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イスラエル製の“ちょっとすごい”PC向けサウンド技術「MaxxAudio 3」を台湾で聞いてきた
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印刷2009/06/13 10:30

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イスラエル製の“ちょっとすごい”PC向けサウンド技術「MaxxAudio 3」を台湾で聞いてきた

画像集#001のサムネイル/イスラエル製の“ちょっとすごい”PC向けサウンド技術「MaxxAudio 3」を台湾で聞いてきた
 イスラエルのデジタル音声&音響技術メーカーであるWaves Audio(以下,Waves)は,COMPUTEX TAIPEI 2009の開催に合わせる形で,台北市内の超高層ビル,Taipei 101にプライベートのミーティングルームを開設。顧客向けに,PC向けサウンド技術の最新世代となる,「MaxxAudio 3」(マックスオーディオ スリー)のデモを行っていた。

Tomer Elbaz氏(General Manager, Semiconductor and Licensing Division, Waves Audio)
画像集#002のサムネイル/イスラエル製の“ちょっとすごい”PC向けサウンド技術「MaxxAudio 3」を台湾で聞いてきた
 MaxxAudio 3は,ノートPC内蔵型に代表される小さなスピーカーで,豊かなサウンド環境を構築するための補正技術スイートだ。一部海外メデイアの「ゲームにも有効」という報道だけをたよりに取材を申し込んでみたところ,同社の半導体およびライセンス部門のゼネラルマネージャーであるTomer Elbaz(トメル・エルバズ)氏からOKの返事が来たので,デモを聞きに行ってきた,というわけである。
 正直,どれだけの読者に訴求するのかは分からないが,個人的には「これはすごい」というレベルのものだったので,もらってきたサンプルデータともども,レポートしてみたいと思う。


そもそもWaves&MaxxAudio 3とは何なのか

実際のゲームサウンドでその効果を確認する


 とはいえ,ほとんどのPCゲーマーにとって,Wavesという名前は初耳だと思われるので,本題の前に,同社をざっと紹介しておきたい。
画像集#003のサムネイル/イスラエル製の“ちょっとすごい”PC向けサウンド技術「MaxxAudio 3」を台湾で聞いてきた
 1992年に創業されたWavesは,長らく,サウンドやオーディオのデジタル信号処理技術を,ハードウェアやソフトウェアの形で,業務用に展開してきたデベロッパだ。プロのミュージシャンや,音楽・映画などの制作スタジオ,あるいはゲームデベロッパが主な顧客で,“その筋”では相当有名なのだが,一般ユーザーの前にはほとんど姿を見せてこなかったので,4Gamer的には,むしろ知らないほうが普通である。
 ただ,4Gamer読者になじみ深い最近の例だと,Xbox 360用の「Halo 3」が,Wavesのソフトウェアプラグインを採用しているので,知らぬ間に,Wavesのサウンド技術に触れていたという人は少なくないだろう。

画像集#005のサムネイル/イスラエル製の“ちょっとすごい”PC向けサウンド技術「MaxxAudio 3」を台湾で聞いてきた
 そんな同社が,「音楽制作現場の技術をPCやテレビ,携帯電話,ポータブルミュージックプレイヤーにもたらす」として取り組んでいるのが,「Maxx」ブランドの技術群である。MaxxAudioはその“PC&デジタル家電部門”といったところで,イメージしやすいように競合製品を挙げてみると,Dolby Laboratories(以下,Dolby)の「Dolby Home Theater」(や「Dolby Sound Room」),SRS Labsの「SRS TruSurround XT」(や「SRS WOW」)といったあたりになる。

 MaxxAudioを構成する具体的な技術については後ほど述べるが,冒頭でも述べたとおり,MaxxAudio 3はかなり強烈だった。ミーティングルームで筆者は,Windows VistaがインストールされたMacBookの内蔵スピーカーシステムで,「Call of Duty 4: Modern Warfare」のデモプレイを聞いたのだが,どこか別に“ちゃんとした”スピーカーシステムが用意されているのではないかと疑いたくなるほどだったのである。

Wavesのミーティングルームにあった機材一覧。今回筆者がCall of Duty 4のデモを聞いたのは,写真右手前のMacBookである
画像集#006のサムネイル/イスラエル製の“ちょっとすごい”PC向けサウンド技術「MaxxAudio 3」を台湾で聞いてきた
 「……と言われても」という人は多いと思うので,今回は,持ち込んだリプレイデータ(※4Gamerベンチマークレギュレーション7.0で採用しているものだ)のまったく同じシーンを使って,MaxxAudio 3無効の状態と,有効化してスピーカー向けの設定を行ったものとをそれぞれライン出力してもらい,それを別のPCで録音したデータをもらってきた。それを下にUpしたので,ぜひ聞き比べてもらいたいと思う。
 なお,出力時のボリューム設定は完全に同じことを確認済み。入力側の設定も同じだ。聞き比べるに当たっては,「スピーカー用の設定をしているので,ヘッドフォンだと違和感があるかもしれない」というコメントを受けているので,できれば小型のスピーカーシステムで聞いてほしい。

