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ゲーマー向けメモリ「HyperX」でゲーム環境をアップデート

 

人の手がいっさい触れない製造工程

 少し長くなったが,以上を踏まえると,これから説明する製造工程を見たときに,どういう考えで運用されているかをつかんでもらえると思う。というわけで,いよいよ,HyperXの具体的な製造工程について,写真を交えながら紹介していきたい。

 

 


メモリチップメーカーから納入されてきたメモリチップや,各種実装部品は,まず倉庫に置かれる。棚の列は4本あって,とても写真には収まらないが,まあ,恐ろしいくらい広いと思ってもらえればOKだ。ちなみに,右の写真で右手前に,少々大きめの段ボールが三つ横に並んでいる(上に小型の段ボールが二つ置かれている)のが見えるが,この段ボール1箱に,メモリチップが2万個入っているといえば,倉庫の規模は分かってもらえるだろうか

 

あるスペックのHyperXメモリモジュールを製造するとしよう。このとき,当該モジュールを製造するのに必要な部品にはすべて専用のバーコードが振られ,社内データベースから参照できるようになる。さらに,第1回で説明したSMT(メモリモジュール製造)ラインで実際にモジュールを組み立てる前には,バーコードによる逐次確認を伴いつつ部品がキット化され,キットとしてSMTラインへ運ばれる

 

運ばれてきた部品のうち,基板(が連結されたもの)は,SMTラインの先端にあるここでいったんストックされる

 


基板に対しては,最初に「クリームはんだ」と呼ばれるはんだが,適切な場所に載せられる。クリームはんだは,メモリチップや構成部品を固定するための“のり”みたいなものだと理解してもらえばいいだろう。右の写真を拡大すると分かるが,印刷装置には,基板に合わせて載せる部分に穴の空いた板があらかじめセッティングされ,その上から大型のはけのようなもので載せていく。ちなみに,これは業界最高峰といわれるDEK製

 

はんだの載りは,無作為抽出の目視検査でチェックされる

 

Kingston標準の電子部品実装機,富士機械製造製「CP-735E」で,チップコンデンサや抵抗といった部品は自動的に,手際よく載せられていく。カバーに光が反射してしまってちょっと見にくいが,ムービーも撮ってみたので,興味のある人はダウンロードして見てみてほしい

 


構成部品を載せ終わったら,今度は同じく富士機械製造製の「QP-341E-MM」で,メモリチップを基板に載せていく。メモリチップはリール状に巻かれており,これが順番に載せられるわけだ。こちらはカバーが色つきで,ムービーを撮れなかったのでご容赦を。代わりといってはなんだが,CP-735EとQP-341E-MM間における基板のやりとりをムービーに収めてみた

 

部品とメモリチップを載せ終えた基板は,続いてHELLER製のリフロー炉「1809EXL」の中に入っていく。ここで,(広義の)溶接を行っていくわけだ。全長は4mほどあるが,これは溶接のしにくいBGAチップに対応するためという

 

リフローが終わると,無作為抽出の目視確認を経て,AOI(Automatic Optical Inspection,自動光学検査)工程に入る。ここにはCyberOptics製の「KS75」という外観検査機が用意されており,実装時に何らかのミスが発生した基板については,製造段階で,機械の目による“見た目”を基準に弾かれるというわけだ。ちなみに右下の写真は,まさにその弾かれた基板。チップ抵抗が90度傾いて取り付けられており,こういう基板はラインから取り除かれる

 

外観検査が終わると,HyperX以外のメモリモジュールには,Amistar製の自動ラベル印刷機「DataPlace 100LP」でラベルシールが貼られる。ただ,HyperXの場合は,最後にヒートスプレッダというアルミカバーが取り付けられるので,ここはパスされる

ここまで来ると,サヤカ製の基板切断機「SAM-CT23BP」で不要な部分がカットされ,ようやく,読者のよく知っているメモリモジュールの形になる

 


そしてSMTラインの最後に待ちかまえるのは,Kingston完全オリジナルの「メモリモジュール自動整列機」。言ってしまえば,ただトレイにメモリモジュールを並べるだけの機械だ。そんな機械をわざわざ自前で用意してまで,SMTラインを自動化しているわけだ

 

 

 この一連の工程内に,人の手が最後まで入らなかった点に注目してほしい。
 これは,Kingstonの製造現場に,「人が最も間違いを犯しやすい」という哲学があるからだ。それが,この徹底した自動化につながっているのである。
 考えてみると,構成部品が溶接されず,ただ載っているだけの状態で人が持って歩けば,揺れたりして,構成部品が落ちるかもしれない。しかも,全数検査を行わないメモリモジュールメーカーなら,その不良モジュールが抜き取り検査の対象にならず,そのまま出荷されてしまうかもしれない。それを購入してしまったユーザーのPCがどうなるかは,推して知るべしといったところで,こういったあたりからも,Kingstonの信頼性の高さはうかがえる。

 

メモリモジュール全数検査の詳細

 続いては,メモリモジュールの検査工程である。その規模については第1回でお知らせしたとおりだが,検査工程はモジュールの種別ごとにブロック分けされており,とてもすべては紹介しきれない。今回はHyperXに関係したDDR/DDR2の検査工程に絞って,写真を交えながら説明してみたい。

 

 

第1回に紹介したのと同じ場所から,少し角度を変えて撮影してみた。それにしても広い

 
 

