― レビュー ―
豊富なマクロキーと液晶パネル,青色LEDが目を引くキーボード
G15 Gaming Keyboard
Text by 米田 聡
2006年2月3日

 

G15 Gaming Keyboard
問い合わせ先:ロジクール カスタマーリレーションセンター
電話:03-5350-6490

 Logitechの日本法人,ロジクールが展開するゲーマー向けブランド「ゲーミング・グレード」(G-Series)のマウスは,本誌読者にはおなじみだろう。「G5 Laser Mouse」や「G3 Optical Mouse」の完成度については,レビューでお伝えしているとおりだが,実際に,ゲーマーからの評価も高いようだ。

 そんな状況に気をよくした……のかどうかは分からないが,ロジクールから,ゲーミング・グレードとして初のキーボード製品となる「G15 Gaming Keyboard」(以下G15)が登場した。同製品は,並行輸入版が2005年11月から国内の一部で流通していたが,2006年2月10日から,国内正規流通がスタートすることになったわけである。
 今回は,その国内版を発売直前のタイミングで入手できたので,G15の使い勝手を中心に,掘り下げてみたい。

 

 

ギミック満載のキーボード

 

 G15の概要については第一報をすでにお届けしているが,一見して「一般的なキーボードとは違う」と分かる,いかにも「Gaming Keyboard」らしい外観だ。
 まず目につくのが,埋め込まれた青色LEDによって,青く光るキートップ。詳しくは後述するが,キーボード上部中央に設けられたモノクロ液晶パネル「GamePanel LCD」や,キーボードの左端に18個並んでいる「ゲームキー」(Gキー)の存在も,ゲーマー向けキーボードらしいギミックといえるだろう。
 このほか,キーボードの主な仕様を以下にまとめてみた。

 

 

(1)GamePanel LCD
ビットマップ表示が可能なLCDパネル。後述するような,さまざまな情報を表示可能だ。解像度はやや低めだが,日本語表示にも対応している

(2)GamePanel LCD操作ボタン
表示内容変更など,GamePanel LCDを操作するためのボタンが5個用意されている

(3)GamePanel LCD用操作パネル
GamePanel LCDを利用して,いわゆるマルチメディアキーボード的な操作を行うためのパネルとジョグダイヤル。各種メディアプレイヤーの制御をここで行える

(4)ゲームキー(Gキー)
ユーザーが自由に設定可能なプログラマブルキーが18個用意される。(5)の「マクロキー」と組み合わせると,3モード切替が可能になり,1アプリケーションごとに最大54個のアクションを割り当て可能だ

(5)マクロキー(Mキー)
(4)で紹介したゲームキーの割り当てを変更するためのショートカットキーである。これも詳細は後述

(6)MRキー
ゲームプレイ中にマクロを登録したくなったときに利用するキー。このキーを押して,GamePanel LCDに表示されるガイドに従うと,いつでもマクロを登録できる

(7)ゲームモードスイッチ
スペースキー周辺のWindowsキーを無効にするためのスイッチ。右に設定しておくと,Windowsキーは一切反応しなくなる

(8)輝度設定ボタン
キーボードのバックライトとGamePanel LCDの輝度を設定するボタン。押すごとに高輝度/低輝度/オフを切り替える。なお,両バックライトの輝度は完全に連動する

(9)ミュートボタン
サウンドを一時的に消すミュートボタン。「サウンドとオーディオデバイスのプロパティ」から選択できるWindowsミキサーの「全ミュート」と連動しており,Windowsミキサーを通じて入出力されるサウンドのすべてを一時的に無音化できる

ゲームモードスイッチの拡大。当然のことながら,スイッチを左にしておくとWindowsキーは有効になる

G15はUSB接続なので,USB 1.1×2のハブとしても利用可能だ

キーボードの底面にはケーブルを這わせるための溝が用意されており,USB接続ヘッドセットなどの配線をキーボードの手前や左側へ引き回せるようになっている

 

 

