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コーエーのクリエイター二人が,筑波大学の特別講義「コンテンツ応用論」で学生達の“ゲーム業界で働くということ”についての疑問に答えた
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印刷2010/02/03 15:34

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コーエーのクリエイター二人が,筑波大学の特別講義「コンテンツ応用論」で学生達の“ゲーム業界で働くということ”についての疑問に答えた

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 2月1日,筑波大学の春日キャンパスにて,同大学情報学群 情報メディア創成学類の特別講義「コンテンツ応用論」の第6講「ゲーム業界ではたらくとは」が行われた。この講義には,現役ゲームクリエイターとして,コーエー 常務執行役員 鈴木亮浩氏およびソフトウェア 二部 北見 健氏がテレビ電話を介して参加した。

筑波大学情報学群 情報メディア創成学類公式サイト


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 このコンテンツ応用論は,筑波大学大学院 図書館情報メディア研究科教授 西岡貞一氏によって,メディア/ゲーム/広告業界を志望する学生に向け,第一線で活躍するキーパーソンを講師に招いて行われている特別講義である(2009年12月7日〜2010年3月1日に計9講を実施)。この日は,「夕刊フジ」「ZAKZAK」などのコラムや書籍「ゲーム業界の歩き方」(ダイヤモンド社刊)で知られるジャーナリストの石島照代氏を講師に迎え,ゲーム業界をテーマとする講義が行われた。


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筑波大学大学院 図書館情報メディア研究科教授 西岡貞一氏
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ジャーナリスト 石島照代氏

 講義は,石島氏の著書に記された,任天堂 代表取締役社長の岩田 聡氏による「ゲーム業界ではたらくこと」についてのコメントから始まった。そのコメントは「仕事をするのはウケたいから,喜ばれたいから。決して生きていくためだけに働くわけではない」といった趣旨のもので,学生からは,自身の学園祭での経験から納得できるという意見が出る一方で,もっと自分のために仕事をする意識を持ちたいといった意見も挙がっていた。

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 ここで,実際のクリエイターとして,コーエーの鈴木氏(「真・三國無双」シリーズプロデューサー)と北見氏(「信長の野望・天道」プロデューサー)が登場し,石島氏と学生達の質問に答えることになった。
 最初の質問は,ゲーム業界に入った動機について。鈴木氏も北見氏も学生時代に「三國志」をプレイしたことがきっかけだったと述べる。
 また,実際に業界に入ってみてどうだったかと感想を求められると,鈴木氏は「仕事そのものが楽しく,またヒット作に携われることで日々の達成感を感じる」とコメント。北見氏も「辛いことも多いが,達成感があり楽しい」と,達成感が非常に大きい仕事であることをアピールした。

コーエー 常務執行役員 鈴木亮浩氏(右),およびソフトウェア 二部 北見 健氏(左)は,コーエー本社からテレビ電話を介して講義に参加。ちなみにテレビ電話は,コーエーとともに本講義をバックアップしたロジクールの「ウェブカム プロ 9000」が使われた
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 また,キャリアパスを尋ねられた鈴木氏と北見氏は,それぞれのコーエー入社後の足跡を簡単に紹介した。鈴木氏は,当初はプログラマーとしてPC版のゲームをコンシューマ機向けに移植する業務などを担当。その後,開発スタジオであるオメガフォースの立ち上げに加わり,「真・三國無双」シリーズのリードプログラマー/ディレクターを経て,以降はさまざまなタイトルのディレクション/プロデュースを手がけている。なお現在は,「トリニティ ジルオール ゼロ」のプロデューサーを務めている。
 北見氏は,同社の歴史シミュレーションゲームの開発に携わったのち,「Winning Post」シリーズのディレクターに抜擢。現在はプロデューサーとして「信長の野望・天道」などを手がけている。

 学生からの質問は多岐におよび,鈴木氏は学生時代に趣味でプログラムを組むことはあっても専門知識はなかったこと,また北見氏は三国志は好きだが歴史は苦手といった,少々意外ともいえるエピソードを披露した。
 また,思いつきから発展させたシステムがゲームの面白さの中心になる可能性が往々にしてあることや,あるいは歴史を扱うゲームとして史実からかけ離れた表現にならないよう心がけていることなど,開発上のポイントを披露した。
 とくに後者では,海外展開にあたって,歴史上のイベントがその国でどう扱われているかを重視しており,たとえば三国志で有名な「黄巾の乱」は,中国では否定的な意味を持つ“乱”とは捉えられていないため,ローカライズ時には表現を変えるなどしているという。

 両氏に対する学生からの最後の質問は「好きなことで成功した理由」。鈴木氏は「赤字プロジェクトなどの失敗もあったが」と前置きをしたうえで,成功の要因を「情熱」と説明した。また,どうすれば面白いゲームになるのかを,仕事だからという理由だけでなく,常に考えているとも付け加えた。
 北見氏は,今,自身が成功しているとするならば,決して成功を目指していたわけではないと述べた。自分の仕事に真摯に向き合って来た結果,現在の状況になったと,北見氏は説明する。

