの要素を持ったMMORPGの新作もある。これらは,Wing CommanderシリーズやX-Wingシリーズにハマッた人がMMOを始めるきっかけになるかもしれない。中でも期待できそうなのが,「Wing Commander」や「Earth & Beyond」の開発陣が結成したSpacetime Studiosによる「The Blackstar Chronicle」だ。本作はWing Commanderと宇宙ものFPS「Descent」を掛け合わせたような作風になるようで,2009年のローンチが予定されている。

 さらに,3DシューティングMMORPG「Neocron」で知られるドイツのReakktor Mediaは,ドイツのSF作家Michael Marrack(ミヒャエル・マラック)氏の手によって世界観やストーリーが構築される「Black Prophecy」を開発している。このほか,NetDevilは「LEGO Universe」を開発するかたわらで,「Jumpgate Evolution」を開発中だ。

 昨今また増えてきている宇宙をテーマにしたMMORPGはかつてのスペースコンバットシミュレーションのように,ゲーム業界に大きなインパクトを与えられるのだろうか。宇宙好きの筆者としては,実際の宇宙開発ともども,今後登場する「宇宙モノ」には注目していきたい。

 

■■奥谷海人(ライター)■■
本誌海外特派員。奥谷氏がゲーム業界に関わるきっかけは,富士通FMV版「Wing Commander II: Vengeance of the Kilrathi」のテスターをやったことだという。そんなことがあったせいか,かなりのWing Commanderファンのようで,いまだに1995年の第1回E3でもらった「Wing Commander IV: The Price of Freedom」のTシャツやバッグを,大切に保管しているらしい。

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