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[AMショー]「客数を伸ばせ」「外食産業に注目しろ」不況期におけるゲームセンター店長の意識の持ち方と仕事の進め方とは
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印刷2010/09/11 00:00

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[AMショー]「客数を伸ばせ」「外食産業に注目しろ」不況期におけるゲームセンター店長の意識の持ち方と仕事の進め方とは

船井総合研究所 アミューズメント・レジャービジネスチーム チームリーダー 上席コンサルタント 宇都宮 勉氏
画像集#003のサムネイル/[AMショー]「客数を伸ばせ」「外食産業に注目しろ」不況期におけるゲームセンター店長の意識の持ち方と仕事の進め方とは
 幕張メッセで開催されている「第48回アミューズメントマシンショー」にあわせて,9月9日に幕張メッセ会議場で「アミューズメントマシンショーセミナー」が開催された。「不況期における店長の意識の持ち方と仕事の進め方」という演題で行われた講演は,100%アーケード業界向けの内容なのだが,興味深い点も多かったので紹介してみたい。

 まず,講演を行った船井総合研究所の宇都宮 勉氏は,コンサルタントとして300軒以上のアミューズメント施設に関ってきており,長年にわたって多くの経験を積んでいる。その氏の目には,昨今のアーケードゲーム不況はどう映っているのだろうか。


猛暑に救われたゲーム業界?


画像集#001のサムネイル/[AMショー]「客数を伸ばせ」「外食産業に注目しろ」不況期におけるゲームセンター店長の意識の持ち方と仕事の進め方とは
 まず,単純な数字から見ていくと,このところゲームセンターの売り上げは年々4,5%くらいずつ低下しており,ピーク時だった2002年と比べると7割ほどの規模になっていることが示された。不況でなにが減っているかというと,ズバリ客単価だという。客数自体はそれほど減ってはいないとのこと。

 この夏に限っていえば少し復調しているが,宇都宮氏は,その要因として「猛暑」を挙げていた。ファーストフードや喫茶店なども非常に好調だったそうで,涼みに寄ってくる人をうまくつかまえた形だ。そこで,どんなものが売れていたかというと,短時間で楽しめるものが好調で,全体的な売り上げを牽引していたとのこと。主力はプライズものだ。昨今では,プライズものがゲームセンターの売り上げを支えるようになってきている。
 逆に,ガッツリやるようなアーケードゲームの伸びは低い。この夏はアーケードゲームにも復活の兆しが出てきたものの,昨年比で見るとアーケードゲームだけが回復していない状況らしい。今回のAMショーではアーケードの新作もいろいろ出てきたので,今後には期待ができそうとのこと。

 とはいえ,プライズものが主力となってきていることは間違いない。宇都宮氏は,ここで重要なキーワードとして「アニメキャラ」を挙げ,会場に集まった店長達(ばかりではないだろうが)に質問していた。名前を聞いてキャラの顔まで思い浮かぶ場合に手を挙げるというルールで挙手を求めたところ,

  エヴァ
  ミク
  けいおん
  エース


画像集#004のサムネイル/[AMショー]「客数を伸ばせ」「外食産業に注目しろ」不況期におけるゲームセンター店長の意識の持ち方と仕事の進め方とは
と,少しずつ挙手は減っていたものの,さすがにちゃんと把握している人が多かったようだ。これらは現在のプライズを支えている人気商品であり,こういったものを強く押し出している店がちゃんと売り上げを伸ばしているという。

 続いて,宇都宮氏は,不況時に売り上げを伸ばすポイントとして,
 
  オーソドックスなものを入れていくこと

を挙げていた。このあたりは,間違った方針でやっている店も多いという。
 市場が伸びている時期には,店の特徴を出すように動くのも正解だが,不況時には逆張りをやってはいけない。ドツボにはまったときは,客から「変な店」と思われ,客足が遠のいてしまう。
 問題は,現在の「オーソドックス」がどのあたりにあるかだが,客層をマスユーザーとコアユーザーに分けたときに,マスユーザーのちょいコア化が進行しつつあるという。イマドキは,情報も氾濫しており一般ユーザーもいろいろと詳しいのが当たり前になってきている。それに歩調を合わせて,チョイオタくらいの感じでやるのがよいそうだ。
 しかし,オタク系に走るか,全然知らないかという両極端な店が多く,プライズもので売り上げを上げるには微妙なバランス感覚が重要だという。


客層はどう変わっているのか?


