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ゲーマー向けメモリ「HyperX」でゲーム環境をアップデート

 Kingston Technology製のオーバークロックメモリモジュール「HyperX」(ハイパーエックス)について,その正体を明らかにしていく本連載も,最終回となった。第1回ではメモリモジュールの役割とKingston Technologyという会社を紹介し,続く第2回ではメモリの仕組みや,実際にHyperXが開発される過程を解説した。それを受けた今回は,ゲームをプレイするに当たって,HyperXがどの程度パフォーマンス的な優位性を持つかを検証してみよう。

 

ゲームにおけるメインメモリの存在意義

HyperXのパッケージ。品質の証でもある「LIFETIME WARRANTY」(永久保証)のロゴが光る

 メモリモジュールは,OS上で繰り返し実行されるデータなどを一時的に保存しておく,“暫定的なデータ置き場”的なデバイスである。HDDと比べてはるかに高速にデータのやり取りが行えるため,十分な容量を搭載すれば,システム全体のパフォーマンス向上を実現できるわけだ。ここでさらに,いわゆるオーバークロックメモリモジュールであるHyperXを利用すれば,一般的なスペックのメモリモジュールよりも,システム(≒PC)全体の性能向上が期待できるということは,想像に難くないと思う。

 では,ゲームの場合はどうなるか。結論からいうと,システム全体の速度向上と同じだ。もっといえば,CPUとメインメモリの間の速度がアップするから,この間のデータ転送量が多いゲームにおいては,より大きなパフォーマンスの向上が期待できる。

 少し脇道にそれるが,3Dゲームにおいて,キャラクターや背景のオブジェクトは,一部のまれな例外を除くと,すべて「ポリゴン」と呼ばれる三角形を組み合わせることで表現されている。このポリゴンに,「テクスチャ」という“絵”のデータを貼り付けることで,3Dゲーム世界は作られているのだ。
 ゲームを起動すると,このテクスチャデータは当然のことながらメインメモリ上に呼び出される。テクスチャデータは,ゲームの中で森を抜けて街へ出たり,呪文を詠唱したり,ロケットランチャーを撃ったりするたびに,背景やエフェクトといった形で,次から次へと貼り替えられるので,遅延なく読み込むことが非常に重要だ。しかし,そのために,メインメモリは速いほうがいい……というわけでは,実はない。

 というのも,テクスチャを貼り付ける作業(テクスチャリングという)自体は,グラフィックスカードの役割だからだ。グラフィックスカード上にはグラフィックスメモリが用意されているが,これはメインメモリと比べて数倍〜十数倍高速なものとなっていて,メインメモリに読み出されたテクスチャデータは,すぐにグラフィックスメモリへ送られる。
 3Dグラフィックスの描画に当たって,メインメモリはそれこそ,本当にちょっとの間だけデータを置いておく場所に過ぎない。確かに,テクスチャデータの置き過ぎで,ほかの作業に利用できる部分が少なくなってしまう問題,要するに「容量」の問題が発生する可能性はある。しかし,テクスチャデータの処理に当たって,メインメモリのスピードが重要になることは,基本的にはないと考えていい(図1)。

 

図1

 

 例外として,チップセット内蔵グラフィックスコア(=オンボードグラフィックスコア)の場合は,メインメモリの一部をグラフィックスメモリとして利用することになるので,“グラフィックスメモリとしての速度”がメインメモリに求められることになる。だが,高速なグラフィックス処理を求めるのであれば,現状のチップセット内蔵グラフィックスコアはそもそもそれを満たすだけの能力を持っていない。したがって,ここでは考慮しなくていいだろう。

同じ理由で,グラフィックスカード上のグラフィックスメモリ容量が少なかったり,高解像度かつ(アンチエイリアシングなど)高レベルのフィルタリングを適用したりする場合も,グラフィックスメモリではまかないきれなくなって,メインメモリの一部がグラフィックスメモリとして使われる場合がある。

