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シミュレーション・ゲーミング技術を政策プロセスなどへ活用。第3回FOST賞授与式で見たゲームの学術的側面
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印刷2010/03/19 15:14

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シミュレーション・ゲーミング技術を政策プロセスなどへ活用。第3回FOST賞授与式で見たゲームの学術的側面

左から,FOST 理事長を務めるコーエーテクモホールディングス 取締役最高顧問 襟川陽一氏,プライスウォーターハウスクーパース 藤川琢哉氏,東京工業大学 総合理工学研究科 知能システム科学専攻 教授 出口 弘氏,東京大学 大学院 工学系研究科 技術経営戦略学専攻 博士課程 中村 潤氏,FOST賞の評議員を務める東海大学 名誉教授 白鳥 令氏
画像集#002のサムネイル/シミュレーション・ゲーミング技術を政策プロセスなどへ活用。第3回FOST賞授与式で見たゲームの学術的側面

 本日(3月18日),財団法人科学技術融合振興財団(FOST,foundation for the Fusion Of Science and Technology)は,東京の帝国ホテルにおいて「第3回FOST賞授与式」を開催した。
 なおFOSTは,「シミュレーション&ゲーミングの研究など、社会や文化の文脈のなかで科学技術の融合を促進させる研究課題に対する助成事業と、その成果を広く還元する普及啓発事業」を活動の柱としている財団法人。
 FOST賞は,FOSTが支援/助成する研究のなかから,優れた研究者を表彰するものだ。また2008年度の第2回からは,とくに若手研究者を対象に,地域と暮らしの金融研究所代表の熊田節郎氏が出資した「FOST熊田賞」も設けられている。

FOSTの理事長を務めるコーエーテクモホールディングス 取締役最高顧問 襟川陽一氏
画像集#003のサムネイル/シミュレーション・ゲーミング技術を政策プロセスなどへ活用。第3回FOST賞授与式で見たゲームの学術的側面
 開会の挨拶を行ったのは,FOSTの理事長を務めるコーエーテクモホールディングス 取締役最高顧問 襟川陽一氏。襟川氏は,FOST賞について,優れた研究者を助成するだけでなく,その素晴らしいシミュレーションおよびゲーミングの研究成果を,社会的に広めたいという意図で創設したと説明。ゲームの学術的な側面にスポットライトを当て,その社会的な有用性を世の中にアピールしていきたいと述べた。


財団法人科学技術融合振興財団(FOST)公式サイト


東京工業大学 総合理工学研究科 知能システム科学専攻 教授 出口 弘氏
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 今回,FOST賞に選出されたのは,「ハイブリッドネットワークゲーミングによる社会的インフォームドコンセントの教材開発」を行った,東京工業大学 総合理工学研究科 知能システム科学専攻 教授 出口 弘氏だ。出口氏の研究は,1万人規模の都市における天然痘感染拡大モデルを利用したシミュレーションモデルを構築し,その対策の効果を議論することで,社会的インフォームドコンセント(正しい情報を伝えられた/得られたうえでの合意)の過程を習得できるという研究内容で,社会科学の問題意識と工学的コミュニケーション言語技術とを融合させたという成果が評価された。

 受賞した出口氏によれば,伊豆大島における季節性インフルエンザの統計が研究の発端で,現在はベトナムやインドネシアなどの地域で政策の意思決定に役立つモデルを構築中とのこと。また出口氏は,将来的には統計のうえに“推計”という形でシミュレーションが加わり,さらに人による議論というコミュニケーションプロセスが加わった意思決定が当たり前になるだろうと展望を述べた。なお,この研究には,出口氏の研究グループが開発したエージェントベースドモデル言語「SOARS」が採用されている。

プライスウォーターハウスクーパースの藤川琢哉氏
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 またFOST熊田賞には,2名が選出された。一人めは,「エージェントベースモデリングを用いた携帯電話業者のプラットフォーム戦略」を行った,プライスウォーターハウスクーパースの藤川琢哉氏。藤川氏の研究は,携帯電話キャリアのプラットフォーム戦略に仮説を設け,携帯電話産業をモデル化するもの。統計データから現実的なシナリオを構築/分析し,戦略の有効性を示したことが評価された。
 藤川氏は,対象が非常に大きく,また複雑であることから,モデル化の妥当性の検証が難しい研究だったが,あえて計量化にチャレンジしたと説明した。なお藤川氏は,東京工業大学の大学院生時代には上記の出口氏の研究室のメンバーだったそうだ。

東京大学 大学院 工学系研究科 技術経営戦略学専攻 博士課程 中村 潤氏
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 二人めは,「創造的な思考を支援するアナロジーゲームの評価と開発」を行った,東京大学 大学院 工学系研究科 技術経営戦略学専攻 博士課程 中村 潤氏。中村氏の研究は,言葉を類推し分類していく“アナロジーゲーム”から得られたデータについて,すべての動作履歴を秒単位で記録するというもので,その履歴データを解析して創造的な思考プロセスの可視化を実現したことが評価された。
 中村氏は研究の発端について,さまざまな研究者達の“気づき”を可視化したいという思いがあったと述べた。研究を進めていくなかで,中村氏は“言葉の多義性”の組み合わせによってアイデアが湧くのではないかという考えにたどり着いたという。そこで,ゲームというハードルの低いスタイルで被験者のより自由な発想を助長し,その一方でルールなどの制約で被験者が“のめり込みやすく”なるよう,アナロジーゲームの仕掛けを考えたと説明した。

 今回受賞したそれぞれの研究は,ただちにゲームに採用されるという性質のものではないが,こうした取り組みが将来のゲーム技術にさまざまな影響を与えていく可能性は高そうだ。
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