 以上が,このキーボードで目立つ機能だが,キーボードそのものは,至ってノーマルな仕様だったりする。配列はごくごく標準的な英語104キーで,キースイッチはラバーキャップを用いた,典型的なメンブレンタイプ。いずれも実測でキーピッチは12mm,キーストロークは3.5mmとなっており,広くもなく狭くもなく,深くもなく浅くもない,これまた非常に標準的なキーを採用している。

 

 キーの形状は「ステップスカルプチャー」(Step Sculpture)と呼ばれる階段状。最近は,横から見たときに中央部の凹んだ格好で湾曲している「シリンドリカル・ステップスカルプチャー」(Cylindrical Step Sculpture)が流行だが,G15では“シリンドリカルでない”ステップスカルプチャー仕様だ。シリンドリカル・ステップスカルプチャーに慣れている筆者は打鍵しづらさを若干感じたが,ノートPCなど,傾斜の少ないキーボードに慣れている人なら,違和感はないだろう。

 

 

設定の自由度が高いゲームキー

 

キーボードプロファイラのウインドウ

 さて,ここからが本題。まずはゲームキーを細かく見ていくことにしたい。

 ゲームキーの割り当ては,付属のCD-ROMからドライバと一緒にインストールされる「キーボードプロファイラ」というツールで行う。ゲームキーにはデフォルトでいくつかのキーが割り当てられているが,キーボードプロファイラを利用すれば,キーストロークやマクロ(=キーマクロ),Windowsの機能,アプリケーションショートカットを割り当てられるようになる。

 

ゲームキーのアイコンをクリックすると,コンテキストメニューが表示され,任意のアクションを割り当てられるようになる

 

 「キーストロークを割り当てる」では,純粋に,ある特定のキー押下をゲームキーに割り当てる。例えば,「G1」キーをアルファベットの「M」として利用する,といったことが可能だ。
 それをより高度にしたのが「マクロを割り当てる」である。複数のキーのコンビネーションを記録して,そのコンビネーションをそのまま一つのゲームキーに割り当てられるようになる。ゲームでよく使う,特定のキー操作を登録しておけば,以後はゲームキーを押すだけでそのアクションを実行できるというわけ。キーとキーの押下間隔も調整できるから,「特定のキーを,一定間隔で順に押していくことで,何かしらのアクションを行う」といったことにも対応できる。マウスの操作は登録できないので,ありとあらゆるアクションをマクロで処理できるわけではないが,それでも,使い方によってはかなり便利そうだ。

 ただ,オンラインゲームで利用しようと思っているなら,あらかじめ規約を確認しておいたほうがいいかもしれない。この機能はいわゆる外部ツールではなく,ドライバが提供するものなので,個人的には「連射機能付きジョイパッド」と同じようなものだと思う。とはいえ,こればかりはゲームの規約次第。あらぬ誤解を受けぬためにも,留意しておいたほうがいいだろう。

 

「マクロを割り当てる」を選択すると開く「マクロマネージャ」ウインドウ。キーを押下すると下向きの矢印,離すと上向きの矢印が登録される。押し続けたときに,その分の時間を「遅延時間」として記録することも可能だ。ちなみにこの例では「W/S/A/D操作で左→右と動いて,ジャンプ」といった感じの動作が割り当てられる 「機能を割り当てる」では,いかにもマルチメディアキーボード然とした,メールソフトやWebブラウザの起動をゲームキーに割り当て可能。「ショートカット」では,それこそ特定のアプリケーションをゲームキーに割り当てられるようになる。複数のゲームをプレイしている人は,ゲームのショートカットを登録しておくと便利かもしれない

 

プロファイルを登録しているところ。実行ファイルとプロファイルを関連づけることで,起動時にプロファイルが読み出される。なお,「LCDを使用して選択」にすると,GamePanel LCDにある操作パネルからプロファイルを選択するように指定できる

