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印刷2008/01/18 12:34

連載

奥谷海人のAccess Accepted

 Macintoshのゲームシーンが大きく変わりつつある。2007年1月にTransGaming Technologiesから「Cider」というアプリケーションが登場して以来,Windows用のさまざまなゲームがリリースされているのだ。今回は,先ごろ開催されたMacworld Expoの様子を交えつつ,Macのゲームシーンについて紹介しよう。

Access Accepted第157回:最新Macゲーム事情2008
Macゲーマーを狂喜させた新技術“サイダー”

 1月14日からカリフォルニア州サンフランシスコのMoscone CenterでMacworld Conference & Expo 2008が開催されている(1月18日まで)。iPodからiPhoneに続く成功で勢いづいているのか,今回のMac World Expoは2007年よりもはるかに入場者が多かったようで,AppleのCEO Steve Jobs(スティーブ・ジョブズ)氏の基調講演が行われ,エキスポホールがオープンした15日は,いままでのMac World Expoでは見られなかった長蛇の列ができていた。

 さて,「第111回:最新Macゲーム事情2007」で去年の状況を報告したときには,「ゲーマー的な視点から見ても,今年はどこか気の抜けたような状態になっていた」と書いたが,その直後からMacのゲームシーンには大きな変化があった。「Harry Potter and the Order of the Phoenix」「Heroes of Might & Magic V」「Myst Online: Uru Live」といったゲームが,次々とリリースされたのである。

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Macworld Expoのゲームコーナーで大きなブースを展開していたのがCCPの「EVE Online」だ。2007年11月にMac用クライアントが公開されて以来,好評ということで,ブースからもかなりの勢いを感じた

 その原動力となっているのが,TransGaming Technologiesが2007年1月に正式リリースした「Cider」と呼ばれる“ソフト移植エンジン”である。Ciderは,Windows用のソフトに大きな変更を加えることなく,Macで動作できるようにするソフトウェアだ。TransGaming Technologiesは,もともとWindowsとLinuxでの互換を可能にする「Cenega」というソフトを発表していたのだが,Intel製CPU搭載のMacの登場により,WindowsからMacへの移植に対応したCiderを誕生させたのだ。

 Ciderにより,開発者はWindowsとMacのプロジェクトを同時に進められるようになり,Macに対応させるための作業から解放された。コピープロテクション,ネットワークコード,さらにはロビー作成やマッチメイキングといった機能も移植できるということで,主にWindows版のゲームを開発してきたデベロッパに,Mac版ゲームの同時リリースを狙える環境がもたらされたのだ。

 

Electronic ArtsやCCPがMacゲーム市場に参入

 Ciderの登場に飛びついたといえるのが,Electronic Artsだ。Harry Potterを皮切りに,「Battlefield 2142」「Tiger Woods'PGA Tour 08」「Command & Conquer 3: Tiberium Wars」「Madden NFL 08」などを,次々とMac市場へ投入している。MacでMaddenシリーズがプレイできるなど,実に1988年以来のことだ。

 さらに,今年発売予定のシミュレーションゲームとしてゲーマーの期待が高いWill Wright(ウィル・ライト)氏の「Spore」は,WindowsとMac版の同時発売を念頭に置いて,開発が進められているという(関連記事)。Sporeは,Aspyr MediaがCiderを使用して移植を進めているようだが,Electronic Artsは,2007年にMac用ゲームの開発を直接手がけることを発表している。今後はますますWindowsとMacで同時にリリースされるゲームが増えるだろう。そして,Macゲーム市場に手応えを感じたならば,Electronic Artsは本腰を入れて,販路の拡大に乗り出すに違いない。

 また,Macworld Expoで目立っていたのがCCPの「EVE Online」である。同社は,TransGaming TechnologiesのCenegaを用いたLinux版と共にMac版クライアントを2007年の11月初旬にリリース。12月に実装されたアップデート「Trinity」は完全対応していないものの,TransGaming Technologiesでは,Shader Model 3.0を処理できる機能をCiderに取り入れるための開発が進められており,CCPは近い将来,TrinityもMacに完全対応すると発表している。会場には大規模なブースが展開されており,多くの視線を集めていた。「World of Warcraft」に続く,本格派MMORPGとして期待しているMacユーザーも多かったのではないだろうか。

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Ciderの登場により,スポーツやカジュアル,ストラテジーなど,さまざまなジャンルのゲームをMac市場に投入したElectronic Artsは,Macworld Expoでは初となる,独自のブースを設置した。あのSporeのMac版開発が発表されるほど,気合いが入っている

 また,Aspyr Mediaは,2007年末にWindows版も発売された大ヒット音楽ゲーム,「Guitar Hero III: Legends of Rock」を展示していた。そして,今回出展はされていなかったものの,同作と同じくActivisionから発売されて人気を呼んだ「Call of Duty 4: Modern Warfare」のMac版リリースも予定されている。

 さらに,イギリスで制作されるゲームソフトの移植に強いFeral Interactiveは,「The Movies」の拡張パック「The Movies: Stunts & Effects」と,「Tomb Raider: Anniversary」のMac版を展示していた。すでにβ版の段階へ達しているように見えたので,発売も近いだろう。

 ほかにも,昔からのMacサポーターとして知られるBlizzard Entertainmentは,World of Warcraftの拡張パック第2弾「World of Warcraft: Wrath of the Lich King」のMac版を,Windows版と同時リリースすると発表しており,「StarCraft II」でも同じ戦略がとられる可能性が高い。id Softwareの次世代アクションゲーム「Rage」もMacに移植されることになっている。インテルMacは,Activision BlizzardとElectronic Artsという,メジャーパブリッシャーの支持を得たようだ。

 ここ数年,お世辞にもMacをゲーム用プラットフォームとしては扱えなかったが,Ciderの登場によって,それは大きく変化したのかも知れない。少なくとも,ゲーム市場としての重要性は一気に増したようだ。Macへの移植が増えても,主にWindowsでゲームを遊んでいる人達には関係がないと思われがちだが,それほど手間(お金)をかけずに移植できるとあれば話は別だ。市場が開拓されることによって,より開発費を投じやすくなり,良質なゲームが生まれやすくなるだろう。

 Intel製CPU搭載のMacは,2007年に1200万台もの需要があったと言われている。そしてその50%が,いままでMacを所有したことのない若い世代であるという。これは,ゲーム産業にとって手垢のついていない市場であり,とてつもない“金脈”に化ける可能性を秘めている。この市場開拓を狙い,2008年は,Macへの移植を自前で行うことを発表する会社がさらに増えるかもしれない。ゲーム市場拡大のためにも,うまくいってもらいたいものだ。

 

■■奥谷海人(ライター)■■
本誌海外特派員。Macworld Expoに行ったのに,スティーブ・ジョブズ氏の基調講演やAppleの新製品/サービスを紹介しないという,ある意味貴重なジャーナリストである奥谷氏。iPodを使っておらず,Macにはあまり興味がないと言っていたが,封筒から取り出されたMacBook Airの薄さや,iTunesの映画レンタルサービスに Warner BrothersやWalt Disneyが参加することなどを,聞いてもいないのに延々と語っていた。何があったのかは分かりませんが,もっと素直になっていいですよ。

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