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 こうした鈴木氏と北見氏の発言を踏まえ,講師の石島氏は働くことに対する理由について,自身の考え方を述べた。よく「自分の夢を実現したいから」「たくさんお金がほしいから」「出世がしたいから」といった理由が挙げられるが,実はこれらは働くことの第一の理由にはできないと石島氏は述べる。それは,これらの理由は他者や環境といった要因に左右されることが多く,自分の力量だけではどうにもならないからだそうだ。石島氏は,これらの理由を働くモチベーションの“第2階層”と定義づけ,無理に持つ必要はないとコメントした。


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 ここで再び,石島氏は講義冒頭で出した岩田氏のコメントに立ち返る。岩田氏の「ウケたい,喜ばれたい」という言葉は,すなわち「誰か・何かの役に立ちたい」ということであり,これは自分自身の努力だけでどうにかなる部分である。あるいは,コーエーの鈴木氏の「どうすれば面白くなるか常に考えている」や,北見氏の「自分の仕事に真摯に向きあって(ゲームを作って)きた」という言葉も,同様の意味を含んでいるのだろう。
 石島氏は,こうした自分自身の力だけで達成可能な部分を働くモチベーションの“第1階層”と定義づけ,これを実現して初めて“第2階層”との“幸せな循環”が生まれるのではないかと,講義を締め括った。

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ゲーム業界を志望する学生に開発現場の生の声を伝えた石島氏の初講義


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 講義のあと,主催の西岡氏および講師を務めた石島氏に,話を聞くことができた。
 西岡氏は,コンテンツ応用論を「理論にはなっていなくとも,実務についている人達のホットな実感を披露してもらう場」として定義づけているという。
 今回,石島氏に講師を依頼した理由は,氏の著書「ゲーム業界の歩き方」を読んで,現在の学生が抱える就職などの悩みに答える内容になっていたからとのこと。たとえば,大御所のゲームクリエイターの話は面白くためにはなっても,必ずしも学生を取り巻く現状に沿った内容になるとは限らない。そうした狙いに石島氏の講義はしっかり合致しており,今回は大成功だったと西岡氏は感想を述べた。
 また西岡氏自身,ゲーム業界に知り合いが少なく,今回,コーエーの鈴木氏と北見氏から話を聞けたことは貴重な経験だったと述べた。

 堂々たる講師ぶりを見せた石島氏は,実は初めての経験に緊張していたとのこと。今回,コーエーにテレビ電話での参加を依頼したのは,ゲーム開発の経験がない石島氏が,ゲーム業界の実態を語ってもリアリティが生まれないからだという。そこで鈴木氏と北見氏に開発現場の厳しさと,それでも仕事が好きだから,誇りを持っているから続けられると,学生に向けて直接語ってもらったというわけだ。
 また鈴木氏と北見氏には,かなり無理をいって参加してもらったそうだが,その一方で,両氏も講義の内容や学生の反応に大きな関心を寄せていたとのこと。

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 西岡氏によれば,学生のゲーム業界への憧れは強く,就職活動の際には第一志望ではなくとも,多くの人が応募するという。コンテンツ応用論を受講する学生は,CMやテレビ,出版といったメディアを志望するケースも多いのだが,ゲーム業界への就職希望は常にトップ3に入るとのことで,実際に就職する場合も少なくないそうだ。
 ゲーム業界は,まだ30年そこそこの歴史しか持っておらず,よくも悪くもほかの業界とは異なる部分が多分に存在する。それだけにゲーム業界を志望する学生にとって,現場の実態を短い時間とはいえ垣間見ることのできた貴重な機会になったのではないだろうか。
 また講義後,コーエーの鈴木氏と北見氏から講義を終えての感想が寄せられたので,最後に掲載しておこう。

鈴木亮浩氏

予想以上に多くの学生の方々が,“就職”という観点からゲーム業界に興味を持ってくれている,というのが率直な感想です。ゲームに興味があるから出席したのでなく,“働くこと”について真摯に考えているのが伝わって来ました。そういう意味で,非常に有意義で興味深い講義でした。ゲーム業界は,ユーザーの方と繋がるイベントは多いのですが,今回のような就職を見据えた学生との繋がりを持つ機会は少ないのが実情ですので,今後,このような活動を増やして行くべきだと思いました。

北見 健氏
学生の方々とお話しする機会は滅多にありませんので,今回はとても貴重な体験ができました。自分が学生の頃と比較すると,今の学生は「働く」ということに関して随分まじめに考えているのだなと感じ,私がお話ししたことなど「答え」になっているのかという不安もありましたが,今回の講義が何らかの形で役に立てていただけたら嬉しいです。

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講義のあと,用意されたアンケートに熱心に書き込む学生達
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石島氏にアンケートを手渡すだけでなく,著書にサインを求める学生もいた
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