業界動向
「完全無料」は消える? 消費者庁,インターネット取引での広告表示に関するガイドラインを提示
資料は大きく,
- フリーミアム
- 口コミサイト
- フラッシュマーケティング
- アフィリエイト
- ドロップシッピング
の5項目に分けられており,それぞれで,どのようなものがどう問題になるのかなどが示されている。軽く説明しておくと,フリーミアムは,基本となるサービスを無料化して,付加的なサービスを販売する形態の業種のこと。口コミサイトは,ユーザーの評価などを集めたサイトのこと。フラッシュマーケティングは,クーポンなどで限定割引や特典付き販売を行うようなもの。アフィリエイトは,バナーなどのリンクで移動した客が購入などを行った場合に成功報酬を支払うもの。ドロップシッピングは,他サイトやサービスを使用して在庫などを持たずに販売を行うものだ。
ゲームに近しいところだと,フリーミアムの実例として,「完全無料となっているゲームだけど,レベル○○以上までプレイするには料金が必要だった」というものが挙げられている。
この場合,問題になると思われるのは「完全無料」の部分で,完全という言葉が,付加的なサービスを含めて無料であると誤解させるおそれがあることだ。実際のサービスに対して,過剰な表現であるということだろう。
PCオンラインゲームで多く使われている「基本プレイ無料」であればOKなのかという部分には触れられていない。
ただし,今回のガイドラインでは,
「事業者は,無料で利用できるサービスの具体的内容・範囲を正確かつ明瞭に表示する必要がある」
といった留意事項が示されており,ここでどの程度までの説明が要求されているのかがちょっと気になるところだ。正確すぎる記述は混乱を招くんじゃないかと思うのだが。
口コミサイトでは,いわゆる「業者乙」な自演コメントに対する注意が行われているのだが,この場合も明らかに事実に反するような内容や,誤解を与えるような内容についての注意が行われているのみで,自演自体についての規制というわけではない。広告と明示されていない部分,例えば口コミサイトの書き込みも広告であるとみなすという判断だろう。
なお,今回のガイドラインは,あくまでも景表法の見地からのもののみであり,その他の法律的な見地からのものは含まれない。例えば,他社製品を不当に貶めるようなものは別の法に触れるものとなる。また,景表法に違反するか否かも個々の事例ごとに異なり,今回の例はあくまでも「ガイドライン」にすぎないので注意しよう。
「無料が誤解を招く」というのは,かなり以前から懸念されていることであり,各社それなりに気は遣っているようで,PCオンラインゲームについて見れば,ほぼ引っかかるようなものはないように思われる(永久無料を謳いながらサービス中止になったタイトルはあったが)。
インターネット上での過大な表現については,常識的に考えてスルーしている人も多いと思うが,こういったガイドラインが出てきたことで,より健全なマーケティングが行われるようになることは期待できる。現時点では,これがゲーム業界に与える影響は不明だが,これを契機により活発な議論が行われることに期待したい。
「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」の公表について
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