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印刷2007/09/10 20:20

連載

剣と魔法の博物館 〜モンスター編〜
第53回:麒麟(きりん)
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 「キリン」といっても,アフリカの草原などに棲息する首の長い哺乳動物のことではない。剣と魔法の世界で麒麟といえば,中国を代表する幻獣/神獣であり,日本ではビールのラベルなどでお馴染みの,伝説上の生物のことである。
 この麒麟,なかなか個性的な神獣なのだが,知っているのは名前と発祥国くらいで,そのルーツや特徴については,ほとんど知らないという人も多いのではないだろうか。

 中国の伝説によれば,麒麟は獣類の王とされている。容姿に関しては諸説あるが,一般的には鹿のような姿に牛の尾と馬の蹄を持ち,背中は五色,腹は黄色で,オスの頭には角があるという。
 明の王圻(おうき)が編んだ中国の百科事典「三才図会」によれば,メスを麒,オスを麟と呼ぶとしているが,「瑞応図」などでは逆の説が展開されている。特殊能力としては邪気を払う鳴き声のほか,これは後述するが「龍」を祖に持つことから,雷を起こしたり,嵐を呼び起こしたりする力を持っている。また書物によっては,炎を吐くとされているものもある。
 麒麟は単独で行動し,性格は非常に温厚。食物は枯れた草を食べ,移動に際しては生きた虫や草花を踏むことはない。また空中を移動しているのか,落とし穴に落ちたり転んだりすることもないらしい。
 なお麒麟には,いくつかの種類が存在する。黄色いものはそのまま麒麟と呼ぶが,青い麒麟を聳弧(しょうこ),赤い麒麟を炎駒(えんく),白(もしくは白金色)の麒麟を索冥(さくめい),黒い麒麟を角端(かくたん)と呼ぶらしい。なかでも角端は優れた能力を持っているそうで,一日に9953kmを走行できるほか,あらゆる民族の言語を理解して話すという。

 

 興味深いことに中国の「淮南子」(えなんじ)には,麒麟のルーツが記されている。同書によると,麒麟は毛を持つ獣の王とされており,その原点は毛犢(もうとく)という幻獣にあるという。毛犢から翼を持つ応龍(おうりゅう)が生まれ,応龍から建馬(けんば)が生まれ,建馬から麒麟が生まれ,麒麟からあらゆる獣が生まれたために,麒麟は獣類の王と呼ばれることになったというのだ。
 ちなみに毛犢や建馬は知らなくとも,応龍なら知っている人も多いはず。応龍は中国の伝説の王である黄帝に助力したとされる偉大な龍である。麒麟の祖先が龍だったというのは,ちょっと不思議な話だが,温厚な麒麟といえども,本気で怒るようなことがあれば,龍のような激しい一面を見せるかもしれない。
 また麒麟といえば瑞獣(ずいじゅう)の一種としても知られている。瑞獣とは,優れた王によって統治されている世に姿を現すとされている獣のことであり,麒麟以外にも龍,神亀,鸞,鳳凰,白雉などが知られている。記録によれば漢の武帝の時代に麒麟が現れたとの記録が残されており,武帝はそれを記念して麒麟閣という建物を建築している。
 ほかにも中国には「麒麟送子」という言葉があり,麒麟は優れた人物を遣わすと伝えられている。これを受けて生まれたのが,将来を嘱望された子供を指す「麒麟児」という言葉である。
 ほかにも,子供の出産と麒麟という関係で考えると,かの孔子は母親が麒麟の足跡を踏んで身ごもったという逸話が残されているほか,ファンタジーファンならよく知っているであろう封神演義の序章でも,殷の皇帝紂王が生まれる際に,黒麒麟が鳴くというシーンがあり,非常に印象的である。

 

次回予告:イエティ

 

■■Murayama(ライター)■■
いつものように「何か面白い著者紹介ネタはありませんか?」とMurayamaに尋ねたところ,「うーん,最近玉子焼き作りに凝っているくらいかなぁ。ソーセージとかカニかまを巻いて焼いたりして,ちょっと完成度にはこだわっているんだけれど」などという,普通すぎてコメントに困るような答えが返ってきた。存在そのものがトラブルであるMurayamaにしては,ちょっと珍しいことである。次回の著者紹介までにはぜひ,何らかのトラブルに巻き込まれていてください。
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