― レビュー ―
光学センサー搭載マウスは生き残っていけるのか
G3 Optical Mouse
Text by Crize
2006年1月12日

 

G3 Optical Mouse
問い合わせ先:ロジクール カスタマーリレーションセンター
電話:03-5350-6490

 Logitechの日本法人,ロジクールが展開している「ゲーミング・グレード」シリーズのマウスについては,すでに4Gamerで「G5 Laser Mouse」(以下G5)「G7 Laser Cordless Mouse」(以下G7)のレビューを行っているが,これらはいずれもレーザーセンサー搭載製品だ。両製品だけでなく,2005年は各社からレーザーセンサーの搭載を高らかに謳うゲーマー向けマウスが多く登場し,「レーザーセンサー本格普及元年」といった雰囲気すら漂っていた。
 ただ,ロジクールのゲーミング・グレードシリーズには「G3 Optical Mouse」(以下G3)という,光学(=オプティカル)センサーを搭載した製品もある。今回は,レーザーセンサー搭載マウスの当たり年にわざわざ投入された,このゲーマー向け光学センサー搭載マウスを採り上げてみたいと思う。

 さてこのG3,実は2005年の始めに「MX518 Gaming-Grade Optical Mouse」(以下MX518)という製品名で,海外ではゲーマー向けとして普通に販売されていた。国内でも並行輸入という形で若干数が流通していたが,知らない人のほうが多いだろう。MX518が国内展開されなかった理由は分からないので,ひょっとすると,MX518が海外で成功したので,ゲーミング・グレードというブランドが立ち上がったのかもしれないといった程度に想像するほかないが,いずれにせよ,MX518とG3は,ハードウェア的にはまったく同じものである。

 

 

■光学センサー搭載マウスとして最高クラスのスペック

 

接続インタフェースはUSB。PS/2への変換コネクタは付属していない

 では,MX518改めG3のスペックとはどんなものだろうか。
 そもそもMX518は,Logitechの従来製品「MX510 Performance Optical Mouse」(製品型番MX-510RD,以下MX510)の高解像度版という位置づけの製品だ。この解像度とは,マウスの精度を表す数値で,高いほどマウス操作が精密に反映される。ディスプレイ解像度が高い場合や,マウスの感度設定を高くしている場合には,とても重要な項目である。
 センサーが1秒間に読み取れる回数を示すフレームレートはMX510と同じ6400fps。初期の光学センサー搭載マウスは,このフレームレートが非常に低く,素早くマウスを動かすとカーソルが飛んでしまうという問題が頻発していたが,6400fpsというフレームレートは2006年1月時点のトップクラスなので,スペック的には安心していい。
 レーザーセンサー搭載マウスと比べても,決して大きく劣るところはない。他社の製品も含めて,スペックを表1で比較してみたので,参照してもらえれば幸いだ。また,テスト環境は表2のとおり。テストに当たっては,5枚のマウスパッドで試している。

 

表1 主要メーカー製マウスの比較

 

表2 テスト環境

 

 

■必要十分なボタン数とシンプルなホイールが魅力

 

 ハードウェア的に最も注目すべきは,上位モデルのG5やG7と異なり,サイドボタンが2個ある点だろう。上位モデルでは「操作時に誤って操作してしまうのを避ける」という名目でサイドボタンは1個になっている。だが,ゲーミング・グレード以前の世代のマウスで,サイドボタンを2個用意するマウスが多かったため,これに慣れてしまった人は,G5やG7の“割り切り”を物足りなく感じていたかもしれない。
 この点G3では,従来製品からの乗り換えでも,ボタンが足りないという思いをしなくて済む。また,ボタン自体の押し心地も,G5やG7に比べてほんのわずかに軽く,その分だけ押しやすいように感じられた。押し込んだあとのボタンの返りもいいので,連続で押下したり,頻繁に使用する動作を割り当てたりするのにも適している。

 

G5(左),MX510(右)と比べてみた。ゲーミング・グレードに属する製品のG3だが,本質的にはMX510に近い製品と考えていいだろう

 

 ホイールがシンプルなスクロールタイプなのも,上位モデルとは異なる点だ。ホイール自体の押下感と返りは申し分なく,回転させると一目盛りごとにしっかりした手応えがあるのはG5やG7と変わらないので,純粋に,チルトがなくなっただけと考えていい。
 G5のレビュー,あるいはG7のレビューで述べたとおり,筆者はチルトホイールを使いづらいとは感じていないが,何本指で操作するかによって使い勝手が変わってくるチルトホイールについては,賛否両論あると思う。そういう意味で,無難なG3のホイールのほうが,より万人向けとはいえそうである。

 

 ホイールを挟み込むように配置されている小さな3個のボタンのうち,ホイールの奥(左)と手前(右)にある「+」「−」は,マウスの解像度を1600/800/400dpiの中で切り替えるボタンだ。頻繁に利用することはないかもしれないが,Windows操作は800(もしくは400)dpiで,ゲームは1600dpiでといったように,目的に合わせて解像度を変更するタイプの人は,わざわざWindowsからマウスの解像度設定を変更しなくて済むので重宝するだろう。
 また「−」ボタンの手前,やや押しにくい場所にあるボタンには,「アプリケーションスイッチセレクタ」という機能が割り当てられている。Windowsショートカットキーの「Alt+Tab」と同じといったほうが分かりやすいかもしれない。ゲーム中に押すことはまずないだろうが,まあ,便利は便利だ。