MaxxAudio 3無効
音声ファイルを再生する
MaxxAudio 3有効
音声ファイルを再生する

※環境によっては,再生できないことがあるかもしれません。その場合は,下のリンクからWave形式のファイルをダウンロードし,ローカルで再生してみてください。
MaxxAudio 3無効(7.9MB) / MaxxAudio 3有効(7.9MB)

 ライン出力したものを録音している以上,あくまでサンプルだと捉えてほしいが,それでも,MaxxAudio 3を有効化することで,「同じボリューム設定」というのが信じられないほど音が大きく聞こえる,つまり,大きな音で出力されているのが分かると思う。ノートPC内蔵スピーカーの場合,サウンドデバイス側のボリューム設定が最終のボリューム設定となり,通常,どうがんばってもそれ以上大きな音は出力できないが,MaxxAudio 3はその限界を突破し,より大きな音を出力できているのだ。しかも,足音や銃声,爆発といった効果音のリアリティも,格段に向上している。
 ちなみに,ノートPCの小さなスピーカーというのは,その構造上,大きな音を出すのが得意ではなく,しかも出そうとすると,高域や低域の小さな音がマスクされて聞こえづらくなってしまう。にもかかわらずこの結果というのは,相当なインパクトがある。
 また,ノートPCだと,スピーカー同士の距離が短いため,ステレオ感(≒音の広がり)が乏しくなりがちなのだが,その点でも,MaxxAudio 3の効果は感じられるはずだ。

ノートPCでゲームや音楽&ビデオ鑑賞などをすること,それを実現するにはスピーカーの能力が低すぎる。とくにボリュームが低いこと,低音と高音が聞こえないこと,音が不自然なことが問題(で,それを解決するのがMaxxAudioだ)というスライド
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新機能を含めた6技術からなるMaxxAudio 3

すでに日本でも搭載PCが存在


 以上の効果をもたらすMaxxAudio 3の技術は,Tomer氏によると下記の6点。これらが複合的に機能することで,先ほど示したような効果を,ゲームプレイや音楽のリスニング,ビデオ鑑賞,チャットなどにおいてもたらすとされている。

1.MaxxBass
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 人間の耳が持つ「高次倍音を基に,基音を類推する能力」を応用した技術。倍音をうまく処理し,存在しない音(=スピーカーが出力できなかった基音や低次倍音)があたかも存在するかのように錯覚させることで,低域を十分に感じ取ることができるようにする。従来製品「MaxxAudio 2」では,250Hz以下の周波数帯
域を再生できないような超小型スピーカーユニットと組み合わせると,満足な結果を得られないこともあったが,最新世代ではこの問題がクリアになったという。

2.MaxxTreble
 「設定した周波数帯域に,設定した音圧レベル以上のオーディオ信号が入ったら強調しない」機能を持った高域強調技術。高域の小さな信号を持ち上げる一方,例えば銃声などのようなキンキンした音は引き上げられないため,“耳に痛くない”高域強調が可能とされる。

3.MaxxEQ
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 ノートPCのスピーカーが持つ歪(いびつ)な周波数特性のバランスを整える技術。Maxxブランドでは,MaxxAudio 2時代に,全自動の周波数特性調整技術「SpeakerEQ」が実装されていたが,「SpeakerEQを使ってひとまず帯域をフラットにしたあと,手動で,さらに理想的な周波数設定に追い込んでいく」ために用いるのがMaxxEQである。ノートPCの場合,スピーカーが振動することにより,共振が起こったりするが,共振している周波数帯域をの音を“取る”のにも効果があるとのことだ。
 ちなみに最近,Dolbyが「Audio Optimization」という,全自動の周波数特性調整技術を公表したが,これはSpeakerEQに相当する機能である。

右のウインドウで青い波形が,とあるスピーカーの周波数特性。これに対してSpeakerEQをかけて,この部分のバランスを整えた結果が赤い波形だ。左はWavesのエンジニア用ユーザーインタフェースで,ここで最上段の青い波形が,SpeakerEQをかけたところ。この状態から,MaxxEQを使ってさらに調整をかけられるようになっており,黄色の波形がその例である
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4.MaxxStereo
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 バーチャルサラウンド技術のような名称だが,実際には,左右スピーカーの向く角度だけをバーチャルに変更することで,ステレオ感の最適化を図る技術である。いたずらにステレオ感を広げると,センター部分の音「センターイメージ」がおかしくなってしまうことがあるが,MaxxStereoではセンターイメージの処理を一切行わないことで,この問題に対処している。

