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MicrosoftのSteave Ballmer氏が,「自然言語処理」や「クラウド」などを中心にした,同社のビジョンを熱く語る。「Microsoft Forum 2011」が開催
自然な入力を可能にする
ナチュラルユーザーインタフェース
Microsoftはあまりにも巨大であるため,彼らが現在,何を目指しているのかが分かりにくい。GoogleやAppleが注目を集めるのもビジョンが明快だからであり,それに対して,多種多様なMicrosoft製品から同社の今後を見ることは難しいのだ。
そのあたりはMicrosoft自身も自覚しているようで,Ballmer氏の講演では,彼らがどのような未来を目指しているのかについて語られた。
登壇したBallmer氏はまず,「エキサイティングなイノベーションが起きる,5つのエリア」を示した。5つのエリアとは,「ナチュラルユーザーインタフェース」「自然言語処理」「HTML/JavaScript」「ICチップとフォームファクター」,そして「クラウド」だ。
スライドに挙げられた5つのエリアのうち,最近のMicrosoftが折に触れて口にしているのがナチュラルユーザーインタフェース。Ballmer氏は,ナチュラルユーザーインタフェースについて「より直感的に操作できる」ものだと語る。具体的には,従来のようにキーボードやマウスで操作するのではなく,音声や体の動きなど,五感を使うインタフェースということだ。
Xbox 360向けのモーションセンサー「Kinect」もそうした文脈から生み出されたアイデアとのことで,PC向けのSDK公開が予定されいるKinectには「さらなるイノベーションが期待できる」とBallmer氏は語る。
こうしたナチュラルインタフェースを実現するには,コンピュータが人間の言葉を理解する必要がある。それが,2つめのエリアとして挙げられた「自然言語処理」だ。
Ballmer氏は,コンピュータが人間の言葉を理解するにはさらなる研究が必要で,Microsoftはこの分野に多くの投資をしていると語る。その研究成果の1つが「Bing」である。
具体的な内容には踏み込まなかったものの,Microsoftがサービスする検索サイトBingは「単に検索だけではなく,自然言語処理を実現するために運営している」という。
エリアの最後に挙げられている「クラウド」に関しては「何が出来るのか」というフェーズに入ってきたとBallmer氏は述べる。そして,実例としてソーシャルネットワークサービスのFacebookとBingの連携を挙げた。例えば「スパニッシュレストランを選ぶとき,他人の評価と,友人の評価の両方を自動的に調べられる」という具合だ。
2010年の10月,MicrosoftはBingの検索対象にFacebookのデータを加えることを発表したが,以上の例のように,ユーザーの知りたいことが検索に反映されるというスマートなインタフェースを実現するために,Bingの自然言語処理が使われ,それがクラウドをより便利なものにしていくわけだ。
このほか,Ballmer氏の講演内容は,Windows Phone 7の説明や,クラウドエンジンであるWindows Azureの意義など,多岐にわたった。これらを筆者の印象でまとめると,コンシューマー向けにナチュラルユーザーインタフェースを実装したたWindowsファミリーがあり,その背後にWindows Azureで構築されたクラウドがあるという未来を描いているようだった。
さらに,次期OSであるWindows 8については,「来年(2012年)にも詳しい話が出てくるだろう」と予告する。Windows 8ではスレート型やタブレット型など,幅広いプラットフォームへの本格展開が予定されており,Windowsファミリがさらに多くのデバイスに展開されていくという。
このように数々の製品をビジョン実現のための武器とするMicrosoftだが,彼らの思い描く未来を実現するには,デベロッパの協力が欠かせないとする。最後にBallmer氏は,来場した開発者に対し「みなさんの協力に感謝している。我々と共にイノベーションを起こしていこう」と呼びかけ,プレゼンテーションを締めくくった。
3Dをサポートした「Silverlight 5」のデモも登場
その1つは,Facebookでサービスされている「BOLA」というソーシャルゲームだ。このゲームは現在700万人がプレイしているという人気タイトルで,それを支えるのがWindows Azureで構築されたクラウドだという。「クラウドは,プレイヤー数に応じてスケールを変えられる」ことから,ソーシャルゲームや携帯機向けゲームなど,プレイヤー数が読めないタイトルに適していると説明していた。
もう1つ,デモで目立ったのが,3Dをサポートする「Sliverlight 5」だ。スムーズに動くウォークスルーデモが披露され,シンプルな3Dゲームなら十分に実装できそうだった。HTML5の限界を超えるパフォーマンスや機能が必要とされるブラウザゲームのプラットフォームとして,これから普及する可能性がありそうだ。
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