 

 

■軽さは○,機能バインド不可が×

 

底面前後中央部のソールは,握ったときに親指が置かれる部分のちょうど下あたりに配置されている

 このほか,G3がG5やG7よりも優れていると感じたのは,本体の軽さだ。G3はMX510と同じ106g(ワイヤー除く)で,G5より9g軽い。サイズが一回り小さい「Razer Diamondback」が96gなので,比較的大きめのマウスとしては,かなり軽い部類入る。
 マウスパッドとの接点になる,マウス裏側のソールが小さいのも,軽さを感じる理由の一つだろう。ソールの表面積が大きくなれば,マウスパッドとの接点が広がり,摩擦が大きくなってしまう。G3のソールは,スイカの種くらいのものが(マウスのメインボタン側を便宜上“前”とすると)前に2個,後ろに2個,それと中央付近の端に1個あるが,プラスチックや布といった材質を問わず,テストで使用したマウスパッドではどれでも軽快に操作できた。

 一方,残念な点としては,G5やG7では利用できたアプリケーションごとのキーバインド(割り当て)機能を,G3では使えない点が挙げられる。
 この機能は,例えばサイドボタンの手前を,Webブラウザ使用時は「戻る」,「Counter-Strike」プレイ時は「ボイスチャット有効化」といったように,あらかじめ設定しておけるもの。ゲームのオプション画面などからいちいち設定する必要がなく,非常に便利だ。しかし,G5やG7と同じ「SetPoint」をドライバソフトウェアとして採用しているにもかかわらず,上位モデルでは利用できた同機能がG3からは利用できない。

 

いずれもSetPointだが,G7(左)使用時には表示される「プログラムの選択」が,G3(右)使用時には表示されない。もっとも,それ以外の機能は十全に利用可能だ。SetPointについての詳細は,G5のレビュー記事を参照してほしい

 

 この点についてロジクールに確認すると,上位モデルと差別化するため,G3では無効化されているという答えが返ってきた。つまり,SetPointがバージョンアップしても,G3でアプリケーションごとのキーバインド機能が利用できるようになる可能性は極めて低いのである。これは残念なことであり,不満点として明記しておきたい。

 

 

■光学センサー搭載マウスの完成型といえる安定感

 

 光学センサーを搭載するマウスが登場してから,6年ほど経過した。そして,6年の積み重ねの果てに登場したG3は――少なくともハードウェア的には――Logitech(ロジクール)製光学センサー搭載マウスの集大成といえる完成度にあると筆者は思う。レーザーセンサー搭載マウスのように,マウスパッドとの相性問題が生じる可能性も低く,2006年1月上旬時点で流通しているマウスの中では,ゲーム用途に最も適した製品である,というのが素直な感想だ。それだけに,アプリケーションごとにキーバインドできない仕様が,返す返すも惜しい。

 しかしそれでも,自分専用のフルオーダーメイドマウスを100点として考えた場合,今回レビューを行ったG3には85点を与えたいと考えている。ロジクールの直販価格は4980円で,高価な製品が目立つ最近のゲーマー向けマウスと比べて安価な点も好印象だ。右利き用に作られているため,左手でマウスを使う人には向かないが,それ以外なら,ゲーム用マウスを初めて買おうと思っている人だけでなく,純粋にマウスの買い換えを考えている人にも幅広く勧められる。購入候補の上位にぜひおいて置きたい製品である。

 冒頭でも指摘したように,最近はゲーマー向けを謳うレーザーセンサー搭載マウスが花盛りだ。ただ,これは光学センサー搭載マウスが登場してきたときと同じだが,解像度や読み取り精度の高さというメリット以上に,マウスパッドとの相性や,ファームウェアの練り込み不足などに起因する不具合が目立ってしまっているのも事実。筆者個人の見解としては,現時点でレーザーセンサーには必要性をあまり感じない。ゲーマーにとっての主力マウスが,光学センサー搭載製品からレーザーセンサー搭載製品に変わる日は,まだまだ先になると,G3の完成度を前にして思う。

 解像度やフレームレートはすでに必要十分なレベルに達しているとはこれまでも述べてきた。スペック勝負が終わったこのタイミングで,マウスというデバイスは今後どういった進化を遂げるのか。スペックをただ高らかに謳うのではなく,それこそG3を左利きでも使えるようにするなどといった「すでに十分な評価を得ているマウスを,より多くの人が使えるようにする」ような,より広い意味での使い勝手の向上に期待したいところだ。

 

タイトル Gシリーズ
開発元 Logitech 発売元 ロジクール
発売日 2005/10/28 価格 製品による
 
動作環境 N/A

(C)2006 Logicool. All rights reserved.

【この記事へのリンクはこちら】

http://www.4gamer.net/review/g3_optical_mouse/g3_optical_mouse.shtml