 ここで,ゲームキーとマクロキーの関係性について説明しておきたい。ゲームキーの数に当たる18個のマクロは,M1/M2/M3のマクロキー以下に,それぞれ登録可能だ。マクロキーを押すことで,3パターンの「18個のマクロ」を切り替えられるから,最大では54個のマクロを駆使できることになる。
 しかも,この54個のマクロは,キーボードプロファイラで,アプリケーションごとに登録できる。つまり,あるFPSでは武器のチェンジに利用するキーに,あるアクションRPGではコンボを割り付け,さらにそれをタブブラウザにおいては「右のタブへ移る」として利用する,といったことが可能なのだ。

 

 またマクロは,前出の(6),MRキーを利用する「クイックマクロ」からも登録できる。ゲーム中にマクロを登録したくなった場合は,まず,あらかじめ登録しておきたいグループをM1/M2/M3のマクロキーで選択しておく。そして,その状態でMRキーを押す。続けてマクロを登録するゲームキーを押し,この段階で登録したいキーを順番に押して,最後にもう一度MRキーを押すという流れで登録可能だ。
 クイックマクロで登録したマクロはプロファイルマネージャに登録されるので,もちろん,後から編集したり,設定を上書きしたりできる。

 

 

GamePanel LCDをゲーム用途に期待するのは早計

 

 外観,という意味では,ゲームキーよりも目を引くのが,GamePanel LCDだ。この液晶ディスプレイには,ゲームプレイ時に必要な情報を表示できると聞き,気になっている人も多いと思う。

 GamePanel LCDにゲーム関連情報を表示するためには,GamePanel LCDのサポートページからのリンク先で入手できる,対応パッチの適用が必要だ。どんなゲームでも,好きな情報を表示できるというわけではない。
 そして,既報のとおり,2006年2月上旬時点で,対応タイトルは「Sid Meier’s Civilization IV」(以下Civ4)「Brothers in Arms: Earned Blood」「Unreal Tournament 2004」のみ。「SiN Episodes: Emergence」「Star Wars Battlefront II」の対応は謳われているが,まだ発売されていない前者はともかく,後者はパッチ待ちの状態だ。“Game”Panel LCDを,ゲーム用途で利用できるのは,現時点でわずか3タイトルしかないということになる。

 

GamePanel LCDのサポートページ。定番のフレームレート計測(だけでなく,ムービーやスクリーンショットも撮れるが)ツール「Fraps」も,GamePanel LCDをサポートしており,ダウンロードページへのリンクが張られている

 



Civ4プレイ中の表示例。この写真では,スクロールする様子を連続して押さえているが,このように戦闘のステータスが表示される。なお,とくに表示すべき内容がないときにはCiv4のロゴが表示されていた

 さて,対応ゲームのうち,Civ4を試してみた。2006年2月1日現在の最新版パッチ「v1.52 Patch」を導入しておけば,特別な設定なしにG15と連携するようになる。具体的には,何かイベントが発生するごとに,その概要がGamePanel LCDへ表示されるようになった。

 ゲーム内の情報が手元のキーボードに表示されるというのは,ギミックとして確かに面白い。……面白いのだが,役に立つかと言われると,かなり微妙だ。Civ4のようなシミュレーションゲームだから,まだなんとかGamePanel LCD上の情報を追えるが,Brothers in Arms: Earned BloodやUnreal Tournament 2004のようなFPSを集中してプレイしつつ,画面からわざわざ目を離してGamePanel LCDを見る,などという芸当は不可能に近い。パッチ次第である以上,今後,何か画期的な利用法が出てくる可能性はもちろんゼロではないが,対応タイトルが少なく,利用する積極的な理由も見あたらないGamePanel LCDは,現時点だと,残念ながらゲームの役には立たない。

 ただ,名前にふさわしい用途かどうかはともかく,使い方によっては有用な機能が詰まっていたりする。GamePanel LCDには,標準で以下の機能が用意されているのだ。

 

LCDクロック
時刻とカレンダーの表示
メディアディスプレイ
文字はややツブレ気味だが,メディアプレイヤーと連動して再生内容を表示

 