 ゲームセンターでは深刻な不況が続いているわけだが,ゲームセンターを訪れる客層で,2005年時点と比較して2009年で減っているのは,どの層だろうか。レジャー白書のデータが引用され,ゲームセンターへの参加率の変化が示された。

  20代男性 74.5%
  20代女性 106.1%
  30代男性 107.6%
  30代女性 100.0%
  40代男性 91.8%
  40代女性 105.3%
  
 ご覧のように,20代男性の落ち込みが大きい。本来は主力となるべき部分が落ち込んでいることがゲームセンター不況の姿を端的に示している。
 これに対して宇都宮氏は,ターゲットの客層を広げることを勧めている。10代を狙ったり,30代でも遊べるゲームを置くなど,あてにできなくなった20代男性以外の部分に客層を広げることが重要とした。
 例えば,プライズもので人気のワンピースなどは,連載開始時から読んでいる層はすでに30代になっており,読者はかなり広い年齢層にわたっている。ガンダムやエヴェなど,ヒットしているものを見ると,どれも年齢性別を問わず支持されており,昨今ではコア化したものでも年齢層が広くなっているとの認識を示した。そのうえで,幅広いターゲットにヒットするものを意識することが重要だという。


単価より客足,いかにして「客数」を増やすか


画像集#002のサムネイル/[AMショー]「客数を伸ばせ」「外食産業に注目しろ」不況期におけるゲームセンター店長の意識の持ち方と仕事の進め方とは
 不況期に重要なゲームセンターの経営目標は,まず「客数アップ」であるという。客単価など,ほかにも目指すべきものがあるのだろうが,それは二の次のようだ。
 そして,客数を増やすというのはゲームセンターが最も苦手としている分野でもあるという。なぜか,それはゲームセンターでは入客数を数えていないから。データ化されていないものにはどうしても対処がしにくいということだ。他業種では,新規開拓のノウハウはかなり蓄積されているのだが,伝統的にゲームセンター業界ではそのあたりのノウハウに欠けているらしい。
 ゲームセンターでは,固定客に対してのサービスについては経験豊富でノウハウもあるとのことなのだが,それと並行して新規客の獲得を行っていく必要がある。不況時に客単価が落ちるのはしかたがないことであり,そういうときこそ新しい客を増やしていくことが重要になってくる。
 関連して述べられたのが,近場から売り上げを上げるということだ。これは客単価を上げることにもつながるが,ゲームセンターの近隣住人の3割程度にしか,店の存在が認知されていないというデータが挙げられていた。知られすぎると,また厄介ごとも出てくるのかもしれないのだが,まず地元での認知度を上げないことには経営はおぼつかないだろう。
 
 客から100円でも200円でも多く支払ってもらうにはどうするか? その一例で挙げられたのが,閉店時間近辺の動きだ。法律で閉店時間は決まっていても,閉店の1分前まで粘る姿勢が重要なようだ。客がいるのに店仕舞いを進めているようでは,収入機会を失ってしまうだけだ。


自分でコントロールできるところから手をつける


 店の経営戦略では,自分の思うようにできるものとできないものがある。競合店との関係で決まるものなどはあと回しでいいので,とにかくコントロールできるものから手をつけるべきだとの方針が示された。
 自分だけでコントロールできるものとしては,まず,プライズ系が挙げられる。プライズ系は,他店が台数を増やしたとしても,売り上げが落ちたりはしない。自店のやりくりだけで売り上げにつなげることができる部分だという。
 次いでパチンコやパチスロなどがコントロールしやすい部分だそうだ。メダル系も比較的コントロールしやすいとのことだが,これには多少注意が必要なようだ。
 メダル機では大きく「メダルを出す」か「回収する」かのどちらかの方針になるわけだが,復調している店は例外なく回収傾向にしているという。預かり枚数の多い店は,メダルがだぶつき,停滞傾向となる。地域ごとに違いはあるとはするものの,メダル回収に入ると客数は落ちるが,売り上げはむしろ上がる。先ほどとは逆になっている感じだが,売り上げにつながらない客の足が遠のいても問題はないということなのだろう。
 メダル単価をいじることもできるのだが,これは地域の動向に依存する部分が多いので,いじらないほうが無難とのこと。


