連載


古代ケルトでは,11月1日が新年の始まりとされており,10月31日から11月1日にかけて,新年の訪れを祝うサウィン祭が行われていた。この時期には,現世と異世界がつながるとされていて,妖精や魔女などが活発に活動すると信じられていたことから,サウィン祭では焚き火をしたり,仮面をかぶったりすることで魔を払った。そしてこれが,今日のハロウィン(Halloween,万聖節の前夜祭)の原型になったという説もある。
ハロウィンは,カボチャをくりぬいて怪物の飾りを作ったり,仮装した子供たちが「Trick or Treat!」(お菓子くれなきゃ,いたずらするぞ!)といいながら近所の家々を回ったりするお祭り。最近では日本での知名度も高まってきているので,ご存じだという人も多いことだろう。
そんなハロウィンの象徴ともいえるカボチャのお化けは,ジャック・オ・ランタン(Jack-o'-Lantern)や,ジャッキーランタンなどと呼ばれて親しまれているが,実は歴史ある由緒正しいモンスターであることを知っているだろうか。
ゲームなどでモンスターとして描かれるジャック・オ・ランタンは,カボチャの頭だけのモンスターではなく,ボロ布やマントをまとっていたり,手にランタンを持っていたり,帽子をかぶっていたりする。
またどちらかというと,肉弾戦よりも魔法を得意とするモンスターとして描かれるケースが多い。とはいっても,得意魔法が明確に決まっているわけではないので,戦い方はゲームによってさまざまだ。
ちなみに,ジャック・オ・ランタンを強く打ち出したことで知られる女神転生シリーズでは,火炎系の呪文を得意としている。これは,カボチャの中身をくり抜いて,その中に火を灯すことが由来しているためだろう。また作品によっては,カボチャの種を口から吐いて攻撃するなど,ユニークなものも見られる。
ジャック・オ・ランタンというネーミングは,単純に「ジャックのランタン」という意味である。なぜジャックなのかと思い調べてみたら,アイルランドの民間伝承に突き当たったので,それを紹介しよう。
あるところに,飲んだくれで悪知恵の働くジャックという男がいた。あるとき彼が酒場で飲んでいると,悪魔が現れてジャックの魂を奪おうとしたが,ジャックは「酒が飲みたいから,魂をやる代わりに酒代に化けてほしい」と頼んだ。そして悪魔が硬貨に化けたのを確認すると,ジャックはこれを財布に入れて封をして,悪魔が逃げられないようにしたのだ。さらに,出してほしければ10年間は命をとらない,と悪魔に約束させたのだった。
それから10年後。再び悪魔が現れて魂を取ろうとしたが,ジャックは近くのりんごの木を指さすと,魂をあげる前にりんごが食べたいと言った。悪魔は渋々りんごの木に登ったが,ジャックはそれを確認すると木の幹に十字架を刻んで,悪魔を封じてしまったのだ。結局,悪魔は決して魂を取らないと約束させられてしまった。
やがてジャックは年をとって死んだが,生前の悪事がたたって天国へは行けず,地獄に落ちた。しかし地獄には,生前騙した悪魔がおり,「かつて魂をとらないと約束したので,お前を地獄へ入れるわけにはいかない」と拒否されてしまう。
こうしてジャックはさまよえる魂となり,暗い世界を放浪することになった。ジャックは悪魔にお願いし,カブと地獄の炎をもらって提灯を作り,あの世とこの世の間を行ったり来たりしているという。
このほかにも,ジャック・オ・ランタンに関する逸話はたくさんあるので,興味ある人は調べてみるといいだろう。基本的にジャック・オ・ランタンは,呪われて彷徨う魂の代名詞となっていることが,理解できるだろう。
なお,上で紹介した逸話からも分かるように,本来ジャック・オ・ランタンはカブなどで作られていたらしい。のちにハロウィンがアメリカに渡った際,手ごろで加工しやすいカボチャが用いられるようになったのだそうだ。

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