5.MaxxDialogue
 MaxxAudio 3で初登場となった,「MaxxStereoで未処理のまま置かれたセンターイメージ」を調整する技術。ゲームや映画のボイス,音楽のボーカルだけを強調したり,逆に弱くしたりできるようになった。その特性上,MaxxStereoとの併用が前提となる。

6.MaxxVolume
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 オーディオ信号の音圧レベルをリアルタイムで解析して,ピーク信号から生じる歪みやクリップをまったく生じさせないまま,音圧を上げていく技術。同時に,小さな音が聞こえづらくなったりしないよう,小さな音も相対的により強く持ち上げていく。
 従来,これに自動ゲインコントロール機能「Leveler」を組み合わせて平均音圧を整えようとすると,最終的に出力される音圧レベルは下がってしまっていたが,MaxxAudio 3ではLevelerが「MaxxVolume Advanced Leveler」へと進化し,自動ゲインコントロールを行ったときに,さらに高い音圧レベルを実現できるようになっているとのことだ。


 ……以上,専門用語が多いこともあって難度は高めだが,理屈はさておき,MaxxBass/Treble,そしてMaxxStereo,MaxxVolumeが機能していることは,デモサウンドからなんとなくイメージできるのではなかろうか。

Maxxブランドでは,一般的なPC以外をターゲットとするMaxxAudio以外にも,NetbookやMIDをサポートし,WindowsのほかLinux,Android上でも動作する「MaxxAudio LE」や,携帯電話やスマートフォン向けの「Maxx for Mobile」も用意されている
画像集#016のサムネイル/イスラエル製の“ちょっとすごい”PC向けサウンド技術「MaxxAudio 3」を台湾で聞いてきた
 注意したいのは,MaxxAudio 3がPCメーカー向けに提供されるものであること。基本的に,これらの設定を行う主体はWavesのエンジニアとPCメーカーであって,MaxxAudio 3がパッケージ販売されたり,サウンドカードにバンドルされたりする可能性はまずない。
 Tomer氏はこの点について,「MaxxAudio 3に用いられている技術は,音楽CDの制作スタジオで用いられているのと同じものだ。ノートPCという機器に向けて最適化する『リマスタリング』を行っている」と述べ,一般PCユーザーが使いこなすことはまず不可能だというのが,この販売形態を採用する理由だとした。
 ただし,Windows Vista/7用のユーザーモードドライバとして実装される仕様上,MaxxAudio採用PCの一部では,MaxxEQの一部などが,ユーザーに開放されているとのこと。ある程度分かりやすい部分で,自分好みのカスタマイズを行う余地は残されているのだ。

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ミーティングルームにあった富士通製の液晶一体型PC。日本語版Windows Vista搭載だった。ここではRealtek Semiconductor製HD Audioデバイス用の拡張ドライバとして機能しており,MaxxBass,MaxxTreble,MaxxStereoの簡単な調整を行えるほか,MaxxVolumeのオン/オフも切り替えられる
画像集#019のサムネイル/イスラエル製の“ちょっとすごい”PC向けサウンド技術「MaxxAudio 3」を台湾で聞いてきた
こちらは東芝製のノートPC。“AVノート”を謳うQosmioということもあり,MaxxEQにより,5点の周波数特性カスタマイズが実現されている。このように,顧客となるPCメーカーの要求に合わせて,拡張機能はさまざまなドライバの上でカスタマイズされて用いられるという。音の傾向も,各社異なるとのことだ

 ところでMaxxAudioは,すでに日本でも,東芝のゲーマー向けノートPC,「dynabook Qosmio WXW」をはじめ,同社のQosmioシリーズや,NECのValuestar/Lavieシリーズ,富士通のFMV-DESKPOWER/BIBLOシリーズといった採用例が実際に出荷されている。
 ラインナップからして,現状ではどちらかというと,DVD-Videoをはじめとするビデオ系に軸足が置かれている印象だが,今後,いわゆるホワイトボックス系各社のゲーマー向けノートPCなどに搭載されてくると,けっこう面白いことになりそうだ。

 「外付けスピーカーも,ヘッドフォンも取り付けることなく,ノートPCだけで,ゲームサウンドを思う存分楽しめるようになる」とはTomer氏の弁だが,多くのノートPCにその日が来ることを期待して待ちたい。
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