 よって,最初に述べたとおり,メインメモリの速度がゲームに影響するのは,CPUとメインメモリ間のデータ転送が多くなったときなのである。具体的には,マップデータやキャラクターのステータス,敵AIの動きといったものの負荷が高くなったり,逆に,ゲームが“軽く”,グラフィックスカードへの負荷が少なくなったりした場合に,メインメモリは高速なほうが有利になる。
 そして,そこでHyperXの出番,というわけである。

 

HyperXの型番を理解する

 というわけで,テストを行う前に,まずはHyperXの製品型番ルールについて説明しておこう。まずは,下の図2を見てほしい。

 

図2


 

 DDRとDDR2では若干異なるが,基本的には「Kingston HyperXの略称であるKHX」+「帯域幅」+「パッケージに含まれるモジュール枚数」+「総容量」になる。自作PCのマニアでなければ分からない,といったものではなく,比較的分かりやすいので,購入時に間違えるようなことはまずないだろう。

 さて,現在メモリモジュール市場は,DDR SDRAMからDDR2 SDRAMへ,まさに移行中といったところだ。このため,今回は両モデルのHyperXを用意して,一般的なメモリモジュールと比較していくことにする。
 テストに用いたメモリモジュールを表1にまとめた。また,DDR SDRAMとDDR2 SDRAMのテストに当たっては,それぞれ表2のテスト環境を用いている。なお以後本稿では,PLUSSブランドのOEMチップを搭載したノーブランドモジュールをPLUSS PC2-5300,Hynix Semiconductor製モジュールを以後Hynix PC2-4200と表記する。テストに当たっては,すべて容量を2GB分で統一。ドライバやアプリケーション側の設定は,垂直同期をオフにする以外,すべて標準にしている。

 

表1 テストに用いたメモリモジュール

 

表2 テスト環境

 

 表1を見ると分かるが,今回DDR SDRAMのテストでは本連載の第2回で解説した,メモリに置かれたデータの読み出しや書き込み時に必要となる“待ち時間”である「レイテンシ」の違い,DDR2 SDRAMのテストでは,メモリバス帯域幅とレイテンシの違いが,それぞれゲームに与える影響を見ていくことになる。なお,HyperXのKHX5400D2K2/2Gは,スペック上のメモリバス帯域幅は5.4GB/sだが,テストに用いたマザーボードの仕様上,とくに断りのない限り,5.3GB/sの帯域幅を持つPC2-5300(DDR2 667)メモリモジュールとして評価している。

 

低レイテンシHyperXがゲームに有効

 まずは,純粋にメモリモジュールだけのレイテンシ低減,あるいはオーバークロックが,ゲームパフォーマンスにどの程度の影響を与えるか見てみることにしよう。

 「3DMark05 Build 1.2.0」(以下3DMark05)のテスト結果をそれぞれまとめたのがグラフ1,2だ。HyperXが高いスコアを出しているとはいえ,その差は非常に少ない。テストには若干の誤差が付きものということを考えると,差はないといってしまっていいかもしれない。

 

グラフ1 3DMark05 Build 1.2.0(DDR SDRAM)

グラフ2 3DMark05 Build 1.2.0(DDR2 SDRAM)

 

 いきなりHyperXに不利なデータが出たわけだが,もちろんこれには理由がある。最も大きなものは,3DMark05が,実際のゲームアプリケーションとは一線を画すほど,非常に描画負荷の高いベンチマークテストであることだ。先に述べたように,描画負荷が低くなると,3Dグラフィックスの描画が,グラフィックスカード上――要するに,グラフィックスチップとグラフィックスメモリだ――で完結する。そうなれば,CPUとメモリモジュール間で発生する,マップデータや敵の動きなどといった“描画以外のゲーム要素”が,メモリモジュールの高速化によってもたらされるようになる。