パフォーマンスモニタ
CPU負荷とメモリ利用量を棒グラフでリアルタイム表示
キーボードプロファイラ
前述した,ゲームキーのプロファイル変更時におけるプロファイル名の表示

 

 このうち,メディアディスプレイは,なかなか実用性が高いと感じた。この手の機能は「Windows Media Player」でしか利用できないというのが少なくないが,以下に挙げるとおり,新旧とり混ぜて,そこそこの数のメディアプレイヤーに対応している。日本語表示にも対応し,さらに操作パネルから操作も行えるから,使い方によっては面白い。

 

メディアディスプレイの対応メディアプレイヤー

iTunes 4.5(以上)
MediaLite
MusicMatch
RealPlayer
Sonique
Sonique 2 Beta
Winamp
Windows Media Player 9(以上)

 

 パフォーマンスモニタでチェックできるのはCPU負荷とメモリ使用量のみだが,ゲーム中のPCの負荷を確認し,例えばメモリが不足気味なら追加するといった用途になら,利用できそうである。

 

 

ゲームキーに十分な価値を見いだせるかどうかがカギ

 

 以上が各種機能についての解説となるが,要するに,ゲーム用として考えたときにGamePanel LCDはオマケであり,ゲームキーが役に立つかどうかが,G15というキーボードの価値を決めるポイントになるわけだ。

 

 で,実際のところはどうかというと,アクション性の高いゲームにおいて,複雑なアクションをゲームキーに割り当てて有効に使うというのは,かなり難しい。例えば「Quake 4」をプレイしてみると,ゲームキーを押すためには,W/S/A/Dのホームポジションに対して,左手を大きく動かす必要がある。これはもう絶対に致命的で,ゲームキーを押している間に,あっさりとやられてしまう。
 ならばと,Gキーに左手の操作をすべて割り当てるのも難しい。6個のキーごとにグループに分けて配列されているとはいえ,単純にマス目に並んでいるだけで,しかも通常のキーよりも小さい。結果として,タッチタイプによる素早いキー操作がかなり難しくなるからだ。

 

 そもそも,冒頭で述べたように,G15はキースイッチがメンブレンタイプで,耐久性に優れているわけではない。特定のキーを酷使するような,スポーツタイプのアクションゲーム向きではないのだろう。
 ややゆったりとした操作でも対応できるゲーム,具体的にはRPGやシミュレーション系のタイトルで,ゲームキーのマクロ機能が有効に利用できるものに対してなら,G15は価値がある。あるいは,ボイスチャット環境なしで行うチームプレイなどで,特定のチャット用定型文をゲームキーに割り当て,コミュニケーションを素早く行うのにも,ゲームキーは向いていると思われる。

 ……と,このような言い訳が必要になるほど,G15のゲームキーが有効に機能する局面はゲームにおいて限られている。これは,いかんともしがたい事実だ。調べたところ,6個のキーの同時押しに対応しているので,ゲーマー向けキーボードとして最低限のところはクリアしているといえるが,それでも,直販価格1万2800円という価格を見てしまうと,すべてのゲーマーに勧められるものでない。あくまで,ゲームキーに積極的な価値を見いだした人向けのアイテムということになる。

 

SDKには,自作ツールの動作を確かめるためのGamePanel LCDエミュレータが用意されている

 そこで,あえて「ちょっと派手な多機能キーボード」として受け入れるというのはどうだろうか?
 マクロ機能が充実しているのは間違いないし,GamePanel LCDも,C++のプログラム知識さえあれば,付属のSDK(ソフトウェア開発キット)を利用してカスタマイズ可能。ギミックの豊富なマルチメディアキーボードとして利用するというのも悪くない選択肢だ。
 ゲーミング・グレードの製品ではあるけれども,ゲームプレイとはある程度切り離して考えるのが,G15に関しては正解かもしれない。

 

 

タイトル Gシリーズ
開発元 Logitech 発売元 ロジクール
発売日 2005/10/28 価格 製品による
 
動作環境 N/A

(C)2006 Logicool. All rights reserved.