2005年11月下旬時点で,DDR2 SDRAMの検査工程で使われていたマザーボードは,ほとんどがASUSTeK Computer製Intel 955X Expressマザーボード「P5WD2 Premium」,もしくはABIT ComputerのIntel 925XE Expressマザーボード「AA8XE-3rd Eye」だった

 

テスト工程のエリアには,HyperX用のBIOS設定リストが貼られていた。オーバークロックのテストに当たって,テスト工程のスタッフは,この設定リストに従って実作業を行っていく

テストに使われていたのは,Kingston独自の「SYSBTEST」というアプリケーション。「SPD」と呼ばれる,メモリモジュールに書き込まれたスペック情報が正しいかどうかをテストするほか,電気的にきちんと動作しているのかをテストするという

 


こちらはDDR SDRAMのテスト工程。ここではABIT ComputerのKT600+VT8237マザーボード「KV7」が中心だ。一部で同じチップセット構成のMSI製マザーボード「KT6V-LSR」も用いられていた

 

 

 このテスト工程が終わると,最後に抜き取りで何枚かが目視検査の対象となる。そしてそれも終わると,梱包されて出荷されるわけだが,この流れに,意外な印象を受けた人も多いのではないだろうか。
 もっと,さまざまなマザーボードがあって,多角的にオーバークロックのテストをしなければ,HyperXのテストとはいえないのではないだろうか? 正直,筆者もこのテスト工程を見たときにはそう思った。

 

 

第1回で軽く触れた,Kingstonオリジナルの,温度をコントロールして,高負荷環境でメモリモジュールが正常に動作するかテストする装置。この装置の中にはマザーボードが何枚か置かれており,全自動で動作検証を行える(その様子はムービーにしてみた)のだが,この装置を使うかどうかは,そこに意味があるかで判断される

 

 

 だが,前のページにおける,Kaneshiro氏の発言を思い出してみてほしい。氏は,量産前にチップ,モジュール,マザーボードの組み合わせを試すことで,量産品をどうテストすべきかが見えると述べている。それぞれのテスト工程で用いられているマザーボードには,これでテストしてOKなら大丈夫という,明確な理由があるのだ。

 Kaneshiro氏は「量産ラインにおいては,オーバークロックを除けば,HyperXだからこうという特別なテストはありません。ValueRAMと同じです。相性問題とか,熱への耐性といったテストは,すべて量産前に済ませておく。どのマザーボードで,どうやって量産テストをするのかも,量産前に決めておきます」という。
 「チップレベル,モジュールレベル,そしてマザーボードやアプリケーションとの互換性テストなどは,すべて量産前の作業です。量産前に,メモリチップの特性をすべて把握して,適切に量産できる体制を作る。これが,最も重要なのです」(同氏)。量産テストでは,純粋にメモリチップ,メモリモジュールの個体不良を見つけ出すのが唯一にして最大の目的となる。だから,このタイミングで多くのマザーボードを使って試す必要はないのである。

 

万全の状態で出荷されるHyperX

 これが,HyperXが開発され,製造されるまでの流れだ。ポイントとしては,以下の4点に集約されると思う。

 

  • 数億円レベルの検査装置で,メモリチップの素性は徹底的に洗い出される
  • モジュール化した段階で,多数のマザーボードを用い,複数のアプリケーションを利用して,さまざまな温度/湿度設定を行いながら,実際の環境でじっくりと検証される
  • 量産時には,工程の中で人為的なミスが生じ得ない
  • 量産前検証に基づいて,最適な方法でメモリモジュール全数の動作チェックが行われる。目的が明確なので,チェック漏れが生じない

 

 Tekunoff氏は「CPUとマザーボードが,指定した設定で問題なくオーバークロック動作するなら,そのシステムにおいて,HyperXはスペックどおりのクロックやレイテンシで,確実に動作します」と胸を張る。
 日本のPCユーザーは,限界を狙ったわけではないオーバークロック動作時に,オーバークロックメモリモジュールがスペックどおりに動作しない状態を迎えたとき,マザーボードに責任を負わせる傾向にある。そんな話をすると,Kaneshiro氏と共に「信じられない」と話していたのが非常に印象的だった。オーバークロックメモリモジュールがスペックどおりに動作しないのは,HyperXと違い,量産前のテストに問題があるからと,彼らは言っているわけである。

 

 おそらくこの認識のズレが,残念ながら日本でHyperXがこれまで普及してこなかった原因ではないかと思う。
 オーバークロックそれ自体が目的の人は例外なのでこの際置いておくが,一般的に日本国内では,あるオーバークロックメモリがDDR2 800(PC2-6400)であるとされた場合,「個体差があるから,きっとDDR2 800では動作しないだろうけど,DDR2 700でなら動くんじゃないか」と選択される傾向にある。この考え方を当てはめると,DDR2 800のHyperXは,DDR2 800では動かないかもしれないと判断されてしまう。  だが,そろそろ認識は改める必要がある。HyperXが,他社のオーバークロックメモリモジュールとは,まるで違うことを,認識すべき時期に来ているのだ。

 とはいえ,広告企画でそんなことを言われても信用できない,という人はもちろんいるはず。そこで次回は,HyperXが「本当に」信頼に足るメモリモジュールであることを,ベンチマークテストで証明してみたい。

 

 HyperXについてもっと知りたい人は,正規販売代理店であるサンマックス・テクノロジーズのWebサイトを訪れてみよう。また,「どこで売っているのか」という具体的な販売店情報を知りたい人は,同社(電話:03-5652-1262)に問い合わせてみるといい。