 それを裏付けるのがグラフ3,4だ。これは「Quake 4」において「The Longest Day」というマップで7名によるデスマッチを行ったリプレイを用い,Timedemoから平均フレームレートを計測した結果である。
 とくに注目したいのはグラフ4。描画負荷が最も低い1024×768ドットにおいて,メモリバス帯域幅が上がっただけのPLUSS PC2-5300では,PC2-4200と比べてパフォーマンスの上昇がまったくない。一方,低レイテンシのHyperXだと,スコアは一段上のものが得られているのがはっきりと分かる。

 

グラフ3 Quake 4(DDR SDRAM)

グラフ4 Quake 4(DDR2 SDRAM)

 

 この傾向は,ゲームそのものの負荷が軽くなると,さらに顕著となる。今回のテスト環境にとっては,非常に軽いゲームとなる「TrackMania Sunrise」を用いて,「Fraps 2.60」から平均フレームレートを計測した結果がグラフ7,8だが,低レイテンシを誇るHyperXは,なんと最大約19%ものフレームレート向上を果たしているのだ。さらに,高解像度でも,一般的なメモリモジュールと比べて,一定のリードを保っている。

 

グラフ5 TrackMania Sunrise(DDR SDRAM)

グラフ6 TrackMania Sunrise(DDR2 SDRAM)

 

 これは,CPUやグラフィックスカードと比べて,買い換える頻度のあまり高くないメモリモジュールにとって,非常に重要だ。HyperXを購入しておけば,HyperX以外のPC構成要素がアップグレードされ,相対的にゲームが軽くなればなるほど,ゲームパフォーマンスが上がることになるからである。

 

高いオーバークロックマージンも魅力

 HyperXそのもののポテンシャルが見えたところで,今度はCPUの動作クロックを上げて,システム全体としてのパフォーマンス上昇を狙ってみることにしよう。
 第2回で紹介したように,PC2-5400メモリモジュールとして販売されているKHX5400D2K2/2Gは,一般的なオーバークロックメモリモジュールより若干高い,DDR2 675動作が“確実”に可能な製品として投入されている。そして,確実に動作するようになっている以上,ある程度の動作マージンが用意されているのも,まず間違いないところだ。

 そこで,グラフ2,4,6におけるKHX5400D2K2/2Gをベースに,この状態からCPUのFSBクロックを上げていくと,Pentium D 840/3.20GHzは最高でFSBクロック228MHz(動作クロック約3.65GHz)の状態で,いずれのテストも問題なく完走した。この状態におけるスコアを示したのがグラフ7〜9だが,ここでも,描画負荷の低いものを中心に,スコアが伸びている。
 FSBクロック228MHzに対応して,DDR2 760相当で動作している状態は,HyperXの動作保証外。もちろん,グラフ7〜9のスコアも「今回テストした個体におけるスコア」でしかないが,DDR2 675で動作することを確実に保証されたメモリモジュールだけに,かなり高い動作マージンを持つのは確か。ギリギリまで性能を引き出したい場合に,このデータは魅力的に映ってくると思う。

 

グラフ7 3DMark05 Build 1.2.0(CPUのオーバークロック)

グラフ8 Quake 4(CPUのオーバークロック)

グラフ9 TrackMania Sunrise(CPUのオーバークロック)

 

 最後に,PC4000(DDR500)動作が保証されているHyperXブランドのDDR SDRAMモジュール「KHX4000/512」を利用して,CPUのオーバークロックを試してみた。
 だが,テスト環境にある「A8N32-SLI Deluxe」というマザーボードでは,「メモリクロックをDDR500相当にセットすると,CPUのFSBクロックが自動的にFSB 250MHzにセットされてしまう」という問題に直面した。Athlon 64の定格であるFSB 200MHz設定時に,メモリモジュールをDDR500として動作させることができないのである。しかも,マザーボード側で“勝手に”安定させるように低く設定し直すようで,FSB設定を250MHzにしても,パフォーマンスはまったく上がらなかった(グラフ10)。念のため,中間的なFSB 216MHz(メモリモジュールはDDR433相当)に設定しても,やはり結果は同じである。ちなみに,オーバークロック好きの間で評価の高い,DFI製nForce4 SLIマザーボード「LANPARTY nF4 SLI-DR Expert」を用意しても,結果は変わらず。オーバークロックに当たっては,マザーボード側が,設定項目を持っているか,持っているとして,こちらの思うとおり設定できるかを,事前に十分調べておきたい。

