連載
剣と魔法の博物館 モンスター編 / 第106回:ギリメカラ(Girimekhala)


今回紹介するギリメカラ(Girimekhala)は,スリランカに伝わる神獣/魔獣の一種だ。全長2100kmにも及ぶといわれる黒い巨象で,魔神マーラの乗り物として知られている。マーラと共に数々の戦いに参加しており,かなりの実力者だったことが窺える。
攻撃方法に関しては,巨体を生かした肉弾戦を得意としているようだが,後述するギリメカラのもう一つの顔であるアイラーヴァタ(Airavata)が,空を飛行し,天候を操作できたことを考えると,ギリメカラもそうした能力を持っているのかもしれない。
とにかく巨大な存在なので,普通の冒険者では有効打を与えることさえ難しいだろう。戦うのであれば,神などの助力を得たいところである。
日本でギリメカラの名前を聞くことは少ないが,このモンスターをいち早く採用し,広めたのは女神転生シリーズだろう。同シリーズでのギリメカラは,一つ目の黒い巨象として描かれており,強力な魔法に加え,物理攻撃を反射する特殊能力を持っていた。油断してオートバトルを仕掛け,パーティ全滅を経験したプレイヤーも少なくないだろう。
なお,同シリーズのギリメカラには魔法が有効だが,「真・女神転生2」では魔法禁止エリアに登場することもあった。物理攻撃反射&魔法使用不可ということで,多くのプレイヤーが泣かされたのではないだろうか。
ギリメカラは悪を代表する黒い巨象だが,これはスリランカにおいての描写で,インドではアイラーヴァタという聖獣として扱われる。アイラーヴァタは黒い巨象ではなく,翼を持つ白い象で,背中に雷帝インドラを乗せて空を疾走するのだという。国や地域によって,神や怪物の特徴が変化するケースはままあるが,ここまで大きく変わるのはなかなか珍しいことだ。
神話におけるギリメカラ/アイラーヴァタは,乳海撹拌のときに生まれたとされ,以前にガルーダの項で紹介した白馬ウッチャイヒシュラヴァスとは兄弟にあたるとされている。アイラーヴァタは,生まれたときから背中に翼があり,これはのちに生まれた象にも受け継がれたため,初期の象達は翼を備えていたという。
今の象に翼がない理由としては,こんな逸話がある。ある日のこと。仙人が人々の前でありがたいお話をしていたとき,どこからともなく象が飛んできて,近くの木にとまった。象の重さに耐えきれなかった木の枝は折れてしまい,結果として仙人の話を邪魔することになったのだ。これに怒った仙人は象から翼を奪い,以後,象は今の姿になったのだという。

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