物事を否定的に見ないようにする


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 例えば,競合店との関係にしても,他店の悪いところばかり探す人が多いのだという。自店と比べて劣った部分しか見ないようでは発展はない。経営戦略としても,他店の欠点(=実は相手が力を入れていない部分)を攻めてもまったく効果はない。競合店のよい部分,得意とする部分を攻めるのが効果的で,他店のよい部分を取り入れていくことが重要だという。
 ゲームについても同様で,自店で購入できなかったゲームは面白くないと思い込もうとする人が多いそうで,よくない傾向が広がっているようだ。
 新作ゲームなどでも,ほとんどの店では基板を購入できないもののほうが多いわけなので,自分が買ったゲームしか評価しないようでは視野が狭くなってしまうという。そうなると,本当に面白いゲームを見逃すことにもなりかねない。つまらなそうなゲームでも,よい点を探して評価していくクセをつけるのが大事なようだ。
 

ゲーセン業界の動向はどうやって察知するのか?


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 ゲームセンターというのは,かなり特殊な業界なので,指標とすべき情報がなかなか手に入らない。情報を得ようと新聞などを読んでも,ゲームセンター業界の話題などまず載っていないので,なんの役にも立たないとのこと。
 そこで注目すべきは,ファーストフードやファミリーレストランの動向なのだという。外食系とアミューズメント系,どちらもレジャー産業で,実は,客層もかなり似ているのだそうだ。食のほうが生活に密着しているためか,だいたい半年くらい早い周期で動向が変わっているという。例えば,新聞で「マクドナルド」と書いてあったら「ゲームセンター」と読み換える。それが半年後にやってくるわけだ。
 紹介されたのはファミレスの動きである。しばらく前のファミリーレストランはランチ中心の展開をしていたのだが,このところディナー系に重点が移ってきているという。ファミリーレストランの客層の最大のものは,その名のとおり,ファミリー層なのだが,それに次ぐのが20代男性の層だそうで,20代の消費が長く冷え込んでいたため,ファミリーレストランは家族連れにターゲットを絞った戦略を展開していた。このところ,20代の消費が回復傾向にあり,それを狙ってディナータイムにターゲットを絞った戦略に変えてきているという。

 ゲームセンターの客層は3種類しかないと宇都宮氏は語っている。すなわち,

  • ファミリー
  • 中高生
  • 若年男性

の3種類だ。ファミリーと中高生はすでに戻ってきており,次のターゲットは,20代男性とのこと。ここは本来ゲームセンターの主力であるべき部分だが,この層が回復すれば業界の本格回復もありうるか。

 そのほか,「手描きポップはダメ」「客の動線は無視して機械にぶつかるように配置を」「地域での序列を認識して下だけ叩け」「最近はハズレが減っているので迷ったら買っておけ」「日売りを把握しろ」「ロケテはあてにならない」など,非常に多くの局面で具体的な事例を挙げて,現在のゲームセンター業界の実情に沿ったアドバイスが展開されていた。多くの例で,「数年前はこっちのほうがよかったけど,今はダメ」といった,時節で変動している客の傾向についても多くの示唆があり,集まった関係者も頷ける部分は多かったのではないだろうか。

 今回のセミナーでは「不況」という部分については,もはや説明もなしで既成事実として話は進められた。世の中全体の不況とともに,ゲームセンター不況は誰の目にも明らかだ。とはいうものの復調の兆しもないわけではない。最近では復調しつつある店と沈みつつある店に二極化しつつあるとのことで,今回の講演ではさまざななノウハウを駆使して,それを乗り切るヒントが示されたわけだ。こういったものがうまく活用されれば,アミューズメント産業も生まれ変わるのだろうか。氏によると「少なくとも10月までは調子がいい」そうなので,今後のゲームセンター業界の復興に注目したい。
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