 

グラフ10 3DMark05 Build 1.2.0(DDR500のテスト)

 

HyperXで快適なゲームライフを

 メモリのアクセス方法には,「シーケンシャルアクセス」「ランダムアクセス」という2種類がある。前者は,メモリの先頭から順番に読み出し,あるいは書き込みを行っていく方法で,それこそ円周率計算のような「計算結果を先頭から順番にメモリへ書き込んでいく」場合などに用いられる。このとき,CPUと比べて相対的に遅いメインメモリ側の動作クロックを上げ(=オーバークロック),帯域幅を上げれば,CPUが計算した結果の書き込みに待ち時間が生じづらくなるため,結果としてパフォーマンスが向上する。
 だが,ゲームだとこううまくはいかない。「プレイヤーキャラクターの攻撃モーションデータをメインメモリ上のある場所から読み出しつつ,その結果をまたメインメモリ上の別の場所へ書き込む」ような形で,メモリセルのあちらこちらをバラバラに読み出したり書き込んだりしていくランダムアクセスが,ゲームでは頻発するからだ。このとき,データを読み出す,あるいは書き込む先は頭から順番に……というわけには当然いかないから,(第2回で用いた図2の再掲となるが)下に挙げた図3の(1)〜(3)との流れで,いちいち指定する必要がある。だから,この(1)〜(3)にかかる時間=レイテンシを短くするほうが,ゲームにおいてはメモリバス帯域幅を上げるよりも,フォーマンスの向上につながる。

 改めて,表1に戻ってみてほしい。「レイテンシ」の項目に「4-4-4-10」などといった表記があるが,実はこれが,図3の(1)〜(3)と(5)に,順番に対応している。5-5-5-15より,4-4-4-10のほうが,総合的なレイテンシはずいぶん低くなっているのが分かるだろう。この差が,今回のテストで,ゲームパフォーマンスの違いとなって出てきている。
 一般的に「オーバークロックメモリモジュール」と呼ばれているため,どうしても動作クロック(≒メモリバス帯域幅)が重要なのだと思ってしまいがちだが,ゲームにおいてはむしろレイテンシのほうが重要というわけだ。

 

図3

第2回で「図2」として用いたものを再掲。第2回ではデータを「読み出す」ものとして話を進めたが,実は書き込むときも,ほぼ同じ動作が行われる。このため,ゲームのように,さまざまなデータをメモリ上のいろいろな場所に書き込んだり,読み出したりするアプリケーションでは,レイテンシを低くするほうが,単純に動作クロックを上げるよりも,パフォーマンス向上には効果がある

 

 レイテンシの低い製品ラインナップが豊富で,また,スペックには十分なマージンのあるHyperX。ゲームにおいて高いパフォーマンスを発揮でき,さらに,動作マージンが十二分に確保されているため,数十分から数時間プレイすることになるゲームにおいて,何かの拍子にゲームが不正終了するような可能性が非常に低い同製品が,「ゲーマーのための“オーバークロックメモリ”」であることに,疑いの余地はない。
 これからゲーム用PCの導入を考えるときには,メモリモジュールについてもちょっと考えてみるといいだろう。そして,その結果として低レイテンシのHyperXを導入すると,ゲームパフォーマンスは確実に向上するはずだ。

 

 

今回,連載完結記念として,PC2-5400 DDR2 SDRAM 512MBの2枚1パッケージ,「KHX5400D2K2/1G」が,Kingston Technologyと同社の販売代理店であるサンマックス・テクノロジーズの厚意によって3セット,4Gamer読者のために提供してもらうことができた。DDR2システムでゲームをプレイしている人や,これからゲーム用PCをDDR2へ移行しようと思っている人は,ぜひ応募してほしい。